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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

動き始める影×セレブリティ・セレモニー!

リアクション公開中!
動き始める影×セレブリティ・セレモニー!

リアクション

アイドルはR-0


 舞台裏から白波 桃葉が、大ホールの客席を見回した。満員御礼、というわけでなく、ステージが見えづらい場所は空席になっているあたり、本日の客層を表している。
「いろんな人が集まってるって話だけど、要するに子供からご年配の方まで分かりやすければいいんでしょ?」
 いくら目が肥えていようと、人が感動するものは案外シンプルなものだ。桃葉は今日のためにライブの内容を構想していた。“悪事を働くやつらと戦う正義の味方”という直球のチャンバラ活劇。
「と、いうわけで。ノーマ、クロシェル、あなたたちも来なさい」
「魔女に拐われた役でもすりゃいいのか」
「……ちょっと、まさか可愛い私に悪役をやらせるつもり?」
 桃葉は、クロシェルを威圧するように言った。
「あなたたちが悪役に決まってるじゃない。セブンスフォールでも似たような感じのことしてたんだし。違和感ないわよ」
「悪だくみならキミも負けてないと思うけどね」
「つべこべ言ってないで、いいからやれ☆」
 桃葉が、ノーマを微笑(にら)んだ。
「まあ案外おいしいもんだぞ。この業界、キラキラした奴は多いから、悪役も出来るなら優遇される」
 龍造寺 八玖斗が二人を説得した。
「ってことで、ノーマには邪神官。クロシェルは用心棒役を頼む」
 八玖斗を中心に、男性陣が打ち合わせをしている間。
 くノ一装束に着替えて“歌姫忍者”となった桃葉が、麦倉 音羽ユナ・ラプティスに配役をふりわけていた。
 題して活劇ロック:歌姫3姉妹。その設定はこうである。

 長女:ユナ
 次女:桃葉
 3女:音羽

(ユナさんはともかく……桃葉がお姉さん……?)
 音羽は、納得してない顔をしていた。

――――。
――。

 それでも出番がくれば、音羽は台本通りしっかりとステージに上る。
 なにやら彼女はクロシェルに担がれ、どこかへ運ばれているようだ。となりではノーマがユナを背負って、同じようにどこかへ連れさろうとしている。
「……少し休憩するか」
 クロシェルが、音羽を地面に横たえた。ノーマもそれに続く。
 その時、音羽がふと目を覚ました。驚いた様子であたりを見ながら言う。
「私……どうしてこんなところに?」
「邪教信者の彼らが、歌の力で邪神を復活させようとしているのですわ」ユナがささやくように言った。「そしてわたくしたちは捕まってしまった」
「……そうだわ。私達の歌は、邪神の生贄になるのね」
 うなだれる音羽。
「諦めないでください。希望は、ありますわ。3姉妹にはまだ桃葉がいます。そして、八玖斗さんもね」
 役に入り込んだユナが優美なる威光を放ちつつ、気丈に振る舞った。
(……あれ?)
 音羽がちらりとクロシェルを見た。台本ではここで彼の台詞が入るはずだったが、トチッていた。妹想いなユナの熱演に見入ってしまったのである。
「別に、返してあげてもいいんだけどね。邪神さえ復活できたらさ」
 すかさずノーマが、アドリブでフォロー。にやにやと笑いながら続ける。
「でも、そうだなー。返す前にキミ達のこと、二度と歌えない身体にしてあげようか。くひひ」
「ふざけないで!」
 ノーマの迫真の演技力(?)に、義憤に燃える桃葉が叫んだ。だんだん緊張感が増してくる。観客も食い入るように舞台を見つめた。
 桃葉がデーモンズタロットを投げ、ノーマの足止めを図ると、舞台袖を振り返りながら言った。
「邪教の奴らが居る場所を見つけたわ。さぁ、乗り込むわよ!」
 現れたのは、ビジョンブレードを構えた八玖斗である。木苺着物が粋に揺れている。
 侍風の出で立ちで対峙する八玖斗が、クロシェルに告げた。
「連れてきてやったぜ、最後の一人をな。お代はその二人で頼む」
「みすみす渡すと思うか?」
 気を取り直して、クロシェルも全力の演技。
「――こいつが、お代だぜ!」
 クロシェルが襲いかかってきた。桃葉も光る棒を構えて、迎撃する。
 八玖斗の曲活劇ロックに合わせて、戦闘がはじまる。棒の両端についたミラーボール風の球をキラキラさせながら、剣戟の声で効果音を。臨場感たっぷりの戦いの音が飛び交う。
「さあ、二人は返してもらうわよ!」
 桃葉はステージ上を縦横無尽に回転し、飛び回る。タンブルファイアによる幻の炎が会場を熱気で包む。
 しかし、クロシェル達も負けていない。実戦さながらの気合いで、クロシェルが八玖斗を吹っ飛ばした。宙に浮いた八玖斗の身体がゆるやかに落下し、光のエフェクトが弾ける。ムーングラビティによる演出が、臨場感をさらに高めた。
 ノーマもまた、ライブ用の魔法で桃葉を吹っ飛ばす。
「桃葉、姉さん……龍造寺さん……ッ!」
 音羽がすっと立ち上がると、ユナを振り返った。
「今こそ、私たちのチカラを合わせる時――。想いをひとつにして歌いましょう!」
 音羽が奏でたのは、私が私の道になるだ。最後まで諦めないで――そんな希望を、トゥインクルノーツの光の音符を輝かせながら、力強く歌い上げる。ユナも寄り添うようにして、コーラスを重ねた。
 続けて、キラーチューンで曲を盛り上げると、プラネットギターをかき鳴らして、インストゥルメント・ランゲージ。もはやそこに言葉はいらなかった。想いを曲に込めて、観客の心に直接ぶつける。
 それに呼応されたように、八玖斗もゆらりと立ち上がった。音羽の曲が終わると、八玖斗は芸器を構えて再び活劇ロックをかき鳴らす。
 疾走感のあるロックを演奏しながら、クロシェルに向けて、スペクタクルバトルショウ。華やかな音や衝撃を散らすチャンバラを披露する。
 桃葉も立ち上がると、ノーマと戦闘をはじめた。活劇ロックがサビに差し掛かり――

