【伯爵令嬢アリスの憂鬱】結婚式(最終話/全4話)
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◆神様のコレクション捜索(1)
千夏 水希とスピネル・サウザントサマーは、アリスたちが住んでいた村で神様のコレクションを探すことにした。
村で宝石を隠すとしたら、畑の中というよりは家の中だろう。
そう推理した二人はまずラルフの家を捜索するために、ラルフを伴って三人で村にやって来た。
ラルフは伯爵がいる村に戻るのは気が進まなかったが、ピノキエの街での路上ライブで水希とスピネルに助けてもらったことに心から感謝しているので、渋々ついて来たのだった。
さすがにアリスは置いてきた。
もし伯爵に見つかったら捕まるのは確実だからだ。
ラルフの家が見えた時、一行は歩みを止めた。
伯爵の使い魔の大コウモリが家の周りを飛んで見張っているのが見えたのだ。
「まーそりゃ、伯爵の情報収集力半端ないし、あんたの家くらい見張ってるわなー」
水希が額を抑える横で、ラルフは逃げ腰になっている。
「水希さん。ここはやめて他所を探そうよ。うちに宝石なんてあるわけないし」
水希は、ふんと鼻を鳴らした。
「あんた、神様のコレクションがいつなくなったか知らないだろ? あんたが生まれる前に隠されてるかもしれないじゃないか。それに他人の家は探しづらい」
「理由が雑……」
「自分の家なのに見張り付きのこの場所はサイテーだし、できれば近寄りたくもないよね? でも、だからこそ確認しないと」
「そうは言っても、あの大コウモリに見つからないように家に入るのは無理じゃないかな……」
ラルフは山中で襲われた時のことを思い出して、両腕をさすっている。
(さーて、あの見張りどうしようか……)
水希は腕組みをして考察した。
(あのコウモリもアリス拉致隊が全滅してるのは知ってるだろうし、今更逆らうとは思えないな。まずは素直に頼んでみるか)
「ちょっとそこを通して欲しいんだけど……」
水希の申し出に、大コウモリはギロリと睨んで断った。
「ダメ? あっそう」
じゃあ、しゃーない、と水希は【跳梁跋扈のグリモワール】を取り出し「おいでおいで」と呪文を唱えて悪魔の形の小さな魔物たちを呼び出した。
小悪魔たちが大騒ぎしながら威嚇射撃すると、大コウモリは地面に落ちて硬直してしまった。
余裕の笑みを浮かべて、水希は大コウモリに【よしよし】で実力差を思い知らせてやる。
「そこを通して?」
もはやそれは命令なのに、お願いの形で言う水希はさすが「☆魔女」である。
大コウモリが手出しできなくなったので、堂々と家の中に入る三人。
中には簡素な什器があるのみである。
「ほら、うちに宝石を隠せるような所、ないと思うけど……」
家を出てからそう日が経っていないのに、すでに懐かしい気がしてラルフは戸棚を撫でる。
スピネルはドアを開けて部屋を覗いて回っている。
「幸いラルフ君の家はびんぼー……。あ、えっと……し、質素だし! 宝石なんて目立つ目立つ!」
そして寝室を見つけると遠慮なく入り、宝石捜索を開始した。
「では【コアチェック】ー」
クンクンと匂いを嗅いで調べていく。
いきなり「そこのタンスだ!」とスピネルは名探偵が犯人を指さすようなポーズを決めた。
「村の中で隠すなら家の中、家の中で隠すならタンスと……」
スピネルはタンスに駆け寄りためらわずに引き出しを開ける。
「ラルフくんのパンツはっけん!」
「ちょっ! なに勝手に引っ張り出してるんだよ!」
慌てて制止するラルフに構わず、スピネルは次々と引き出しを開けていく。
「ラルフくんはついでに持ち出すもの集めときなよ。……む、何か怪しいものが!」
スピネルが引き出しの奥から取り出したのは手紙の束。
表に「親愛なるラルフへ、アリスより」と書いてあるのが見える。
ラルフは目にも止まらぬ速さでスピネルから取り上げた。
「これはダメ! 神様には関係ないでしょ?」
「「ふうん~」」
スピネルと水希は手紙の内容を想像し、にやにやとラルフを見る。
顔を赤らめたラルフは二人の視線を避けて、手紙の束を大事そうに上着のポケットに仕舞った。
スピネルは【働き者の箒さん】に掃除してもらいながら捜索していくが、宝石は見つからない。
「んー、やっぱないね」
「スピ、神様が持ってた『サルでもわかる天地創造の書』はベッドの下にあったじゃないか」
水希に言われてスピネルは、這いつくばってベッドの下を覗き込んだ。
「あ、なんかあるー」
ベッドの下に潜り込むスピネルを水希はこの時とばかり蹴りつける。
「早く取れ! スピ」
スピネルが掴んできた物は、ブラックダイヤモンドのミニ彫刻。
神様の形のようだ。
「たぶんこれだな。これを持って帰ろう」
水希は大コウモリに、アリスがピノキエで幸せに暮らしていることを伯爵に伝えるよう言いつけて戻った。
結局そのミニ彫刻は神様の物ではなく、†タナトス†が作った自分の像だった。
それが流れ流れて、なぜかラルフの家にあった。
しかし神様はひどく適当なので
