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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

リアクション公開中!
全力エスケープ・ナウ!

リアクション

【残り 2:42】

「駿くん、どうする?」
「何がだ」
「じぃじと泰河の2人さ、どっちも捕まったら」
「そんな事を言うな。とにかく……今は2人を信じるしかないだろう」
「だよねぇ……」
 Ultra Ray神谷 春人橘 駿は檻の中でため息をついていた。
 檻の外では黒服男たちが監視をしており、こちらから脱走する方法は見当たらない。 
 イクスピナのショッピングモールは逃げ回る参加者の悲鳴で溢れ、彼らを10人の黒服男たちがまるでサイボーグ戦士のように追いかけている。
 そしてさらにその姿をSma★mekiTVの撮影スタッフが追い、設置された何台もの隠しカメラ達が絶えずネット上に配信し続けているのであった。
 どうにか逃げ延びているはずの早見 迅桐島 泰河はどうしているのだろうか。
 そんなことを思いながら、春人と駿はもう一度ため息を付くのだった。

「ちょ、ちょっと、何するのよ~!? イ、イヤー、誰か助けて~!!」
 川村 萌夏は4人の黒服に囲まれ、噴水の前でもみくちゃになっていた。
 萌夏は何やら「違う違う」と訴えているようだ。
「ち、違う、誤解よ! わたし、『全力エスケープ・ナウ!』の出演者じゃないわ~ッ!!」
 猫耳のカチューシャ、と思いきや、よく見るとそうでもないらしく、萌夏も耳を引っ張られて「痛い痛い」と半泣きである。
 しかし、黒服男たちには通じていないと見え、カメラスタッフも面白がって萌夏に近づいてくる。
 配信画面には「猫耳危うし!」などという赤文字テロップが踊っていた。
「い、いやぁ~ッ! お願い、放してッ!! あと、カメラも回さないで~!! 痛ぁ~い!耳、引っ張らないでッ! これ、カチューシャなんかじゃなくて本物の獣耳なんだからぁッ!! だから! アップで映すのやめて! ホント、ホント痛いから~!」
 萌夏は黒服2人に羽交い締めにされ、さらに他の2人に耳を引き剥がされそうになるなど散々な目に遭ったのだが……。
 ここまで来ると流石に違うのでは、という事になり、最後には番組ADが走ってきて黒服を引き剥がした。
 番組が始まる前に、カチューシャを手渡した者たちの顔はだいたいスタッフが把握しており、それによって事なきを得たようだ。
「TVのむこうのちびっ子のみんニャ! やぁ、ボクはネコ騎士のニャーコだニャ!」
 ネコ騎士の着ぐるみを着た桃城 優希はカメラに手を振っていた。
「ボクのご主人様がイクスピナにいるって聞いたんだニャ。みんニャこの人を知らニャいかニャ? 知ってたら教えてほしいニャ!」
 優希はカメラに向かって、魔女のコスチュームにウサ耳を付けたアリサ・ホープライトの写真を見せた。
 画面上では映像が切り替わり、ジュエリーショップで大きなルビーの指輪を試着するアリサが映った。
 アリサの後ろにはブランド店のショップバッグを山ほど抱えたサーバントゴーレムが控えている。
 どうやら、すでに優雅なショッピングを楽しんだらしく、視聴者の子どもたちからは「うさぎのおねぇさんがばくがい(爆買い)してた」「まじょのひとがたなのおようふくぜんぶかった」などというメッセージが一斉に届いた。
「うんうん。なるほど……あっちの宝石のお店にいるんだニャ? みんニャ! ありがとうニャ!」
 優希はアクロスケボに乗り、ジュエリーショップに向かって走り出した。
 すると、さっきまで萌夏に群がっていた黒服たちが一斉に優希を追い始めた。
 どうやら、優希が猫耳カチューシャを着ぐるみに紛れ込ませているのがバレたようだ。
「来たニャ黒服! よーし、負けニャいぞー!」
 優希はジュエリーショップの前でアクロスケボを乗り捨て、黒服達を迎え討った。
 するとそこへ、大きなルビーの指輪をしたアリサが買い物を終えて店から出てきた。
「まぁ、あなた達何なの? さては私の買い物を邪魔する気ね! そうはさせないわ!」
 アリサは闇の炎でダークフレア・ウィップを生成し、黒服達の前に立った。
 そして優希とアリサの周囲をカメラスタッフが取り囲み、配信画面は「ネコさんがんばれー」というちびっ子の応援や、「ウサ耳魔女のお姉さんサイコー」という大きいお友達からの応援メッセージで溢れた。
「ご主人様には指一本触れさせないニャ! ニャーコマジック!」
 優希はプチマジックで背中のマントからネコ騎士ソード、ネコ騎士シールドを取り出し、黒服に向かっていくと、峰打ちでこれを仕留めた。
 そして、アリサはダークフレア・ウィップで群がる黒服をねじ伏せた。
「さぁて、次はメイドカフェでお茶してこようかしら。行くわよニャーコ?」
「ああっ! ご主人様待ってくださいニャー!」
 アリサは仕上げにリトル・ストームで竜巻を起こして黒服を遠ざけると、颯爽と次の目的地へ。
 優希はアクロスケボを引きずり、慌ててその後を追っていった。

