フェイトスター☆ファイトクラブ!
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■セブンスフォールブロック 3
開幕から周りをなぎ倒し、突き進んでいった彰が目指す先にはアーヴェント・ゾネンウンターガングの姿があった。
「よ、『勇者』アーヴェント。お互い遠慮は抜きだ、楽しもうぜ! フェスタ最強!」
「友とは言え遠慮はしない。さあ、楽しい戦いをしようか?」
まずは彰が【ラン&スラッシュ】で速攻を仕掛ける。それをアーヴェントはソードブレイクことマン・ゴーシュで受け流す。
「接近しての大技……今だけはこー言わせてもらうぜ……ユニコーンギャロップ!」
さらに彰が【レイジオブビースト】を見舞おうとするも、それよりも速く、アーヴェントが受け流した勢いを利用し反対の手に握るヘルト・エアツェールングことエンシェントソードで次の攻撃にかかる。
「攻撃こそ最大の防御」
「くっ……」
ヘルト・エアツェールングを素早く振りかざし、どんどん攻めていく。一方の彰はそれを受け止めることで精一杯で、反撃に乗り出すことが出来ない。
一歩、また一歩と彰が押される形となり、ついにその斧槍ユニコーンが大きく弾かれる。
そして、その瞬間をアーヴェントが見逃すはずがなかった。
「ここだ」
【エクセキューショナーズセンス】で感じた急所めがけてヘルト・エアツェールングで斬りかかる。
「ぐはっ……」
見事に急所に命中したその一撃で一瞬意識が飛びそうになり、気が付いた時には彰は場外へと吹き飛ばされていた。
「ありがとう、良い試合だった」
感謝の心を忘れず、アーヴェントは友の期待に応えるべく、次の敵の元へと向かった。
「腕試しに精一杯やってみようかな」
「私も頑張るから、よろしくね!」
その横では世良 延寿と深山 詩月の戦いが始まっていた。
詩月は【神獣覚醒】で幼生神獣を大きくして飛び乗ると、飛行しながら延寿に【アクア・ダート】による水のダーツで攻撃をしかけていく。
それを移動しながらかわしていく延寿。元より延寿の戦略としては相手に距離を詰めさせないことであった。というのも、延寿も遠距離攻撃を得意とするからだ。
「すごいね。でも、私だって負けないよ!」
ヴェントエッジでかまいたちを引き起こし、飛行する詩月を狙う。
しかし、詩月の防御はかなり力が入っていた。右手には風護りの聖霊杖を握り風の結界を、左手にはアーククリスタルのシールドを展開しているのだ。難なく延寿のかまいたちを防いでみせる。
そこで、延寿が次の手にでる。回避した詩月が攻撃体勢に入り、近づいてくるのを見計らって【スフィリカルブリザード】を発動さたのだ。
「神獣ちゃん、頑張って」
再び詩月も防御に出るも、神獣までは庇い切れず、傷ついた神獣と共に地上に降りざるを得なくなる。
詩月は【アクア・ダート】でさらに攻撃をしかけるも、延寿は移動しながらさらに回避。一定の所で立ち止まり、こちらもまたヴェントエッジでかまいたち攻撃を行う。
それをもちろんのこと、詩月も防御していく。すると今度は延寿がかまいたちを発生させながら攻め込んでくる。
「近接戦は避けたいけど、仕方ないかな。
ならゼロ距離で……」
と、そのままゼロ距離で詩月は【アクア・スパイク】で釘状の水弾を撃ちだす。
「つっ……」
一方に延寿も何弾かかすりはしてしまったものの、【トリッキーラッシュ】で武器を振り回して防ぎつつ、かまいたちを至近距離で発生させていく。
「これが一番けがをさせない方法だから!」
その水弾に耐えきった延寿はそのまま詩月に【ジェムミックス】による衝撃波を放つ。
「うわっ」
気が付けば詩月は闘技場の端の方に位置していた。遠距離攻撃をしている時に延寿が回避しつつ、移動して誘い込んでいたのだ。
