フェイトスター☆ファイトクラブ!
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リアクション
■セブンスフォールブロック 5
「中々どうして……心躍るな」
そして開幕攻撃を逃れ、またひとつ、新たな戦闘が始まろうとしていた。
対峙しているのは堀田 小十郎とエスシュルナ アミスである。
「全身全霊を以て打倒する……修練の成果を、ここに示そう」
「行くぜ小十郎。
最初はお前の力になってやるよ」
そして、小十郎の背後を守るように立っていたのが睡蓮寺 陽介である。
互いに最後まで残れた時は子どもの頃のリベンジを――……。
そんな約束を交わしている小十郎と陽介。自分たちの思う戦いができるまでは助けあって戦うつもりのようだ。
陽介は小十郎が戦いに集中できるように、周りからの不意打ち攻撃を警戒し始めた。
「よろしく頼む。良い戦いにしよう」
「よろしく……
勝ってみせる」
そして、礼儀正しく挨拶をかわし、小十郎とエスシュルナの戦いが幕を開けた。
まず先手をとったのはエスシュルナだ。距離を保ったままヴェントエッジでかまいたちを起こし斬撃を飛ばす。
エスシュルナの戦闘スタイルは力以上に、相手の力量、戦闘思考、クセといった相手の言動、思考を計算した上で勝利に導くものだ。
この斬撃から小十郎の反応や行動を覗っているようだ。
小十郎はそれを【不撓】で己に活を入れ、集中してまずはかわして見せる。そして、その足のまま、エスシュルナまでの間合いを詰めにかかる。
一方のエスシュルナもただでは距離を詰めさせたりはしない。フォルスティードを【ウェポン・スロー】で投擲。
それを移動しながらかわし、小十郎がクライオブギフトで斬りにかかる。
エスシュルナもまた、それを一歩後退して回避。距離を詰め合った状態で、互いに一歩も引かず睨み合っている。
「おっと、それはやらせねぇよ」
すると、陽介がこちらに近づいてきた歌音の姿に気づき、すぐさまフライングブルームで空中へと向かう。
ウィリアムがせっかく身を挺して守ってくれたのだ。歌音もまた行けるところまで行こうと攻撃の機会を窺っていた。
こっそり近づき、人が密集している所に【スカイハイ】を放つつもりであったが、陽介に気づかれてしまったのだ。
陽介は【マナエグザート】で能力を上げた上で、歌音に攻撃をさせまいとシャープエッジタリスを【投擲術】で投げつけ、牽制する。
もちろん、歌音もそれを飛行しながら回避していく。しかし、その隙に陽介に先回りされてしまう。
そしてそのまま陽介が【フレア・バレル】による炎弾を連続で撃ち込む。
「きゃっ」
一弾目はなんとか迂回してかわすも、二弾目が神獣をかすりバランスを崩す。さらには襲い掛かる三弾目はかわすことが出来ず直撃してしまった。
そのまま地面へと歌音は落ちてしまう。先ほどの戦闘の疲れもあり、きっと限界であったのだろう。空から落ちた衝撃で歌音はそのまま気絶してしまった。
そして、睨み合っていた小十郎とエスシュルナもまた、決着が付こうとしていた。
先に動いたのはエスシュルナだ。【アーリーアタック】で次の攻撃につながるように、ヴェントエッジで斬りかかる。
エスシュルナの予想では、先ほどまでの傾向から、小十郎はこれを回避すると踏んでいた。
このかまいたちを回避した瞬間に【ジェムミックス】の衝撃波を放つ。それがエスシュルナの戦略であった。
「くっ……
眼に映れど、眼に残らぬ一撃を……」
しかし、小十郎はあえてそのかまいたちによる斬撃を防がずに受け止める。
「なぜっ」
そしてそのまま【無拍子】で溜めることなく、その刀をエスシュルナの喉元に突きつける。
「降参してもらえるか?」
人は何事も予想して動くもの。それをしっかりと分かっていた小十郎は【無拍子】を大切に予想外のその一瞬に持ち込もうと動いていた。
エスシュルナはごくりと唾を飲みながらも、その目は諦めておらず、反撃への一手を絞り出そうとしている。
「諦めないその意思……見事だ」
小十郎はエスシュルナのその意思を尊重し、再び【無拍子】で斬りかかる。
そして一歩後退したエスシュルナに向けて【イーヴルベイン】を見舞う。
「うっ」
斬撃だけでなく、衝撃波もがエスシュルナを襲い、力尽きてそのまま気絶してしまった。
とはいえ、小十郎も負傷してしまった。それをわずかばかり、ブレス・フェニックスにて回復を図る。
しかし、そんな小十郎たちの息つく暇もまく、新たな戦闘の渦に巻き込まれる。
「はっはっはー!
