歩く今と見る未来
リアクション公開中!

リアクション
■それぞれの幸せ
朝、フェイトスターアカデミー、中庭。
「先日はお世話になりました」
仲間と歩いている所を桃子に声を掛けられた合歓季 風華は、『エレガンスアティチュード』の高貴さ漂うカーテシーで挨拶。
「こちらこそ、前回は気持ちよく眠ちゃったよっ!」
桃子は前回の配信の感想を口にしてから
「えと、初めましてっ!!」
初対面の四人に挨拶をしてから、本題へ。
「未来を見る飴……前に体験した風鈴を思い出すな」
イシュタム・カウィルは、以前華乱葦原で妹の幻を見た事を思い出し、傍らの妹と似た雰囲気を持つ水鏡 ルティアをちらり。
「確かにあの風鈴を思い出す不思議さだ」
天草 燧は、風華の姉の幻を見た事を思い出してから
「それにイシュタムさんとのお出かけもあれが初だったね」
笑み、イシュタムと繋いだ手を一瞥。ひょんな事で、手を繋ぎ参加するイベントを経ての今だ。
「あぁ、一緒に行って、珍しい体験をして」
イシュタムも同じ気持ちだと、頷いた。
「……未来ですか」
ルティアは、関心があるものの控えめに未来飴を見る。
「よし、ルティア、一緒に食べて大人になった俺達を見てみよう」
水鏡 彰が深く考えることもなく誰よりも一番に協力を決めた。
続いて、他の四人も協力を決めた。
「ありがとうっ!!」
桃子は礼を言って未来飴を渡してから、協力者捜しに戻った。
「綺麗なお色の飴……未来を見られるなんて……」
風華は、驚きつつも未来飴を口に運んだ。
「どんな未来がみえるんだろうな(燧と交わした約束はどうなっているんだろうか)」
「どうなのだろうね(……イシュタムさん交わした約束の行方はどうなのかな)」
イシュタムと燧は、手を繋いだまま未来飴を口に運んだ。交わした約束を胸に抱き。
「どんな味がするんだろうな」
「……美味しいといいですね」
彰とルティアは、興味津々と未来飴を口に運んだ。
五人は、口内に広がる程よい甘さと共に訪れた未来を迎えた。
(……ここは舞台の控え室? どうやら2年後みたいですね)
周囲の様子から風華は、どれほどの未来かを確認し
(……2年後だからなのか、私も少しだけお姉さん風味)
二十歳の風華を見付けくすり。その姿は2つ上の姉にそっくりだ。
(しかも身に纏う白ロリコーデ……間違いありません)
未来の風華が纏う白ロリコーデに今の風華は見覚えがあった。
(昨年より始めた衣装デザインの記録に文面として起こした「Ever Ephemeral」が洗練されたもの)
【自伝:命短し着飾れ少女4】内の不変の少女性がテーマの白ロリセットコーデである。
「その衣装、ひと舞台限りの完成を見せた一着だって、何かで取り上げてたよね」
似たファッションに身を包む女性が、未来の風華に話し掛けて来た。
「はい、いつか現実の形で完成をとあたためて来たものです」
未来の風華はにっこりと答えた。
出番が訪れ、未来の風華は数人と共に控え室を出て
(行き先は……やはり舞台ですか)
今の風華の予想通り舞台へ。
(……近しいファッション……ここは同好の士が集う場なのですね)
広がる光景に今の風華は、飴を舐めきるまで時を忘れて楽しんだ。
(……沢山の人……ステージに立つのは……私、ですね……2年後くらい、でしょうか……)
客で溢れるステージに立つ23歳のルティアが歌唱法『ラカストリンシング』で、しっとりと歌う。
「ルティアちゃんの歌って素敵」
「このしっとりとした感じがいい」
「歌が好きって言う想いが込められてるなぁ」
観客達は聞き惚れるばかり。
(……想いが……こめられている、ですか……)
観客の反応に今のルティアは、何やら思う。
ライブが終わり
「……フェスタに来るまでは……歌は好きでしたが……これといった特別なレッスンなどはしていなくて……」
未来のルティアは楽屋にてインタビューを受けていた。
