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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

全力エスケープ・ナウ!

リアクション公開中!
全力エスケープ・ナウ!

リアクション

【残り 1:12】

 ハートの宝石獲得数が9つとなり、残り一箇所の待機所封鎖への期待が高まる中、ステージの盛り上がりはますます好調であった。
 そして、満を持してパフォーマンスを開始したのは、【絶対逃げ切り隊】を組んだ合計13名のメンバーだった。
『みんなー! いつきくんが集めてくれたカチューシャ、みんな付けたかな?』
 ポップ☆マイクを手にした虹村 歌音が呼びかけると、観客は歓声で歌音に応えた。
 客席ではウィリアム・ヘルツハフトが集まってくる観客たちにイクスピナ内で入手したカチューシャを配って歩いている。
 舞台の上の歌音はラビットパーカーを着てウサ耳のカチューシャを付け、可愛らしいウサギさんになっていた。
『今回のライブのテーマはズバリ「アニマルライブ」だよ! みんなで動物になって盛り上がろうね!!』
 ステージ後ろの画面には歌音の姿が大きく映され、そこには視聴者から届いた応援のメッセージが絶え間なく流れ続けている。
 そして、まず一曲目のオープニングナンバーが流れ始めた。
『ほないくでみんな! MVP目指して歌います! さぁ、盛り上げていこかーっ!』
 ボーカル担当のハヤテ・シュートロックはたぬき耳。
 その隣で猫耳を付けたギターボーカルの氷堂 藤が“Black cat”をかき鳴らし、歌詞を口ずさむ。
 ハヤテと藤の歌声に合わせ、観客はその場で小刻みにジャンプし始めた。
(予想以上の盛り上がり……あんま目立ちすぎると黒服達が来ちゃうかな。だけど)
 藤は歌いながら、舞台の下の観客を見回した。
 みんなそれぞれに配布された獣耳のカチューシャを付け、こちらに声援を送り続けている。
 隣りにいるハヤテを見ると、チャームウィンクを交えてアピールしつつ、場を盛り上げることに全力を尽くしていた。
 その姿に、藤の演奏にも力が入る。
(そうだね……! ライブはまだ、これからだ! せっかくの企画なんだし、エキストラの皆も巻き込んで一緒に!)
 藤は観客に微笑みかけると、エモーショナルプレイでいっそう激しくギターをかき鳴らした。
 会場いっぱいに響くギターソロに、エキストラの歓声がうねりのようになって押し寄せる。
『みんな! もっともっと盛りあがろ! 一緒に歌って!!』
 藤がシャトン・ド・リーブルを握りしめ、声を上げて場を煽る。
 観客がわっと声を上げる。
(盛り上がってきましたね。エキストラさんや視聴者の皆さんを楽しませる事が出来るように……僕も頑張らないと!)
 狐耳を付けた雨宮 いつきのキーボードにも熱が入る。
 その隣の歌音もオーバーエレキギターを手にエモーショナルプレイで観客の興奮を煽り、ますます自分たちの世界へと引き込んでいく。
(次は4人で……! 虹村さん、氷堂さん、ハヤテさん、いきますよ!)
 いつきが3人と目を合わせ、アレンジを効かせた最大音量のグリッサンドでキーボードをかき鳴らす。
 そして、4人は息を合わせ、思い切り声を張った。
 楽しい、の気持ちを一気に盛り上げて。
 演奏者も、歌い手も、観客も、画面の向こうまで一体になれるように、もっともっと音を響かせて。
 4人の美しいハーモニーに合わせ、観客は手を叩き、ルミマルを振る。
 画面には「最高!」「もっと盛り上げて!」「会場にいます! イクスピナにいるみんな、ステージに集まって!」というメッセージが溢れ、映像をかき消すようにその数を増していく。
『みんな! 楽しんでる?! まだまだ、これからだよ!』
 歌音のソロはトリッキーフェイクで動物っぽい気まぐれさも表現して。
 ライブの盛り上がりに呼応して、獣耳の数は増えていった。
『猫耳! 盛り上がってる?! ウサ耳! もっと歌ってええよ! うちと一緒のたぬき耳おるー?! よっしゃ! 次の曲行くで! 最初はいつきはんのソロパートや! みんな、もっと盛り上げてなー!!』
 ハヤテがキャッチーフレーズでエキストラの心を鷲掴みにし、2曲目へ。
 画面に映った恥ずかしげないつきの顔が次第に笑顔になってゆく。
(……ライブで人前に立つのって、本当は少し苦手でしたけど…こうして皆で歌って演奏して、お客さんにも楽しんで貰うのって……なんだかすっごく楽しくて、今ならなんだって出来そう……!)
 キーボードを演奏しながら、その歌声にも楽しさが溢れていた。
 そこにハヤテがコーラスを合わせ、藤と歌音がギターのエモーショナルプレイで観客の気持ちを引き寄せる。
(ハートの宝石……目標は20個、なんていうんやけども……やっぱり30個40個、といっぱい集めたいね!)
 ハヤテは盛り上がる観客の顔を見ながら手応えを感じていた。
 それは、藤や歌音も同じだった。
(集めるのはあと3つ……だけど、私たちはそんな程度じゃない!)
(もっともっと、新鮮で驚きに満ちた歌を披露しちゃうよ!)
 このまま、ラストまで全力で、観客のハートを惹きつけて。
 ライブは最高潮の盛り上がりを見せていた。
 しかし、それは黒服にとっては敗北を意味している。
 当然、彼らが黙っているはずがなかった。
「皆さん……来ましたよ!」
 ステージの一番後ろにいたいつきが黒服達の接近に気づき、他の3人に注意を促した。
 だが、ハヤテは振り返り、「大丈夫や」と言った。
「ステージ下にいるみんなが頑張ってくれるはずや。それにこの盛り上がりや。そう簡単には近づけへんで!」
 会場は見渡す限りの観客で埋まっている。
 そこを掻い潜りステージを目指す黒服。
 彼らを阻止すべく、何人もの仲間が動き出していた。
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