そのまま衝撃波が直撃し、詩月は場外へと吹き飛ばされ、アウトとなってしまう。けれども、優しい延寿の心遣いにより、アイドルとして致命的な怪我はせずに済んだようだ。
「『何事もチャレンジ』ですし、頑張ります」
凛菜はしばらくは流れてくる衝撃波や弾等を琴弓で防御しつつ、回避に専念していた。しかし、いつまでも逃げてばかりいるのも不真面目と考えて、このタイミングで動き出したのである。
そこで目についたのは延寿であった。戦闘を終え、丁度リングの端の方で次の敵となる者を探していたからだ。
そのままミグラテールと共に急降下し、水平移動突撃で体当たりし、場外への押し出しを試みる。
「負けないよ」
ミグラテールと凛菜の体当たりが当たる直前、延寿は咄嗟に【尖土遁術】で地面に無数の尖りを作り出していた。
これにより急ブレーキをせざるを得ず、凛菜たちは再び上空へと急ぎ戻っていったのだ。
しかし、凛菜は引いた訳ではなかった。場外アウトにならないギリギリの距離まで下がり、先ほどよりも助走をつけて神獣と共に体当たりの体勢に入ったのだ。
延寿がもう一度【尖土遁術】で尖りを出そうとすると、凛菜が【スカイハイ】による光の波動を放ったのだ。
この攻撃をかわし切れず、延寿はよろけてしまう。そのまま凛菜が神獣でこちらに向かってくるも体勢が整っておらず、【尖土遁術】を作ることが出来ない。
「きゃっ」
成す術なく勢いよくぶつかられた延寿の身体は思い切り弾かれ、そのまま場外アウトとなってしまった。
まずは一戦を戦い終えた凛菜の元に、不意打ちを狙って【ダークネス】が突如襲い掛かる。
「ミグラテール! ……うっ」
咄嗟に神獣に飛んでもらい、直撃は免れたようだが、少し掠ってしまったようだ。オブシディアンによる闇の力の加護があるとはいえ、凛菜が苦しそうな声を上げる。
しかし、休む間など凛菜にはなかった。すぐさま次の【ダークネス】が襲い掛かってきたのである。
その【ダークネス】で狙い続けるのは千夏 水希であった。
「2発目の追撃、間に合うかっ!?」
先ほどの【ダークネス】の効果中に2発目が当たるのを期待して放ったようだ。
けれども、それは間に合わず、1発目から解放され痛みに耐え抜いた凛菜が2発目はギリギリで回避してみせる。
「なら次はこれ!」
そう言いながら、水希は実験的に【ダークネス】を放つ。
「きゃっ……ミグラテール、大丈夫!?」
奇しくもそれは神獣に当たってしまったようで、凛菜は地上へと降りざるを得なくなる。
先ほどの【ダークネス】は神獣のど真ん中を狙い、真ん中から外へ侵食していくようなイメージで放ったようだ。
それにより、早い段階で効果が得られるかを試したようだが、【ダークネス】の使い方自体でスピードや威力が変わることはなさそうであった。
自身の魔力の残りに合わせて、水希は【マナ・バレット】による衝撃波を放つ。それを息を切らしながらも凛菜もピクシーローブで防御してみせる。けれども、凛菜の体力はもう限界そうであった。
そして、水希は凛菜が防御している隙に距離をつめ、最後は至近距離で【ダークネス】を放つ。
「きゃっ」
こちらも至近距離で放っても威力は同じではあったが、防御が間に合わず凛菜に直撃する。
それにより、凛菜はそのまま膝をつく。
しかしタダでは終らない。最後の力を振り絞って【スカイハイ】による光の波動を放つ。その波動は周囲にまで広がっていく。
「うっ……」
咄嗟に水希も避けようとするも、今回は攻撃力を試したかったため、特別な防御や回避対策を用意してはいなかった。
避けきれずに、大きく負傷してしまう。
「お疲れさまです、ミグラテール」
そして、力を出し切り意識朦朧とする中、凛菜は共に戦った神獣を労り、そのまま気絶してしまった。