「……セブンスフォールでプリーストの方々が特別な想いを込めて、歌っていた所を見て……私も好きな歌で伝えられたらいいな、と……」
学ぶきっかけを聞かれ、未来のルティアは回顧するが如く遠い瞳で答え
「……歌を学ばせてもらっていたので……実って嬉しい限り、です……」
先のライブの疲れを見せぬ笑顔で締めた。
(……本当に嬉しい限り、ですね……)
今のルティアもまた同じ気持ちだった。
インタビューを終えて、会場を出た瞬間
「ルティア、お疲れ」
笑顔の彰に迎えられた。当然未来のため少し大人である。
「……彰も、ライブお疲れ様」
ルティアは、愛らしい笑顔で労った。
「よし、美味しい物でも食べに行くか」
「……はい」
彰とルティアは、お喋りをしながら仲良く飲食店へ。
(……彰と幸せに暮らしている光景……ですか……)
そんな水鏡夫妻の仲睦まじい様子に今のルティアの胸は、幸せで満たされた。
(ステージに立つのは、俺か。それも5年後か、少し大人になってるな)
煌びやかなステージで、22歳の彰が歌うのは
「♪♪」
騎士を夢見る少年が、想いを寄せる少女に向けて紡いだとされる【君と謳う未来】。
「微笑ましい気持ちになるな」
「彰、今日も魅せてくれ」
客達を魅了する。
そうして、本日の活動を終えた彰は帰路を急ぐ。
着いた場所は
(……ここはどこだ。煩くなくて静かな所だな)
今の彰には、覚えがない随分静かな所。
(……家に……あれは俺だな……アイドルの仕事が終わったのか)
そんな場所にある家に未来の彰が帰宅し
「ただいま」
玄関のドアを開けると
「……お帰りなさい、彰……」
迎えてくれるのは、23歳と大人になった妻のルティアだ。
それも彼女だけでなく
(……5年もあとなら、子供くらいいると思ったけど……本当に……まあ、結婚してるわけだし)
ルティアの腕には、幼い子供の姿があった。
「ただいま」
未来の彰は笑顔で子供の頭を撫でてから、家族仲良く家の中へ。
食事をしたり遊んだりとのんびり寛ぐ中
「……明日はアイドルのお仕事はお休みだから、アイドル教室の日だけど……大丈夫ですか?」
未来のルティアが、夫の身を案じつつ明日の予定を聞いて来た。
「大丈夫だ」
未来の彰は、ライブの疲れを感じさせない笑顔で応じた。
翌日。
「彰先生、今日は歌を教えてよ」
「ねぇねぇ、僕が考えた振り付け見てよ!」
「先生も一緒に踊ろうよーー」
彰の生徒である子供達で、静かな家が大賑わい。
(すごい賑やかだな。アイドルの仕事が無い時は、子供達に歌やパフォーマンスを教えているんだな)
未来の彰は、子供達に指導をしたり共に訓練を行う。
そんな彰の姿を、未来のルティアは子供と一緒に
「……彰さん」
温かく見守っていた。
(……なんでもない日常を、二人で生きていく……幸せだな)
今の彰は、優しい未来に顔が綻んだ。
「こんな所に町があったとはな」
「一週間前に訪れた町も素敵だったけど、ここも良さそうな町だね」
未来のイシュタムと燧が、夜を迎えた小さな町の通りを歩いていた。
(未来というが、それ程今と変わりがないな。町に見覚えはないが、燧と交わした約束を果たしたのだな)
(……見た事のない町……1年程先かな。どうやらイシュタムさんとの約束果たしたみたいだね)
今のイシュタムと燧は様子から近い未来だと察したが、互いに同じ未来を見ているとは知らない。
未来のイシュタムと燧は広場で足を止め
「よし、始めるか」
「ソルフェさん、始めるよ」
互いの連れである星獣のフルートバードと≪星獣≫ソルフェさんに声を掛けてから
「♪♪」
未来のイシュタムは、今と変わらずスウィングフルートを奏で、時にフルートバードと戯れ美しい二重奏を紡ぐ。
心底奏でる事を楽しんでいる未来の自分に対して
(……私は二つの夢を見ていた……父の期待に応えて皆を守る戦士になるか、母の期待に応えて皆を笑顔にする奏者になるか……決断をしたのはついこの間で、多くの人々を笑顔にしたいその意気込みで演奏して見たのは……)
今のイシュタムの胸に、次々と思いが過ぎるが
