【異世界カフェ・番外編】猫祭り
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◆猫祭りのパレード(4)
蔵樹院 紅玉と蔵樹院 蒼玉は双子の姉妹で名前に紅と蒼の色名が入っていることが、藍と茜の特性ととてもよく似ている。
そういう関係性もあって、この二組の双子はお互いに非常に親近感を持っているのだ。
紅玉と蒼玉は、夏祭りの時のライブステージに藍と茜が出られなかったことを残念に思っていた。
「前回は事件のせいで残念だった舞台を今度こそは、ですわっ!」
「今度こそステージ、成功させましょうねぇ?」
猫祭りの晴れ舞台は是非成功させてやりたいと、今日は気合を入れてパレードに参加している。
紅玉と蒼玉は猫祭りにピッタリな衣装を既に持っていた。
それは異世界カフェで着ていた、猫耳付きヘッドドレスを含めた和ゴス風メイド服。
紅玉のは【傾奇侍女服 紅猫式】で、蒼玉のは【傾奇侍女服 蒼猫式】だ。
ライブ用衣装である上に、デザインとしてはメイド服であるため動きやすいこの衣装は、今日のようなパレードにも打って付けだ。
長い黒猫尻尾をゆらゆら振りながら【舞忍の踊踏】で軽やかにステップを踏む二人のダンスは、紅と蒼の猫が楽しそうに遊んでいる様子を思わせとても可愛らしい。
エプロンのフリルをひらめかせてウインクや投げキッスを沿道の見物人に投げかけると、猫好きな人々はその健康的な魅力にハートを撃ち抜かれるのだった。
そんな二人が【唐紅六訓楼屡】で熱く歌っている歌は『百花繚乱・満開恋華(フルブラウンフラワーズ)』。
紅玉のソロ曲【恋衣輝心】と蒼玉のソロ曲【恋蛍煌想】を組み合わせた歌で、乙女の恋心を表現しているキュートな歌なのだった。
楽しく歌い踊る紅玉と蒼玉は派手に動き回っていたが、歌の最後に猫姫を盛り上げる演出をしっかり組み込ませていた。
先に紅玉が猫姫の山車の上空に【字走り花火】を打ち上げると、赤い花火で「猫」「茜」の文字が輝いた。
続いてその文字の下に打ち上げられた蒼玉の青い【字走り花火】は、「姫」「藍」の文字を煌かせる。
二人の赤と青の花火の文字を組み合わせると「猫姫」「茜藍」となり、猫姫たちのサインのようでもあり彼女たちを祝福するようでもあった。
珍しい花火の文字を見て、見物人たちは歓声を上げ拍手をしている。
藍と茜も素晴らしい花火の演出を見上げ、猫姫の立場を忘れて思わず手を叩いて喜んだ。
「紅玉さ~ん、蒼玉さ~ん!」
「すごく素敵です! ありがとうございます!!」
山車の上から手を振って大声で叫ぶ猫姫たちに向かって、蒼玉がニヤリと微笑んだ。
「ふふっ、あまり不甲斐ないと主役、取ってしまいますわよぉ? 猫姫らしく堂々となさっていてほしいですわぁ」
悪役令嬢ぶっている蒼玉だが、口でそう言っているだけなのだ。
今回の主役はあくまでも猫姫の藍と茜。
紅玉と蒼玉はそう心得て、この後も猫姫を盛り上げてパレードを続けたのだった。
***
パレードの隊列の中で歩きながら、猫のお面を被った羽鳥 唯は、猫の半妖姿の渋谷 柚姫にすっとぼけた調子で説明していた。
「唯ちゃんでも秘柘榴(ひめざくろ)でもありませんよ、ユズキ。私は猫柘榴(ねこざくろ)です」
猫柘榴こと唯が着ているのは葦原風とディスカディア風を合わせた和サイバー衣装。
かつて「葦原かふぇ」を手伝った時に着たものだ。
猫柘榴になりきって楽しんでいる唯に付き合って、柚姫は質問で応じてやる。
「唯じゃないんだったら、なんで僕の名前を知っているんだ?」
柚姫の鋭いツッコミに一瞬たじろいだものの、唯は負けない。
「……えーと……そうですね……あ、ユイという少女から聞いたのです」
上手い答えが見つかったと思って得意そうにしている唯に、脱力する柚姫である。
丁度その時、パレードの行進が止まってパフォーマンスの時間になった。
唯が【舞神の輝気】の圧倒的な存在感を纏い、【伊達名乗り】で大仰な名乗りを上げる。
「名乗るほどのものではございませんが、聞かれたからには答えましょう……。通りすがりの六訓楼羅亜(ロックンローラー)、猫柘榴と申します」
「よっ、猫柘榴!」
「待ってましたっ、六訓楼羅亜!」
などと見物人から声が飛ぶ。
柚姫は横で(誰も名前なんて聞いてないって……)と額を押さえていたが、唯が楽しげにしているのでここは突っこまないことにした。
唯が【夜焔の六弦琴】を奏でると、超自然の炎が迸り出た。
その音に合わせて歌い出したのは【唐紅六訓楼屡】に乗せた【天下御免羅舞存句】。
激しい曲調の中に歌詞の甘さが込められた斬新なラブソングだった。
