オギャリ・フロム・ストリート
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リアクション
ドミネーターのマーチ
「進め~、進め~、我ら、無敵の、ドミネーター♪」
野太い声を荒れ果てたストリートに響かせながら、ドミネーターの部隊が進軍していく。
先頭には、多脚の歩行戦車が横一列に並んでいた。円形の車体の上には回転するターレットがあり、外周を耐ハルモニア処理を施した分厚い装甲板(ブースアーマー)が壁のように守っている。その隙間からは、大型のディスコードキャノンの砲身が突き出ていた。
歩行戦車列の後ろには、きっちりと足並みを揃えたドミネーター兵士たちの隊列が続いている。たまにステップを踏んでポーズをとったりしているが、まあ、だいたい、揃って踊りながら行進している。
隊列の最後尾には、ひときわ大きなヴィークルブースがあった。そのステージ中央では、ダイヤモンド・ブレイドが、床に突き立てた大剣の柄に両手を載せ、直立不動で立っていた。
彼女の名と同じホワイトダイヤモンドに輝く髪はボリュームを残して後ろ手に束ねられ、やや眦(まなじり)の下がった蠱惑的な瞳はしっかりと前方にむけられている。額には、胸元で輝くソウルドロップと同じダイヤモンドが輝いていた。痩身をわずかな衣だけでつつみ、手脚には白銀のプロテクターを装着している。二枚合わせの白銀のマントは、襞(ひだ)ごとに裾がパイプ状に口を開け、シャラシャラという光砂のぶつかり合うような音を終始たてていた。
「リズムを合わせて進め、者共よ! リベレーター共を排除し、民に粛々と己が責務を果たすための調律を行うのだ!」
カンと剣先で床を打ち鳴らし、ダイヤモンド・ブレイドが凜とした声で兵士たちを鼓舞した。
「イエッサー! 高貴なる御命令の遂行を!」
兵士たちが唱和し、朽ちたアスファルトを踏み鳴らしながら行進していく。その軍靴のリズムは、ゆっくりと、だが確実にウェストレヴンにむかって響いていった。
★ ★ ★
「まるでパレードだね。凄い数だよ」
界塚 ツカサが、呆れたようにつぶやいた。ショートカットの丸みを帯びた頭が、黒いセーラーの白襟に沈み、黄色いスカーフタイが少し跳ね上がった。黄色いミニスカートから惜しげもなくのびた脚を片膝ついて身を屈めている。白いロングブーツ上の黒いストッキングを穿いた膝の上に黒い長手袋(アームロング)を填めた手を乗せた姿勢で、ディーヴァセンサーによる索敵を行っていたのだ。
ウェストレヴンにこの部隊が到着したら、味方は圧倒的不利に陥るだろう。
「先頭は歩行戦車、その後にドミネーター兵士たちがずらずらと続いて、間にも何台か歩行戦車がいるね。一番後ろに、でっかいのがいるけど、あれに指揮官が乗っているのかな?」
「情報では、ダイヤモンド・ブレイドというディーヴァが、指揮官としているはずです。それにしても、歩行戦車……特に、あのディスコード砲はやっかいですね。威力も射程もかなりありそうですから。あれを放置したら、シティで戦う仲間たちに多大な被害が出てしまいます。なんとしても、ここで排除しましょう。このシティを開放すれば後一つなんですから。ここで負けてられませんよ!」
アイフェリア・エーフェルトが、活を入れなおす。その言葉に、界塚ツカサがうなずいた。
「とりあえず、頭を叩き潰すのが一番だね。ペル、ユニゾンだよ!」
そう言うと、別葉・ペアーズが、短いスティック状のレイ・エッジを前方へ突き出した。黒いハーフタンクトップにショートパンツ、黒のニーソックスという軽装の上から、ゆったりとした緑のフードつきジャケットを羽織っている。ラッパのように広がった袖口は、手に持ったレイ・エッジを半分ほど隠してしまっていた。
「はいなの」
黒い半透明のボディタイツの上にクロスラインデザインのジャケットと赤いショートパンツにサイハイブーツ、さらにその上にロングコートを纏った艶っぽい出で立ちのペルセフォネ・プライズが、レイ・エッジの先端にそっと指先を触れる。その姿が光につつまれ、柄頭に輝く灰青色(イーグルアイ)のソウルドロップとなる。
別葉・ペアーズが軽く手首を振ると、レイ・エッジからのびた光のブレードがヒュンヒュンと風を切った。
「よっし!」
いったんブレードを収納したレイ・エッジを腰に装着すると、別葉・ペアーズが満足そうに言った。さっそく、出発しようと動きだす。
「待て、攻撃は歩調を合わせた方がいい。俺と彼女も、同行させてもらおう」
ロイ・アルバートが、別葉・ペアーズに申し出た。それぞれが勝手に攻撃したのでは、いつ敵につけ込まれるかも分からない。なるべく歩調を合わせて攻撃するのがベストだろう。
「おい、涼」
ロイ・アルバートが、ぼけっとしている相沢 涼をつついた。
「えっ!?」
誰と一緒にいくのかと周囲を見回していた相沢涼が、自分のことかと自身を指さした。
白を基調としたワンピースにサイハイブーツ、ショートケープに二本の領巾を下げた姿は、確かに彼女――女の子そのものかも知れないが……。
「えっと、ユニゾン……」
急かされて、相沢涼が右手に持ったユニゾンブレードを水平に構える。一瞬、モニタの映像が乱れるかのようにロイ・アルバートの輪郭が乱れたかと思うと、その姿が消え、替わりにユニゾンブレードが光り輝き、柄頭に翠色のソウルドロップが現れた。
「とりあえず、今は目の前の敵をなんとかすることが先……なの?」
よく分かんないという顔で、リーニャ・クラフレットが、誰にともなく訊ねた。
「ああ。とりあえずの目的は、敵の無力化だ。殺すのは本望じゃないしな」
ミーニャ・クラフレットが答える。
「じゃ、私たちも、奇襲に参加するよ!」
リーニャ・クラフレットが手を挙げて叫んだ。
「急ぐよ!」
そう言うと、別葉・ペアーズはビルの中へ飛び込んでいった。屋上伝いに移動して、敵の死角から回り込もうというのだ。その後に、相沢涼が続く。紫紺のPコートを着たミーニャ・クラフレットも、エポーレットつきの白いハーフマントを靡かせてその後に続いた。
「待ってー」
リーニャ・クラフレットが、チューブエクステンションで身体強化をし、慌ててその後を追っていった。
★ ★ ★
「洗脳の解除の邪魔はさせないわ。平平、こちらもユニゾンいくよ!」
黄色いバックレスドレスに、パニエで膨らませた白いミニスカートから白のサイハイブーツを履いた足を覗かせた弥久 風花が、白いつけ袖(デタッチドスレーブ)を填めた手に持ったユニゾンブレードを高々と空に突きあげる。
「応でござる」
何処かからシュタッと現れた忍者装束の平 平平が、謎の風に赤いマフラーを靡かせながら弥久風花の前に跪いた。その姿が煙と共に霞んで消えると同時に、ユニゾンブレードの柄頭にソウルドロップが現れ、刀身が朧に光り輝き始めた。
「それじゃ、こっちは正面突破といきましょうか」
弥久風花たちは、ドミネーターたちがやってくるストリートへと移動していった。