一方の水希も自身の力を試せたことに満足し、そのまま棄権して闘技場を後にした。
水希のダークネスの使い方に興味深く観戦しているものや、凛菜と神獣の戦いに拍手を送る観客もきっと多くいただろう。
そして、先ほどの凛菜の【スカイハイ】をいち早く察知し、巻き込まれぬように動いたのはシャーロット・フルールである。
開幕から【サーチサバイブ】で自身にも危険が飛び火しそうな箇所から逃げ回っては人ごみに紛れ攻撃のチャンスを狙っていた。
そんなシャーロットがまず近づいたのは佐藤 七佳だ。すれ違い様にさり気なく【トリッキーラッシュ】、流れるような軽業でスリーピングダガーにて斬りつける。
この場にいるのは皆、アイドル。大怪我ともなればアイドル生命に関わるかもしれない。アイドル同士、攻撃は最小限かつスマートにというのがシャーロットの考えだ。
そこでさり気なくスリーピングダガ―で眠らせる作戦にでたようだ。
しかし、周りは誰もが警戒している状態だ。七佳もその一人で、すかさずシルト・デア・カッツェことレリクス・タワーシールドで【ブロッキング】してみせる。
さらにそこから【ラン&スラッシュ】で先に仕掛けていくも、マン・ゴーシュで受け流し、シャーロットはまたも人ごみに紛れてしまった。
「不用意な追撃は禁物、堅実が一番、にゃ」
しかし、七佳は慎重に戦うタイプ。あえて追撃はせず、次の敵に備える。
そんな七佳と目があったのは弥久 風花だ。敵とぶつかるまでの間、【殺陣】の感覚を思い出しながら周囲を警戒していた。
戦い始めたら目の前の相手に集中するのが礼儀、というのが風花の考え方だ。
「どんな相手であろうと討ち倒して見せるわ!!」
威勢よく、七佳に攻撃を仕掛けていく。【マナエグザート】で身体能力を向上させた上で、レッドブレイドを振りかざし、スピード勝負にでる。
一方の七佳はというと、防御主体の戦い方。じっとその攻撃をみて軌道上にシルト・デア・カッツェを置き、【ブロッキング】でその攻撃を受け止める。下手に避け、バランスを崩して相手に攻撃のチャンスを作ることを一番恐れているのだ。
しかし、風花は受け止められたその一撃を支えにそのまま踏み込んで身体を回転させると、七佳の後ろ側に周り反対の手に持つアイシクルブレイドで斬りかかる。
「うっ……」
【ベスティアリ】による手数を重視した戦闘術だ。けれども、手数を増やしスピードを優先したため、一撃の重さはない。
七佳は負傷するも、まだ動ける状態だ。素早く風花に向き直る。
「どんどん攻めるわよ!!」
しかし、七佳が向き直ったその時には風花は既に攻撃体勢に入っていた。
それを【ブロッキング】で受け止め、風花が次の一振りをする隙をついて【レイジオブビースト】を仕掛けようとすると、素早く風花は一歩後退し、攻撃の手を【ソードフレア】に切り替え、七佳より先に攻撃し爆散させる。
風花は攻撃主体の戦い方、攻める手こそ緩めないが敵の攻撃に合わせて攻撃スタイルを切り替えることをしっかりと意識していたようだ。
咄嗟に七佳も【ブロッキング】に切り替えるも、爆散のダメージは防ぎきれず、動きが鈍る。その隙をついて、風花が後ろから斬りかかる。
「ううっ……」
そのまま七佳は気絶してしまい、攻めの風花と守りの七佳の戦いは風花が勝利を治めた。
その間、シャーロットもまた次のターゲットに目星をつけていた。
再び【トリッキーラッシュ】でスリーピングダガ―を片手に踊るように通りざまに桃城 優希に攻撃をしかける。
それをレリクス・タワーシールドで防ぎながら、シャーロットの踊りに合わせて優希は身を低くしつつ、【アクロバットキック】で反撃にでる。
「俺はAegisの桃城優希。楽しい試合にしよう」
