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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】大幕・葦原華乱舞!

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【陰陽アイドル大戦】大幕・葦原華乱舞!

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■天津神宮での混戦――守る、ということ――(1)

 『夜刀』の首魁、真蛇の身体を乗っ取った最強の穢ノ神輝夜は、完全な復活を果たすため天津神宮にある反魂香を狙い、『夜刀』の構成員を連れて襲い掛かってきた。

 救援要請を受け、アイドルたちが天津神宮へと向かう。敵は万全ではなく、結界を通ることもままならないほどに弱っており、一度は勝利したことのあるアイドルたちが駆けつければ、結界も『反魂香』も護り切れるはず。
 ――そんな天津神宮側の思惑は、予想外の事態により早々に裏切られることとなった。

「……あぁもう!」
 苛立った声を上げた輝夜――外見は真蛇の姿――が、自身の侵入を拒み続ける結界に攻撃を加える。真蛇に従っていた『夜刀』の陰陽師たちも加勢するが、あと少しのところで持ちこたえていた。
「複数の接近する気配を確認。おそらく例の舞芸者集団と思われます」
 陰陽師の一人が告げた内容に、輝夜は不快感を露わにする。自分を消滅させた者たちがやって来れば、力の弱まった今では簡単に企みを阻止されてしまうだろう。
(それでも、逃げるなんてありえないし!)
 最強の穢ノ神としてのプライドか、それともただ純粋に母親と会うことを願ってのものか、ともかく輝夜はこの場から離脱する選択肢を投げ捨て、再度攻撃を加えるべく掌に黒い炎を宿らせる。

『――――!!』

 瞬間、輝夜の目の前の世界がひときわ大きく歪んだ。自分の仲間ではないものの攻撃によって結界が破壊されたのを悟った輝夜が、その攻撃を加えた相手の方へ視線を向け、声を発する。
「誰!?」
「その話しぶり……輝夜ね」
 誰何の声に反応したのは、千夏 水希だった。
「アンタは……」
「久し振り……ってほどでもないか。前に言った通り、力になりに来た」
 結界を破壊するのに用いた太刀からは、力を行使した残滓がなお漂っていた。それを見て、次いで水希を見た輝夜が考え込むように口を閉ざして、やがて水希から視線を外し、結界の破れた門の向こうを見つめ口を開く。
「勝手にすれば? アタシは人間の力なんて借りるつもりないし」
「まぁ、そう言われるかもって思ってたけど。『反魂香』ってのが目当てなんでしょ?」
「何故そのことを――」
 一瞬驚いた表情を見せた輝夜だったが、彼らがおそらくは天津神宮の救援要請を受けてやって来たことを考えれば、それがどういうものかまでは知らなくとも名前くらいは知っているだろう。
「もう結界壊しちゃったし、後戻りはできない。その反魂香ってのがあれば輝夜も真蛇も助かるなら、行ってくるよ。
 あまり真蛇の体を無理させちゃダメよ?」
 一瞬、輝夜へ手を伸ばしかけた水希がその手を途中で引っ込め、代わりに柔らかく微笑んでから、輝夜に先んじて門をくぐり本殿へと向かっていった。
「……何を考えているのかしら」
 呟いた輝夜が思案するも、理解できないわと首を振って考えを打ち消し、門に近付く。抵抗のないのを確認してから、陰陽師たちと共に本殿への道を駆け出していった――。


