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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

沖縄旅行のある日!

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沖縄旅行のある日!

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■クラーケンから光凛を救い出せ!

 『異世界化』により、セブンスフォールの海と化した冨着ビーチ。そして今ここには、巨大モンスター『クラーケン』が出現し、本能のままに上陸を果たそうとしていた――。

「きゃーーー!! め、目が回るーーー!!」

 クラーケンの足に捕らえられた泉 光凛の悲鳴が遠くに聞こえていた。身動きが取れないままメチャクチャに振り回され、光凛はすっかり目を回してしまっていた。
『大丈夫、クラーケンは怯えてるだけだよ。怖くないって分かれば、きっと大人しくしてくれるから』
 そう言ってボートに乗り込んだ光凛であったが、結果は以上であった。これでは説得は不可能であり、戦って倒す他無いだろう。
「マズイよ、もし潜られでもしたら光凛が溺れちゃう! 早く助けないと」
「そうしましょうー。私、ボートを用意してもらえるようお願いしてきますね」
 神谷 春人の言葉に西宮 彩が頷き、光凛救出のための行動を開始する。……しかしクラーケンもただ近付いてくるだけではなかった。
「! 何かこっちに来る!」
 春人が示した先、クラーケンの身体の中腹辺りに複数の穴が出現し、そこから砲弾のように何かが飛び出してくる。高速で近付いてきたそれはクラーケンのミニ版と言っていい生物であり、自身以外の動くものを標的に攻撃を始める。
「ミニクラーケンへの対処もしないといけないみたいだね! みんな、頑張ろう!」

