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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

沖縄旅行のある日!

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沖縄旅行のある日!

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■開幕、宜野湾ギターコンテスト

「ヘイ、センキュゥ!!」

 宜野湾の野外演劇場を舞台にしたギターコンテスト。ステージの上で演奏を終えたアイドルが、盛大な拍手を送る観客に手を振って応えていた。
 各地から集った演奏に自信のあるアイドル達が、ここ沖縄にて自らの演奏を披露し、トップを目指す。立派な一つのバトルが、今繰り広げられようとしていた――。

(水着でやれ……ってものすごく恥ずかしいんだけど……)
 前の人の演奏が終わり、自分の番が近付いてくる中、渋谷 柚姫が自分の格好――ビキニタイプの水着――を見つめて肩をすくめる。
(他にも水着姿で演奏してた子が居たのが救いかな……。でも待てよ、他にも居るってことは観客はある程度見慣れているわけだから……)
 少し考えて柚姫は、生半可な演奏では入賞どころか、自身のファンを獲得するのも難しいのではという結論に至る。
(……元々、言われたからにはやるしかない、って思っていたけど……。やるからには、何か一つでも得るものがあった方がいい、よね。一色先生も『本気でぶつかればぶつかるほど得るものは大きい』って言ってたし……)
 ちょうどその時、自分の出番を告げるコールが聞こえてきた。
「……よし」
 やるからには全力でやろう、そんな決意を秘めて柚姫がステージへと上がる。美人が水着姿ということでやはり、男性陣から大きな歓声が起こった。
(ある程度掴みは得られた。後はこのまま盛り上げていこう!)
 基本のリズムを保ちながら、セブンスフォールで覚えた歌を沖縄の海のように透き通るボイスで紡ぐ。地球風にアレンジした音楽をギターで奏で、盛り上がりを維持したまま間奏へと突入する。
(演奏だけじゃなくて、動きでも魅せる!)
 演奏の途中でギターパフォーマンス――ギターを左肩後方へ放り、右脇からキャッチするウインドミル奏法――や、ダンスを混ぜて視覚でも楽しんでもらうように心がける。

 宿れ この海に この歌に そして皆の胸に

 演奏を終えた柚姫へ、歓声と拍手が送られる。ファンが増えたかどうかはこれからだが、そっぽを向かれる事無く注目を浴び続ける事は出来ていた。
(よかった……!)
 滴る汗を拭い、柚姫は充実感を得ていた。


(やっぱり、コンテストだけあって皆のレベルが高い……!)
 自分の出番を待つ間、他の人の演奏を見学していた枢木 くくるは演者の演奏やパフォーマンスが高い位置にあるのを感じていた。
(でも、良い刺激にもなる……。競うのは、得意じゃないけど……やるからには全力でする……!)
 構えたギターを軽く弾き、弦の張り具合や音の出を確認していく。――音楽の楽しさを、伝えたい。そのために自分はギターを奏でに行くのだ――。
「……行こう」
 出番を告げるコールが聞こえ、くくるが着慣れたステージ衣装をなびかせ、相棒のギターと共にステージに立つ。
「枢木くくる……、今日はよろしく……」
 拍手と歓声で出迎えてくれた観客へ一通り視線を巡らせて、挨拶してから演奏を始める。奏でるのはくくるが沖縄に来てから感じたもの、自然をイメージした即興曲。
(……街を歩いている時に感じた、ゆったりと爽やかな風……)
 音楽の初めは、指をなめらかに滑らせての演奏。そよぐ風のように音色が観客をふわり、と通り過ぎていく。
(……沖合から寄せ、うねる波……)
 そこからカッティングを挟み、自身もステージを動くことで波を表現する。押し寄せる音楽が観客に、次の波を、次の音色を求めさせる。
(……青い空と、照りつける太陽……)
 観客の求めに、くくるは熱く激しい速弾きによる音楽を届ける。情熱的なビートが観客に自然と歓声を起こさせ、動きを生む。
(……そんな自然をめいっぱい感じて生きている、沖縄の人達……)
 盛り上がりを保ったまま、最後は陽気な雰囲気を音色に含み、くくる自身も楽しんでいる様を前面に押し出しながら演奏する。
「ラー……ラララー……♪」
 特に歌詞は考えていなかったので、歌は最後の部分、一部のみ。それでも観客はくくるの歌に合わせて声を出してくれた。一人の声が十人の声になり、百人になり会場全体の声へとなっていく――。

