■嘘と本当が交錯するライブ


　夜、ショッピングモール『イクスピナ』の屋外特設ステージ。

「皆、楽しんでいるようだな（俺主催の現実の超アドリブ舞踏会の劇を開催だ）」
　死　雲人が威風堂々現れると同時に
「あら、王だわ」
「いつお見かけしても素敵なお姿」
「王様、一曲お相手してくれませんか」
　貴族の娘達に取り囲まれ、ダンスのお願いをされる。
　しかし
「ふっ……美女達からのダンスの誘いが多くて最高だな！」
　ハーレムの王役である雲人は、不敵な笑みを湛え余裕の構えだ。
「むっ、あの姫は……（今夜は俺のハーレムの女兼俺の専属女優としてミランダの魅力をアピールするぞ）」
　雲人は、貴族の娘に混じる他国の姫ことセクシーなドレスを纏うミランダ・カースを発見し、接近。
　そして
「ミランダ。ドレスが似合って可愛いな」
　ギュッとミランダを抱擁する。
「！！」
　思わず抱擁に驚き、ミランダは言葉が出ず。相手が雲人だからかこそ。
「お前は俺の女だろ？　行くぞ」
　雲人は劇を続け
「は、はい」
　何とか立て直したミランダと共に見事なオペラを披露しつつ
「ハーレムは俺がリードしないとな！　女は幸せにする！」
　彼女の手を取りダンスへエスコート。
「……ミランダ、上手いな」
　踊りつつ雲人は、こそっとミランダに耳打ちした。
「……そんな、雲人さんの方こそ」
　ミランダもまた耳打ちし返す。
　そんな事をしつつも、二人はステップを違える事無くダンスを続けた。
　最中
「わぁあ、素敵なダンス！」
　多くの観客同様に桃子は、二人のダンスに大興奮。
「くく……（俺等美男美女の踊りに圧倒されて最高だ！）」
　雲人は、客席の反応に口元を歪め
「カッコいい男の女だから、幸せ者だなミランダは」
　自信に満ちた台詞を吐く。
「……格好いいだけではありません。優しくて、強くて……怖かったあの時も……」
　これまでの事が胸に迫りミランダは頬を染め、素に戻す。
　しばらくしてダンスは終わりを迎え
「……」
　互いに見つめ合う。明らかにいい雰囲気だ。
　このまま終わりを迎えると思いきや
「ミランダ」
　雲人がミランダを抱擁し
「……（できればキスだ）」
　キスを迫り、ミランダを本日最高に戸惑わせた。
「……えっ、あの……雲……いえ、王……」
　相手が相手だけに劇だと割り切れずミランダは顔を真っ赤にし、見るから惑う始末。
「……（顔を真っ赤にしたミランダも可愛すぎる）」
　雲人はミランダの様子を愛でてから、隙を突く形で唇を寄せた。
「……！！」
　ミランダは、驚き一層顔を赤くするだけで拒む様子はなかった。