 ――こうして、ミニクラーケンの妨害を払い除けながら、光凛を救出する作戦が開始されようとしていた――。


「ああ、もう! 何やってるんですか泉先輩! 怯えてる生き物が迫って来る訳無いじゃないですか!」
 聖歌庁の依頼という形でやって来たフェスタ生たち。そのうちの一人、弥久 風花がクラーケンに捕まっている光凛を確認して声をあげる。
「まずは泉先輩を救出しないと! 乗り物があるといいんだけど――」
 その時、波打ち際から風花を呼ぶ声がかかる。そちらに視線を向ければ、十人ほどが乗れる大きさのボートを浮かべ、中に乗り込んだ春人の姿があった。
「ボクたちは光凛を助けに行く。風花も協力してほしいんだ」
「分かりました! 神谷先輩、よろしくお願いします!」
 春人にぺこり、と頭を下げて、風花がボートに乗り込む。そして直後に彩が、光凛救出に協力してくれる者と共に戻ってくる。
「光凛、確かヒュドラにも捕まって食べられてたよね……」
「あぁ、そうだった。よくバケモンに懐かれる――いや、自分から首を突っ込んでるだけか。
 ともかく、アタシらで光凛を助けてあげなきゃな!」
「うん! 光凛は友達だからね!」
 世良 延寿黒瀬 心美が続いてボートに乗り込む。
「俺がボートの援護に付こう。光凛救出の前にボートを破壊されては仕方ないからな」
 最後に死 雲人がボートに乗り込み、光凛救出部隊は沖合へと進んでいく。幸いにして射出されたミニクラーケンの大半は浜辺のフェスタ生たちが引きつけ役となってくれたおかげで、大きな戦闘となることなくクラーケンへ接近することが出来た。
「うわ……間近で見るとさらに大きいね」
 春人がクラーケンの巨体を見上げ、緊張した声を漏らす。
「作戦はどうしましょう?」
「あまり時間はかけていられないだろう。まずは光凛を捕まえている足の根元を狙って攻撃を仕掛け、その後身軽な者が足に取り付いて光凛を切り離すというのはどうだろうか」
「じゃあ、取り付くのは私が行くね!」
「任せたぜ! こっちはしっかり動き止めてやっからな!」
「泉先輩をお願いします!」
 彩の言葉に雲人が提案を行い、延寿が足に取り付き光凛を切り離す役、心美と風花が足に攻撃を加える役で作戦が決定した。
「ボートの運転はボクに任せて! 彩はサポートお願いね」
「分かりましたー」
 春人の操縦で、ボートがクラーケンに接近していく。
「あっ、みんなー! 助けに来てくれたんだね!」
 光凛の姿がハッキリと捉えられる位置まで来たところで、光凛の方も春人たちの姿を認めて声をあげた。
「泉先輩、助けに来ました! もう少しだけ我慢してください!」
「今助けてやっからな! ……このイカ野郎、アタシのダチを離しやがれえぇ!!」
 射程ギリギリまで近付き、風花と心美が続けて攻撃を開始する。風花の握った二振りの剣に炎と氷の息吹が宿り、その息吹が衝撃波として光凛を捕まえている足の根元へ叩き付けられる。心美の握った大振りの剣からも怒りを伴った衝撃波が生じ、クラーケンの足を襲う。
『――――!』
 攻撃を受けたクラーケンが悲鳴のような音を発し、光凛を捕まえている足が動きを止めた。
「それっ!」
 その機会を見逃さず、延寿が高くジャンプして足に取り付くと、駆け上っていく。クラーケンは他の足を使って延寿を捕らえようとするが、風花と心美が攻撃を行い接触を妨害する。
「捕まったりなんかしてあげないんだからね!」
 延寿もまるで曲芸のような動きで、クラーケンが伸ばしてきた足を踏みつけその反動で先へ進むなどして光凛の元へ駆けつける。
「すごーい! 延寿ちゃんサーカスの曲芸士みたい!」
「えへへ、ありがと! ちょっと待ってて、今助けてあげる!」
 延寿が剣の柄を抜き、かまいたちを発生させて光凛を捕らえている足を切り落とそうとする。だが一撃では完全に切り落とすことが出来ず、さらには切った衝撃で吹き出したクラーケンの体液が光凛にもろにかかる形となった。
「わぷ! ……うえぇ、なんかヌメヌメするしベタベタするよ~」
「我慢して、もうちょっとだから!」
 続けて二度、三度と攻撃することで、ようやく延寿は足を切り落とすことが出来た。
「……あれ?」
 しかし、切り落とす直前に延寿は気付く。このまま切り落としてしまったら光凛は海に真っ逆さまなのではないだろうか、と。
「きゃーーーーー!!」
 そして案の定、切り落とされた足とともに光凛が真っ直ぐ海へと落下していく。延寿が慌てて後を追うが間に合いそうもない。
「光凛!」
 水飛沫をあげて海に落ちた光凛を追って、雲人が海に飛び込む。水中でもがく光凛を片手に抱き、もう片方の手と足で水を掻いて浮上する。
「ぷはぁ! けほ、けほけほっ!」
「光凛、ごめん! 大丈夫!?」
 めいっぱい息を吸って咳き込む光凛へ、延寿が申し訳なさそうに声をかける。
「うん、大丈夫! ヌメヌメも取れてスッキリしたよ! 助けてくれてありがとね!」
(……何? ヌメヌメだと? くっ……海に落ちる前に受け止めるべきだったか?)
 少し惜しい気持ちを胸に抑え込み、雲人が光凛を無事ボートまで送り届ける。春人と彩が光凛をボートに引き上げ、雲人が乗り込んだところで、海が大きく荒れた。
『――――!』
 足を切り落とされたことで激昂したクラーケンが、今度はボートを執拗に狙い始める。
「このままじゃマズイ!」
 必死に回避運動を取る春人だが、回避運動が精一杯で離脱することが出来ずにいた。
「風花、延寿、アタシらで囮になろう! ボートを逃がすんだ!」
「はい!」「うん!」
 心美が風花と延寿に呼びかけ、二人が頷く。
「春人、ボートをクラーケンに近付けろ! そしたらアタシらがクラーケンに取り付いて囮になるからその隙に離脱しな! 光凛を浜辺まで送り届けたら戻ってきてくれよ!」
「分かりました! 皆さんお気をつけて!」
 春人がボートをクラーケンに近付け、心美、風花、延寿がクラーケンに飛びつく。
「急所を狙って効率的にいきたいところだけど、まず足を黙らせないといけないみたいだね! ま、それならそれでぶった斬るまでだよ!」
 急所狙いを試みようとした心美だが、未だ健在の足がその急所を守るように動くため、心美は足を切り落とす作戦に切り替える。
「だああぁぁ!!」
 クラーケンの身体を踏みつけながら高く飛び上がり、頭上に振り上げた大剣を足の一本へ叩き付ける。
「ぶはぁ!? うへぇ、気持ち悪いったらないね! 水着姿なのを喜ぶべきかどうなんだろうね!」
 大量の体液を浴びつつ、攻撃の手は緩めない。それは風花も同様であった。
「水着だから濡れてもいいのは助かるけど……水着が滑ってポロリとかないわよね?」
 一瞬あらぬことを心配した風花が、今はそんな場合じゃないと首を振って打ち消し、二振りの剣をまるで踊るように振るって足にダメージを与えていく。時折自身から光を発し、クラーケンの注意が自分に向き続けるようにする。
「悔しかったら私を捕まえてみなさいよねっ!」
 そして延寿も、自分が忙しなく動き回ることでクラーケンの注意を引き、ボートが安全に離脱できるように務める。三人の行動が、結果としてボートを安全な場所まで離脱させることに成功したのであった。

