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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

羅城門ウォーヘッド・ライブ!

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羅城門ウォーヘッド・ライブ!

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■vs毛狩獅子女



 髪は女の命。そう一般に認識されるほど女性にとって髪は大切なものであることが多い。
色や長さ、髪型などのアレンジの多さもその言葉の重さを物語っている。

(ソレをムリヤリ奪う毛狩醜女たちは女の敵よ。
その上、呪いでしばらく髪が生えないようにしてしまうなんて……女性として許し難いわ)

 そう心で呟くのはノエル・アドラスティアだった。
ノエルは加宮 深冬と共に毛狩醜女たちへ空中から攻撃を仕掛けようと考えていた。
毛狩女たちに飛行能力がないことを考えれば、空からの遠距離攻撃は有効と思われた。

 とはいえ、その成功率は既に戦いが始まっているかいないかが重要でもあった。
始まっていなければ場合によっては一方的に制圧するということも不可能ではなかったが、毛狩醜女たちはすでにあちらこちらとばらばらに動いている。
これでは一部分は制圧できても、全てを制圧するのは無理があるだろう。

 そうでなくても戦っているのは自分たちと同じように撮影のためにここに呼ばれた仲間なのだ。
毛狩醜女たちの動きなどを考えつつ、ノエルと深冬はどうしたらいいかを話し合った。


「曲がりなりにも女性だったら……髪の毛は洒落にならない位分かってますね?」

 毛狩醜女と対峙しながら八重崎 サクラが言う。

「さあ……どうですか? 抜けるものなら抜きに来てみなさいなっ!」

 サクラがハイジャンプやアイシクルターンを使い、髪を見せつけ
振り乱すようにスピンする。
 毛狩醜女たちの意識を髪へ向けさせれば、ある程度の行動予測は立てやすくなる。

「その程度で私に触れると思わない事ですよっ!」

 大殺陣回しの動きを取り入れた無刀術での迎撃やフェイントを織り交ぜた手刀を叩き込む。

「いつまでも雑魚相手じゃきりが無い……頭を潰すっ!」

 毛狩醜女の数がほどほどに減ったところで、サクラは毛狩獅子女を探すべく、一度前線から引いた。

「忍者の敏捷性と麒麟の機動力、舐めないで!!」

 サクラと入れ替わりに毛狩醜女たちの前に現れたのは麒麟に乗ったノエルと深冬だった。
本来であれば、深冬が字走り花火で毛狩醜女を追い立てる予定だったが、もうその作戦は使えない。
それでも撮影の邪魔にならないように、戦って仲間たちの一助になることは出来る。

 深冬がノエルを乗せたまま麒麟を巧みに操る。
そしてノエルは麒麟の上から陰気:炎妖化での攻撃を行った。
射程は十分、上空の距離を考えても反撃は来ないだろう。
だが毛狩醜女たちはその素早さを活かし、ノエルの攻撃が当たる前にそれらを上手く避けていた。


「どれ、骨のある強い奴はいるのかねぇ」

 どこか悠然とした様子で毛狩醜女たちの戦いを見ていたのは毛狩醜女達を束ねる毛狩獅子女だ。

「追い払うべきは老婆達じゃない。通り魔的に髪を抜く、その心に巣食う闇だ」

 そんな毛狩獅子女の元に麒麟に乗った千夏 水希

「そいつの髪に気安く触んなよ……? オレだって触った事ねーんだぞ……いや、それはどーでもいい話か……」

 火澄 悠の姿だった。

「ふん。どうだかねぇ」

 ゆうるりとした動作で毛狩獅子女が立ち上がる。水希が大きく息を吸う。
互いに何もいうことはなかったが、それが戦闘の合図となった。

 先手を取ったのは毛狩獅子女だった。カツラをぐるぐると回し、水希と悠へ鋭い毛針を撃ち出す。
そこをチャンスとばかりに水希は瘴気を纏う両手で毛針を薙ぎ払い、反撃へと移る。
坤ノ極点での一撃、そして爆発で勝機を得たとばかりに水希が一気に接近する。
そのまま、畳み掛けようとしたが水希が距離を詰めた先に毛狩獅子女はいなかった。

「そんなもんなのかい?」

 余裕ともとれる声が水希の予想していない方角から聞こえた。
心臓が、身体が危険を伝えるも避けきれないことは明白で、自分の髪へと伸ばされた手を水希はスローモーションを見るような気持ちで見ていた。

「言ったろ、触んなってよ」

 そんな水希のピンチを救ったのは悠の放った奔放な風だった。
水希のポニーテールに結われた髪は毛狩獅子女の手を擦り抜けるように風で巻き上げられた。
予想外の出来事に驚くのは今度は毛狩獅子女の方だった。
空を掴む手に悔しさを滲ませつつも、どこか楽しそうににやりと笑う。
そんな笑みを横目で見ながら水希は後ろに飛び、毛狩獅子女と距離を取ることで危機を脱した。