『結界の範囲を本殿に限定しました。侵入者は結界が破壊されたものと思い込み、こちらへ真っ直ぐ向かっているようです』
 道祖神である石像からの声を聞いた桐山 撫子が、申し訳なさそうに頭を下げて言う。
「ごめんね、こっちの問題で余計な手間をかけさせちゃって。
 みんなで協力して頑張れば、こんな事しなくても輝夜ちゃんを止められたはずなのに」
『……それも人、というものでしょう。彼らがただ悪を以て輝夜に与しているのではないことは分かっています。
 ですが、輝夜は純然たる悪の存在。気をつけなさい……』
 それを最後に、声は聞こえなくなった。代わりにウィンダム・プロミスリングが撫子の元へ駆け寄ってきて、緊張感を含んだ顔で言った。
「一人、向かってきてるわ。輝夜ちゃんのところへは仲間が向かってくれてるから、そっちは安心して」
「うん。……本当はみんな、仲間のはずなんだけどね」
 撫子が漏らした呟きに、ウィンダムは同意の意思を示しつつ、撫子を護るように彼女の前に立ち、近付いてくる気配に備える。
「……一組居たか。今の私に底は無い、邪魔するなら切り捨てるまで」
 ほどなく姿を見せた水希が、躊躇いなくウィンダムと撫子に太刀を向ける。
「輝夜ちゃんを中心とした穢ノ神たちが華乱葦原を消し去ろうとした事、忘れちゃったの!?
 こんなこと言いたくないけど、輝夜ちゃんはあなたたちの善意を踏みにじるかもしれないんだよ?」
「そうかもしれない、というか多分そうする。けれどそれは、本当に輝夜自身がしていることなのか?
 私には輝夜が、そうであるかのように調整されて生まれてきた存在としか思えない。輝夜をそのようにしたのが誰かまではハッキリと分からない、けれどろくでもない奴だってことは分かる」
 太刀を構え、水希が言い放つ。
「だからこれは、そんなろくでもない奴への反旗。悪の棟梁である輝夜を滅ぼしてめでたしめでたし、で終わらせたりしない。どんな方法を用いてでも、必ず輝夜と真蛇を救う」
「衝突は避けられない、って感じね。……撫子、貴方のことは私が護るから」
 ウィンダムも刀を抜き、水希と相対する。
「おいおい、黙って聞いてりゃ物騒だな。アイドル同士で争い合うなんてのは馬鹿らしいだろう?」
 まさに一触即発といった状況の中、高城 仄が怯むことなく平然とした様子で間に割って入る。
(ここからは俺に任せてくれ。口八丁でなんとかやってみるさ。手段は多い方がいいだろう?)
(……分かった)
 視線だけでそのような意思を交わし合った二人が、行動に移る。
「……!」
 水希が仄へ向けて踏み出し、まるで猛獣の如く連続攻撃を繰り出す。これに対し丸腰である仄は致命傷を受けないように避けることしかできず、手足に傷を負っていく。一方の水希も攻撃の度に四肢から鮮血を流し、同じように傷ついていく。
(ここらへんが限界だな……ってか、思ってはいたけど容赦がねぇ。少しでも間違ったら動けなくなるぞ)
 冷や汗をかきつつ、仄が分身を生み出しその後ろに隠れる。水希がその分身ごと仄を瘴気の激流に飲み込ませ、本殿の方角へと吹き飛ばした。
「……ふぅ」
 戦闘を終え、息を吐いた水希の顔は、祟咬であることを考慮してもなお、青白い。既に結界を破壊する際の攻撃でダメージを負っていたところに先程までの戦闘が、かなりの消耗を強いていた。
「ここは喧嘩するところじゃないし、護るべき場所なんだけど……言っても止まらないわよね。そんなになってまでなお立ち続けているんだし」
 それでも戦闘の意思を継続した水希へ、ウィンダムも覚悟を決め、踏み出すその瞬間を待つ――。

(ぐおぉ、メチャクチャいてぇ……。薬がなかったらろくに動けなかったな)
 水希の攻撃で吹き飛ばされた仄が、全身を襲う痛みに耐えながら本殿に辿り着き、入り口を護る陰陽師たちに事の運びを説明する。
「いま、フェスタのアイドルたちが応戦しているが、もしかしたら突破されるかもしれない。そうなればここもヤバくなるはずだ」
 戦闘後の負傷に伴う痛みを表に出さない人当たりの良い表情で語る仄に、陰陽師たちは耳を傾けてくれているようだった。加えて仄の説明中に下の方から衝撃と轟音が複数回響き、激しい戦闘が行われていることが証明された。
「その時は、反魂香を囮にしてでも逃げた方が良い。敵は夜刀、それに穢ノ神……輝夜を名乗っている、生半可な偽物じゃ逆に被害を増やすだけだ。取り返したヒラサカさえ奪われなければ挽回できる」
 仄の言葉を聞き終えた陰陽師の一人が、実に形容し難い複雑な表情で口を開いた。
「事の次第は既に伺っています。誠に申し訳ありませんが、お引き取り願えませんでしょうか」
(……なるほどね。既に手を打ってあった、ってわけか)
 陰陽師の回答を聞いて、納得を得た仄が次の行動を思案する。
(ここで反魂香の入手に失敗した、と即座に知らせたなら、すぐに水希はここまで来るだろう。そうなれば天津神宮の人や建物への被害は免れないだろうし、水希の立場も危うくなる。ただでさえ俺たちは天津神宮に楯突いてるんだからな)
 たぶん陰陽師の対応は、これまでの功績を考慮してのギリギリのラインであると仄は感じ取っていた。これ以上踏み込めばラインを超え、本当にヤバいことになる、そう仄は判断した。
「失礼な真似をしたようだ。アンタらの覚悟は伝わった。俺も、最終防衛線の一員として手伝わせてくれないか」
 そして仄が取った行動は、反魂香入手失敗の事実伝達を行わず、おそらく撫子たちを振り切って向かってくるであろう水希にこれ以上の罪を着せないように振る舞うことであった。
(お節介かもしれないが……脱落者が出るのは誰も望んじゃないからな)
 無言のまま了承した陰陽師たちに礼を言い、仄が本殿を後にした――。