「♪♪」
歌う未来の燧を見て
(決断を後押しするように輝いていた皆の笑顔と共に演奏した燧の笑顔……未来の私はその決断の通り……燧との約束の通りに演奏していたんだな)
口元を歪めた。
「♪♪」
未来の燧は、奏でられるフルートの音色に合わせて歌う。周囲ではソルフェさんが『≪星獣≫スカイスイマー』で、飛ぶように生き生きと泳いでいる。
(……歌ってる自分を見てると色々去来するものがあるなぁ)
今の燧は、しみじみと思いを巡らす。
「♪♪」
未来の燧は満天の星空と満月を仰ぎ、奏でられる音に身を委ね歌う。
(僕の歌の原点は気付いたら歌ってた感じで、花を撫でる風、日差しを飾る朝露、目がくらむほどの満天の星空、例えば美しい風景の一部にでもなりたかったような)
「♪♪」
未来の燧の歌声から歌う事への愛を感じる。
(それを偶然聞いてくれた人がいて、合唱も始めて……一度は失われると絶望した声を守り……フェスタではアイドルとして個を持ち舞台に)
今の燧は、これまでの日々を回顧する。合唱団出身の歌唱や語りを愛するボーイソプラノの自分、成長により声を失うかもしれないと絶望するも守った事を。
「音楽が聞こえたから来てみれば」
「わぁあ、素敵!!」
「友達が言ってた素敵な演奏をする旅人かな」
二人の演奏に引かれ、いつの間にか観客が溢れる。
「♪♪」
未来のイシュタムは、巧みな操作で付属の紐を操りフルートを振り回し、風を起こし音を奏で
「♪♪」
未来の燧は、歌いながら笑顔を浮かべる。
(そしてこの未来、はっきり集まってくれた人達に歌ってる)
今の燧は、未来の自分の笑顔の向かう先に笑んだ。
「俺達は2年後も5年後も一緒だな」
「……はい……とても幸せです」
水鏡夫妻は、仲睦まじく未来を語り合った。
「……燧」
「約束叶っていたね」
イシュタムと燧もまた未来を語り合う。
「……目標や夢に突き進んでいましたね」
風華は未来を噛み締める。
丁度そこに
「未来飴は残り1個! あと少し!」
協力者捜しをする桃子が通りかかった。
「モコさん!」
見付けた風華が声を掛けた。
「あっ、未来飴舐め終わったの? インタビュー大丈夫? 駄目だったら予定通り明日にするよ?」
桃子は気付き、動画配信用の端末機を見せた。
五人は快諾を示し
「未来の私は目標に夢に向かい歩んでいました。モコさん、ありがとうございます」
まず語ったのは風華。自分とロリィタファッションな【自伝:命短し着飾れ少女4】を交えて。
「その舞台、アタシも見たいな。それで目標は?」
桃子は続けて訊ねた。
「日常は勿論、舞台でも機会を見て袖を通すロリィタファッション、その道のモデルが、入学より変わらぬ私の目標です」
風華は胸を張って答えた。「砂糖菓子のお姫様」がコンセプトのケープ付ワンピースドレス白夜のシュガリィブライトを堂々と纏って。
「……私が見た未来は……2年後くらい、でしょうか……歌手としてライブをしている光景と……夫の彰と幸せに暮らしている光景……です……」
「俺は5年後の未来を見た。静かなところに家を買って、ルティアと暮らしていた」
ルティアと彰は、年月は違うも共に幸せな未来を語った。
「幸せな未来だねっ! 聞いてるこっちも何か幸せな気分になるよっ!!」
桃子は微笑ましげに、にこにこ。
「二人で交わした約束を果たした未来を見た」
イシュタムは簡潔に答える。
「約束って?」
桃子が興味津々と聞き返すと
「広い世界の素敵なものを見、舞台で伝えていこうっていう、旅の約束だよ」
燧が笑みを浮かべながら答えた。
「わぁ、素敵な約束だねっ!」
桃子は、興奮気味に手を叩いた。
「1年後の未来、夜の小さな町の広場でお互いの星獣を連れてライブをしている光景だ」
イシュタムは、ありのまま見た未来を語り
「生き生きと歌っていたよ」
燧は、自身を振り返るように答えた。
「アタシもその場にいたらなぁ」
桃子は、見たくて堪らない様子だ。
