全力エスケープ・ナウ!
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リアクション
【残り 1:30】
黒服解放が2回分キャンセルになった。
しかし、イクスピナ内には残り2時間半で5人、残り2時間での5人の解放により、既に20人の黒服が走り回っている。
そんな中、桐島 泰河と早見 迅はどうにか黒服から隠れながら、檻へと近づいていた。
「迅、さっきの放送聞いたか? 残り宝石4つゲットすればいいらしいぜ! もうちょっとだな!」
「ライブで盛り上げてくれたみんなの活躍のおかげだね。少しやる気が出てきたよ」
泰河と迅は息を切らしながらも、アイドルたちの活躍に励まされ、元気を取り戻していた。
そんな中、黒服の羽倉 なつみ、そしてフィア・シルフォーネもまた、他の仲間の仲間と円陣を組んで気合を入れ直していた。
そろそろ檻の解放を狙って参加者が集まってくるだろう、と黒服たちも防衛の士気を上げているのだ。
「フィアさん、みなさんも、よろしくお願いしますね」
「うん。封鎖になる前に出られてよかったね。ブラック★スターズ! ファイッ! オー!」
なつみとフィアが円陣を組んでいた頃、弥久 風花は泰河と迅に「ある作戦」を提案していた。
それは場合によっては「大事件」になりかねないものだった。
「風花……それ流石にヤバイんじゃないか?」
「大丈夫よ、桐島先輩。ほら、早く行って!」
泰河と迅が立ち去ると、周囲にはルミマルブザーの音が響き渡った。
駆けつける黒服や撮影スタッフ。
するとそこには、血を流し、戦着物を真っ赤にして倒れている風花がいた。
「胸を……胸を刺されたの。ここ……」
風花は弱々しい声で黒服に訴える。
撮影スタッフは「カメラを止めたほうがいいんじゃないか?」などと動揺し始めていた、
しかし、黒服が恐る恐る風花に手を伸ばすと……。
「隙ありっ!」
素早く身を翻すと、模擬剣を抜き、抜刀一閃で目の前の黒服を退けた。
実は、真っ赤な血はフェイクブラッドである。
風花は怪我をしたふりをし、泰河や迅の逃げる隙を作ったのだ。
「桐島先輩、早見先輩……ここは私に任せて!」
フェスタ流護身術の華麗な動きで立ち回り、風花は黒服達を遠ざけた。
「増援を呼ぶなら呼びなさい! 折角参加するんだし、すっごい活躍しないとね!!」
事件でなくてホッと一安心。
現場のカメラは風花が血塗れの着物を肌蹴け、見事な殺陣を披露する様子を画面の向こうの視聴者に届けたのだった。
風花が黒服の気を引いている間に、迅と泰河は檻へと近づいた。
しかし、その周囲には何人もの黒服が陣取り、近づいてくる参加者たちを待ち構えている。
そこで、何人かが囮となって彼らを遠ざける作戦を決行した。
「嵐、本当に良いのか?」
「ええ……泰河さん。私達だって……その、せっかく番組に出演できるのですもの……MVP、欲しいですし」
神宮司 嵐はおどおどしながらもそう言って頷いた。
「迅さんたちが檻に近づきやすいように……わたくしたちが黒服さんを誘きだします! 楓さん……行きますわよ!」
「はい、嵐姉さん!」
黒猫の耳カチューシャを付けた嵐と白猫の耳カチューシャを付けた神宮司 楓は檻の前に躍り出ると、わざと黒服の気を引くようにその場から走り出した。
その間に、迅と泰河は物陰に身を隠し、檻へ近づくチャンスを伺った。
「嵐……楓……頼むよ」
迅が心配そうに見守る中、2人は駆けていく。
しかしその前に、新たに5人の黒服が立ちはだかった。
「増援部隊ブラック★スターズ! 見参!」
やって来たのはなつみとフィア、ほか3人の黒服だった。
5人は嵐と楓を取り囲むようにしてその行く手を阻んだ。
「逃がさないさ! フォーメーションBで行くよ!」
フィアが他の4人に指示を出し、嵐と楓は逃げ場を失った。
じりじりと迫りくる黒服。
すると、嵐は思わぬ行動に出た。
「こうなったら仕方ありません……許して下さいませね、楓さん……!」
「うわっ、ね、姉さん……!」
嵐は楓を抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
突然抱きしめられた楓は真っ赤になり、嵐もかなり恥ずかしそうである。
だが、2人はしっかと抱き合い、愛の行為を黒服達に見せつけた。
自分たちの弱点である「いちゃいちゃ」を見せつけられた黒服男3人は動揺し、その場で固まってしまった。
「あのっ……姉さん、確かにイチャイチャラブラブが黒服さんの弱点と聞きましたが、これって本当に効果あるんですか? 正直……ちょっと恥ずかしいのですが」
「わたくしだって……恥ずかしい……ですが、その……闇雲に逃げているだけでは……体力を消耗いたしますし……」
嵐と楓は真っ赤になりながらもぎゅっと抱きしめあったままお互いを離さない。
2人のぎこちなくもラブラブな様子に、黒服男たちは顔を赤らめ、動きを封じられてしまっていた。
しかし……。
「ごめんなさい、お2人共っ! カチューシャいただきますね!」
「ホラ! しっかりしろ黒服! カチューシャ取るのがアタシらの仕事さ!」
恐らく、照れくさいのは気合で堪えたのだろう。
なつみとフィアは嵐と楓に近づき、素早く手を伸ばした。
2つの猫耳カチューシャは残念ながら没収されてしまった。
「まさか……黒服にも『いちゃいちゃ』が通用しない人がいるってこと?! だけど、あたしはそう簡単には捕まらないよ! ソーレ!」
次にやって来たのはチーターの耳をつけた楠 真琴だった。
真琴はまことやフィアが追ってきたのに気づくと、キンコンダッシュで速度を上げ、檻に走り寄った。
「まずいね……! なつみ、頼むよ!」
「任せてください、フィアさん!」
なつみは刺又「雷電」を手に真琴のもとへ走った。
すると、真琴は素早く反応し、檻から離れて走り出した。
「まだまだ負けない! キィィィーーーン!!」
「逃しませんよ!」
真琴は素早かったが、なつみもまたキンコンダッシュで速度を上げる。
その時、フィアがハッと顔を上げた。
「もしかして……囮? なつみ! 深入りは禁物だよ!」
「……っ! やっぱり!」
フィアの声でなつみが足を止める。
しかしその時、真琴はなつみの目の前で思い切り転んだ。
「アイタぁあああ! 足……ひねった! ホントにひねった!」
「だ、大丈夫ですか?!」
「あはは……ごめん、降参するね。多分コレ、もう走れないや……」
真琴はどうやらわざと転んで黒服の気を引くつもりだったらしい。
だが、見たところ本当に足を捻っているようだった。
「檻より……医務室だね。なつみ、あそこにいるTVのスタッフに任せて、持ち場に戻るよ!」
「分かりました! あの、お大事になさってくださいね?」
「ありがと。キミ達もがんばってね」
残念ながらここでリタイア。
真琴はスタッフに連れられ、医務室に向かったのだった。