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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

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全力エスケープ・ナウ!

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【残り 0:25】

 残り時間が30分を切った頃、小鈴木 あえかはスイーツショップでお勧めの一品を注文していた。
 店では七夕を意識した新作のフルーツゼリーを売り出したばかり。
 あえかの横には番組の撮影スタッフが一緒に来ていた。
「おいしい! 見てくださいほら! ここにね、イチゴと桃で出来たハートとお星様が入ってるんです! サイダーの青いゼリーもミントの香が爽やかで、食べるととっても涼しくなるんです!」
 グッドスマイルでアピールしながら、あえかは店の中で「あるもの」を探していた。
 それは、盆栽店で早見 迅が見つけた鍵のような「隠しアイテム」だった。
 それと同じものが別の店にもあるに違いない。
 そう信じ、あえかがゼリーを食べながらホークアイとコアチェックで隈なく店の中を調べていると、店員が伝票と一緒に何かを持ってきた。
 それは檻を開ける1人限定復活キーだった。
「わわっ! やっぱりありました! あのっ、檻の近くにいる参加者方、聞こえますか!? どなたか、復活キーを取りに来てください! ネットで見てる方いましたら、お願いします!」
 あえかは参加者がスマホなどで見てくれていることを祈りながら、カメラに向かって鍵をアピールした。
 すると、すぐに店の中に駆け込んできたのは橘 駿だった。
「俺が預かる! 貸してくれ!」
「良かったです! 駿さん、お願いします!」
「ああ、必ず届ける!」
 駿はあえかの復活キーを預かり、走り出した。
 しかし、そのとき店の向こうに4人の黒服の姿が現れ、駿を見つけて追いかけ始めた。
 既に疲労困憊の駿は何人もに追いかけられて逃げおおせる体力は残っていなかった。
「まずいな……これでは!」
 その時、駿の目の前にエキストラの人だかりが現れた。
 屋根の上でパフォーマンスしている世良 延寿を見に集まったギャラリーだった。
「せっかくのテレビ番組なんだから、見てるみんなにも楽しんでもらわないとね!」
 ウサ耳カチューシャを付けた延寿は看板の上や屋根の上でダンスを踊って観客の視線を集める。
 さらに、ハイジャンプやアクロバットキックの動きで存在をアピールした。
「黒服の人たち、もしかしてここまで来られないの? 私はここだよ!」
 屋根から屋根へ踊り回り、延寿は楽しげにダンスを踊る。
 黒服はその下をうろうろし、見上げていた。
 登って延寿を追いかけようとする者もいたが、どうにもスーツの生地が突っ張ってしまい、うまく登れないようだ。
 それを見た駿は、「やはり……屋根か!」と呟き、ギャラリーに紛れて黒服の目を逃れると、店舗の飾り塀を足場に屋根の上に上がった。
「あれ、駿! 檻から逃げられたの?」
「ああ! これから仲間を助けに行くんだ。延寿、健闘を祈る!」
 駿は延寿にそう声をかけると、檻の方角を目指して走っていった。
 その後ろから、どうにか屋根に上げることに成功した黒服の1人が追ってくる。
 それを見ると、延寿はぴょん、と軽く看板の上に飛び移り、隣の棟の店舗の上に逃れた。
「私もまだまだ捕まらないよ! みんな、じゃーねー♪」
 延寿は観客に手を振り、ハイジャンプしながら逃げていった。
 その姿に、皆楽しそうに拍手を送っていた。
「んっんー。あの人ウルレイ? だっけ? 逃げてんのかな……まぁいいか。って! 黒服来たし! 何やってんのあの人!?」
 一浜 遥華は駿を追って黒服が現れたのを見ると、慌てて逃げ出した。
 黒服は遥華に標的を変更し、追いかけてきた。
 危ないと判断した遥華は振り返り、制服のシャツをちらりとめくり上げた。
「おいたはだめだよー? おにーさん。 ところでこれ見える? 見えない? どう?」
「!」
 突然のセクシーアピールをされた黒服は足を滑らせ、花壇に落下した。
 下は幸いにも柔らかい土。
 ガシャン、という音がしたものの、「植え込みに入らないでください」の看板を凹ませただけで無事だったようだ。
「ごめんねー、お兄さん。備品は……大丈夫じゃないな。でも、私のせいじゃないよね……? ていうか、こんなのでノックアウトってどういう人選なんだろー」
 遥華はそろそろとその場から逃げ出した。
 見ると、下にはギャラリーが集まり、遥華に何やら期待の視線を向けている。
 そこで、遥華は軽く大道芸を演じてみせることにした。
「楽しそうだねーみんな。こんなのはどう?」
 ハイジャンプしながらドーナッツの看板の上でおどけてみせる遥華。
 観客は笑いながら手を叩いていた。
「面白い? じゃあ、もうちょっとだけだよ? 屋根の上は危ないんだから」
 遥華を始め、個性派揃いのアイドルたちが思い思いのパフォーマンスをする中、時間は残り15分に迫っていた。
 長かった3時間の番組も、いよいよクライマックスである。
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