その蹴りをマン・ゴーシュで受け流しながらシャーロットは逃げようとする。
「こちらから行くぞ!」
しかし、優希は既に戦闘モードでシャーロットは逃げ切ることが出来なかったようだ。
今度はすかさず優希から【ディフェンシブストローク】による防御体制のままでの攻撃が繰り広げられる。
時折【エスクワイアステップ】も取り入れているようで、その戦い様は騎士らしくとても凛々しい。
その優希の攻撃をマン・ゴーシュで受け流しながら、シャーロットもまたスリーピングダガ―で応戦。
「じゃあ、ボクもいくよ!」
【トリッキーラッシュ】で素早くトリッキーにスリーピングダガ―を振り回し、それが優希の腕を掠る。
けれども優希もまた防御体制をとりながの攻撃であったため、傷は深くない。
そのままシャーロットの手元を狙い続け、ついにシャーロットの腕が弾かれる。
「きゃっ」
このまま決めにかかってもいいが、相手は女の子。優希は迷わず、【アクロバットキック】で蹴り飛ばす。
その蹴りにより、リングの端まで吹き飛ばされたシャーロット。苦し紛れにスリーピングダガーを投げつけるもあっけなくかわされてしまう。
「女の子は傷つけたくない。負けを認めてほしい」
そう言いながらエンシェントソードを喉元に突きつける。
しかし……
「くっ……」
先ほど放ったシャーロットのスリーピングダガ―が優希の背中に突き刺さる。
「ごめんね。その代わり、ねこねこ妖精シャロちゃんが夢の世界へご招待なんだよ♪」
追い込まれるのはシャーロットの演出であった。先ほどのスリーピングダガ―は【サイドワインダー】の紐を用いて軌道を変えたようだ。
そのまま倒れ込んだ優希を場外へと押し出す。きっと程無くしてスリーピングダガ―による眠気が襲ってくることだろう。
シャーロットは再び動き出し、優希は場外アウトとなり、この戦いを終えた。
けれども、この優希の紳士な戦いぶりはきっと観客や女性ファンの心に焼き付くだろう。
開幕から周りをなぎ倒し、突き進んでいった彰が目指す先にはアーヴェント・ゾネンウンターガングの姿があった。
「よ、『勇者』アーヴェント。お互い遠慮は抜きだ、楽しもうぜ! フェスタ最強!」
「友とは言え遠慮はしない。さあ、楽しい戦いをしようか?」
まずは彰が【ラン&スラッシュ】で速攻を仕掛ける。それをアーヴェントはソードブレイクことマン・ゴーシュで受け流す。
「接近しての大技……今だけはこー言わせてもらうぜ……ユニコーンギャロップ!」
さらに彰が【レイジオブビースト】を見舞おうとするも、それよりも速く、アーヴェントが受け流した勢いを利用し反対の手に握るヘルト・エアツェールングことエンシェントソードで次の攻撃にかかる。
「攻撃こそ最大の防御」
「くっ……」
ヘルト・エアツェールングを素早く振りかざし、どんどん攻めていく。一方の彰はそれを受け止めることで精一杯で、反撃に乗り出すことが出来ない。
一歩、また一歩と彰が押される形となり、ついにその斧槍ユニコーンが大きく弾かれる。
そして、その瞬間をアーヴェントが見逃すはずがなかった。
「ここだ」
【エクセキューショナーズセンス】で感じた急所めがけてヘルト・エアツェールングで斬りかかる。
「ぐはっ……」
見事に急所に命中したその一撃で一瞬意識が飛びそうになり、気が付いた時には彰は場外へと吹き飛ばされていた。
「ありがとう、良い試合だった」
感謝の心を忘れず、アーヴェントは友の期待に応えるべく、次の敵の元へと向かった。
「腕試しに精一杯やってみようかな」
「私も頑張るから、よろしくね!」
その横では世良 延寿と深山 詩月の戦いが始まっていた。
詩月は【神獣覚醒】で幼生神獣を大きくして飛び乗ると、飛行しながら延寿に【アクア・ダート】による水のダーツで攻撃をしかけていく。