お前達調子はどうだー?!」
北郷先生が現れたのだ。またも軽いフットワークで殴りかかっては、小十郎たちの攻撃を【フェスタ流護身術】で難なくかわしてみせる。
「これは……厄介ですね」
さらにそこに輝海と心美が突っ込んでくる。
心美のレリクス・ロングソードをかわしながら、輝海はここまで誘導してきたようだ。
「これ以上は体力も温存しときたいしね」
先ほどの戦闘でかなり負傷してしまった輝海。そこに挑んできたのが心美だ。
残りの体力等を考え、敢えて乱戦に持ち込んだようなのだ。
全員が緊張した顔つきで相手の様子を覗っている。たった一人、北郷先生を除いて。
「なんだなんだ!?
乱闘か!!
良いじゃないか!!」
嬉しそうな顔で手足を振り回し、ランダムに攻撃を見舞ってくる。スペースカバディ部の秘技、【コズミックストラグル】だ。
「スペーースカバディ!!」
それを皆一歩後退し、回避ないし防御してみせる。その様子に北郷先生はどこか満足げに頷いている。
そして、先ほどの北郷先生の攻撃を皮切りに自然と戦闘が始まっていった。
まず、近くにいた陽介と輝海が対峙する。
一方の心美は多対一になる戦いは避けると心に決めていた。この乱戦も誰が勝ち抜き方によっては、心美に不利な状況になるかもしれない。
そのまま防御体勢を取り、素直に距離を取ろうとするも……
「さぁさぁ、遠慮することはない!
力を出し切るんだぁああ!」
北郷先生が立ちはだかるのだ。
仕方なく、目の前の小十郎と対峙する。
4人はそれぞれ目下の敵に集中しようとするも、背後を北郷先生にとられるのは何としても避けたい。
そんな思いがちらつき、互いに軽く受け流す状態が続いていた。すると、そこに激しく戦いながら泰河と駿が突っ込んできたのだ。
「泰河……!」
「駿……!」
開幕からずっと戦い続けていた2人は、両者ともボロボロになっていた。
同時に踏み込み、振り切った剣はそれぞれの腹に食い込み、2人は勢いよく正反対の方向へと吹き飛んでいく。
「「く、そっ……」」
そして、互いに睨み合ったままバタリと気絶してしまった。
「桐島、橘、ナイスファイトだ!」
感動したと言わんばかりに北郷先生は嬉しそうにそう言うと、戦闘の邪魔にならないようにか、泰河と駿を抱えて退場していった。
「お前達の健闘を祈る!」
互いに敵同士とは言え、その様子に全員がホッと溜息をつく。
そして、切り替えたかのように再び戦闘が始まった。
まず最初に動いたのは輝海だ。フライングブルームで飛行している陽介に向かって【氷刃乱舞】で無数の氷の刃を放つ。
それを陽介は迂回して回避。しかし、輝海の先ほどの攻撃は誘導であった。スフィリカルブリザードの球体を投げつけ、陽介の近くで発動させる。
「このまま場外に吹っ飛んでくれればラッキーなんだけど」
「ぐあっ」
凍てつく突風と氷柱の刃が陽介を襲い掛かり、フライングブルームから振り落とされそうになる。もはや片手でぶら下がっている状態だ。
けれども、そのフライングブルームの推進力に合わせて体を揺さぶり、勢いよく輝海目がけて飛び降りる。
「ウィザードだって、身体張るときゃ張るんだぜ!」
「っつ……」
かなりの勢いをつけた飛び蹴りを喰らう形になり、輝海の身体は大きく後ろへと吹き飛ばされる。
すかさず陽介は【投擲術】でシャープエッジタリスを投げて牽制しつつ、距離をつめていく。
その間、輝海は【コアチェック】で陽介の弱点を探る。
「小十郎もやる気みてぇなのに、俺が抜ける訳にはいかねぇからな!」
「俺も結構な負けず嫌いの意地っ張りでね」