「†タナトス†の像だし、これもコレクションにしよっと」
と言って受け取ったのだった。
千夏 水希とスピネル・サウザントサマーは、アリスたちが住んでいた村で神様のコレクションを探すことにした。
村で宝石を隠すとしたら、畑の中というよりは家の中だろう。
そう推理した二人はまずラルフの家を捜索するために、ラルフを伴って三人で村にやって来た。
ラルフは伯爵がいる村に戻るのは気が進まなかったが、ピノキエの街での路上ライブで水希とスピネルに助けてもらったことに心から感謝しているので、渋々ついて来たのだった。
さすがにアリスは置いてきた。
もし伯爵に見つかったら捕まるのは確実だからだ。
ラルフの家が見えた時、一行は歩みを止めた。
伯爵の使い魔の大コウモリが家の周りを飛んで見張っているのが見えたのだ。
「まーそりゃ、伯爵の情報収集力半端ないし、あんたの家くらい見張ってるわなー」
水希が額を抑える横で、ラルフは逃げ腰になっている。
「水希さん。ここはやめて他所を探そうよ。うちに宝石なんてあるわけないし」
水希は、ふんと鼻を鳴らした。
「あんた、神様のコレクションがいつなくなったか知らないだろ? あんたが生まれる前に隠されてるかもしれないじゃないか。それに他人の家は探しづらい」
「理由が雑……」
「自分の家なのに見張り付きのこの場所はサイテーだし、できれば近寄りたくもないよね? でも、だからこそ確認しないと」
「そうは言っても、あの大コウモリに見つからないように家に入るのは無理じゃないかな……」
ラルフは山中で襲われた時のことを思い出して、両腕をさすっている。
(さーて、あの見張りどうしようか……)
水希は腕組みをして考察した。
(あのコウモリもアリス拉致隊が全滅してるのは知ってるだろうし、今更逆らうとは思えないな。まずは素直に頼んでみるか)
「ちょっとそこを通して欲しいんだけど……」
水希の申し出に、大コウモリはギロリと睨んで断った。
「ダメ? あっそう」
じゃあ、しゃーない、と水希は【跳梁跋扈のグリモワール】を取り出し「おいでおいで」と呪文を唱えて悪魔の形の小さな魔物たちを呼び出した。
小悪魔たちが大騒ぎしながら威嚇射撃すると、大コウモリは地面に落ちて硬直してしまった。
余裕の笑みを浮かべて、水希は大コウモリに【よしよし】で実力差を思い知らせてやる。
「そこを通して?」
もはやそれは命令なのに、お願いの形で言う水希はさすが「☆魔女」である。
大コウモリが手出しできなくなったので、堂々と家の中に入る三人。
中には簡素な什器があるのみである。
「ほら、うちに宝石を隠せるような所、ないと思うけど……」
家を出てからそう日が経っていないのに、すでに懐かしい気がしてラルフは戸棚を撫でる。
スピネルはドアを開けて部屋を覗いて回っている。
「幸いラルフ君の家はびんぼー……。あ、えっと……し、質素だし! 宝石なんて目立つ目立つ!」
そして寝室を見つけると遠慮なく入り、宝石捜索を開始した。
「では【コアチェック】ー」
クンクンと匂いを嗅いで調べていく。
いきなり「そこのタンスだ!」とスピネルは名探偵が犯人を指さすようなポーズを決めた。
「村の中で隠すなら家の中、家の中で隠すならタンスと……」
スピネルはタンスに駆け寄りためらわずに引き出しを開ける。
「ラルフくんのパンツはっけん!」
「ちょっ! なに勝手に引っ張り出してるんだよ!」
慌てて制止するラルフに構わず、スピネルは次々と引き出しを開けていく。
「ラルフくんはついでに持ち出すもの集めときなよ。……む、何か怪しいものが!」
スピネルが引き出しの奥から取り出したのは手紙の束。
表に「親愛なるラルフへ、アリスより」と書いてあるのが見える。
ラルフは目にも止まらぬ速さでスピネルから取り上げた。
「これはダメ! 神様には関係ないでしょ?」
「「ふうん~」」
スピネルと水希は手紙の内容を想像し、にやにやとラルフを見る。
顔を赤らめたラルフは二人の視線を避けて、手紙の束を大事そうに上着のポケットに仕舞った。
スピネルは【働き者の箒さん】に掃除してもらいながら捜索していくが、宝石は見つからない。
「んー、やっぱないね」
「スピ、神様が持ってた『サルでもわかる天地創造の書』はベッドの下にあったじゃないか」
水希に言われてスピネルは、這いつくばってベッドの下を覗き込んだ。
「あ、なんかあるー」
ベッドの下に潜り込むスピネルを水希はこの時とばかり蹴りつける。
「早く取れ! スピ」
スピネルが掴んできた物は、ブラックダイヤモンドのミニ彫刻。
神様の形のようだ。
「たぶんこれだな。これを持って帰ろう」
水希は大コウモリに、アリスがピノキエで幸せに暮らしていることを伯爵に伝えるよう言いつけて戻った。
結局そのミニ彫刻は神様の物ではなく、†タナトス†が作った自分の像だった。
それが流れ流れて、なぜかラルフの家にあった。
しかし神様はひどく適当なので
「†タナトス†の像だし、これもコレクションにしよっと」
と言って受け取ったのだった。