インタビューが終わると、桃子は協力者捜しに戻った。
朝、フェイトスターアカデミー、中庭。
「先日はお世話になりました」
仲間と歩いている所を桃子に声を掛けられた合歓季 風華は、『エレガンスアティチュード』の高貴さ漂うカーテシーで挨拶。
「こちらこそ、前回は気持ちよく眠ちゃったよっ!」
桃子は前回の配信の感想を口にしてから
「えと、初めましてっ!!」
初対面の四人に挨拶をしてから、本題へ。
「未来を見る飴……前に体験した風鈴を思い出すな」
イシュタム・カウィルは、以前華乱葦原で妹の幻を見た事を思い出し、傍らの妹と似た雰囲気を持つ水鏡 ルティアをちらり。
「確かにあの風鈴を思い出す不思議さだ」
天草 燧は、風華の姉の幻を見た事を思い出してから
「それにイシュタムさんとのお出かけもあれが初だったね」
笑み、イシュタムと繋いだ手を一瞥。ひょんな事で、手を繋ぎ参加するイベントを経ての今だ。
「あぁ、一緒に行って、珍しい体験をして」
イシュタムも同じ気持ちだと、頷いた。
「……未来ですか」
ルティアは、関心があるものの控えめに未来飴を見る。
「よし、ルティア、一緒に食べて大人になった俺達を見てみよう」
水鏡 彰が深く考えることもなく誰よりも一番に協力を決めた。
続いて、他の四人も協力を決めた。
「ありがとうっ!!」
桃子は礼を言って未来飴を渡してから、協力者捜しに戻った。
「綺麗なお色の飴……未来を見られるなんて……」
風華は、驚きつつも未来飴を口に運んだ。
「どんな未来がみえるんだろうな(燧と交わした約束はどうなっているんだろうか)」
「どうなのだろうね(……イシュタムさん交わした約束の行方はどうなのかな)」
イシュタムと燧は、手を繋いだまま未来飴を口に運んだ。交わした約束を胸に抱き。
「どんな味がするんだろうな」
「……美味しいといいですね」
彰とルティアは、興味津々と未来飴を口に運んだ。
五人は、口内に広がる程よい甘さと共に訪れた未来を迎えた。
(……ここは舞台の控え室? どうやら2年後みたいですね)
周囲の様子から風華は、どれほどの未来かを確認し
(……2年後だからなのか、私も少しだけお姉さん風味)
二十歳の風華を見付けくすり。その姿は2つ上の姉にそっくりだ。
(しかも身に纏う白ロリコーデ……間違いありません)
未来の風華が纏う白ロリコーデに今の風華は見覚えがあった。
(昨年より始めた衣装デザインの記録に文面として起こした「Ever Ephemeral」が洗練されたもの)
【自伝:命短し着飾れ少女4】内の不変の少女性がテーマの白ロリセットコーデである。
「その衣装、ひと舞台限りの完成を見せた一着だって、何かで取り上げてたよね」
似たファッションに身を包む女性が、未来の風華に話し掛けて来た。
「はい、いつか現実の形で完成をとあたためて来たものです」
未来の風華はにっこりと答えた。
出番が訪れ、未来の風華は数人と共に控え室を出て
(行き先は……やはり舞台ですか)
今の風華の予想通り舞台へ。
(……近しいファッション……ここは同好の士が集う場なのですね)
広がる光景に今の風華は、飴を舐めきるまで時を忘れて楽しんだ。
(……沢山の人……ステージに立つのは……私、ですね……2年後くらい、でしょうか……)
客で溢れるステージに立つ23歳のルティアが歌唱法『ラカストリンシング』で、しっとりと歌う。
「ルティアちゃんの歌って素敵」
「このしっとりとした感じがいい」
「歌が好きって言う想いが込められてるなぁ」
観客達は聞き惚れるばかり。
(……想いが……こめられている、ですか……)
観客の反応に今のルティアは、何やら思う。
ライブが終わり
「……フェスタに来るまでは……歌は好きでしたが……これといった特別なレッスンなどはしていなくて……」
未来のルティアは楽屋にてインタビューを受けていた。
「……セブンスフォールでプリーストの方々が特別な想いを込めて、歌っていた所を見て……私も好きな歌で伝えられたらいいな、と……」