輝海が陽介の急所を狙って【氷刃乱舞】を、陽介が体勢の崩れた輝海に向かって【フレア・バレル】を同時に放つ。どちらの攻撃が先に当たるのか――……
「くっ」
「うっ」
先に膝をついたのは陽介のであった。先ほど負傷した関節部分付近の傷目がけて攻撃されたようだ。
移動の要となる箇所を攻撃されてしまっては、これ以上動けそうにない。
しかしながら輝海もまた無傷ではなかった。二弾目、三弾目はなんとかかわしたものの、攻撃してすぐの一弾目は流石にかわせなかったようなのだ。
重い身体を引きずり、動きが止まってしまった陽介に【アーリーアタック】で攻撃を仕掛けていく。
動けないままに陽介もまた【投擲術】で牽制がてらシャープエッジタリスを投げつけ、一撃目を失敗させるも、背後に回られルナマリアで負傷しているところに向かって斬りつけられる。
「良い夢を」
「かはっ」
こうして陽介はバタリと倒れ、気絶してしまった。けれども……
「あ、俺も限界かな」
輝海もまた力を出し切り気絶してしまった。こうして輝海と陽介の戦いは相打ちで幕を閉じた。
同じころ、心美と小十郎の戦いも激戦化していた。
引き続き小十郎は先ほどと変わらぬ様子で【不撓】で攻撃に備えて自身に活を入れつつ、【無拍子】で溜めを作らずに斬りかかっていく。
それを心美は【ブロッキング】して防いでいくも、溜めることなく斬りかかって来るので、感覚が掴みにくいのか、徐々に遅れが生じ始める。
「くっ」
その攻防が何回か繰り返され、ついに【ブロッキング】が間に合わず、小十郎の攻撃が心美に入る。
「壁を乗り越えた時……私はまた一歩、前へと進める」
そのまま懐に潜り込み、小十郎は【イーヴルベイン】を見舞う。
「故に……負ける訳にはいかんのだ」
それに対し、心美は【魔術結界】を展開、さらにその後ろにパイクシールドをぐっと構えてその斬撃と追撃に耐え忍ぶ。
「んんっと」
衝撃で後ろに押し出されるも、何とか持ちこたえたようだ。
そこに小十郎が【無拍子】で溜めのない斬撃でトドメを刺しにかかる。
それをパイクシールドで防御……と思いきや、それを受け止めると同時にシールドバッシュで反撃する。
今度は小十郎がそれを一歩後退し、避けて見せる。すかさずクライオブギフトで切り返すも、今度はそれを器用に【ブロッキング】とパイクシールドで防ぎながら心美が攻めに転じる。
防御されたと思った所で時折、パイクシールドによるシールドバッシュが襲い掛かり、今度は小十郎がリズムを崩される。
「くっ」
そして、その攻防が繰り返され、何度目かのシールドバッシュが決まった所で、小十郎のクライオブギフトが大きく弾かれる。
「いくよ」
と、そこに心美が【ジャッジメントハック】で決めにかかる。
いつの間にか押されているうちに小十郎はリングの端の方へと追いやられていたようだ。
心美の【ジャッジメントハック】による峰打ちの衝撃で、そのまま場外へと押し出され、場外アウトとなってしまった。
また、心美たちが熱戦を繰り広げている中、同じように戦闘が行われていた所がある。
ジュレップと雲人だ。雲人は風のようにのらりくらりと巧みに逃げ回っていたのだが、人数も少なくなり、そうもいかなくなったようだ。
まず雲人は【コアチェック】でジュレップの弱点を探っていく。狙いとなるのはやはり、先ほどの負傷箇所だろう。
その隙にジュレップも狙いを定めさせないように常に動きながら、レッドラビットとホワイトラビットで斬りにかかる。
