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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】大幕・葦原華乱舞!

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【陰陽アイドル大戦】大幕・葦原華乱舞!

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■御前披露~樹京復興へ、願いを込めて~(1)

 樹ノ国の帝、ミヤビの名の下、開催の運びとなった御前披露
 樹京の入り口にある大門に作られた特設ステージには、優れた舞芸を一目見ようと大勢の観客が集まりつつあった――。

(みんな、復興のことで頭が一杯のはず。それでもこうしてボクたちの芸を見に来てくれている)
 ステージにミヤビ自らが立ち、始まりの挨拶を述べている中、出番を待っていた界塚 ツカサが観客席に視線を向ける。相次ぐ災難に見舞われた彼らに、しかしこの場では憂いの表情は見られない。皆、これから始まるステージを心待ちにしているようだった。
「復興に一番大切なのは、樹京に住まう人々の心。……今日は僕たちの舞芸で、皆さんの心を光で満たしましょう」
 隣で同じく出番を待っていた加賀 ノイの声に、ツカサがコクリ、と確かに頷く。直後、ミヤビの挨拶が終わり二人の出番が告げられる。
「行くよ、ノイ」
「はい!」
 短いやり取りを交わし、二人がステージに上がる。広げられた天幕が辺り一帯の風景を光満ちた空へと変化させ、ノイの広げた扇から散る光の粒が、流れる水のようにステージを染めていく。そしてその中を、鳴子を奏でたノイが舞う。手の動きに合わせ蛍火のような仄かな光がポッ、と生まれ、彼女自身が蛍であるかのように水の上を漂いゆく。『夏』を強く感じさせる芸に、観客は深く魅入り、それぞれの夏の思い出に浸っていった。

 季節は巡り、小さな炎がポツリ、と灯され、ゆらゆらと舞い落ちる。紅く色付いた葉が落ちるその中を、落ち着いたテンポでツカサが舞う。鳴子を持つ手も身体の上から下へと移動させ、落ち葉がそっと音を奏でているように魅せる。
「あー、焼き芋食いたくなってきた」
「お前、この期に及んでそれかよ……」

 さらに季節は巡り、ステージには雪が降る。それはノイの紙吹雪によるものだが、これまで夏、秋と季節を感じてきた観客には、寒空の下こんこんと降り積もる雪に思えていた。
 そしてその中を舞うツカサも、さらにゆっくりとした動きとなっていた。まるで雪の中、止まってしまうようでありながらしかし、ツカサは止まらない。――季節は巡るものだから。
(災厄はあったけれど、樹京は復興する。冬が終わったら春が来るように)
 カラリ、と頭上で鳴る鳴子が、祭りのように陽気な囃子を奏で始める。音楽に合わせツカサは見るものの幸せを願うように躍動的に舞い、指先や足元から伸びる光の軌跡が、観客の視線を掴んで離さない。
(色々な事が起きても、季節はまた巡ります。巡った先に希望が満ちている、そう感じてくれたらいいですね)
 ツカサの奏でる鳴子に合わせ、ノイも扇をヒラヒラと蝶のように手繰り、舞う。扇から散る光の粒は桜色に、ツカサの生む光の軌跡に沿わせるように落とせば、桜の枝と花弁へと変わる。
(皆も、楽しんでくれてるかな?)
 心の不安を表情には出さず、観客の方へと視線を向ければ、そんな思いが杞憂であったとすぐに悟る。
「そうだ、春は絶対に来る!」
 そう口にする観客の表情は、二人が望んでいたように、希望に満ちていた。
「……よかった」
 そしてツカサの顔にもまた、彼らと同じ笑顔が生まれていた――。

 曲の終わりにカンッ! と鳴子が強く鳴らされ、ツカサとノイが観客へ向けてお辞儀をすれば、盛大な拍手と歓声が生まれた。
 それらはステージに取り付けられ、樹京を映し出していた朔ノ鏡の力となり、鏡の中の樹京が修復されていく。
「今のでかなり、進んだんじゃないか?」
 草一の声に、ミヤビがはい、と頷いた。確かによく見れば、鏡の中の樹京は実際の樹京に比べ、オンバシラや周りの建物が修復されていた。
「この調子で進めば、樹京の完全修復も出来るかもしれません。……ふぇすた座の皆さんには、感謝しなくてはいけませんね」
 そう口にしたミヤビを見て、草一がふふ、と笑う。
「何がおかしいのですか?」
「いや、最初に会った時に比べて、素直になったな、って」
 草一に指摘されたミヤビの顔に、朱が差す。
「そ、そんなんじゃありません。私はただ彼らを優れた舞芸者として認めただけです」
 プイ、とそっぽを向いてしまうミヤビを見て、草一は笑みをさらに深くするのであった。