「聴いてくれて……ありがとう……!」
 演奏を終え、観客に向かって礼をしたくくるへ、大きな拍手と歓声が送られる。
(これが今の私の、精一杯の音楽……。演りきれた、と思う)
 満足感を得ながら、けれどもここで止まるつもりはない、という感情も同時に生まれる。
(もっと表現力をつけられたら……もっと伝えられる。しっかり観ておこう……)
 ギターの整備を終えたら、続きをしっかり見届けよう、そう誓うくくるであった。


(ギターコンテスト……! ふふ、この高揚感が気持ちいいですね。まさにミュージシャン魂が震えている、といったところでしょうか)
 紫月 悠里が既に準備万端といった様子で、自分の出番が来るのを待つ。そして出番を告げるコールに合わせ、自前の『アメジストランナー』を提げ、ステージに立つ。観客はその独特な見た目をしたギターから、どんな音楽が奏でられるのかを期待していた。
(さあ、行きましょう! 大事なのは楽しむ心、そして熱い魂です!)
 その思いを体現するように、まずは出だしの数節をアクティブに、リズムよく演奏していく。観客が徐々に身体を揺らし、会場のテンションが上がっていくのが悠里にも見えた。
(観客の皆さんがノッてくれるのは、嬉しいですね!)
 音楽がサビに突入したところで、悠里は演奏をよりダイナミックに、強く、大きく行う。ここではうまく弾くというよりは場の高揚した雰囲気を重視し、多少の間違いも気にせず勢いで駆け抜けていった。
(まだまだ行きますよ! もっともっと、盛り上がってください!)
 間奏に入っても、音楽の勢いは留まらない。ステージをいっぱいに使い、左側の観客へはコールを煽るようなパフォーマンスを披露し、右側の観客へは速弾きを魅せるなど、場の空気を読んでその場に合った演奏やパフォーマンスでアピールしていく。

 そして、ウィンクを決めて会場のボルテージが最高潮に達したと思われた矢先、演奏が途切れる。観客は一瞬面食らうが、すぐに響いてくる静かな、しかしまるで地面からせり上がってくるような音色を耳にして、まだ音楽が終わっていないこと、そしてこれからさらなる高みへと駆け上がっていく予兆を見る。
(ノリだけでは押し切りません。私の持てる限りの技術を以って――そして、楽しんで最後まで弾き切ります!)
 魂のこもった一音が放たれ、高まっていたテンションに引火する。爆発するように広がる音楽が、観客を最高潮から最最高潮へと引き上げていく。悠里の両手が、そして全身が、いま自分が出せる音楽を出し切るために躍動する。
「……っ、ありがとう、ございましたぁ!」
 演りきった満足感に浸りながら、笑顔で手を振る悠里へ観客は惜しみない拍手と歓声を送った――。


「頼むアリア、力を貸してくれ! 俺様にはギターしかねぇんだよ!」
 ――コンテスト開催直前、ヲトメコンダクター アリアに土下座するサイバネティック 天河の姿があった。
「俺様はミュージシャンとして芸能界入りしたはず……なのに最近じゃすっかり芸人扱いだ!」
「そうね……芸人じゃ美少年少なそうだし、干されたりでもしたらそれこそお近付きになれないわね……」
 天河の必死の訴えに、アリアが顎に手を置いて真剣に考える。
「いいでしょう。今回だけは真面目にやりましょう!」
「……今回だけ、というのが気になるが……そうか、やってくれるか!」
 顔を上げた天河へ、アリアが構想を口にする。
「審査員の買収と……いえ、それだけでは不十分ね。聖歌庁の犬として魂を売って、裏から手を――」
「アウトだ! そんなの認められるか!」