「ボクは三人を迎えに行ってくるね。二人のこと、お願いします」
 春人が雲人にぺこり、と頭を下げつつそう口にして、ボートを走らせる。
(……フフフ、お願いされたからには、丁重に扱ってやらないとな)
 一瞬邪悪な笑みを浮かべ、すぐにクールを装って振り返ると、彩が光凛の介抱を終えたところだった。
「はぁ~、どうなることかと思ったけど、助かったよ~。あっ、助けてくれてありがとね!」
「25時間ライブでご一緒しましたよね。力を貸していただきありがとうございます」
 二人にお礼を言われ、雲人は心の中ではガッツポーズをしつつも表面上はクールに振る舞う。
「二人のためになる事をしたいと思ったから、行動したまでだ」
「おぉ~カッコいい~! クールなナイトってやつだね!」
「ふふ、お優しい方なんですね」
 雲人の心の中を知らない二人が、雲人のことをそんな風に評価するのを耳にして、雲人はさらに気分を良くする。これはハーレムもそう遠くないな、と思った矢先、ぐぅ、と音が鳴った。
「あっ……え、えーとこれはその……あぁぁ恥ずかしいぃぃ……」
 光凛がお腹を押さえてしゃがみ込む。先程までクラーケンとある意味死闘を繰り広げていたのだから仕方ない部分もあるだろう。
「ちょうどいい、ここにクラーケンの足がある。こいつを捌いて刺身にしてご馳走しよう」
 雲人が手にしたのは、光凛を解放した時に切り落としたクラーケンの足の一部。
「えっ、それ食べられるの?」
「大丈夫なんでしょうか?」
「見たところはな。吸盤を剥いでから体液を抜いてしまえば、後は筋肉、タンパク質だ。無論、先に毒味はするがな」
 そう言って、雲人が剣を構え、神速の斬撃でもってクラーケンの足を捌いていく。表面の吸盤を剥ぎ取ってから中に切り込みを入れ、体液を海水で洗い流してから適当な大きさにぶつ切る。
「……流石に固いが、味はいいぞ。歯ごたえがある分、腹も膨れるだろう」
 差し出された足のぶつ切りを、光凛と彩が恐る恐る手に取り、二人顔を見合わせ意を決して口に入れる。
「むぐむぐむぐ……」
 しばらくの間もごもご、と口を動かし、長い時間をかけて飲み込む。
「ほんとだ! 固くて噛みごたえあって、とっても美味しい!」
「さっきまで戦っていたものを食べるなんて不思議ですけど……意外といけますね」
 笑顔を見せる光凛と彩を見つめ、雲人が達成感に浸っていると、沖合から春人の操縦するボートが戻ってきた。
「はぁ~疲れた……。やれやれ、当分イカ焼きは見たくないねぇ」
「そうですね……。でも、焼いた時の匂いは抗いがたいものがありました」
「私もうお腹ペコペコだよ~」
 心美、風花、延寿がボートを降り、光凛と彩の元へやって来る。
「みんな、お疲れさま! 私のためにありがとう!」
 光凛がお礼を言うと、三人とも疲れた様子ではあったが、光凛が無事でよかったといった顔を見せた。
「あっ、よかったらこれ、食べる? 意外といけるよ!」
 そして、光凛から差し出されたクラーケンの足のぶつ切りを目の前にして、三人は空腹感と嫌悪感の挟み撃ちと戦う羽目になるのであった。
「……ていうか、光凛。あんな目にあったのによく食べられるね……」
 春人が光凛の神経にため息を漏らす。当の本人は「?」と首を傾げるばかりであった。
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