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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

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全力エスケープ・ナウ!

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【残り 2:17】

 セクシーアピールという手段は黒服達に対抗する手段として有効だった。
 しかし、決定的に彼らを退けるにはもう一歩何か対策が必要だったらしい。
「暑いですね……」
 エリサ・アーシェリリエは暫くイクスピナ内を逃げ回って黒服を引きつけると、タイミングを見計らって後ろを振り返った。
 そして服の胸元を開け、「ふぅ」とけだるげな仕草をしてみせた。
「いっぱい走ったから暑くって……ねぇ、脱ぐのってルール違反ですか?」
 エリサはうふん、と小悪魔的な笑みを向け、黒服男を悩殺した。
 そして、黒服達が恥じらって動けなくなっている内に「じゃあね♪」と投げキッスして行方を眩ませた。
「ふふ……意外とちょろいですね。次もこの手で行きましょうか」
 ウブな黒服男にはちょっとの刺激でも大いに効果があった。
 しかし、黒服男とて「プロ」である。
 そう何度も悩殺されて終わるような者たちではなかった。
「まぁ、また来たんですか?」
 エリサの目の前に4人の黒服が立つ。
 彼らもエリサのお色気にやられ、たじろいでいるように見えたのだが……。
「あらあら~、そんな人数で私1人に……? 何する気かしら~、怖い怖い~」
 余裕の笑みで悩殺するエリサに背後から忍び寄る影。
 そして、スッと手が伸びて……。
「きゃっ!? あらあら~?」
 振り返ると、大柄の黒服男がカチューシャを手に肩をすくめていた。
「私もゲームオーバーですか~、楽しかったわ。ふふ。じゃ~ね~」
 前から見なければ大丈夫、というわけなのだろう。
 エリサは笑顔で負けを認めたのだった。
「ああっ……エリサさんが! わ、私も、とにかく逃げないと!!」
 狐耳のカチューシャを付けた古川 玲河は周囲の様子を伺いながら逃げていた。
 そして、動物パーカーでカチューシャを隠していたのだが……。

『ピーンポーンパーンポーン♪ 全力エスケープ・ナウ! に参加中の皆様にお知らせします。着ぐるみとかフードとかにカチューシャを隠してるみんなー? 黒服のお兄さんたちはみんなの顔を1人1人全員覚えていま~す』
 
 何だか陽気な男の声で流れる館内放送。
 玲河は思わず「げっ」と言って後ろを振り返った。
 いつの間にいたのか、カメラスタッフが「撮ってるよ~」というカンペを出しながらこちらに手を振っていた。

『外して隠したりしても、イクスピナ中のカメラがみんなを見てるからね? 以上、みかパイセ……ゲホンゴホン。謎のお兄さんからのお知らせでした~♪ ピーンポーンパーンポーン♪』

「……誰ですか今の? って、黒服来てるじゃないですかっ?!」
 向かいの店舗から現れた黒服の姿に、玲河は慌てて逃げ出した。
 しかし、黒服はすぐに玲河に追いついてしまう。
 そこで……。
「かっ、かくなるうえは!」
 使ったのはGo BGMアプリに入っている物語の読み聞かせ音源。
 何やら深刻そうな物語が流れ始めた。

昔、昔……雪深い山奥に温泉宿があったそうな。ある満月の夜、道に迷った男がその宿に行きついたと。
 その男は長いこと迷って歩き続けていたせいで、ひどく疲れておった。これ幸いと宿に泊まることにしたそうな。
 出迎えた女将に湯と食事とどちらにするかと問われるとすかさず食事を頼んだんだと。
 部屋に通されると間もなく食事が運び込まれ、それはもう華やかな料理で空腹も相まってぺろりとたいらげたそうな。
 そして満足げに露天風呂に浸かっていると、何やら視線を感じたそうじゃが、なあに雪山のこと、猿かなにかじゃろと気にも留めなかったんだと。
 良い心地でうとうとしておると……鳥の鳴き声に起こされて気が付いたときには朝になっておってな、宿などなくただ雪の窪みに寝そべっていたそうな


「……(カシャ)」
 物語はあまり黒服男たちの心には響かなかったらしい。
 カチューシャを外された玲河はルミマルブザーを鳴らし、「おまわりさーん!」と騒ぎながら黒服に連行されていった。
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