【エクセキューショナーズセンス】で急所を感覚的に心得ながら狙っていくも、雲人はナイトメイルの盾でしっかりとガードしながら、隙をみて巨剣ソウルバンカーを振りかざしてくる。
隙のない雲人の動きをみて、ジュレップは作戦を切り替える。【ベスティアリ】を用いてレッドラビットとホワイトラビットで急所とあえて急所でないところを織り交ぜながら攻撃していく。
防御すべき回数と箇所が増え、雲人の巨剣ソウルバンカーによる反撃の振りが徐々に粗々しくなっていく。
その隙をみてジュレップが【ソードフレア】を見舞う。
「っとと」
それを一歩下がってナイトメイルの盾で防御を試みる。けれども、斬撃と共に爆発が起こり、大事には至らなかったものの、負傷してしまう。
そしてここで畳みかけるかのように負傷した所目がけてジュレップが斬りかかりにくる。
すると、その斬撃に合わせて雲人もまた巨剣ソウルバンカーを振りかざす。金属音が鳴り、互いに一歩後退する。
と、ここで今度は雲人が反撃に出る。ジュレップの足元を掬うように剣を振ったのだ。
もちろん、それをジュレップも飛び越えて回避してみせる。
けれども、それこそが雲人の狙いであった。注意が下に向いた隙に手元を狙い、ジュレップの剣を叩き落す。
「あっ」
すかさずその隙を狙って雲人が【レイジオブビースト】による一撃を見舞う。
「きゃつ」
その強力な一撃が直撃し、衝撃波がくる頃にはジュレップは気絶してしまっていた。
「中々どうして……心躍るな」
そして開幕攻撃を逃れ、またひとつ、新たな戦闘が始まろうとしていた。
対峙しているのは堀田 小十郎とエスシュルナ アミスである。
「全身全霊を以て打倒する……修練の成果を、ここに示そう」
「行くぜ小十郎。
最初はお前の力になってやるよ」
そして、小十郎の背後を守るように立っていたのが睡蓮寺 陽介である。
互いに最後まで残れた時は子どもの頃のリベンジを――……。
そんな約束を交わしている小十郎と陽介。自分たちの思う戦いができるまでは助けあって戦うつもりのようだ。
陽介は小十郎が戦いに集中できるように、周りからの不意打ち攻撃を警戒し始めた。
「よろしく頼む。良い戦いにしよう」
「よろしく……
勝ってみせる」
そして、礼儀正しく挨拶をかわし、小十郎とエスシュルナの戦いが幕を開けた。
まず先手をとったのはエスシュルナだ。距離を保ったままヴェントエッジでかまいたちを起こし斬撃を飛ばす。
エスシュルナの戦闘スタイルは力以上に、相手の力量、戦闘思考、クセといった相手の言動、思考を計算した上で勝利に導くものだ。
この斬撃から小十郎の反応や行動を覗っているようだ。
小十郎はそれを【不撓】で己に活を入れ、集中してまずはかわして見せる。そして、その足のまま、エスシュルナまでの間合いを詰めにかかる。
一方のエスシュルナもただでは距離を詰めさせたりはしない。フォルスティードを【ウェポン・スロー】で投擲。
それを移動しながらかわし、小十郎がクライオブギフトで斬りにかかる。
エスシュルナもまた、それを一歩後退して回避。距離を詰め合った状態で、互いに一歩も引かず睨み合っている。
「おっと、それはやらせねぇよ」
すると、陽介がこちらに近づいてきた歌音の姿に気づき、すぐさまフライングブルームで空中へと向かう。
ウィリアムがせっかく身を挺して守ってくれたのだ。歌音もまた行けるところまで行こうと攻撃の機会を窺っていた。
こっそり近づき、人が密集している所に【スカイハイ】を放つつもりであったが、陽介に気づかれてしまったのだ。
