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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ふぇすた座、こけら落とし!

リアクション公開中!
ふぇすた座、こけら落とし!

リアクション

【8:エピローグ】


 ぼっち座との対決はふぇすた座の勝利で決着がつき、公演権は守られることになった。
「一時はどうなる事かと思ったよ……」
 光凛は溜息を吐き出したが、その表情は明るく、共に舞台に上がった生徒たちも笑顔で頷きあい、初公演成功の興奮と安堵、そして達成感。そんな様々な感情がじんわりと沁みるように胸に広がっていた。
 生徒たちを暖かな心地にさせていたのは、勝利したから、ということだけではない。勝負に負け、がっくりと肩を落としている自身の取り巻きを引きつれ、でいだらぼっちはどこかばつが悪そうにしながらも「悪かったな」と口を開いた。
「……あんなのは久々だった」
 意外に静かな声で言うのに皆が驚いていると、でいだらぼっちはがしがしと頭をかきながら、ふぇすた座の芸を見る観客たちがとても楽しそうだった、と言って大きく息を吐き出した。芸を磨くことよりも、ただ目立つ事ばかりを考えるようになったこと、芸に溺れて誰かを楽しませることを忘れ、魅せてやっている、と思うようになったこと。
 樹京で鼻つまみ者となった理由が今ははっきりとわかる、とでいだらぼっちが言うのに、千尋がにこっと笑う。
「芸の楽しさ、思い出したのデスね!」
 そう言うと、照れくさかったのかどうか、でいだらぼっちは複雑な顔をしつつも「ああ」と頷き、何かが吹っ切れたような顔をして空を仰いだ。
 そのまま暫く黙ったあと、生徒たちを見下ろした顔はまた、意地悪そうな表情を浮べている。
「だがまぁ、てめぇらの芸はまだまだだ。あんなもんじゃ、樹京じゃ通じねえよ」
「まだ俺たちのことを半端者だっていうのか?」
 その言葉に那智が眉を寄せると、でいだらぼっちはにやにやと笑って「おう。半端者さ」とからかうように応じる。
「てめぇらも……俺も、半端者さ。もう一度、修行のし直しだ。次は……負けねえよ」
 それは、ただ勝負を吹っかけてきた時のようなそれではなく、純粋に舞芸者として負けないという態度に、一同は顔を一瞬見合わせると、でいだらぼっちに向けて笑顔で頷いた。
「こっちだって、負けないよっ!」
 シャーロットの言葉に、でいだらぼっちはにやりとどこか楽しそうに笑って見せた。


 ***


 同じ頃。
 井戸の底にある洞窟の陰陽師の消えた社では、ツカサとノイが豆餅をお供えしているところだった。
 結界の要であるほど重要な場所でありながら井戸が枯れてしまっていたのは、誰にも参られることもなく信仰心が薄れてしまったせいで、神の力が弱まったからかもしれない。
 こうして祈る人が増えれば、また井戸が復活するかもしれない――と、ツカサが祈るのにあわせて、ノイや他の生徒たちも手を合わせた。
「元々水場は悪いものが溜まり易いし、枯れた原因の一端に、陰陽師の影響もあったのかもしれないしね」
 符も祓った事だし、社の古い神が顕在なら復活するでしょう、と水希が言えば、少しほっとしたような空気が流れた。
「ここが復活したら、きっと動物たちも住みやすくなりますよね」
 ツカサが嬉しそうに言い、ノイも頷いて笑みを浮べる。ふぇすた座のこけら落し公演の舞台に立つことは出来なかったが、桜稜郭の人々の役に立てた、という実感は何よりの達成感だった。
「しかし……あの陰陽師、いったい何者だったんでしょうね」
 今回は追い払えはしたものの、陰陽師本体を倒せたわけではないのだ。計画を邪魔されて、このまま引き下がるとは思えない。
「結界を壊すというのはただの手段にすぎない筈だ。であれば目的はもっと他にあるということだ」
 銀河が難しい顔をするのに、駿も難しい顔をし、泰河は眉を寄せて焼け残った符の跡をじっと見やる。
「あいつは……いや、あいつらは、いったい、何をしようとしているんだ?」
 今回の事件は解決したものの、根本的な解決にはなっていない。
 これから先に訪れる「何か」の不穏な予感に、一同はぐっと拳を握り締めた。



  ***


 そこは薄暗い部屋だった。
 蝋燭の薄明かりに照らされただけの、しんとした静謐に包まれたその場所は、その濃い影野中に何か潜んでいるのではないかと疑わせる、ただ人の心をざわつかせるような空気に満ちている。
 そんな中に、二人の人影があった。
 一人は、生徒たちに倒された陰陽師である。彼は、同じく般若面をしている別の陰陽師の前へと深々と土下座していた。どこか怯えているかのような低姿勢で、男は頭をこすり付けんばかりの態度で口を開く。
「申し訳ございません。私の向かいました地に、“穢ノ神”はおわさず……」
「構わん」
 応じる声は、温度もなく端的だった。
「目的のものは手に入った」
 平伏する男に、首魁と思しき般若面はその視線をひな壇の上へと向けた。そこに並べられているのは、数体の木像だ。
 蝋燭の炎に薄く照り出されたその像は、ゆらゆらと禍々しい影をその足元に揺らめかせている。それを眺めながら、般若面の奥で首魁の陰陽師は目を細めた。
「我々の願いが、成就する日は近い」
 その声は低く、深い奈落のような響きをしていた。
 

担当マスター:ヒロイックソングス!運営チーム

担当マスターより
『ヒロイックソングス!』運営チームです。
「ふぇすた座、こけら落とし!」のリアクションをお届けいたします。

スペシャルシナリオは、アクションを投稿しているか、
アクションを投稿していなくても「・アクション投稿しなくても登場を希望」の項目にチェックを入れた場合、基本的にリアクションに登場しています。
基本的にPCは1シーンに登場していますが、シーン分割の関係で数ページに渡って名前がある場合もございますので、リアクションを読み進めてご確認頂ければと思います。

また、称号やマスターからのコメントがある場合、最終ページ下にお知らせが表示されますので、併せてご確認下さい。

今回のリアクションを受け、【芸格】が昇段した方につきましては、
以下の名簿のほか、個別にコメントにてご案内させていただいております。

【今回昇段されたプレイヤー様】
・前座→序ノ口
目黒 銀河(HSM0000031)様
社 狂志郎(HSL0003548)様
春瀬 那智(HSM0000110)様
桐山 撫子(HSM0000170)様
リリィ・エーベルヴァイン(HSM0000255)様
夢宮 恋(HSM0000436)様
日辻 瑶(HSM0000523)様

小石川 涼矢(HSM0000540)様
界塚 ツカサ(HSM0000556)様
ロベリア・バーデン(HSM0000569)様
矢野 音羽(HSL0001194)様
世良 延寿(HSM0001290)様
メストラール・ミシュアル(HSM0001703)様
薄氷 鬼月(HSM0003432)様
筒見内 小明(HSM0005065)様

・序ノ口→二ツ目
橘 樹(HSM0000836)様
サイバネティック 天河(HSM0001045)様
槍沢 兵一郎(HSM0001126)様
天地 和(HSM0001323)様
黒瀬 心美(HSM0001329)様
行坂 貫(HSM0005424)様

・二ツ目→三段目
弥久 風花(HSM0000038)様


担当:逆凪まこと
この度はご参加ありがとうございます
執筆を担当させていただきました逆凪と申します
今回はライブで対決ということで、
通常のライブとは違った色々なステージがあり
バトルもみなさん色々な手段を講じられていて
どのシーンも楽しく描かせていただきました
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