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バレンタイン・ブライド!

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◆新生マリパラ マウントオリエンタルで遊ぶ(1)

「校長たちの計らい、無駄にはしねぇ……遊び尽くすぜ、みんな!」
 陽気で楽しいことが大好きな睡蓮寺 陽介のかけ声で、堀田 小十郎睡蓮寺 小夜栗村 かたりが集まった。

 そこにもう一人、遅れてやって来た者がいる。
「すまん、遅くなった」
 陽介以外の三人が目を見張る。
「てな訳でサプライズゲスト……渋蔵鷹人だ!」
 どうも、とぎこちない会釈をする鷹人に、三人はそれぞれ複雑な表情を見せる。
「へへ……渋蔵とは何かと衝突してきたがよ……ちゃんと話せば仲良くなれると思うんだ!」
 と言って陽介は鷹人の肩を組んだ。
「だから今日は渋蔵を加えたこの五人でマリパラを堪能するぜ! まず目標はマウントオリエンタル。ここを遊び尽くすぞ!」
「「「「おー!」」」」
 陽介の意気込みのわりにはいささかノリの悪い鬨の声を上げて、五人は連れ立って歩き始めた。


 張り切って先頭に立ち皆を引き連れるように歩く陽介の後ろ姿を見ながら、小十郎は懐かしく感じていた。
(陽介のあの様子……子どもの頃を思い出すよ。ああやって私や小夜を連れ出したものだ……)
 だがまあ、と小十郎は思う。
(今日はなかなかに……有意義な時間になりそうだな)
 小夜やかたり、鷹人を見遣ると、楽しい一日になるような予感がする。
(よき思い出は己を支える力となる。きっと今日という時間もそうなるだろう。皆で紡ぐ思い出は、きっと……笑顔で溢れるものとなるのだからな)

 珍しく心が浮き立つのを感じている小十郎は、鷹人にも話しかけてみた。
「陽介が強引にすまないな、渋蔵……だが、共に散策できるのは私も嬉しいよ」
「お前、フェスタとグランスタだぞ――つっても、聞くような奴らじゃねぇか。しょうがねぇ、付き合ってやる」
 小十郎は鷹人の人となりに触れたような気がした。
「思えば君とこうやって落ち着いて話す機会はなかった。今日は共に楽しめると嬉しいよ。……まあ、陽介が音頭とってる時点で忙しなくなるのは確定だが」

 静かに会話をしている小十郎と鷹人の後ろに付いて歩いている小夜とかたりの二人は、小十郎たちとは対照的に賑やかにおしゃべりをしている。
「すごい……すごいよ、かたりちゃん……! マリパラがこんなに大きくなってるなんて知らなかった……。こんなステキな所を一日、しかも皆で回れるなんて……何だか夢みたい……」
「わくわく……ね、さよちゃん♪ マリパラ、前よりもずーっとすごくなってるなの♪ フェスタ貸し切りって、校長先生、すっごいね♪」
 二人はあちこちに目を走らせ、ニコニコと満面の笑顔で目を輝かせている。

「陽介おにーちゃんが遊んでくれるなの♪ さよちゃんも、ほったせんぱいも一緒♪ とっても楽しい一日になりそうなの」
 かたりは(えと……渋蔵せんぱいは、前はもっと怖そうだったような?)と思ったが、それは黙っていた。

 小夜は胸に手を当て、祈るような想いを口にした。
「この一日が、どんな時でも思い出せるような……ステキな一日に、なるといいな……」

 小夜の周りを楽しそうに飛び回るフルートバードの【歌鳥・奏】が、小夜の気持ちを応援するようにウタを奏でる。
(うん……きっとそうなるよ……校長さんたちがくれたこの時間を、一生の思い出になるくらい皆で楽しもう……それはきっと……最高の思い出になると思うから……)

 と、その時一行は、道端で即興劇が行われている場面に出くわした。
「あ、あの人たち、何かやってる」
 かたりが指さした先で、二人の侍(のような恰好をした人)が剣を構えて立ち回りをしている。
 こんな面白そうなものを見逃す陽介ではない。
 あっという間に駆け出して、即興劇に乱入してしまった。

「わっ、陽介おにーちゃん!」
 かたりが驚いている。
「そら……さっそく確認する間もなく劇に乱入して行ったぞ……まったく……」
 小十郎はあきれ顔だ。
「もう、兄さんったら……でもわたし達と言ったらこれだよね……」
 小夜は呆れつつも楽しんでいる。


「双方待たれい! この場を血で汚すなど笑止千万、この幻想演武with鷹人の舞芸にて、矛を納めてしんぜよう!」
 陽介は大仰に口上を述べると、小十郎と鷹人に目配せして即興劇に加わるよう合図している。

「小夜、栗村すまない。渋蔵、少し付き合え。演武をするからには全霊を尽くす」
 小十郎は律儀に女子たちに断りを入れてから、鷹人を誘って即興劇に演武で加わった。

「ほったせんぱい、渋蔵せんぱいも出てくるなの? わたしは……さよちゃんと応援♪」
 かたりは【スタンダップファイト】で桜の花の形のクッキーを全員に配って、緊迫した状況の劇を一瞬妙にリラックスした雰囲気にさせた。
「みんな、一緒にがんばってなの♪」
 かたりが声援を送った。