陽介は【マナエグザート】で能力を上げた上で、歌音に攻撃をさせまいとシャープエッジタリスを【投擲術】で投げつけ、牽制する。
もちろん、歌音もそれを飛行しながら回避していく。しかし、その隙に陽介に先回りされてしまう。
そしてそのまま陽介が【フレア・バレル】による炎弾を連続で撃ち込む。
「きゃっ」
一弾目はなんとか迂回してかわすも、二弾目が神獣をかすりバランスを崩す。さらには襲い掛かる三弾目はかわすことが出来ず直撃してしまった。
そのまま地面へと歌音は落ちてしまう。先ほどの戦闘の疲れもあり、きっと限界であったのだろう。空から落ちた衝撃で歌音はそのまま気絶してしまった。
そして、睨み合っていた小十郎とエスシュルナもまた、決着が付こうとしていた。
先に動いたのはエスシュルナだ。【アーリーアタック】で次の攻撃につながるように、ヴェントエッジで斬りかかる。
エスシュルナの予想では、先ほどまでの傾向から、小十郎はこれを回避すると踏んでいた。
このかまいたちを回避した瞬間に【ジェムミックス】の衝撃波を放つ。それがエスシュルナの戦略であった。
「くっ……
眼に映れど、眼に残らぬ一撃を……」
しかし、小十郎はあえてそのかまいたちによる斬撃を防がずに受け止める。
「なぜっ」
そしてそのまま【無拍子】で溜めることなく、その刀をエスシュルナの喉元に突きつける。
「降参してもらえるか?」
人は何事も予想して動くもの。それをしっかりと分かっていた小十郎は【無拍子】を大切に予想外のその一瞬に持ち込もうと動いていた。
エスシュルナはごくりと唾を飲みながらも、その目は諦めておらず、反撃への一手を絞り出そうとしている。
「諦めないその意思……見事だ」
小十郎はエスシュルナのその意思を尊重し、再び【無拍子】で斬りかかる。
そして一歩後退したエスシュルナに向けて【イーヴルベイン】を見舞う。
「うっ」
斬撃だけでなく、衝撃波もがエスシュルナを襲い、力尽きてそのまま気絶してしまった。
とはいえ、小十郎も負傷してしまった。それをわずかばかり、ブレス・フェニックスにて回復を図る。
しかし、そんな小十郎たちの息つく暇もまく、新たな戦闘の渦に巻き込まれる。
「はっはっはー!
お前達調子はどうだー?!」
北郷先生が現れたのだ。またも軽いフットワークで殴りかかっては、小十郎たちの攻撃を【フェスタ流護身術】で難なくかわしてみせる。
「これは……厄介ですね」
さらにそこに輝海と心美が突っ込んでくる。
心美のレリクス・ロングソードをかわしながら、輝海はここまで誘導してきたようだ。
「これ以上は体力も温存しときたいしね」
先ほどの戦闘でかなり負傷してしまった輝海。そこに挑んできたのが心美だ。
残りの体力等を考え、敢えて乱戦に持ち込んだようなのだ。
全員が緊張した顔つきで相手の様子を覗っている。たった一人、北郷先生を除いて。
「なんだなんだ!?
乱闘か!!
良いじゃないか!!」
嬉しそうな顔で手足を振り回し、ランダムに攻撃を見舞ってくる。スペースカバディ部の秘技、【コズミックストラグル】だ。
「スペーースカバディ!!」
それを皆一歩後退し、回避ないし防御してみせる。その様子に北郷先生はどこか満足げに頷いている。
そして、先ほどの北郷先生の攻撃を皮切りに自然と戦闘が始まっていった。
まず、近くにいた陽介と輝海が対峙する。
一方の心美は多対一になる戦いは避けると心に決めていた。この乱戦も誰が勝ち抜き方によっては、心美に不利な状況になるかもしれない。
そのまま防御体勢を取り、素直に距離を取ろうとするも……
「さぁさぁ、遠慮することはない!
