イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

海底二万ヘルツ

リアクション公開中!
海底二万ヘルツ

リアクション

■シャンティ・ドール特権階級の猛攻から、脱出艇を守り切れ!

『――――!!』

 港のあちこちで、破砕音が響く。
「フランティアは私たちが護るの! あなたたちはさっさと帰って!」
 身体の一部を機械とし、さらにディーヴァとのユニゾンによって大きな力を得たシャンティ・ドールの特権階級に属する者の一人が、激しく回転するドリルをレジスタンスへ突き出す。その強力な一撃は盾をやすやすと無力化し、吹き飛ばされたレジスタンスは動くことができない。

『マスター、注意してください。彼らに後方の脱出艇を破壊されれば、たとえハルさん達がライブ対決に勝ったとしてもフランティアの住人を地上へ運べなくなります』
「分かっている。……ダイヤモンドはどこに居る?」
 スピカの声に頷きつつ、イザークがかつて復讐の対象とし、そして今回の作戦に同行することとなったダイヤモンド・ブレイドの位置を尋ねる。
『ダイヤモンドさんは別の港に一人で向かいました。行動は追えています』
「何か変な真似をしたらすぐに伝えろ」
 何か言いたそうなスピカにそれだけを伝え、イザークがレジスタンスを行動不能にしたビートボクサーへ接近する。振るった拳は篭手に防がれるが、注意を自身に向けることに成功する。
「フランティアの侵略者! 私たちの街から、出て行け!」
「……街を襲うつもりは無い。俺達は、街に押し潰されそうになっている者を助けるために、戦う」
 イザークの拳と、ビートボクサーの拳が激しくぶつかり合う。そしてアイドルたちも戦線に参加し、脱出艇を破壊されないために奮戦するのであった――。