学ぶきっかけを聞かれ、未来のルティアは回顧するが如く遠い瞳で答え
「……歌を学ばせてもらっていたので……実って嬉しい限り、です……」
先のライブの疲れを見せぬ笑顔で締めた。
(……本当に嬉しい限り、ですね……)
今のルティアもまた同じ気持ちだった。
インタビューを終えて、会場を出た瞬間
「ルティア、お疲れ」
笑顔の彰に迎えられた。当然未来のため少し大人である。
「……彰も、ライブお疲れ様」
ルティアは、愛らしい笑顔で労った。
「よし、美味しい物でも食べに行くか」
「……はい」
彰とルティアは、お喋りをしながら仲良く飲食店へ。
(……彰と幸せに暮らしている光景……ですか……)
そんな水鏡夫妻の仲睦まじい様子に今のルティアの胸は、幸せで満たされた。
(ステージに立つのは、俺か。それも5年後か、少し大人になってるな)
煌びやかなステージで、22歳の彰が歌うのは
「♪♪」
騎士を夢見る少年が、想いを寄せる少女に向けて紡いだとされる【君と謳う未来】。
「微笑ましい気持ちになるな」
「彰、今日も魅せてくれ」
客達を魅了する。
そうして、本日の活動を終えた彰は帰路を急ぐ。
着いた場所は
(……ここはどこだ。煩くなくて静かな所だな)
今の彰には、覚えがない随分静かな所。
(……家に……あれは俺だな……アイドルの仕事が終わったのか)
そんな場所にある家に未来の彰が帰宅し
「ただいま」
玄関のドアを開けると
「……お帰りなさい、彰……」
迎えてくれるのは、23歳と大人になった妻のルティアだ。
それも彼女だけでなく
(……5年もあとなら、子供くらいいると思ったけど……本当に……まあ、結婚してるわけだし)
ルティアの腕には、幼い子供の姿があった。
「ただいま」
未来の彰は笑顔で子供の頭を撫でてから、家族仲良く家の中へ。
食事をしたり遊んだりとのんびり寛ぐ中
「……明日はアイドルのお仕事はお休みだから、アイドル教室の日だけど……大丈夫ですか?」
未来のルティアが、夫の身を案じつつ明日の予定を聞いて来た。
「大丈夫だ」
未来の彰は、ライブの疲れを感じさせない笑顔で応じた。
翌日。
「彰先生、今日は歌を教えてよ」
「ねぇねぇ、僕が考えた振り付け見てよ!」
「先生も一緒に踊ろうよーー」
彰の生徒である子供達で、静かな家が大賑わい。
(すごい賑やかだな。アイドルの仕事が無い時は、子供達に歌やパフォーマンスを教えているんだな)
未来の彰は、子供達に指導をしたり共に訓練を行う。
そんな彰の姿を、未来のルティアは子供と一緒に
「……彰さん」
温かく見守っていた。
(……なんでもない日常を、二人で生きていく……幸せだな)
今の彰は、優しい未来に顔が綻んだ。
「こんな所に町があったとはな」
「一週間前に訪れた町も素敵だったけど、ここも良さそうな町だね」
未来のイシュタムと燧が、夜を迎えた小さな町の通りを歩いていた。
(未来というが、それ程今と変わりがないな。町に見覚えはないが、燧と交わした約束を果たしたのだな)
(……見た事のない町……1年程先かな。どうやらイシュタムさんとの約束果たしたみたいだね)
今のイシュタムと燧は様子から近い未来だと察したが、互いに同じ未来を見ているとは知らない。
未来のイシュタムと燧は広場で足を止め
「よし、始めるか」
「ソルフェさん、始めるよ」
互いの連れである星獣のフルートバードと≪星獣≫ソルフェさんに声を掛けてから
「♪♪」
未来のイシュタムは、今と変わらずスウィングフルートを奏で、時にフルートバードと戯れ美しい二重奏を紡ぐ。
心底奏でる事を楽しんでいる未来の自分に対して
(……私は二つの夢を見ていた……父の期待に応えて皆を守る戦士になるか、母の期待に応えて皆を笑顔にする奏者になるか……決断をしたのはついこの間で、多くの人々を笑顔にしたいその意気込みで演奏して見たのは……)
今のイシュタムの胸に、次々と思いが過ぎるが
「♪♪」