力を出し切るんだぁああ!」
北郷先生が立ちはだかるのだ。
仕方なく、目の前の小十郎と対峙する。
4人はそれぞれ目下の敵に集中しようとするも、背後を北郷先生にとられるのは何としても避けたい。
そんな思いがちらつき、互いに軽く受け流す状態が続いていた。すると、そこに激しく戦いながら泰河と駿が突っ込んできたのだ。
「泰河……!」
「駿……!」
開幕からずっと戦い続けていた2人は、両者ともボロボロになっていた。
同時に踏み込み、振り切った剣はそれぞれの腹に食い込み、2人は勢いよく正反対の方向へと吹き飛んでいく。
「「く、そっ……」」
そして、互いに睨み合ったままバタリと気絶してしまった。
「桐島、橘、ナイスファイトだ!」
感動したと言わんばかりに北郷先生は嬉しそうにそう言うと、戦闘の邪魔にならないようにか、泰河と駿を抱えて退場していった。
「お前達の健闘を祈る!」
互いに敵同士とは言え、その様子に全員がホッと溜息をつく。
そして、切り替えたかのように再び戦闘が始まった。
まず最初に動いたのは輝海だ。フライングブルームで飛行している陽介に向かって【氷刃乱舞】で無数の氷の刃を放つ。
それを陽介は迂回して回避。しかし、輝海の先ほどの攻撃は誘導であった。スフィリカルブリザードの球体を投げつけ、陽介の近くで発動させる。
「このまま場外に吹っ飛んでくれればラッキーなんだけど」
「ぐあっ」
凍てつく突風と氷柱の刃が陽介を襲い掛かり、フライングブルームから振り落とされそうになる。もはや片手でぶら下がっている状態だ。
けれども、そのフライングブルームの推進力に合わせて体を揺さぶり、勢いよく輝海目がけて飛び降りる。
「ウィザードだって、身体張るときゃ張るんだぜ!」
「っつ……」
かなりの勢いをつけた飛び蹴りを喰らう形になり、輝海の身体は大きく後ろへと吹き飛ばされる。
すかさず陽介は【投擲術】でシャープエッジタリスを投げて牽制しつつ、距離をつめていく。
その間、輝海は【コアチェック】で陽介の弱点を探る。
「小十郎もやる気みてぇなのに、俺が抜ける訳にはいかねぇからな!」
「俺も結構な負けず嫌いの意地っ張りでね」
輝海が陽介の急所を狙って【氷刃乱舞】を、陽介が体勢の崩れた輝海に向かって【フレア・バレル】を同時に放つ。どちらの攻撃が先に当たるのか――……
「くっ」
「うっ」
先に膝をついたのは陽介のであった。先ほど負傷した関節部分付近の傷目がけて攻撃されたようだ。
移動の要となる箇所を攻撃されてしまっては、これ以上動けそうにない。
しかしながら輝海もまた無傷ではなかった。二弾目、三弾目はなんとかかわしたものの、攻撃してすぐの一弾目は流石にかわせなかったようなのだ。
重い身体を引きずり、動きが止まってしまった陽介に【アーリーアタック】で攻撃を仕掛けていく。
動けないままに陽介もまた【投擲術】で牽制がてらシャープエッジタリスを投げつけ、一撃目を失敗させるも、背後に回られルナマリアで負傷しているところに向かって斬りつけられる。
「良い夢を」
「かはっ」
こうして陽介はバタリと倒れ、気絶してしまった。けれども……
「あ、俺も限界かな」
輝海もまた力を出し切り気絶してしまった。こうして輝海と陽介の戦いは相打ちで幕を閉じた。
同じころ、心美と小十郎の戦いも激戦化していた。
引き続き小十郎は先ほどと変わらぬ様子で【不撓】で攻撃に備えて自身に活を入れつつ、【無拍子】で溜めを作らずに斬りかかっていく。
それを心美は【ブロッキング】して防いでいくも、溜めることなく斬りかかって来るので、感覚が掴みにくいのか、徐々に遅れが生じ始める。
