【異世界カフェ・番外編】猫祭り
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◆猫祭りのパレード(5)
猫姫の乗った山車の後方で楽しそうに鼻歌交じりで歩いているのは、猫の仲間である虎の半妖になったシャーロット・フルール。
そしてその隣を歩くのは、【踊り神主装束】を着たアレクス・エメロードだ。
彼の頭に付いている猫耳は、主人のシャーロットによって付けられたもの。
「ボクのふるーる座も突撃だっ!」
と意気込むシャーロットにアレクスは引っ張ってこられた格好だ。
アレクスは歩きながら主人を横目で見つめた。
(あーうん。猫は可愛いな。めっちゃ気まぐれで行動が読めねぇのが難だけどよ……)
猫のことを語っているようで実は主人のことを思い描いているアレクスだ。
アレクスはここ葦原の街で、猫祭りを気楽に楽しめる幸せを噛みしめていた。
(しっかし偉いさんや黄泉神相手の舞芸が続いたんで、こう庶民向けなのは久々だな。シャロの手前、手抜きするわけにゃいかねぇが、気負わず演れんのは平和でいいこった)
パレードの行進が止まり、パフォーマンスタイムになった。
待ってましたとばかりに、シャーロットがいきなりパワー全開になってパフォーマンスを開始する。
「値千金、芸格千両♪ ボクの葦原での原点たる糸と独楽の舞をご覧あれ!」
そう言うやいなや【分身の術】を使い、分身を二つ生み出した。
二体の分身は本体のシャーロットを置いてそこら中を走り回り、【七色のあやとり蜘蛛紐】で蜘蛛の糸を張り巡らして、あっという間に移動式ステージを作りあげた。
七色の糸が妖気を帯びてキラキラと妖しく煌めく。
その特設ステージの上をシャーロットと分身たちは【蛍火の衣】を翻しながら飛び回り、大小さまざまな【吃驚虎独楽】を出して高速回転させる。
「華炎の妖獣シャロちゃんの秘芸、魅せちゃうよっ♪」
ひょいひょいと糸の上を跳ね回るシャーロットを追いかけるアレクスは、心の中で舌打ちした。
(なんでシャロが三人に増えんだよ、くっそ、一人でもきついつーのに。『気負わず演れる』だぁ? そんなこと思ってた数刻前の俺を怒鳴りつけてぇ……)
心中慌てつつもアレクスは懸命にシャーロットを追い、【天女の舞】を舞いながら、張り巡らされた七色の糸から糸へ飛び移っていく。
その間にもシャーロットがポンポンと飛ばしてくる【吃驚虎独楽】を、アレクスは【憑代の番傘】で巧みに受け、【踊り神主装束】を翻して傘回しを披露する。
アレクスの一連のテクニックは見事なもので、信頼関係で結ばれた主人と弟子の、まさに「阿吽の呼吸」が成せる技だった。
アレクスの纏った【舞神の輝気】は見物人に主従の関係を誤解させ、「虎半妖の少女に翻弄される神主姿の青年」に見えたようで、まるでアレクスを応援するかのようなヤジが浴びせられる。
だがアレクスの猫耳に気付いた人には、あるいは「虎(猫)神さまとそれを奉る神主」に見えたかもしれない。
ヤジという名の声援を受けて、アレクスは【字走り花火】で「ふるーる一座」の文字を上空に輝かせた。
大勢の人々に注目されている絶好の機会に宣伝することを忘れなかったのは、アレクスのお手柄だった。
そうこうしている間に、シャーロットは【万魔夜行】で小さな猫の妖怪の幻を無数に出現させた。
猫の妖怪の幻は糸を伝い、にゃーにゃーとそこら中に広がっていく。
「おいでませ猫祭りっ☆ 街中がねっこねこっ♪」
煽るように歌うシャーロットの頬はうっすらピンク色に上気して輝いている。
「にゃははは~、楽しいねっ!」
心底楽しくてテンションの上がったシャーロットは懸命についてくる健気な弟子を見て、ふと、彼に悪戯することを思いついた。
二体の分身と共に糸の上を飛び交い、ぽぽんと【陽気:舞踊七変化】で宙返りを繰り返すと、三人三様に様々なものに次々と変身していく。
糸伝いに猫姫の山車の上に乗ったり、また降りてきたり。
シャーロットと分身たちが変身を繰り返してはシャッフルするようにくるくる場所を入れ替わり、アレクスの目を惑わす。
シャーロットは悪戯っぽく、しかし弟子を試すように問うた。
「さ、本物はだーれだっ☆」
アレクスは主人の出した難問にもたじろがない。
「けっ、なめんなよ。本物は……シャロはこっち……だろ?」
見事一発で本物を言い当てられ、腕をグッと引き寄せられたシャーロットは、嬉しさと悔しさがない交ぜになってどうしていいか分からない。
「うん……アレクちゃん、当たり……」