それを移動しながらかわしていく延寿。元より延寿の戦略としては相手に距離を詰めさせないことであった。というのも、延寿も遠距離攻撃を得意とするからだ。
「すごいね。でも、私だって負けないよ!」
ヴェントエッジでかまいたちを引き起こし、飛行する詩月を狙う。
しかし、詩月の防御はかなり力が入っていた。右手には風護りの聖霊杖を握り風の結界を、左手にはアーククリスタルのシールドを展開しているのだ。難なく延寿のかまいたちを防いでみせる。
そこで、延寿が次の手にでる。回避した詩月が攻撃体勢に入り、近づいてくるのを見計らって【スフィリカルブリザード】を発動さたのだ。
「神獣ちゃん、頑張って」
再び詩月も防御に出るも、神獣までは庇い切れず、傷ついた神獣と共に地上に降りざるを得なくなる。
詩月は【アクア・ダート】でさらに攻撃をしかけるも、延寿は移動しながらさらに回避。一定の所で立ち止まり、こちらもまたヴェントエッジでかまいたち攻撃を行う。
それをもちろんのこと、詩月も防御していく。すると今度は延寿がかまいたちを発生させながら攻め込んでくる。
「近接戦は避けたいけど、仕方ないかな。
ならゼロ距離で……」
と、そのままゼロ距離で詩月は【アクア・スパイク】で釘状の水弾を撃ちだす。
「つっ……」
一方に延寿も何弾かかすりはしてしまったものの、【トリッキーラッシュ】で武器を振り回して防ぎつつ、かまいたちを至近距離で発生させていく。
「これが一番けがをさせない方法だから!」
その水弾に耐えきった延寿はそのまま詩月に【ジェムミックス】による衝撃波を放つ。
「うわっ」
気が付けば詩月は闘技場の端の方に位置していた。遠距離攻撃をしている時に延寿が回避しつつ、移動して誘い込んでいたのだ。
そのまま衝撃波が直撃し、詩月は場外へと吹き飛ばされ、アウトとなってしまう。けれども、優しい延寿の心遣いにより、アイドルとして致命的な怪我はせずに済んだようだ。
「『何事もチャレンジ』ですし、頑張ります」
凛菜はしばらくは流れてくる衝撃波や弾等を琴弓で防御しつつ、回避に専念していた。しかし、いつまでも逃げてばかりいるのも不真面目と考えて、このタイミングで動き出したのである。
そこで目についたのは延寿であった。戦闘を終え、丁度リングの端の方で次の敵となる者を探していたからだ。
そのままミグラテールと共に急降下し、水平移動突撃で体当たりし、場外への押し出しを試みる。
「負けないよ」
ミグラテールと凛菜の体当たりが当たる直前、延寿は咄嗟に【尖土遁術】で地面に無数の尖りを作り出していた。
これにより急ブレーキをせざるを得ず、凛菜たちは再び上空へと急ぎ戻っていったのだ。
しかし、凛菜は引いた訳ではなかった。場外アウトにならないギリギリの距離まで下がり、先ほどよりも助走をつけて神獣と共に体当たりの体勢に入ったのだ。
延寿がもう一度【尖土遁術】で尖りを出そうとすると、凛菜が【スカイハイ】による光の波動を放ったのだ。
この攻撃をかわし切れず、延寿はよろけてしまう。そのまま凛菜が神獣でこちらに向かってくるも体勢が整っておらず、【尖土遁術】を作ることが出来ない。
「きゃっ」
成す術なく勢いよくぶつかられた延寿の身体は思い切り弾かれ、そのまま場外アウトとなってしまった。
まずは一戦を戦い終えた凛菜の元に、不意打ちを狙って【ダークネス】が突如襲い掛かる。
「ミグラテール! ……うっ」
咄嗟に神獣に飛んでもらい、直撃は免れたようだが、少し掠ってしまったようだ。オブシディアンによる闇の力の加護があるとはいえ、凛菜が苦しそうな声を上げる。
しかし、休む間など凛菜にはなかった。すぐさま次の【ダークネス】が襲い掛かってきたのである。