「くっ」
その攻防が何回か繰り返され、ついに【ブロッキング】が間に合わず、小十郎の攻撃が心美に入る。
「壁を乗り越えた時……私はまた一歩、前へと進める」
そのまま懐に潜り込み、小十郎は【イーヴルベイン】を見舞う。
「故に……負ける訳にはいかんのだ」
それに対し、心美は【魔術結界】を展開、さらにその後ろにパイクシールドをぐっと構えてその斬撃と追撃に耐え忍ぶ。
「んんっと」
衝撃で後ろに押し出されるも、何とか持ちこたえたようだ。
そこに小十郎が【無拍子】で溜めのない斬撃でトドメを刺しにかかる。
それをパイクシールドで防御……と思いきや、それを受け止めると同時にシールドバッシュで反撃する。
今度は小十郎がそれを一歩後退し、避けて見せる。すかさずクライオブギフトで切り返すも、今度はそれを器用に【ブロッキング】とパイクシールドで防ぎながら心美が攻めに転じる。
防御されたと思った所で時折、パイクシールドによるシールドバッシュが襲い掛かり、今度は小十郎がリズムを崩される。
「くっ」
そして、その攻防が繰り返され、何度目かのシールドバッシュが決まった所で、小十郎のクライオブギフトが大きく弾かれる。
「いくよ」
と、そこに心美が【ジャッジメントハック】で決めにかかる。
いつの間にか押されているうちに小十郎はリングの端の方へと追いやられていたようだ。
心美の【ジャッジメントハック】による峰打ちの衝撃で、そのまま場外へと押し出され、場外アウトとなってしまった。
また、心美たちが熱戦を繰り広げている中、同じように戦闘が行われていた所がある。
ジュレップと雲人だ。雲人は風のようにのらりくらりと巧みに逃げ回っていたのだが、人数も少なくなり、そうもいかなくなったようだ。
まず雲人は【コアチェック】でジュレップの弱点を探っていく。狙いとなるのはやはり、先ほどの負傷箇所だろう。
その隙にジュレップも狙いを定めさせないように常に動きながら、レッドラビットとホワイトラビットで斬りにかかる。
【エクセキューショナーズセンス】で急所を感覚的に心得ながら狙っていくも、雲人はナイトメイルの盾でしっかりとガードしながら、隙をみて巨剣ソウルバンカーを振りかざしてくる。
隙のない雲人の動きをみて、ジュレップは作戦を切り替える。【ベスティアリ】を用いてレッドラビットとホワイトラビットで急所とあえて急所でないところを織り交ぜながら攻撃していく。
防御すべき回数と箇所が増え、雲人の巨剣ソウルバンカーによる反撃の振りが徐々に粗々しくなっていく。
その隙をみてジュレップが【ソードフレア】を見舞う。
「っとと」
それを一歩下がってナイトメイルの盾で防御を試みる。けれども、斬撃と共に爆発が起こり、大事には至らなかったものの、負傷してしまう。
そしてここで畳みかけるかのように負傷した所目がけてジュレップが斬りかかりにくる。
すると、その斬撃に合わせて雲人もまた巨剣ソウルバンカーを振りかざす。金属音が鳴り、互いに一歩後退する。
と、ここで今度は雲人が反撃に出る。ジュレップの足元を掬うように剣を振ったのだ。
もちろん、それをジュレップも飛び越えて回避してみせる。
けれども、それこそが雲人の狙いであった。注意が下に向いた隙に手元を狙い、ジュレップの剣を叩き落す。
「あっ」
すかさずその隙を狙って雲人が【レイジオブビースト】による一撃を見舞う。
「きゃつ」
その強力な一撃が直撃し、衝撃波がくる頃にはジュレップは気絶してしまっていた。