「見ていてくださいね、ミヤビさん。これが私なりの復興へのエールです!」
 ステージを見守るミヤビに挨拶をして、八重崎 サクラが舞芸の準備を始める。符の力で喚び出した舞芸者に高さ10メートルの梯子を2本用意させ、さらに梯子乗りに造詣の深い舞神に協力をお願いする。
「それでは、よろしくお願いしますね。……では、いきますっ!」
 2本の梯子を二人ずつ支える中、サクラと舞神が舞芸開始と共に登り始める。命綱は無く、もし落ちれば怪我は免れない状況でありながら、梯子から身を乗り出しポーズを決める二人に恐れた様子は無い。
「ハイッ!」
 梯子に足だけをかけ、逆さまの格好で両手を広げアピールするサクラへ、観客はおぉ、と驚きの声を漏らし盛大な拍手を送る。舞神もサクラの動きに合わせ芸を披露することで、一人で行うよりもより魅力的で、躍動感溢れる舞芸となっていた。
「それっ!」
 そして頂上に近付くにつれ、芸もより高度なものへと変じていく。縦の棒に両足を絡め横に身体を伸ばした後、頂上に辿り着くとそこで倒立を行い、その格好のまま腕の力だけで飛び上がり、水平方向に回転してしっかりと棒を掴めば、それを支える舞芸者もまた器用にバランスを取ってサクラを落とさないように振る舞い、観客からまたも盛大な拍手が生まれた。
「ここ一番の大技、いっくよーっ! せーのっ!」
 最後に披露する技として、サクラが天辺に立ち、向かいの梯子で同じように立った舞神と呼吸を合わせていく。そして一息の後、身体をバネのように伸ばして飛び上がり、サクラの乗っていた梯子に舞神が、舞神の乗っていた梯子にサクラが飛び移る。一際大きな歓声が漏れた直後、手足を縦の棒に引っ掛け、二人が勢い良く下っていく。あまりの速度に一瞬観客からは悲鳴が上がるが、次の瞬間前転を決めながら綺麗に着地した二人が確認できた途端、盛り上がりは最高潮に達した。
「どうも、ありがとうございましたー!」
 沸き起こる拍手と歓声に応えたサクラが、一緒に芸をしてくれた舞神に一礼し、舞神が姿を消したのを確認して梯子を支えてくれた舞芸者と共にステージ袖へと引き上げていく――。


(……今まで多くの事件が、それも立て続けに起きました。きっとここに居る皆さんも、少なからず疲弊しているでしょう。
 それに疲弊しているのは、皆さんだけではありません)
 樹京の現状を憂いた筒見内 小明の視線に映ったのは、犬や猫などの動物たち。ここに居るのはこれからの芸のために集められたものたちであり、それなりに懐いてくれているが、町の子たちはきっとそうではないだろう。物陰にうずくまり、弱ってしまっている子も居るだろう。
(そんな子たちにも、笑顔を取り戻せるように。楽しい気持ちになってもらえるように、精一杯頑張ります)
 ぐっ、と拳を握って気合を入れた小明がステージに上がり、穏やかに御詠歌を詠みながら、ぽかぽかと晴れやかな調子の舞を舞う。

 華やぐ桜花舞い踊る、香り揺蕩う散歩道

 桜の枝が舞に華を添え、ふんわりと香る桜の香りが、観客に陽気で暖かな気持ちを呼び起こさせる。

 日向臨みし蒼い空、皆まで集う囃子の音

 符の力で喚び出した舞芸者に祭り囃子を奏でてもらい、その中を小明が、疲れて縮こまってしまっているものたちを呼び起こし、一緒に舞い踊ってもらえるように心を込めて舞う。

 舞台の上は誰しもと、諸人昇る春の段

 すると一匹、二匹と、ステージで舞い踊る小明と動物たちに惹かれて町の動物たちがやって来た。彼らは最初こそおっかなびっくりな様子だったが、ステージに上がると少しずつ、仲間たちとじゃれ合ったり転がったりして思い思いに楽しみ始める。
「さあ、皆さんもご一緒にどうぞ」
 小明が観客にも一緒に舞い踊ってくれるように促せば、一番にステージに立ったのはなんと、ミヤビだった。
「私が行けば、観客も行かざるを得ませんでしょう? ……まぁそれもありますが、一緒に踊りたいと思ったのです」
 少し恥ずかしそうに真意を告げたミヤビへ、最初は驚いていた小明も笑顔になって、そして二人で舞い始める。こうなれば観客も背中を押されるようにしてステージへ向かい、思い思いに舞い、楽しみ始めたのであった――。
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