唯の歌が終わると、柚姫は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】を顕現させて鳳凰それぞれに唯と茜を乗せた。
次に柚姫は【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】を顕現させてから藍をしっかり抱えた。
「藍さん、しっかり掴まっててね……じゃ、行くよ!」
藍を抱えたまま柚姫は【浮遊身転】でくるりと一回転して【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】に飛び乗った。
二対の鳳凰が、唯と茜、柚姫と藍を一人ずつ乗せて火の粉を散らしながら見物人の頭上を悠然と飛び回ると、「おぉ~」と歓声が起こった。
しばらく飛んだ後、見上げている人々の目の前で【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の鳳凰が合体して一つになった。
そのとき柚姫は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】に飛び移り、茜と素早く入れ替わった。
【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の上で二人の猫姫が揃う。
そのまま飛び回る【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の上から、猫姫たちは優雅に手を振って見物人の歓声に応えるのだった。
そんな猫姫への見物人の視線を遮らないように、柚姫と唯は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】に乗ったまま、パレードの隊列から外れる。
少し離れた広場に降り立って、唯は猫のお面を取った。
「ユズキ。上から見えたのですが『らぁめんばぁがぁ』という屋台があったのです。一緒に行きましょう!」
パレードはまだ終わっていなかったが、好奇心旺盛な唯は新しく発見したものに興味が移ってしまったらしい。
柚姫の手を引いてお目当ての屋台に向かってずんずん歩いている。
(『パレードが終わったら』一緒にお祭りに行こうって言ってたんじゃなかったっけ?)
唯に引っ張られながら柚姫は再び額を押さえたが、自分たちのパフォーマンスも終わったし、唯のしたいようにさせてやろうと思うのだった。
蔵樹院 紅玉と蔵樹院 蒼玉は双子の姉妹で名前に紅と蒼の色名が入っていることが、藍と茜の特性ととてもよく似ている。
そういう関係性もあって、この二組の双子はお互いに非常に親近感を持っているのだ。
紅玉と蒼玉は、夏祭りの時のライブステージに藍と茜が出られなかったことを残念に思っていた。
「前回は事件のせいで残念だった舞台を今度こそは、ですわっ!」
「今度こそステージ、成功させましょうねぇ?」
猫祭りの晴れ舞台は是非成功させてやりたいと、今日は気合を入れてパレードに参加している。
紅玉と蒼玉は猫祭りにピッタリな衣装を既に持っていた。
それは異世界カフェで着ていた、猫耳付きヘッドドレスを含めた和ゴス風メイド服。
紅玉のは【傾奇侍女服 紅猫式】で、蒼玉のは【傾奇侍女服 蒼猫式】だ。
ライブ用衣装である上に、デザインとしてはメイド服であるため動きやすいこの衣装は、今日のようなパレードにも打って付けだ。
長い黒猫尻尾をゆらゆら振りながら【舞忍の踊踏】で軽やかにステップを踏む二人のダンスは、紅と蒼の猫が楽しそうに遊んでいる様子を思わせとても可愛らしい。
エプロンのフリルをひらめかせてウインクや投げキッスを沿道の見物人に投げかけると、猫好きな人々はその健康的な魅力にハートを撃ち抜かれるのだった。
そんな二人が【唐紅六訓楼屡】で熱く歌っている歌は『百花繚乱・満開恋華(フルブラウンフラワーズ)』。
紅玉のソロ曲【恋衣輝心】と蒼玉のソロ曲【恋蛍煌想】を組み合わせた歌で、乙女の恋心を表現しているキュートな歌なのだった。
楽しく歌い踊る紅玉と蒼玉は派手に動き回っていたが、歌の最後に猫姫を盛り上げる演出をしっかり組み込ませていた。
先に紅玉が猫姫の山車の上空に【字走り花火】を打ち上げると、赤い花火で「猫」「茜」の文字が輝いた。
続いてその文字の下に打ち上げられた蒼玉の青い【字走り花火】は、「姫」「藍」の文字を煌かせる。
二人の赤と青の花火の文字を組み合わせると「猫姫」「茜藍」となり、猫姫たちのサインのようでもあり彼女たちを祝福するようでもあった。