(ユニゾンしているだけあって、なかなかの火力だな)
 港に突入してきた彼らの攻撃力を目の当たりにしたアーヴェント・ゾネンウンターガングが油断ならない相手と判断し、行動を共にする仲間であるアイフェリア・エーフェルトに注意を促す意味で声をかける。
「正面から突っ込んで制圧できる相手ではない。連携を密に、一人ずつ確実に撃退していくぞ」
「了解です」
 頷いたアイフェリアが、背後に控えていたカナデ・ステラとユニゾンする。ハードパンチャーからハルモニアの光を発しながら駆け出すアイフェリアを見届けたところで、アウロラ・メタモルフォーゼスから呼びかけられる。
「何をボーッとしているゆーしゃよ、我々も行くぞ。
 武力や洗脳で支配しようとする愚か者共に、格の違いを見せつけてやるのだ!」
「……ああ、そうだな」
 実に彼らしい物言いに、アーヴェントが笑みを見せる。「ゆーしゃよ、何を笑っておるのだ?」と訝しげな様子のアウロラを宥めてからユニゾンを果たし、先行したアイフェリアが狙っている相手に意識を集中させる。
「!? 脚が――」
 アーヴェントの干渉を受けたビートボクサーの脚に動作不良が生じ、機動が乱れる。そこへ狙いすましたハルモニアが放たれ、防御せざるを得なくなったビートボクサーの腕から身体全体へ、水がかかる。
「この程度――」
 そう思いかけたビートボクサーの頭の片隅に、ひとつの可能性が浮上する。――そしてその可能性を選択するだけの技量、タイミングが今の相手には存在していた。
「――こいつは効きますよっ!」
 物陰から飛び出したアイフェリアの溜めた拳から、雷が迸る。ビートボクサーが回避を試みるもほんの僅かアイフェリアの速度が勝り、カナデの幻と共に放たれた拳がビートボクサーを捉え、電撃を浴びせる。
「あああああぁぁぁ!!」
 身体は強化されていても、脳や神経まで強化されているわけではない。許容を超える電流を流し込まれたビートボクサーが吹き飛ばされながら意識を手放し、痙攣しながら倒れ伏す。
(元々がドミネーターの支配から逃れるためとはいえ、去ろうとする者を追いかけてまで支配を続けようなど、結局ドミネーターと同じではないですか。昔はともかく今は腐ってしまっているようですね)
『マスター、こちらへの攻撃の意思を確認、注意してください』
 シャンティ・ドール特権階級への憤りを心に呟いたアイフェリアは、カナデの警告に意識を現実へ引き戻す。別のビートボクサーがこちらに狙いを定め、攻撃を仕掛けようとしていた。
「……!?」
 しかし攻撃を放とうとした直前、後方からハルモニアの弾を受ける。直後放たれた凍らせる意思を持ったディスコードは見当違いの場所へ飛び、建造物を凍らせて消えた。
「君の相手は自分が請け負おう。……君達は閉鎖空間に長く居すぎて、世界を知らないと見える」
「それがどうした! 俺達にとって、このフランティアこそが全てだ!」
 柄から光の刃を出現させ斬り付けるアーヴェント、それを機械の腕で受け止めるビートボクサー。二つの力と意思がぶつかり合う。
「ただ縛るだけでは、一時は良くとも長続きはしない。自分らはそれを地上で見てきた。それを今度は君達にも是非、見てもらいたい。やり方を改め、街をより良い方向にしてもらいたいのだ」
「余計なお世話だ!」
『むぅ、ゆーしゃの言葉を聞かぬとは心底愚か者め! 構わぬ、やってしまえ!』
 アウロラの声にそうだな、とアーヴェントが頷く。最終的に心を入れ替えてくれるまでは、少々手荒でも沈黙させる必要があるだろう。
「……行くぞ!」
 鍔迫り合いの状態から距離を離し、光の刃にハルモニアを集める。より強く輝きを増した刃を引きながら踏み込み、同じく踏み込んできたビートボクサーの振り下ろしてきたレンチを避けながら、引いた刃をレンチと繋がっている肩へ突き出す。
「ぐわあああぁぁぁ!!」
 光の刃が接触した箇所からハルモニアが開放され、激しい衝撃を浴びたビートボクサーが肩から先を吹き飛ばされながら自身も大きく後方へ吹き飛ぶ。
『まだあやつは動けるぞ!』
「これで終わりではない。行け、ハルモニアの刃!」
 アーヴェントが命じれば、ハルモニアでできた刃を携えたドローンが数機、ビートボクサーを追いかける。地面を転がりようやく止まったビートボクサーは攻撃に使用していた右腕を失っていたがそこは機械だったため、まだ意識を失っていなかった。
「がっ――」
 だが彼が起き上がるよりも早く、飛来したハルモニアの刃が装甲で覆われた脚を突き刺して地面に縫い付ける。そこは生身だったようでビートボクサーは短い悲鳴を残して動かなくなった。


「くっ……! こいつ、強い!」
 振り下ろしたフックを弾かれたビートボクサーが、目の前の女性――ダイヤモンド・ブレイド――を睨む。既に何度か攻撃を打ち合っていたが、ビートボクサーが肩で息をしているのに対し、ダイヤモンドは涼し気な表情であった。
「折角の力を無駄に使い過ぎだ。貴様らに使われるディーヴァが哀れだな」
「……集合しろ!」
 ダイヤモンドの嘲りをビートボクサーは表面上、無視して仲間に集結を促す。一人での撃破が無理と判断し、集団戦を挑むつもりのようだ。
「付け焼き刃で向かってきたところで、逆に被害を増やすだけだぞ?」
「黙れ! 行くぞ!」
 三人になったビートボクサーが攻撃態勢に入ろうとした矢先、ハルモニアによる爆音と光が彼らの間で炸裂する。
「援護させてもらうよ! こいつで元気出しな!」
 スタングレネードを撃ち込んだ黒瀬 心美が、次は同じハルモニアの応用で熱い演奏を披露し、ダイヤモンドを鼓舞する。
「貴様か……見覚えがある。ふん、余計なお世話を焼く」
 かつて剣を交えた相手と認識したダイヤモンドが、口ではそう言いつつも自身の内に沸き起こる闘志を感じ、拒絶はすることなく流れてくる音楽を受け入れる。
「さて……どいつから斬り倒されたいか?」
 ビートボクサーらからの返答はなく、変わりに燃やす意思を持ったディスコードが撃ち込まれてきた。それらを難なく避け、手近なビートボクサーの武器を持っている方の肩を一刀のもとに斬り捨てる。そこで止まらず、背後から攻撃しようとしてきた別のビートボクサーの脇を抜け、ガラ空きの背中に突きを放って脚パーツを胴体から切り離し無力化させる。
「く、来るなぁあ!!」
 一瞬にして二人を失い、この場での最後の一名となったビートボクサーが叫びながら迫るが、彼にはもはや周囲が見えていない。
「脇がお留守だよ、ってね!」
 横から滑り込むように入ってきた心美の薙ぎ払いをまともに浴び、次いで生じたハルモニアの小爆発によって小刻みに震えたビートボクサーが力尽き、地面に伏せる。
「……やっぱりアンタは強いね。敵を倒すことに、躊躇いがない」
「戦場での迷いは死に繋がる。……支援、感謝する」
 心美の賞賛に表情を変えずに応えたダイヤモンドの背後で、最初に腕を斬り落としたビートボクサーが動き出そうとするのが見えた。
「「!!」」
 心美が剣を振り上げるのと、ダイヤモンドが振り返り剣を振り下ろすのはほぼ同時。ダイヤモンドを掴もうとした腕は地面に落ち、両腕を失ったビートボクサーに火球が注がれ、炎に包まれたビートボクサーが黒焦げになって今度こそ完全に沈黙した。