その【ダークネス】で狙い続けるのは千夏 水希であった。
「2発目の追撃、間に合うかっ!?」
先ほどの【ダークネス】の効果中に2発目が当たるのを期待して放ったようだ。
けれども、それは間に合わず、1発目から解放され痛みに耐え抜いた凛菜が2発目はギリギリで回避してみせる。
「なら次はこれ!」
そう言いながら、水希は実験的に【ダークネス】を放つ。
「きゃっ……ミグラテール、大丈夫!?」
奇しくもそれは神獣に当たってしまったようで、凛菜は地上へと降りざるを得なくなる。
先ほどの【ダークネス】は神獣のど真ん中を狙い、真ん中から外へ侵食していくようなイメージで放ったようだ。
それにより、早い段階で効果が得られるかを試したようだが、【ダークネス】の使い方自体でスピードや威力が変わることはなさそうであった。
自身の魔力の残りに合わせて、水希は【マナ・バレット】による衝撃波を放つ。それを息を切らしながらも凛菜もピクシーローブで防御してみせる。けれども、凛菜の体力はもう限界そうであった。
そして、水希は凛菜が防御している隙に距離をつめ、最後は至近距離で【ダークネス】を放つ。
「きゃっ」
こちらも至近距離で放っても威力は同じではあったが、防御が間に合わず凛菜に直撃する。
それにより、凛菜はそのまま膝をつく。
しかしタダでは終らない。最後の力を振り絞って【スカイハイ】による光の波動を放つ。その波動は周囲にまで広がっていく。
「うっ……」
咄嗟に水希も避けようとするも、今回は攻撃力を試したかったため、特別な防御や回避対策を用意してはいなかった。
避けきれずに、大きく負傷してしまう。
「お疲れさまです、ミグラテール」
そして、力を出し切り意識朦朧とする中、凛菜は共に戦った神獣を労り、そのまま気絶してしまった。
一方の水希も自身の力を試せたことに満足し、そのまま棄権して闘技場を後にした。
水希のダークネスの使い方に興味深く観戦しているものや、凛菜と神獣の戦いに拍手を送る観客もきっと多くいただろう。
そして、先ほどの凛菜の【スカイハイ】をいち早く察知し、巻き込まれぬように動いたのはシャーロット・フルールである。
開幕から【サーチサバイブ】で自身にも危険が飛び火しそうな箇所から逃げ回っては人ごみに紛れ攻撃のチャンスを狙っていた。
そんなシャーロットがまず近づいたのは佐藤 七佳だ。すれ違い様にさり気なく【トリッキーラッシュ】、流れるような軽業でスリーピングダガーにて斬りつける。
この場にいるのは皆、アイドル。大怪我ともなればアイドル生命に関わるかもしれない。アイドル同士、攻撃は最小限かつスマートにというのがシャーロットの考えだ。
そこでさり気なくスリーピングダガ―で眠らせる作戦にでたようだ。
しかし、周りは誰もが警戒している状態だ。七佳もその一人で、すかさずシルト・デア・カッツェことレリクス・タワーシールドで【ブロッキング】してみせる。
さらにそこから【ラン&スラッシュ】で先に仕掛けていくも、マン・ゴーシュで受け流し、シャーロットはまたも人ごみに紛れてしまった。
「不用意な追撃は禁物、堅実が一番、にゃ」
しかし、七佳は慎重に戦うタイプ。あえて追撃はせず、次の敵に備える。
そんな七佳と目があったのは弥久 風花だ。敵とぶつかるまでの間、【殺陣】の感覚を思い出しながら周囲を警戒していた。
戦い始めたら目の前の相手に集中するのが礼儀、というのが風花の考え方だ。
「どんな相手であろうと討ち倒して見せるわ!!」
威勢よく、七佳に攻撃を仕掛けていく。【マナエグザート】で身体能力を向上させた上で、レッドブレイドを振りかざし、スピード勝負にでる。