 ……その後もすったもんだを経て、結局正攻法という方針にまとまる。
「審査員の前で観客のハートを掴むのが一番ね。狙いは郷土愛。……そして、何よりこのくそ暑い会場を涼しく、よ!」
 ステージ演出をアリアが担当し、その演出に合わせて天河が演奏する曲を決定したところで、出番を告げるコールが聞こえてくる。
「全力で行ってらっしゃい、聖歌庁のチワワとして!」
「結局犬なのかよ……まぁいい。今後のミュージシャンとしての未来を賭けて、全力で行くぜ!」
 アリアに見送られ、天河がギターを手にステージへ向かう――。

 会場から緑色のレーザーが放たれ、サイバーチックな雰囲気を作り出す。バックスクリーンには今にも嵐がやってきそうな沖縄の風景が映し出され、観客はこれから何が起きるのかという期待の眼差しを向ける。

『――――!!』

 そして会場に、雷が落ちた。激しい轟音と閃光が生まれ、観客が思わず目と耳を覆った直後、赤いマフラーをなびかせサイバーな衣装に身を包んだ天河がギターを激しく弾き鳴らす。
(最初からとっておきだ! ブリッジミュートでズクズク言わせる!)
 激しい嵐の映像、そして雷音響く中、毎年のように沖縄を襲う台風を表現した荒々しいハードロックを聞かせる。同時に会場には激しい風が吹き荒れ、まさに今自分が台風の中に居るのだという臨場感を引き出す。
 やがて、何もかもを吹き飛ばしてしまうような嵐は収まり、映像には青い空と白い砂浜が映し出される。穏やかな波音までも聞こえてきそうだった。
(嵐は過ぎた。ようこそ、リゾート地沖縄へ!)
 先程の激しいロックから一転、クリアーなメロディのソフトロックを弾く天河。海へ誘うような音楽に観客は誘われていく。
 映像が海の上から海中へと移り、巨大な海洋生物が優雅に泳ぐ様を映し出す。
(涼しく海中遊泳といこうじゃないか。魚と共に楽しんでくれ!)
 観客を海中遊泳に誘った天河が、豊かな海と生き物をイメージしたプログレッシブ・ロックを聞かせながら自身のギターテクニックを惜しみなく披露する。バックの映像でクジラが空に向かって噴水をした時にはステージから水が撒かれ、過度の熱量を適度に発散させてくれる。
(海を楽しんだら、最後はお祭りだ。みんなも踊って楽しもうぜ!)
 締めの音楽は、沖縄の盆踊り『エイサー』がバックスクリーンに流れる中、チョーキングを利かせたロックアレンジで届ける。ついつい振り付けをなぞってしまう観客が多数を占めた。

「ハロー宜野湾! サンキュー沖縄!」
 演奏を終えた天河が拳を突き上げ、観客から盛大な拍手と声援を浴びる。
「はい、涼しかった人は天河くんに盛大な拍手~!」
 アリアも観客に拍手を煽りつつ、ステージから引き上げてくる天河を今日ばかりはちゃんと出迎えてやろうと思い――。
「………………」
 戻ってきた天河の顔を見て、しばし呆然とする。演奏で大量の汗をかいた結果、サイバー化粧がすっかり落ちてしまったため、すっぴんになっていたのだ。
「……あんた誰」
「な! なんだよそのゴミを見るような顔! 別人じゃないってば! 俺様もやればできるってのを見ただろ!」
 天河が必死の訴えを見せるも、アリアは冷たい表情を浮かべるばかり。
「ちくしょーーー!!」
 やり場のない怒りを声にあげる天河であった――。
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