先程までの元気はどこへやら、小声でひとこと言ったきり、シャーロットは俯いて無言になってしまった。
猫姫の乗った山車の後方で楽しそうに鼻歌交じりで歩いているのは、猫の仲間である虎の半妖になったシャーロット・フルール。
そしてその隣を歩くのは、【踊り神主装束】を着たアレクス・エメロードだ。
彼の頭に付いている猫耳は、主人のシャーロットによって付けられたもの。
「ボクのふるーる座も突撃だっ!」
と意気込むシャーロットにアレクスは引っ張ってこられた格好だ。
アレクスは歩きながら主人を横目で見つめた。
(あーうん。猫は可愛いな。めっちゃ気まぐれで行動が読めねぇのが難だけどよ……)
猫のことを語っているようで実は主人のことを思い描いているアレクスだ。
アレクスはここ葦原の街で、猫祭りを気楽に楽しめる幸せを噛みしめていた。
(しっかし偉いさんや黄泉神相手の舞芸が続いたんで、こう庶民向けなのは久々だな。シャロの手前、手抜きするわけにゃいかねぇが、気負わず演れんのは平和でいいこった)
パレードの行進が止まり、パフォーマンスタイムになった。
待ってましたとばかりに、シャーロットがいきなりパワー全開になってパフォーマンスを開始する。
「値千金、芸格千両♪ ボクの葦原での原点たる糸と独楽の舞をご覧あれ!」
そう言うやいなや【分身の術】を使い、分身を二つ生み出した。
二体の分身は本体のシャーロットを置いてそこら中を走り回り、【七色のあやとり蜘蛛紐】で蜘蛛の糸を張り巡らして、あっという間に移動式ステージを作りあげた。
七色の糸が妖気を帯びてキラキラと妖しく煌めく。
その特設ステージの上をシャーロットと分身たちは【蛍火の衣】を翻しながら飛び回り、大小さまざまな【吃驚虎独楽】を出して高速回転させる。
「華炎の妖獣シャロちゃんの秘芸、魅せちゃうよっ♪」
ひょいひょいと糸の上を跳ね回るシャーロットを追いかけるアレクスは、心の中で舌打ちした。
(なんでシャロが三人に増えんだよ、くっそ、一人でもきついつーのに。『気負わず演れる』だぁ? そんなこと思ってた数刻前の俺を怒鳴りつけてぇ……)
心中慌てつつもアレクスは懸命にシャーロットを追い、【天女の舞】を舞いながら、張り巡らされた七色の糸から糸へ飛び移っていく。
その間にもシャーロットがポンポンと飛ばしてくる【吃驚虎独楽】を、アレクスは【憑代の番傘】で巧みに受け、【踊り神主装束】を翻して傘回しを披露する。
アレクスの一連のテクニックは見事なもので、信頼関係で結ばれた主人と弟子の、まさに「阿吽の呼吸」が成せる技だった。
アレクスの纏った【舞神の輝気】は見物人に主従の関係を誤解させ、「虎半妖の少女に翻弄される神主姿の青年」に見えたようで、まるでアレクスを応援するかのようなヤジが浴びせられる。
だがアレクスの猫耳に気付いた人には、あるいは「虎(猫)神さまとそれを奉る神主」に見えたかもしれない。
ヤジという名の声援を受けて、アレクスは【字走り花火】で「ふるーる一座」の文字を上空に輝かせた。
大勢の人々に注目されている絶好の機会に宣伝することを忘れなかったのは、アレクスのお手柄だった。
そうこうしている間に、シャーロットは【万魔夜行】で小さな猫の妖怪の幻を無数に出現させた。
猫の妖怪の幻は糸を伝い、にゃーにゃーとそこら中に広がっていく。
「おいでませ猫祭りっ☆ 街中がねっこねこっ♪」
煽るように歌うシャーロットの頬はうっすらピンク色に上気して輝いている。
「にゃははは~、楽しいねっ!」
心底楽しくてテンションの上がったシャーロットは懸命についてくる健気な弟子を見て、ふと、彼に悪戯することを思いついた。
二体の分身と共に糸の上を飛び交い、ぽぽんと【陽気:舞踊七変化】で宙返りを繰り返すと、三人三様に様々なものに次々と変身していく。
糸伝いに猫姫の山車の上に乗ったり、また降りてきたり。
シャーロットと分身たちが変身を繰り返してはシャッフルするようにくるくる場所を入れ替わり、アレクスの目を惑わす。
シャーロットは悪戯っぽく、しかし弟子を試すように問うた。
「さ、本物はだーれだっ☆」
アレクスは主人の出した難問にもたじろがない。
「けっ、なめんなよ。本物は……シャロはこっち……だろ?」
見事一発で本物を言い当てられ、腕をグッと引き寄せられたシャーロットは、嬉しさと悔しさがない交ぜになってどうしていいか分からない。
「うん……アレクちゃん、当たり……」
先程までの元気はどこへやら、小声でひとこと言ったきり、シャーロットは俯いて無言になってしまった。