全力エスケープ・ナウ!
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【残り 2:06】
全力エスケープ・ナウ! の番組撮影のため、イクスピナの各店舗は開放されていた。
つまり、店舗内のものを多少自由にいじってもよい、ということになっているのである。
「チッ、何だよやっぱりこっちにも黒服来んのかよ! やっべぇ!」
上野 柚李は他の参加者の後について暫くノンビリと走っていたが、黒服の姿を見て周囲の者たちは散り散りに走っていってしまった。
焦った柚李が駆け込んだのは一軒のアパレルショップだった。
「お! あれ可愛いじゃん! ちょっとコレ借りるかんな!」
柚李は店員にそう言うと、ショーウィンドウの中に入った。
そこにいたのは一体の可愛らしいマネキンだった。
「よし、お前は俺のパートナーだ。肩にこう手ぇ置いて……と」
柚李がそんな事をしていると、さっきまで一緒にいた藍野 雫と月影 紫が店の前を駆け抜けていった。
どうやら、黒服に追われているようだ。
「しっ、雫ちゃんもう無理っ……ボク、足痛くて!」
「頑張ってください! この先まで走れば逃げ切れます!」
雫は紫の手を引いて必死に走っていく。
だが、その時イクスピナ内に再び不穏な音楽が鳴り響いた。
待機部屋開放と黒服追加の合図である。
「5人追加……って、紫ちゃん、今何人ですか?」
「た、多分20人とか?! 雫ちゃん待って、靴が……!」
その時だった。
雫と縁の前方から3人の黒服が突然現れた。
おそらくは追加された黒服なのだろう。
急な挟み撃ちに遭い、2人は呆気なく捕まってしまった。
そして……。
「うぉっ?! こっち来た! こ、こら、来んなよ黒服! 俺は可愛い彼女とダンスの真っ最中なんだからなー♪」
柚李のいるショーウィンドウの前には黒服と撮影スタッフがわらわらと集まってきた。
放映中の画面にはマネキンと寄り添ってくるくる踊る柚李と首をかしげる黒服の姿が映った。
視聴者からは「何あれかわいい」「ウケる」などのメッセージが届いて盛り上がっていたが、どうにもごまかせる雰囲気ではない。
そこで柚李が取り出したのは……。
「どうだ【茉莉花様のサイン色紙】だ! お前らこれが欲しくないのか!」
ファンが泣いて喜ぶ茉莉花様のサインである。
柚李はこれを囮に黒服から逃げようとしたのだが……。
「えっ、ちょ!? 何でだよ! サイン要らねえの!?」
黒服は頷き、柚李の猫耳カチューシャをひょい、と外してしまった。
放送中の画面下部には赤字で「黒服、プロ根性で茉莉花様のサインを我慢!」とテロップが踊っていたとのことである。
そして、その下の階では……。
「ただ今イクスピナ自転車売り場で大特価。黒服からも余裕で逃げ切れる自転車販売中!」
背中に自転車売り場に置かれていた幟を付けたサイバネティック 天河が商品らしきマウンテンバイクに乗り、ペットボトル飲料を片手に1階店舗前を走っていた。
その後ろからはうさぎの着ぐるみを着たヲトメコンダクター アリアがどこかの店舗の店員と話しながら歩いている。
「サイクリングのお供にはこれ! 運動の後は新商品スマイルウォーター! うん、うまいっ!」
「天河君、次そこ左よ! メガネ屋さん!」
「えっ? あれ? 2階のショールームじゃなかったっけ?」
「それは最後。ほら、行き過ぎよ!」
自転車屋の次はメガネ店。
どうやら2人は各店舗の商品を宣伝して回っているらしく、撮影スタッフも面白がってその後を追いかけていた。
「何故黒服がよく見えるかって? それは信頼と実績の【丈夫なメガネ】のおかげ!」
カメラ目線でキャッチーフレーズをアピールする天河。
しかしその時、店の外からルミマルブザーが鳴った。
アリアが黒服を見つけて、天河に知らせたのだ。
「次行きましょ。裏の出口から2階よ。はい、コレ着て」
「えっ、ちょ、アリアこれどこで着替えるの?!」
バタバタしながら2人が向かったのは家具や電化製品などを売っているショールームだった。
ナイトルームウェアを着た天河は天蓋付きのベッドの上に横になり、今度は寝具のPRを始めた。
「おいで……俺様のプリンセス。素敵なベッドで甘い子守唄を聞かせてあげるよ」
ベッドの上でギターを奏でミニコンサート。
そこへ黒服がやって来たのだが……。
「ほら~。途中で天河君が捕まっちゃったらお宅の商品宣伝できませんよ~?」
空気を読め、とアピールするアリアの向こうでは天河がいそいそと展示品のバスタブの方へ向かっていた。
そして、「捕まえられるなら捕まえてみろ」とルームウェアの前を肌蹴させ……。
「汗をかいた後はひとっ風呂……バスルームのリフォームもイクスピナにお任せ……」
「NOOOOOO~!!!!」
これはマズイ、と判断したらしい黒服たちは一斉に店内に駆け込むと、バスルーム用のカーテンやタオルを一斉に天河の方に投げつけた。
配信中の画面下部に「強制終了」と表示される中、天河はカチューシャを取られ、タオルで簀巻にされて檻へ連行。
店の中で「きゃ~! 黒服がんばれ~! そのままキスしちゃえ~!」などと騒いでいたアリアも着ぐるみに隠していたカチューシャを没収され、あえなく御用となった。