珍しい花火の文字を見て、見物人たちは歓声を上げ拍手をしている。
藍と茜も素晴らしい花火の演出を見上げ、猫姫の立場を忘れて思わず手を叩いて喜んだ。
「紅玉さ~ん、蒼玉さ~ん!」
「すごく素敵です! ありがとうございます!!」
山車の上から手を振って大声で叫ぶ猫姫たちに向かって、蒼玉がニヤリと微笑んだ。
「ふふっ、あまり不甲斐ないと主役、取ってしまいますわよぉ? 猫姫らしく堂々となさっていてほしいですわぁ」
悪役令嬢ぶっている蒼玉だが、口でそう言っているだけなのだ。
今回の主役はあくまでも猫姫の藍と茜。
紅玉と蒼玉はそう心得て、この後も猫姫を盛り上げてパレードを続けたのだった。
***
パレードの隊列の中で歩きながら、猫のお面を被った羽鳥 唯は、猫の半妖姿の渋谷 柚姫にすっとぼけた調子で説明していた。
「唯ちゃんでも秘柘榴(ひめざくろ)でもありませんよ、ユズキ。私は猫柘榴(ねこざくろ)です」
猫柘榴こと唯が着ているのは葦原風とディスカディア風を合わせた和サイバー衣装。
かつて「葦原かふぇ」を手伝った時に着たものだ。
猫柘榴になりきって楽しんでいる唯に付き合って、柚姫は質問で応じてやる。
「唯じゃないんだったら、なんで僕の名前を知っているんだ?」
柚姫の鋭いツッコミに一瞬たじろいだものの、唯は負けない。
「……えーと……そうですね……あ、ユイという少女から聞いたのです」
上手い答えが見つかったと思って得意そうにしている唯に、脱力する柚姫である。
丁度その時、パレードの行進が止まってパフォーマンスの時間になった。
唯が【舞神の輝気】の圧倒的な存在感を纏い、【伊達名乗り】で大仰な名乗りを上げる。
「名乗るほどのものではございませんが、聞かれたからには答えましょう……。通りすがりの六訓楼羅亜(ロックンローラー)、猫柘榴と申します」
「よっ、猫柘榴!」
「待ってましたっ、六訓楼羅亜!」
などと見物人から声が飛ぶ。
柚姫は横で(誰も名前なんて聞いてないって……)と額を押さえていたが、唯が楽しげにしているのでここは突っこまないことにした。
唯が【夜焔の六弦琴】を奏でると、超自然の炎が迸り出た。
その音に合わせて歌い出したのは【唐紅六訓楼屡】に乗せた【天下御免羅舞存句】。
激しい曲調の中に歌詞の甘さが込められた斬新なラブソングだった。
唯の歌が終わると、柚姫は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】を顕現させて鳳凰それぞれに唯と茜を乗せた。
次に柚姫は【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】を顕現させてから藍をしっかり抱えた。
「藍さん、しっかり掴まっててね……じゃ、行くよ!」
藍を抱えたまま柚姫は【浮遊身転】でくるりと一回転して【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】に飛び乗った。
二対の鳳凰が、唯と茜、柚姫と藍を一人ずつ乗せて火の粉を散らしながら見物人の頭上を悠然と飛び回ると、「おぉ~」と歓声が起こった。
しばらく飛んだ後、見上げている人々の目の前で【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の鳳凰が合体して一つになった。
そのとき柚姫は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】に飛び移り、茜と素早く入れ替わった。
【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の上で二人の猫姫が揃う。
そのまま飛び回る【≪式神≫舞芸:悪華鳳凰】の上から、猫姫たちは優雅に手を振って見物人の歓声に応えるのだった。
そんな猫姫への見物人の視線を遮らないように、柚姫と唯は【≪式神≫舞芸:日華鳳凰】に乗ったまま、パレードの隊列から外れる。
少し離れた広場に降り立って、唯は猫のお面を取った。
「ユズキ。上から見えたのですが『らぁめんばぁがぁ』という屋台があったのです。一緒に行きましょう!」
パレードはまだ終わっていなかったが、好奇心旺盛な唯は新しく発見したものに興味が移ってしまったらしい。
柚姫の手を引いてお目当ての屋台に向かってずんずん歩いている。
(『パレードが終わったら』一緒にお祭りに行こうって言ってたんじゃなかったっけ?)
唯に引っ張られながら柚姫は再び額を押さえたが、自分たちのパフォーマンスも終わったし、唯のしたいようにさせてやろうと思うのだった。