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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

バレンタイン・ブライド!

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◆天然女神のカレイドスコープ(1)

 ホワイトウォーターフロントのチャペル内で、ノーラ・レツェル新澤一虎が立ち話をしていた。
「一虎さん、今度『廉恥心』のメンバーを紹介してくださいよぉ」
「あぁ? お前がもう少し大人になったら紹介してやるよ」
「ええ~、どうして今はだめなんですか?」
「さあな」

 そこへ男たちの集団がどやどやとやって来て口々に叫んだ。
「あ、ノーラさん居た!」
「レツェル嬢、こんな所に……」
「ノーラ!」
「え、え? なに? 皆どうしたの?」
 戸惑うノーラを取り巻いた男たちによるアピールが始まった。


 ***


「嗚呼、やっと逢えた。愛しい人」
 【拒絶のシクレシィコード】で世界を恨むような凄みのある雰囲気を纏い、ノーラの前に進み出たのはメグロ
 メグロは狛込 めじろの仮想体の男性だ。
 【悪鬼の気品】により妖しい魅力のヤンデレスマイルを浮かべている。

「めじろちゃ……メグロくん?」
 イケメンメグロの危険な魅力にノーラは平静を失い、落ち着きなく目を瞬かせている。

「そんな顔をしないで……困らせるのは本意では無いのです。どうか、どうか。僕の前では笑ってゐてくれないか」
 メグロはノーラの手を取っていかにも愛おしそうに唇に当てる。

「永遠に続く孤独の氷獄で、君と言ふ光に逢えたんだ」
 メグロはそう言うとヤバめなヤンデレスマイルから一転、浄化された微笑みに変化した。
 その爽やかな表情は、まるで神作画のスチルのようだ。

 メグロはノーラの手を引いて【スイッチ:蹂躙するダークロード】で空中散歩に出かける。
「他の男の手など届かぬ空へ逃避行しませう」

 誰も邪魔する者のない空中で、メグロはノーラの魅力をその耳元に囁き続ける。
「あなたの銀の髪は鈴蘭の花。透き通る紫水晶の瞳は野のすみれ。そして薄紅の頬は恥じらいながら開きかける木蓮の花にも似て、僕の心を惑わせる」
 【美しきひととせ】により春の花が二人の周りに降り注いでいる。

 メグロは【サンクチュアリ・ウイング】でそっと自分とノーラを包み込んで隔絶した空間を作り出した。
 誰にも見られない真っ白な世界に二人きり。

「僕の代わりに、これを」
 ノーラの白魚のような指に、【白梅の指輪】をそっとはめる。
 春を感じさせる梅の花のモチーフに、ノーラはにっこりと微笑んで言った。
「雰囲気が違うから驚いたけど、素敵な言葉と指輪、ありがとうなんだよぉ」

 めじろが見せたアイドルの本気。
『二週目以降攻略できるようになる、心に闇を抱えたヤンデレ青年』の設定で、ガチでノーラを落としにかかったのに、どうやらノーラには通じなかったようだ。

 ***

 堅物なケモノ武人の戌 千鳥は、見るからに人外で色物枠であることは十分自覚している。
 そして、他のアイドルたちのように歌や踊りや甘い言葉でノーラを喜ばすこともできない、とふがいなく思っている。
 しかし真剣に彼女を想う気持ちは誰よりも純粋で、飾り気のない本物の気持ちなのだ。

 だから千鳥はノーラに【花束】を差し出して愛を乞うた。

「君を憎からず思うことを、どうか許してほしい」
 【みるきーしゃうと】の荒削りなハスキー(犬的な意味で)ボイスが、ノーラの心をくすぐる。

 正攻法だけでは他の男に敵わないというなら、千鳥は邪道を取ることも厭わない。
 邪道――それは、千鳥の奥の手【完獣化】だ!

 【完獣化】で完全にもふもふな姿になってから、こてんと首をかしげての【うるうるおめめ】攻撃!
「……きゅぅーん」
(どうするー? ルミフルー? という音楽が流れた気がする)
 追い打ちの甘え鳴きを追加して、母性本能に訴えかける完璧な攻撃に落ちない女性はいないはず!

 千鳥とノーラは無言で見つめ合った。
 そっ、とノーラが手を伸ばした。
「もふもふだ……触っても大丈夫かな?」

 千鳥がノーラのハートをがっちり掴んだのは、まあ間違いない。

 ***

「なぁん、そげんと詰め寄ってから……男が女の子取り囲むげな、怖がらせてしまうやろうに」
 卯月 鎮が長身を生かしてノーラを背に庇い、他の人から引き離していく。

「ごめんね、びっくりしたね」
 鎮は腰をかがめてノーラとゆっくりと目を合わせると、落ち着かせるように柔らかな笑顔になった。

「確かにびっくりしたけれど欲しくなる気持ちも、分かるから……こんな日だし」
 ノーラは鎮の顔の近さに恥ずかしくなって、視線を逸らせてもじもじしてしまう。

「……そうだ。俺からのプレゼント。受け取ってくれるやろうか?」
 鎮は、抱き枕にもなる【うたたねうさぎ】にリボンと赤い薔薇を添えてノーラに渡した。
 寝るのが好きなノーラは喜んで受け取り、もふもふな顔に思わず頬ずりしてしまう。
「うん、やっぱり女の子はリラックスしてるのが一番可愛かね」


 優しい眼差しでノーラを見つめる鎮に、鋭い視線を投げかけているのはモモくんこと【≪星獣≫鈴兎『百』】。
 モモくんはお世話をしてくれる鎮のことを一方的に『俺の嫁』だと思っている節があり、どうも「浮気はゆるさないぞ」と怒っているようなのだ。
 ノーラに向けられた鎮の眼差しを取り戻すためだろうか、モモくんは【≪星獣≫小さな羽】で空へ浮かぶと鎮の頬にうさキックをお見舞いした。
「あいた~。モモくん、どげんしたと?」

 鎮がモモくんを抱き上げると、モモくんはノーラに向かってお口をもひもひ動かしている。
(勘違いするな、鎮と真に想い合っているのはおれなのだ、どろぼうねこ!)
 とでも言って威嚇しているのだろうか。

 しかしノーラには全く通じなかったようで、
「何を伝えたいのか分からないけど、可愛いなぁ。もしかして、お腹空いているのかな?」
 モモくんの心配までしてくれる有様だ。
「そげんね?」
 鎮がモモくんの顔を覗き込む。

 するとモモくんは鎮の腕から飛び降り、【≪星獣≫ダンツァ・デル・フレイム】で情熱的なサパテアードを踏んで何かを主張し始めた。
 モモくんのダンスの意味を鎮とノーラが知る由もなく、二人して微笑ましく見守っていた。
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