『ダイヤモンドセンパイ、お久しぶり。相変わらず孤高貫いているみたいだね』
「…………」
 ペルセフォネ・プライズの声に、ダイヤモンドは声を返さない。ただ別葉・ペアーズに向ける険しい眼差しが、彼女への感情を僅かに示していた。
『怖い顔しないで。僕としては見てて楽しいから、続けて欲しいなって思ってるから安心してほしいの』
「ああ、うちのディーヴァがいろいろ言ってごめんね、ダイヤモンド・ブレイド。これでも同じ目標を向いてるのは事実だから。
 気は向かないかもしれにけれど、共闘してくれるとありがたいよ」
 このままだとうっかり斬られかねない気配を察して別葉が口を挟む。とりあえず殺気は消してくれたようだが、立ち去る最後まで言葉を発することはなかった。
『行っちゃった。ま、当然か』
「……すっごく斬られそうになったから、せめて言葉は選んでほしいかな……と。こっちにも集まってきたか」
 複数の音が徐々に近付いてくる。このまま待っていれば囲まれてしまうだろう。
「囲まれたら大変だから、その前にね。ペル、お願い」
 別葉の要請に応じ、光の刃を展開する大剣の出力が強化される。別葉が地面を蹴って音のひとつへと駆け出す。
「いたぞ! こっちだ――!?」
 別葉の姿を認めたビートボクサーの顔が、驚きに歪む。数秒前まで遠くに見えていたはずの少女が、いまや剣を振り下ろせばやすやすと斬り落とせるだけの距離に居るのが分かったからだ。
「おやすみ」
 一言口にして大剣を振り、ビートボクサーの左腕と左脚を削るように斬り落とす。さらに削り落とした箇所から水を侵入させ凍らせることで、見た目以上の損害を与えることに成功する。
「これでよし、と。後でいろいろお話、聞く必要があるだろうからね」
『お話、ねぇ。人間が人間を支配している以上いずれ勝手に瓦解すると思うのに、なんだかもったいない』
 ペルセフォネの惜しむ声が聞こえてくる。ここで介入せずとも、フランティアはいずれ相互監視社会が崩壊するだろうとペルセフォネは思っていた。
「ま、助ける、って決めたわけだし」
『そうだね。決まっちゃったならその最期は、見届けるほかないよね』
 二人がそんな会話を交わしている間に、別方向から複数の音が近付いてきた。もちろんその場に留まる愚は犯さず、別葉は集めたハルモニアを無軌道に発射し、攻撃しつつ自分の居所を知らせないように戦う。


 中心部でのライブ対決に決着がつくまでの間、強化されたビートボクサーたちを相手に、リベレーターたちは奮戦した――。
ページの先頭に戻る