「フハハハハッ! さあて、気合入れていくぞ! 絶対に逃げ切ってやる!」
 シュバルツ・トレヴァーはライオンのカチューシャを付け、ショッピングモール内を駆け抜けた。
 そして、後から追ってきた黒服とカメラスタッフに気づくと、とびきりの「グッドスマイル」でアピールした。
「ふふん、俺(のカチューシャ)が欲しくてたまらないんだろう? なら全力で追い縋って求めてみせろ。それぐらいしなきゃ……俺を捕まえることはできないぞ?」
 その挑発的な笑顔と甘い囁きに魅了されたであろう画面の向こうの視聴者(と黒服)を残し、シュバルツは仕上げのウィンクをカメラに向けると、階段を駆け上がり、颯爽と遠ざかる。
 そしてカメラスタッフのいない場所まで来ると、1人、「決まった」とほくそ笑んだのであった。
「完璧だったな! この日の為に練習した甲斐があった! フハハハハッ! 俺の笑顔は、性別の壁を超えて万物を魅了するのだ!」
 実はその頭上に監視カメラがあり、バッチリその様子を配信されていたのだが……シュバルツは気づいていなかったようである。
 そしてその時、シュバルツの進む反対方向から霧崎 玲奈が2人の黒服に追われて走ってきていた。
 玲奈は立ち並ぶ店の角まで来ると身を翻し、追いすがる黒服に足をかけて転ばせた。
「ごめんねっ! ボクはまだ捕まるわけにはいかないんだ!」
 残り1人が転んだ黒服につまづきそうになった隙に玲奈は逃げた。
 周囲には幸い他に黒服の気配もなく、このまま逃げ切れるかのように見えた。
「よーし、残りはあと……2時間半くらいだよね。このまま最後まで頑張って逃げ切らなきゃね!」
 玲奈は気合を入れ直し、走った。
 しかし、その先の角を曲がろうとした時だった。
「きゃああ!」
「うわぁっ!?」
 玲奈は向こうから走ってきた誰かに激突して転倒。
 相手はシュバルツであった。
 そして、 玲奈を追ってきた黒服がこのチャンスを逃すはずがなかった。
「やっ、ヤダ嘘、嘘っ……!? 早すぎるよね、っていうか、ええっ!?」
「な……なに?! ちょ、ちょっと待て……! マジか? え? マジか?!」
 何とも不運であるが、黒服にも任務がある。
 転んで動けない2人に手を伸ばすと、カチューシャをひょい、と持ち上げたのであった。
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