 陽介と小十郎と鷹人は演武を開始している。
 小十郎が【大殺陣回し】によるドラマチックな殺陣で【古武術演武・幻想紡ぎ】を示し、武の煌めきと共に【スターダストフィル】の光を散らす。
 鷹人は小十郎の動きに合わせてキレのいい殺陣を繰り広げる。
 二人の迫真の演武を陽介が【フィバナ・ダンス】で炎を纏った【スペクタクル・バトルショウ】で彩っている。

 かたりと一緒に応援中の小夜は、【U.ドライブハーモニー】と【忘れ去られた歌】でこっそり劇と演武を盛り上げていた。
 かたりも「小夜の応援」の応援をしようと、【スイッチ:ポリフォニカ・ピュエリ】のコーラス隊でハーモニーを付ける。

 そろそろ演武も終わりに近づいてきたようだ。
 演武の最後は【ME.バクハツ☆エモーション】で観客に投げてもらった爆弾を、三人で片端から一刀両断して、陽介の決め台詞。

「小十郎の芸格が目に入らぬか!」
 【【芸格】千両】の豪華絢爛な印籠が、あの有名な時代劇のごとく印象的に呈示され、大盛り上がりのうちに演武が終了した。
 ノリのいい観客が「ははーっ」とひれ伏す真似をしてくれる。
 パチパチと拍手と共に笑いが起こって、楽しい即興劇は解散になった。


 楽しかった劇の興奮冷めやらぬまま一行が歩いていると、洞窟の前に出た。
 立て看板によると、最奥のカミサマの所までウォークラリーができるらしい。

「この洞窟の先にカミサマがいる訳だ……必ず拝んでやろうじゃねぇか!」
 陽介はやる気満々だ。
「次は洞窟探検か……まあ、これはこれで風情があるな」
「洞窟を探検するとは、惹かれるものがあるな」
 小十郎も鷹人も興味を持っている様子。

 一行は女子を間に挟んで、一列になって洞窟内へ入っていった。

 足を踏み入れると外界の明るさが遠ざかり、次第に暗くなってゆく。
 水に濡れた地面や壁面が、青くキラキラと輝いている。

 小夜は奏とウタを口ずさみ、かたりと話しながら歩いていく。
「幻想的で、綺麗……」
「ひんやりきらきらなの……。こういうとこにいるかみさまって、白くてきれいで、やさしい人かな? お祈りとか、したくなる感じで……」
「かたりちゃんは、かみさまに何を祈るか決まった……?」
「今日はね、わたしのことより、まことおにーさんと音羽ちゃんがずっと幸せでいてねって……」

 小十郎がかたりの願いを聞いて相槌を打つ。
「そうだな。この空間で、神様に麦倉たちの門出を祈る……なかなかに、ご利益がありそうじゃないか」
「うん……わたしも麦倉さんと音羽さんの幸せを祈りたいな……」
 小夜も賛成すると陽介が取りまとめる。
「よっし、神様には今頃結婚式を挙げている麦倉たちの笑顔を祈ろうぜ! 俺はここにいる全員の笑顔も祈っとくよ」
「みんなも一緒に祈ってくれるから、二人はきっとそうなるの♪」

 皆で話しながら歩いていく間にも洞窟内の光はどんどん減り、ほとんど何も見えないほど暗くなった。
 前の人の肩に手を置いてはぐれないようにし、壁伝いに奥へ奥へと進んで行く。

 暗さで、進んだ距離の感覚がなくなったころ、突然ぼんやりと光り輝くものの前に出た。
 大きなお地蔵様のような立像――それが「かみさま」だった。
 神々しい雰囲気に、五人は黙って居住まいを正し、並んで手を合わす。

 すると「よくここまで来た……」という声がした。
 そしてことりと音がして、かみさまの脇に置かれた箱の上に、おみくじが出てきた。
 皆で恐る恐る開けてみると「大吉」の一言だけが大きく書かれているのみ。
 一瞬がっかりしたけれど、なんだか可笑しくなって皆で大笑いしてしまう。

 その後、かみさまの後ろに回るとすぐに洞窟の出口が見つかり、洞窟ウォークラリーは終了した。


 洞窟を出てから、山頂に神社があることを発見したかたりが提案した。
「ねーねー、ごはん食べたら、行ってみようなの♪」

 そこで皆で昼食を食べてから山頂までお参りに行くことにした。

「こうやって皆で過ごす時間が、かけがえなく尊くて……こんな思い出があるから、頑張れるんだね……」
 小夜はしみじみ言った。
「陽介、小夜、かたり、鷹人……また、来れるといいな」
 小十郎も存分に楽しめているようだ。


 楽しい一日はまだ終わらない。
 日が暮れるまで精一杯楽しもうと、歩き出す五人だった。
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