全力エスケープ・ナウ! の番組撮影のため、イクスピナの各店舗は開放されていた。
つまり、店舗内のものを多少自由にいじってもよい、ということになっているのである。
「チッ、何だよやっぱりこっちにも黒服来んのかよ! やっべぇ!」
上野 柚李は他の参加者の後について暫くノンビリと走っていたが、黒服の姿を見て周囲の者たちは散り散りに走っていってしまった。
焦った柚李が駆け込んだのは一軒のアパレルショップだった。
「お! あれ可愛いじゃん! ちょっとコレ借りるかんな!」
柚李は店員にそう言うと、ショーウィンドウの中に入った。
そこにいたのは一体の可愛らしいマネキンだった。
「よし、お前は俺のパートナーだ。肩にこう手ぇ置いて……と」
柚李がそんな事をしていると、さっきまで一緒にいた藍野 雫と月影 紫が店の前を駆け抜けていった。
どうやら、黒服に追われているようだ。
「しっ、雫ちゃんもう無理っ……ボク、足痛くて!」
「頑張ってください! この先まで走れば逃げ切れます!」
雫は紫の手を引いて必死に走っていく。
だが、その時イクスピナ内に再び不穏な音楽が鳴り響いた。
待機部屋開放と黒服追加の合図である。
「5人追加……って、紫ちゃん、今何人ですか?」
「た、多分20人とか?! 雫ちゃん待って、靴が……!」
その時だった。
雫と縁の前方から3人の黒服が突然現れた。
おそらくは追加された黒服なのだろう。
急な挟み撃ちに遭い、2人は呆気なく捕まってしまった。
そして……。
「うぉっ?! こっち来た! こ、こら、来んなよ黒服! 俺は可愛い彼女とダンスの真っ最中なんだからなー♪」
柚李のいるショーウィンドウの前には黒服と撮影スタッフがわらわらと集まってきた。
放映中の画面にはマネキンと寄り添ってくるくる踊る柚李と首をかしげる黒服の姿が映った。
視聴者からは「何あれかわいい」「ウケる」などのメッセージが届いて盛り上がっていたが、どうにもごまかせる雰囲気ではない。
そこで柚李が取り出したのは……。
「どうだ【茉莉花様のサイン色紙】だ! お前らこれが欲しくないのか!」
ファンが泣いて喜ぶ茉莉花様のサインである。
柚李はこれを囮に黒服から逃げようとしたのだが……。
「えっ、ちょ!? 何でだよ! サイン要らねえの!?」
黒服は頷き、柚李の猫耳カチューシャをひょい、と外してしまった。
放送中の画面下部には赤字で「黒服、プロ根性で茉莉花様のサインを我慢!」とテロップが踊っていたとのことである。
そして、その下の階では……。
「ただ今イクスピナ自転車売り場で大特価。黒服からも余裕で逃げ切れる自転車販売中!」
背中に自転車売り場に置かれていた幟を付けたサイバネティック 天河が商品らしきマウンテンバイクに乗り、ペットボトル飲料を片手に1階店舗前を走っていた。
その後ろからはうさぎの着ぐるみを着たヲトメコンダクター アリアがどこかの店舗の店員と話しながら歩いている。
「サイクリングのお供にはこれ! 運動の後は新商品スマイルウォーター! うん、うまいっ!」
「天河君、次そこ左よ! メガネ屋さん!」
「えっ? あれ? 2階のショールームじゃなかったっけ?」
「それは最後。ほら、行き過ぎよ!」
自転車屋の次はメガネ店。
どうやら2人は各店舗の商品を宣伝して回っているらしく、撮影スタッフも面白がってその後を追いかけていた。
「何故黒服がよく見えるかって? それは信頼と実績の【丈夫なメガネ】のおかげ!」
カメラ目線でキャッチーフレーズをアピールする天河。
しかしその時、店の外からルミマルブザーが鳴った。
アリアが黒服を見つけて、天河に知らせたのだ。
「次行きましょ。裏の出口から2階よ。はい、コレ着て」
「えっ、ちょ、アリアこれどこで着替えるの?!」
バタバタしながら2人が向かったのは家具や電化製品などを売っているショールームだった。
ナイトルームウェアを着た天河は天蓋付きのベッドの上に横になり、今度は寝具のPRを始めた。
「おいで……俺様のプリンセス。素敵なベッドで甘い子守唄を聞かせてあげるよ」
ベッドの上でギターを奏でミニコンサート。
そこへ黒服がやって来たのだが……。
「ほら~。途中で天河君が捕まっちゃったらお宅の商品宣伝できませんよ~?」
空気を読め、とアピールするアリアの向こうでは天河がいそいそと展示品のバスタブの方へ向かっていた。
そして、「捕まえられるなら捕まえてみろ」とルームウェアの前を肌蹴させ……。
「汗をかいた後はひとっ風呂……バスルームのリフォームもイクスピナにお任せ……」
「NOOOOOO~!!!!」
これはマズイ、と判断したらしい黒服たちは一斉に店内に駆け込むと、バスルーム用のカーテンやタオルを一斉に天河の方に投げつけた。
配信中の画面下部に「強制終了」と表示される中、天河はカチューシャを取られ、タオルで簀巻にされて檻へ連行。
店の中で「きゃ~! 黒服がんばれ~! そのままキスしちゃえ~!」などと騒いでいたアリアも着ぐるみに隠していたカチューシャを没収され、あえなく御用となった。