 毛狩獅子女と水希、悠たちが戦っている場所へサクラもまた向かっていた。
いや、向かっているのはサクラだけではない。事に気付いた毛狩醜女たちもまたそこへ向かっているようだった。

「うぇぇーーーい!」

 その時、上空の飛翔宝船から降り立つ、一つの影があった。

「ここからは、醜い醜い残虐外道なショーの始まりだ……」

 降り立って早々、藤原 陽は入念に瘴気を喰らった。

「死神も仏も真っ青にして逃げ出す!恐怖の代名詞!!そう、このオレの名は!
ふ・じ・わ・ら・よ・う!これからてめぇらの命を喰らい尽くす名前だ。ちゃんと覚えとけよ!
死にてぇ奴からかかって来いよォ!」

 殺意漲る陽の様子に毛狩醜女たちはたじろいだ。
陽の方は毛狩醜女たちを全滅させるか自分が死ぬかぐらいの心持ちで来たのだが、元より毛狩醜女たちは戦いたいのではなく、毛を抜くのが好きなのだ。
死にたいやつから、と言われても死にたいわけではないので、彼の剥き出しの殺気に怖じてしまうのは至極当たり前の話だった。

 その上で毛狩醜女たちが毛を抜く相手というのは誰でもいいわけではない。
個々に好みがあるだろうが、特に髪のアピールなどを考えていなかった陽の髪を抜こうとする毛狩醜女は一人もいなかった。
仮にいたとしても命を賭けてまで抜きに行ったかはわからない。

 張りつめて冷え切った空気と、陽の殺気におののいた毛狩醜女たちは一人また一人とその素早さを活かして、その場から離脱したのだった。


 サクラが毛狩獅子女のいる場所に辿り着いた時、毛狩獅子女は水希と戦っている最中だった。
先ほど、蜘蛛の子を散らすようにばらばらに去った毛狩醜女たちは悠と戦っているようだ。

「相手としては悪くなかったが、ここまでだな」

 サクラの到着を悟った毛狩獅子女が高らかに指笛を鳴らすと、悠と戦っていた毛狩醜女たちが距離を空ける。
これ以上の戦いは不利だと気付いたのだろう。水希からの攻撃を何度か受けたのか毛狩獅子女に疲労の様子が見える。
それは水希も同じだったが、これ以上敵が増えれば敗北こそあれ勝利は望めないと考えたのかもしれない。

 その場にいた毛狩獅子女は毛狩醜女たちとともにその場から撤退した。
水希は追おうとしたが疲労が足に溜まっていたのかぐらりと体制を崩し、それを悠に支えられ、結果として追うことは叶わなかった。

「別に髪くらい、あんたなら触ってもいいけどな?」

 慌てて悠から身体を離しつつ、水希は毛狩獅子女と戦う前に悠が言っていたことを思い出し、ぽそりとそう告げたのだった。



「とりあえず……しばらくは大人しくしてなさいな」

 退散する毛狩獅子女と毛狩醜女たちとすれ違いざま、サクラはそうとだけ言った。

「ちょっと戦い足りない気もするけど、今日のところはこれくらいにしとくよ」

 あくまでも、最後まで強気に毛狩獅子女は言った。
そのまま、サクラは何もせずに毛狩獅子女たちが何処かへと向かうのを止めなかった。
口では強気だったが身体へのダメージを考えるに当分は大人しくせざるをえないだろう。
今回の目的は懲らしめること、撮影を成功させることであったため、サクラも深追いすることはしなかったのだ。


 指笛は毛狩獅子女のいた場所から少し離れたところでノエルたちと戦っていた毛狩醜女たちにも聞こえていた。
退散の様子を見せる毛狩醜女達にノエルが一つの提案を持ちかけた。

「ねえ、ワタシから一つ提案があるのだケド。
あなたたちの問題は、誰彼構わずに髪の毛を毟り取ってしまうコト。
逆を言えば、毟り取っても問題無い相手から髪の毛を奪うなら、大丈夫よね?
だから毛狩醜女たち、コレからはワタシたちふぇすた座に雇われなさい!
ワタシたちが髪を毟り取ってイイ相手をキチンと選んで襲わせてあげるから」

 ノエルの提案は悪いものではなかった。だが

「アタシ達が毛を狩るのは趣味だ。誰かに指図されてやってるんじゃあない。
誰の毛を狩るかはアタシらが決めるよ!」

 1人の毛狩醜女の言葉に他の毛狩醜女たちが同意するように頷き、その場から撤退していく。


 こうして多少の犠牲は出たものの、撮影での毛狩醜女や毛狩獅子女のトラブルは0で終わった。
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