(天ノ産道へは行けん……だけど、私たちは知らないといけない!
 真蛇さんか輝夜さん、どちらかが消滅する以外の解決方法が無いのか、二人も含めてみんなで考えたいんや!)
 『天ノ産道』への立ち入りを禁じられたかりゆし くるる○ ー ○ ○ ○だが、それではいそうですか、と諦める二人ではなかった。祀られている石像の一つの前まで行き、深々と礼をしてからくるるが話し始める。
「おっひさしぶりやんね! 塞ノ門ん時はありがとう! 協力んおかげでなんとかなったでぇ!
 ……ほんで、今回はもひとつ解決したいことがあって来たんや。それは俗に言われとる、『太古の大戦』についてや。まだ終わっとらんのやろ、興味があったら出て来てや」
 くるるの呼びかけに、現れる姿も声も無い。しかしどことなくひんやりとした空気が流れてきたのを、二人は逃さなかった。
「出て来てくれて嬉しいなぁ! まずは私から、感謝の気持ちを言わせてほしい。
 あなたらが葦原を、そしてそこに生きる者を守って来たのは知っとる。その為に、帝さんはじめ自らを人の身にしてまで助けに来てくれた神さん達がおるのも知っとる。
 あなたらが私たちを鍛えてくれんかったら、今回のこともなんともならんかったと思う。あなたらの協力あってこそ、葦原に生きるものの意思を慮ってくれたからこそ、今の葦原はあると思う。
 ほんに、ありがとう……!」
 くるるがもう一度深々と礼をして、頭を上げて話を再開する。
「今回、その上でみっつ、聴きたいことがあるんよ。
 ひとつ、天津神宮で戦うとる人達の意思について。
 ふたつ、黄泉への行き方について。
 みっつ、神話の真実・黄泉の軍勢について。
 神様頼みで全部お任せなんてことはせん、協力して欲しいんや」
 くるるの問いかけに、しかし答える声は無い。代わりに〇が進み出、言葉を紡ぐ。
「私達は知らないことだらけッス。私達が知っているのは母親に会いたいという望みを持っている神様が居るということ、その為には黄泉に行く必要があるということだけ。情報が不足しているからこそ、私達はバラバラに考え、バラバラに行動してしまっている。それが今天津神宮で争いが起きてしまっている要因ッス。
 輝夜さんが母親に会ってそれで何もかも解決するのなら、会わせてあげればいいッス。でもきっとそれは取り返しのつかないことになるからダメって話っぽいッスけど、取り返しのつかないことなのかどうかの判断もつけられない。一つの方法でダメなら、じゃあ別の方法なら黄泉に行くことができるんじゃないか。それを考えるにも情報が足りない。
 そもそも、黄泉の軍勢と天津神とが争ってる理由ってのも分からないッス。こっちが正しい、あっちは滅ぼすべき存在、そう単純な話ってわけでも無いんじゃないッスか? 輝夜さんは本当に滅ぼすべき存在なのか、もしそうじゃないなら滅ぼさなくてもいいことにはならないッスか? 私は、炎の冠さんの最期の言葉を人伝に聞いたッスけど、まったく分かり合えないなんてないって思うッス。折り合う方法は私達にも分からないッスけど……何か方法があるはずッス。
 皆さんは……どうしたいッス?」
 それでも、答える声は無い。長い、長い沈黙の後、ようやく声のようなものが二人の頭に響いてくる。

『今ここで、我々があなた方に回答を行うことはできません。
 ひとつだけ……どうしたいか、というのを叶える力を持っているのは、皆さんの方なのです』
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