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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェイトスター☆ファイトクラブ!

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フェイトスター☆ファイトクラブ!

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■インターバル 2

 華乱葦原ブロックの緊張感ある展開を日辻 瑶は黙して見つめている。
 その熾烈な戦いのさまに、彼は祈るように両手を握った。
「那智くん……」
(怪我にだけは、気を付けてほしいけど――)
 瑶が闘技場に立つ友の雄姿に視線を注いでいると、傍らのロロ・エストレリャが、興味深々といった様子でその姿を観察していた。
「瑶ちゃん、面白い顔してるー」
「ろ、ロロっ!? 俺、そんな変な顔してない、はず……」
 薄く目を開けて笑うロロに困惑しつつ、瑶は首を横に振る。
「ふふーん? でも、お目当てはあの人だよね?」
 ロロはそう言って、闘技場の一角に立つ那智の姿を指さした。
「それはそうだけど。面と向かって言われると、恥ずかしいじゃないか……」
「えー? 別に変なこと、ないと思うけどなぁ」
 照れたようにロロから顔をそむけて、もう一度闘技場に目をやる瑶。
 そんな様子に何を感じたのか、ロロはスッと立ち上がって自分の席に足をかけた。
「そんなんじゃ応援は届かないよ、もっとしっかり、元気にやらなきゃ!」
「ちょ、ロロ!?」
「ロロがお手本見せてあげる♪」
 そう言うとロロは、クラッピングベルを鳴らしながら手を振りつつ、勢いよく跳ねながら大声を張り上げた。
「がんばれーっ! 春瀬那智ー!」
 いくらなんでも、そんなことをすれば観客席の中でも目立ってしまう。
 瑶はロロを慌てて止めようとしたが、逆に引っ張り上げられて、立ち上がらされてしまった。
「あっ、ああ……!」
「ほらほら、瑶ちゃんも一緒に応援っ!」
 ポンポンと励ますように、瑶の肩にロロの両手が乗せられる。
 見渡すと、ちらほらとこちらを見ているものもおり、瑶はいっきに体がこわばってしまう。
「一緒に、応援……」
「届けるんでしょ、頑張れって!」
 頼もしげに言ったロロの言葉を反芻した瑶は、そのあとしっかりとうなずいて答えた。
 いちど深呼吸をしてから、闘技場の方を見やる。仲間が、戦っている。
(届くかな……。ううん、ロロの言う通りだよね)
「――那智くん、頑張って!」
 クリアボイスで放たれたよく通るその声は、那智のもとに届いただろうか。
「そうそう、その感じだよ! もっと声出してこ!」
「……うん!」
 瑶とロロはゆっくり席に座り込むと、改めて選手たち――那智を応援し始めた。
 今度こそはしっかりと、恥じらうことなく声援を送ることができている。
「いいぞ、やっちゃえ!」
「かっこいいぞー!」
 彼らはそうして、那智の試合が終わるまで、声援を送り続けていたのだった。