「「俺達が勝つに決まってるっ!」」

 八玖斗と桃葉が、歌に合わせて台詞を叫べば、後半の歌詞に合わせて、

「「絶対勝つに決まってる」」

 ノーマとクロシェルも、それに応じた。

 戦いは、邪教徒組のほうが優勢だった。押され気味の桃葉だったが、身体中から力を絞り出すようにして、ノーマと向かい合う。
「ここから――私たちの逆転勝利よ!」
 歌と踊りを混ぜた、ミニットインビジブル。目をくらませて姿を一瞬見えなくしたあと、ノーマには倒れてもらって、自分はとにかく格好いいポーズを取る。なんかすごい会心の一撃が出たような感じにした。
 八玖斗もまた、クロシェルに向けてミニットインビジブルを。斬った瞬間が捉えられない、神速の斬撃を演出する。
 クロシェルが、どさりと倒れた。
 桃葉がすぐさま、音羽とユナに近づいていく。
「二人とも無事でよかったわ」
「ええ。ありがとう、桃葉……姉さん」
 音羽は納得していない顔を押し殺しながら言った。

 3人姉妹はこれからも手を取り合い、世界の平和のために歌うのでした。
 めでたし、めでたし――。


 八玖斗がナレーションを入れると、客席からは拍手が巻き起こる。
「ナウい活劇じゃったのう」
 と、満足そうに呟くお爺さんもいた。時代劇風のライブに、特にお年寄り世代から好評を得たようだった。


☆☆☆



 次なる演目は、夢見るマジシャン少女 ~憧れの魔女への変身~
 空莉・ヴィルトールによるマジックショーだ。
 ステージに上がった空莉は、最初はトランプマジックに、コインマジックを披露する。手先で繰り出される鮮やかな一芸。巨大モニタに手元がアップされるも、巧みな技術を駆使したマジックは見抜けない。
 しかし、これはまだまだ準備運動だ。簡単なマジックをしながら、光の粉のようなキラキラしたエフェクトを纏うと、あら不思議。一瞬でお姫さまなドレスに早変わり。
 フェアリーテイルプリンセスをひるがえしながら、空莉はちょっとコケティッシュに告げた。
「ここからは魔女姫モード♪」
 鏡迷宮のデビルシューズを、よく磨かれた床で踏み鳴らす。悪魔の羽根が踊れば、ステージの端から端へと瞬間移動だ。
「本領発揮だよっ!」
 ピカピカ反射する床を利用した、いたずらな魔女の舞踏会。空莉は綺麗に磨かれたところに目星を付けて、飛び出していく。移動する場所こそ限られてしまうが、素敵なダンスと決めポーズを交えて、観客を惹きつける。
「観客席にだって行っちゃうぞ~!」
 空莉がピカピカの中に潜りこむと、客席にある金属の手すりを利用して飛び出した。驚いた人たちに笑顔で応えてから、
「ふっふっふ♪♪ 姿を消したりもするよ! だって魔女だもの!!」
 ミニットインビジブルで、空莉は再びステージへ。どこかミステリアスな雰囲気を漂わせつつ、空莉がポーズを決める。
 きゃあきゃあと、可愛らしい歓声が上がった。“おとな”に憧れる女の子たちが、うっとりした様子で空莉を見つめていた。


