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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

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全力エスケープ・ナウ!

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【残り 1:48】

 黒服の数が増え、イクスピナ内では参加者たちが次々にカチューシャを没収されていた。
 しかしそんな中でもアイドルたちはパフォーマンスを行い、エキストラや画面の向こうの視聴者を楽しませた。

――柚姫さん、画面の皆さんの向こうから「水色の猫耳カチューシャがライブ衣装と合ってて可愛い」というメッセージがたくさん届いています。
「えっ、その……私は正直恥ずかしいんだけど……事務所の社長が『逃げる途中でライブもやるし、黒服たちを悩殺しちゃえ!』って言うから……この服装でやらざるをえなくなっちゃって」
――黒服を悩殺して逃げるのですか?
「うっ、えっと、ぼっ……! 私、スタイルには自身があるんですけどっ! やっぱ恥ずかしいんで! あっ、あのっ、みんな集まってくれたし、歌います!」
 渋谷 柚姫は練習用ハンドマイクを手にし、プロムナードに集まったエキストラや撮影スタッフを前に路上ライブを始めた。
 恥ずかしがりながらも頑張ってパフォーマンスするその姿に集まったエキストラから歓声が上がる。
 しかし、黒服はライブ中の参加者にも容赦しない。
 エキストラの間から割り込み、柚姫のもとへやって来た。
「うっ、やっ、やっぱり私に色っぽい仕草とか無理だってば――!」
 悩殺できないならば、実力行使。
 手慣れたパンチで黒服を遠ざけると、柚姫はその場から走り出した。
 ステージ方向へ逃げていく柚姫を撮影スタッフが追いかけると、ちょうどそちらでは枢木 くくるのライブが行われていた。
「枢木くくる……音楽奏でる……楽しんでくれたら嬉しい……よろしく」
 歓声の中、パンダの黒い獣耳カチューシャを付けたくくるは機材を軽く調律し、フェスタギターをかき鳴らす。
 観客に視線を合わせると、くくるは自然に笑顔になった。
始まりの鐘が鳴る 夢や希望を胸に抱き いま走り出せ
 明るいオープニングナンバーとくくるの声がイクスピナに響く。
 画面いっぱいに歌う枢の姿が映り、TVを見ている視聴者達のメッセージがその映像をかき消すように流れていく。
 その様子を、アニー・ミルミーンは2階のオープンテラスから見ていた。
「始まりましたね。もう少しよく見えるところに行きましょう」
 アニーは紅茶を飲み干し、店を後にした。
 その手には、ハートの宝石があった。
 会場ではくくるの歌に合わせ、観客たちがリズムを取っている。
 観客席にやって来たアニーがエスクワイアステップで踊り始めると、くくるはアニーと目を合わせ、笑顔を見せた。
「……次は疾走ナンバー。みんな一緒に……音楽を感じて楽しんで欲しい」
 くくるはギターを弾きながら舞台を降り、観客席に近づいた。
 アニーもそれを見ると、少しいたずらっぽく笑い、くくるに近づいていった。
「ふふ、勝負です」
 2人の意図を察した他のエキストラ達がくくるとアニーの周囲を取り巻き、踊り始める。
 それを見て、更に多くのエキストラが舞台の周囲に集まってゆく。
闇が迫る 走れ走れ 風を感じて全力で 駆け抜ければ勝利はすぐそこ
 ライブは熱く熱く盛り上がってゆく。
 しかしそこへ、黒服達が近づいてきた。
「まぁ! 邪魔をするおつもりですか? 止まってください! 今はこの方がライブを披露してくださっているのです。その途中で捕まえるなどといった無粋な真似は許しません!」
 アニーはラウドボイスを張り上げ、黒服を制止しようとした。
 しかし、黒服はくくるに近づくと、無情にもカチューシャをもぎ取ってしまった。
「もう少し待って……最後まで歌いたい」
 くくるは黒服にそう言うと、舞台に上がり、観客のために力の限り歌った。
 歌いきり、舞台上で頭を下げたくくるに、誰も彼もが拍手を惜しまなかった。
「くくるさん……残念です。でも、素晴らしかったです。あの、これを」
「……ありがとう。私も……一緒に踊れて……楽しかった」
 アニーの差し出したハートの宝石をくくるは笑顔で受け取った。
 そして観客席からは他にも3つの宝石がくくるに贈られた。
 残念ながらここでくくるは戦線離脱となったが、合わせて4つの宝石を獲得し、黒服の待機場所を1つ封鎖することに成功したのだった。
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