 手に汗握る試合の合間は、観客の緊張がほぐれるタイミングでもある。
 見ているだけとはいえ、興奮していると体力を奪われてしまうものだ。
 ましてやこの炎天下――身体が癒しを求めているのは明白であった。
「つめたいフェスアイスはいかがですかー!」
「缶ジュースもあるよー!」
 会場の観客席を練り歩きながら、エリサ・アーシェリリエはクーラーボックスを小脇に抱え、声を張り上げて観客たちに呼びかけていた。
 エリサの手伝いを申し出た桜姫 真白もそれに倣って、大きな声で呼び込みを行っていた。
 冷たいものを求める観客たちのおかげで、用意していたアイスとジュースは順調にはけていっている。
 だがしばらくすると、エリサと真白の眼前には、同じ志を持つライバルが現れた。
「あったまもこっころもかっりゆしぃぃッ!
 熱中症に注意するんやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
 かりゆし くるるが奥 莉緒と連れ立って、会場の熱気をまとったかのようなオーバーアクションを取りながら、取り出したスマイルウォーターを観客たちにアピールする。
 莉緒はその後ろをついていきながら、汗をぬぐいながら、懸命に声を出して売り子を務めていた。
「スマイルウォーターを飲んでる私はいっつもスマイルッ!!
 好ぉぉぉ評ぉぉぉぉ発っ売っ中ぅぅやでぇぇぇぇぇっ!」
「よろしくお願いしまーす!」
 くるるは視線を集めながら、ひとつ、またひとつと順調にスマイルウォーターを観客たちへ売っていく。
「すごい熱気ですね、エリサさん」
「ええ、私たちも負けていられませんね!」
 それに負けじとエリサたちも気合を入れなおし、さらにフェスアイス【ルミマル味】を観客たちに提供していく。
「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい!
 熱い戦いを見ながら、冷たいかき氷はいかがかな!?」
 そんな彼女らの傍ら、観客席の一角に並んだ屋台の中で、ひときわ目立っていたのは永見 音萌香の屋台だ。
「さぁさぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい!
 そこのきれーなおねーさんも、かっこいーおにーさんも、ウチのかき氷食べてかない?」
 ネタ作りの基礎で培った早回しでまくし立てるように呼び込みをして、音萌香もまた着々と客足を伸ばしていく。
「だんだんにぎやかになってきましたね」
「で、でもエリサさん、このままじゃあお客さんが……」
 慌てる真白に、しかし指を立てて振り、ノンノン、と否定の意を示すエリサ。
「私たちの役目は、品物を売ることじゃないでしょう?」
 ウィンクをしたエリサの言葉に、真白ははっとしてうなずいた。
「……ぬぅ、客が向こうの屋台に逃げてしまった……。
 あっ……おにーさん、買ってくれないの……?」
 一方の音萌香は伸び悩みはじめた客足を【ファストアクト】で取り戻そうと頑張っている。
 その様子を伺いつつ、エリサと真白は、音萌香のところへ赴いて、手伝いを申し出た。
「よろしければ、ご一緒させていただけません?」
「ほんとに!? ありがとう、助かるよー!」
 二人が音萌香の屋台の周りで呼び込みをはじめると、席を立って並ぶものがさらに多くなり、自然と二人の抱えている缶ジュースやフェスアイス【ルミマル味】も売れていく。
 音萌香の口八丁手八丁と、エリサと真白の丁寧な接客がうまくかみ合い、屋台は盛況だ。
「なんや楽しそうにしてはりますな!」
「私たちも混ざっていい?」
 そこへ、観客席でスマイルウォーター売り歩いていたくるると莉緒が、おずおずと申し出る。
「もちろん、よろこんで!」
 それに真っ先にうなずいたのは音萌香だ。
 続いてエリサがにこやかに肩をすくめて肯定の意を示し、真白が二人に手を差し出した。
「みんな楽しいことが、一番ですから」
「一緒にイベントを盛り上げましょう!」
 そうして、五人はそろって観客たちに声をかけつつ、力を合わせて各々の品物を提供していく。
「ありがとうございますっ、どうぞ!」
「のめばしあわせっ、きっとくるくるッ、くる、くるるっ!」
 真剣勝負を観戦しに来たこの観客たちを、暑さから守るのもまたアイドルの仕事――。
 汗をぬぐいながら、くるるはなおさら張り切って呼び込みをかけ、スマイルウォーターを観客たちに提供し続けた。
 疲れた様子を見せないくるるの笑顔に、観客たちもまた、笑顔で応じている。
 ややもすると、闘技場のほうから試合が間もなく始まる旨の放送がかかり、観客たちは各々の席へと帰っていった。
 選手たちの入場を眺めながら、くるると莉緒、エリサと真白、そして音萌香は、ひと心地ついてえも言われぬ達成感を覚えていた。
 ……再びここで、熱い戦いが繰り広げられようとしているのだ。
 だがすぐに、音萌香が慌てた様子で屋台の中でせわしなく動き始めた。
「……って、一息ついてる場合じゃない! 次に備えて仕込みしなきゃ!」
「せやな、まだ終わってへんかった!」
 言うと、くるるもステージを見ながらその場を離れていく。
「私たちも、観戦しながら休みましょうか」
「はいっ、エリサさん!」
 そしてエリサと真白が連れ立って離れ、観客席の歓声が、再び会場を満たすのだった。
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