歌う未来の燧を見て
(決断を後押しするように輝いていた皆の笑顔と共に演奏した燧の笑顔……未来の私はその決断の通り……燧との約束の通りに演奏していたんだな)
口元を歪めた。
「♪♪」
未来の燧は、奏でられるフルートの音色に合わせて歌う。周囲ではソルフェさんが『≪星獣≫スカイスイマー』で、飛ぶように生き生きと泳いでいる。
(……歌ってる自分を見てると色々去来するものがあるなぁ)
今の燧は、しみじみと思いを巡らす。
「♪♪」
未来の燧は満天の星空と満月を仰ぎ、奏でられる音に身を委ね歌う。
(僕の歌の原点は気付いたら歌ってた感じで、花を撫でる風、日差しを飾る朝露、目がくらむほどの満天の星空、例えば美しい風景の一部にでもなりたかったような)
「♪♪」
未来の燧の歌声から歌う事への愛を感じる。
(それを偶然聞いてくれた人がいて、合唱も始めて……一度は失われると絶望した声を守り……フェスタではアイドルとして個を持ち舞台に)
今の燧は、これまでの日々を回顧する。合唱団出身の歌唱や語りを愛するボーイソプラノの自分、成長により声を失うかもしれないと絶望するも守った事を。
「音楽が聞こえたから来てみれば」
「わぁあ、素敵!!」
「友達が言ってた素敵な演奏をする旅人かな」
二人の演奏に引かれ、いつの間にか観客が溢れる。
「♪♪」
未来のイシュタムは、巧みな操作で付属の紐を操りフルートを振り回し、風を起こし音を奏で
「♪♪」
未来の燧は、歌いながら笑顔を浮かべる。
(そしてこの未来、はっきり集まってくれた人達に歌ってる)
今の燧は、未来の自分の笑顔の向かう先に笑んだ。
「俺達は2年後も5年後も一緒だな」
「……はい……とても幸せです」
水鏡夫妻は、仲睦まじく未来を語り合った。
「……燧」
「約束叶っていたね」
イシュタムと燧もまた未来を語り合う。
「……目標や夢に突き進んでいましたね」
風華は未来を噛み締める。
丁度そこに
「未来飴は残り1個! あと少し!」
協力者捜しをする桃子が通りかかった。
「モコさん!」
見付けた風華が声を掛けた。
「あっ、未来飴舐め終わったの? インタビュー大丈夫? 駄目だったら予定通り明日にするよ?」
桃子は気付き、動画配信用の端末機を見せた。
五人は快諾を示し
「未来の私は目標に夢に向かい歩んでいました。モコさん、ありがとうございます」
まず語ったのは風華。自分とロリィタファッションな【自伝:命短し着飾れ少女4】を交えて。
「その舞台、アタシも見たいな。それで目標は?」
桃子は続けて訊ねた。
「日常は勿論、舞台でも機会を見て袖を通すロリィタファッション、その道のモデルが、入学より変わらぬ私の目標です」
風華は胸を張って答えた。「砂糖菓子のお姫様」がコンセプトのケープ付ワンピースドレス白夜のシュガリィブライトを堂々と纏って。
「……私が見た未来は……2年後くらい、でしょうか……歌手としてライブをしている光景と……夫の彰と幸せに暮らしている光景……です……」
「俺は5年後の未来を見た。静かなところに家を買って、ルティアと暮らしていた」
ルティアと彰は、年月は違うも共に幸せな未来を語った。
「幸せな未来だねっ! 聞いてるこっちも何か幸せな気分になるよっ!!」
桃子は微笑ましげに、にこにこ。
「二人で交わした約束を果たした未来を見た」
イシュタムは簡潔に答える。
「約束って?」
桃子が興味津々と聞き返すと
「広い世界の素敵なものを見、舞台で伝えていこうっていう、旅の約束だよ」
燧が笑みを浮かべながら答えた。
「わぁ、素敵な約束だねっ!」
桃子は、興奮気味に手を叩いた。
「1年後の未来、夜の小さな町の広場でお互いの星獣を連れてライブをしている光景だ」
イシュタムは、ありのまま見た未来を語り
「生き生きと歌っていたよ」
燧は、自身を振り返るように答えた。
「アタシもその場にいたらなぁ」
桃子は、見たくて堪らない様子だ。
インタビューが終わると、桃子は協力者捜しに戻った。