一方の七佳はというと、防御主体の戦い方。じっとその攻撃をみて軌道上にシルト・デア・カッツェを置き、【ブロッキング】でその攻撃を受け止める。下手に避け、バランスを崩して相手に攻撃のチャンスを作ることを一番恐れているのだ。
しかし、風花は受け止められたその一撃を支えにそのまま踏み込んで身体を回転させると、七佳の後ろ側に周り反対の手に持つアイシクルブレイドで斬りかかる。
「うっ……」
【ベスティアリ】による手数を重視した戦闘術だ。けれども、手数を増やしスピードを優先したため、一撃の重さはない。
七佳は負傷するも、まだ動ける状態だ。素早く風花に向き直る。
「どんどん攻めるわよ!!」
しかし、七佳が向き直ったその時には風花は既に攻撃体勢に入っていた。
それを【ブロッキング】で受け止め、風花が次の一振りをする隙をついて【レイジオブビースト】を仕掛けようとすると、素早く風花は一歩後退し、攻撃の手を【ソードフレア】に切り替え、七佳より先に攻撃し爆散させる。
風花は攻撃主体の戦い方、攻める手こそ緩めないが敵の攻撃に合わせて攻撃スタイルを切り替えることをしっかりと意識していたようだ。
咄嗟に七佳も【ブロッキング】に切り替えるも、爆散のダメージは防ぎきれず、動きが鈍る。その隙をついて、風花が後ろから斬りかかる。
「ううっ……」
そのまま七佳は気絶してしまい、攻めの風花と守りの七佳の戦いは風花が勝利を治めた。
その間、シャーロットもまた次のターゲットに目星をつけていた。
再び【トリッキーラッシュ】でスリーピングダガ―を片手に踊るように通りざまに桃城 優希に攻撃をしかける。
それをレリクス・タワーシールドで防ぎながら、シャーロットの踊りに合わせて優希は身を低くしつつ、【アクロバットキック】で反撃にでる。
「俺はAegisの桃城優希。楽しい試合にしよう」
その蹴りをマン・ゴーシュで受け流しながらシャーロットは逃げようとする。
「こちらから行くぞ!」
しかし、優希は既に戦闘モードでシャーロットは逃げ切ることが出来なかったようだ。
今度はすかさず優希から【ディフェンシブストローク】による防御体制のままでの攻撃が繰り広げられる。
時折【エスクワイアステップ】も取り入れているようで、その戦い様は騎士らしくとても凛々しい。
その優希の攻撃をマン・ゴーシュで受け流しながら、シャーロットもまたスリーピングダガ―で応戦。
「じゃあ、ボクもいくよ!」
【トリッキーラッシュ】で素早くトリッキーにスリーピングダガ―を振り回し、それが優希の腕を掠る。
けれども優希もまた防御体制をとりながの攻撃であったため、傷は深くない。
そのままシャーロットの手元を狙い続け、ついにシャーロットの腕が弾かれる。
「きゃっ」
このまま決めにかかってもいいが、相手は女の子。優希は迷わず、【アクロバットキック】で蹴り飛ばす。
その蹴りにより、リングの端まで吹き飛ばされたシャーロット。苦し紛れにスリーピングダガーを投げつけるもあっけなくかわされてしまう。
「女の子は傷つけたくない。負けを認めてほしい」
そう言いながらエンシェントソードを喉元に突きつける。
しかし……
「くっ……」
先ほど放ったシャーロットのスリーピングダガ―が優希の背中に突き刺さる。
「ごめんね。その代わり、ねこねこ妖精シャロちゃんが夢の世界へご招待なんだよ♪」
追い込まれるのはシャーロットの演出であった。先ほどのスリーピングダガ―は【サイドワインダー】の紐を用いて軌道を変えたようだ。
そのまま倒れ込んだ優希を場外へと押し出す。きっと程無くしてスリーピングダガ―による眠気が襲ってくることだろう。
シャーロットは再び動き出し、優希は場外アウトとなり、この戦いを終えた。
けれども、この優希の紳士な戦いぶりはきっと観客や女性ファンの心に焼き付くだろう。