☆☆☆



「アイドルは売り物ではありません!」
 ぷくっと頬を膨らませたナレッジ・ディアが、ゲーム機を片手にクロティア・ライハを振り返った。
「卑劣な行為を阻止するためにライブしますよ、マスター!」
 ナレッジは、スティッチを用いてスクリーンに投影する。モニターに音ゲーの画面が映し出された。
 その間、クロティアはまず下準備として、天使と悪魔の協奏曲でプライ――クロティアの姿をキャラメイクした分身――の肉体を生成した。ゲームの記録が詰まった黄色い電子の塊を、プライに使用する。
『ふう……今回もよろしく。三次元の僕』
 目覚めたプライもまた、プライコードブロックのレプリカを、クロティアに使った。
「頼むわよ、プライ……」
 ゲームの記憶を共有しあうと、クロティアはステージに上がり、スイートサプライズでたくさんのお菓子を運び込んだ。ナレッジが渦巻きの精霊を呼び出し、風を起こす。お菓子の匂いが会場に広がり、甘い香りと雰囲気で満たされた。
 しかし、クロティアはちょっとだけ苦い顔を浮かべていた。
(今回の騒動、やばい存在が動いてるみたいだけど、私にはどうすることもできないわね。……ならゲームライブで盛り上げるまでよ!)
 クロティアが顔を上げた。ナレッジの選曲したノリの良いポップが響くなか、クロティアは舞台袖を振り返って告げる。
「サプライズゲストの登場よ!」
 招き入れたのは、PRESENT SMILEのメンバー、村雲 いろはだった。
「よろしくね」
 一礼し、いろはがゲーム機から流れる音楽に合わせて踊る。いろはに流れるゲーマーの血が滾っていく。
 ナレッジは左手にスティッチ、右手にクロスベルを構え、澄んだ鈴の音を曲に合わせて鳴らした。
「さあ、観客の皆さんも盛り上がっていきましょう!」
 最初はパフォーミングで、簡単な動きから。しだいにゲーム音楽に合わせて、手拍子を促す。観客が少しずつノッてきたのを見ると、クロティアとナレッジ、そしてプライといろはが、それぞれ向かい合って、踊った。
 曲がサビに差し掛かる。セレブたちの手拍子も、だんだん様になってきたようだ。会場が盛り上がってきた、その時。
『今後ともクロティアをよろしくね』
 ふいに、プライが囁いた。いろはにだけ聞こえるよう、耳元にそっと顔を寄せて告げる。
『いろはさんのこと、クロティアはとても大切な人だと思っているわ……』
「そんなの、もちろんよ。だって私も――」
 同じように耳打ちするいろは。その声は、手拍子の音にかき消された。
 二人の様子を見て、クロティアは不思議に思う。あんなやりとりは想定していなかった気がするけれど。いったい何を話していたのだろう。
 そしてクロティアは、分身を作ったとき、頭によぎった言葉を思い出した。もしかしてプライは……。
 クロティアの胸が、かあっと熱くなる。
 しかし、今はライブに集中する時だ。ステージ上に浮かんだTouch!のマーク。タイミングのミスは許されない。持ち前の落ち着きを取り戻したクロティアが、熟練の動きで触れると、エフェクトが飛び出す。

Fever!


 キラキラした演出のなか、ナレッジが観客の感情を束ねて、幻で包み込んだ。現れた景色は、おなじみ音ゲーの画面。最高難度のステージだろうか。滝のように流れるノーツは、まさに観客たちのアドレナリンだ。
「うおおおおっ」
 やんちゃな男の子が、ボタンを叩く真似をして、はしゃいでいた。
 ゲームライブも、佳境に差し掛かる。
「しっかり決めていきましょう!」
 ステージ上では、クロティアとプライが入れ替わり、互いに寄り添うようにしつつ、ポーズを決めた。
 客席から拍手が巻き起こる。ナレッジがクロスベルを振りながら応えた。
「皆さんにおいしいお菓子をおすそわけです」
 そして、スイーツサプライズのお菓子をお客さんに配っていった。


 観客に配りつつも、お菓子は一つだけ確保しておいた。
 クロティアが、とっておいたお菓子を、いろはに手渡そうとする。
「私はいらないわ」
 いろははそう言うと、消えていくプライを見つめながら、呟いた。
「もっと甘いものを、もらったから。――なんてね」
 いたずらっぽく微笑むと、いろははお菓子を受け取り、嬉しそうにかじった。
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