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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

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全力エスケープ・ナウ!

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【残り 2:32】

「野山を走り回った事はあるけど、こんな街中で追いかけっこをするのは初めてだよ。どこも人がいっぱい……!」
 界塚 ツカサは茶色の猫耳カチューシャを付け、植栽や木立のあるプロムナードを駆け抜け、イクスピナ内の庭園に向かって走っていた。
 ツカサは店の者や買い物客に迷惑がかからないような場所を選んで逃げている。
 だが、TVスタッフはエキストラをまんべんなく配置しており、さらに黒服も予想外の場所から現れた。
「ツカサー! 後ろ! 後ろですー!」
 銀狐耳のカチューシャを付けた加賀 ノイは2階店舗のバルコニーの上からツカサに向かって叫んだ。
 見ると、背後から2人の黒服がツカサのカチューシャを狙っている。
 どうやら、植栽の植え込みの中に隠れていたようだ。
「やっぱりそうくるんだね! でも、ボクも簡単には捕まらないよ! 尖土遁術!」
 ツカサは追ってきた黒服の足元の土を操り、芝生の上で思い切り転倒させた。
 しかし、もう1人はそれをうまく回避すると、そのままツカサを追いかけてきた。
「あっ、どっどうしよう! ツカサが!!」
 ノイは慌てて外階段を駆け降りると、「こっちこっち!」と自分の方にツカサを呼んだ。
「上には黒服いません! 急いで下さい!」
「降りてこなくていいよ、ノイ! そのまま走って!」
 ツカサにそう言われ、ノイは方向転換して再び階段を駆け登った。
 しかし――。
「うぁああ!」
「きゃあ!」
 ノイは階段で足を滑らせ、踊り場で仰向けに転倒。
 それに躓いたツカサも思い切りつんのめった。
 ツカサのスカートはそのままふわり……ノイの顔の上へ。
 追ってきた黒服はあんぐり口を開け、その場で固まってしまった。
「う! うぁあっ、ツカサのパパパパパ……!」
「い、いいから早く立って!」
 ツカサは顔を真赤にしてスカートを引きながらノイの頭を軽く叩いた。
 しかしノイはまだ衝撃覚めやらぬ様子で「あわわわ」となってしまっている。
「だ、だってパパパ、パン……!」
「黒服が動かなくなってるうちに逃げるのっ! あーもー! しょうがないっ!」
 ツカサは意を決し、ノイを横抱きに抱え上げた。
 そしてそのまま、階段を登り、2階店舗方面へ……。
 その光景はTVスタッフにバッチリ見つかり、そのまま配信される事になった。
「もぅ……恥ずかしがらないの! だって私……ノイを置いて一人で逃げるより、一緒に捕まった方がいいんだから」
「あぁ……早く終わって下さい」
 真っ赤になって顔を覆うノイは恥ずかしがりながらもどこか幸せそうだったという。

 一方、こんな甘酸っぱい2人とは対象的に、堂々たるラブラブアピールで黒服男たちを翻弄する者もいた。
 【恋愛劇場】を繰り広げたレオナルド シャルロッター松原 楓の2人である。
 2人のアピールはウブな黒服男たちを退ける圧倒的な効果を持っていた。
「松原 楓! 俺はお前が好きだーー!!」
 レオナルドはライブ会場方面に向かって走りながら、ラウドボイスに乗せて愛を叫んだ。
 周囲のエキストラは顔を赤らめ、店舗の従業員も「何だ何だ?」と外に出て来るがお構いなしである。
「恥じらいなど机の引き出しに忘れてきた! イクスピナのエキストラも番組の視聴者もみんな聞け! 俺は楓が大好きだ!」
 やって来たカメラに向かって、レオナルドはなおも叫び続ける。
 配信画面上は「おおおおおおお」「情熱的―!」という驚きのコメントで溢れていた。
「シャ、シャル君たら……何か大騒ぎになりすぎちゃってないかなぁ……これ」
 一方の楓はステージ付近で顔を赤らめ、困った顔をしていた。
 しかし、こんな面白い状況で優秀なTVスタッフが逃がすはずがない。
 付けている猫耳を目印にすぐさま発見され、女性ADが「情熱的な彼へのお返事はありますか?」と楓にマイクを突きつけた。
「えっ、そ、その……! ていうかあの、お姉さん近いです! 近い近い!」
 楓は「中身がオトコノコ」のためか、セクシーな女性ADにドギマギしていたが……。
 やがて、ステージの向こうにレオナルドの姿が見えると小さく咳払いして言った。
「ぼ、僕も好きだよ。シャル君!」
 ステージ周辺にいたエキストラや演奏準備中のアイドルたちが「キャー!」と言って歓声を上げる。
 そして、ステージ下に来ていた黒服男たちも「キャー!」とすっかり顔を赤くして動かなくなってしまっている。
 2人のアピールは効果てきめんだったようだ。
 そしてその後、2人はステージ上に上がり、レオナルドが野球の「ヒーローインタビュー」のようなノリでTVスタッフの質問に答えることになった。
――彼女のどんなところが好きですか?
「俺は楓の目が好きだ。黒くて大きくて……俺の好みだと思う」
――今回はどうしてこの番組に参加されたんですか?
「当然、楓への愛を叫ぶためだ。このイベントの多くの参加者に俺が松原楓を好きなことが分かれば計画は大成功だ」
 ステージ上のモニターにはレオナルドの顔が大きく映り、観客席がどっと拍手を送る。
 そして、モニターを駆け巡るコメントの嵐が、画面の向こうも大盛り上がりであることを伝えていた。

 こうして番組が大いに盛り上がる中、イクスピナ内には不穏な音楽が流れた。
 モニター上には湧き上がるスモークと共に開け放たれる部屋の様子が映し出される。
 番組開始から30分が経過し、黒服男が15人に増えたのだ。
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