バレンタイン・ブライド!
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リアクション
◆やっと通じた想い
ウィリアム・ヘルツハフトは、虹村 歌音のたっての希望に応える形で模擬結婚式の花婿役を務めることになった。
しかしなぜ自分が歌音の花婿役をしなければならないのか全く分からない。
しかも、故郷のカンタレーヴェの王女リンアレルに進行役を頼むなど、畏れ多いことこの上ない。
歌音がセブンスフォールのしきたりに則った式にしたいと言うからという理由はあるにせよ、正直戸惑いしかないウィリアムだった。
歌音が模擬結婚式に選んだのは、マリンパラダイスのお城のホールだった。
【レインボーカーペット】で出現させた虹色のカーペットをヴァージンロードに見立てている。
ヴァージンロードの先、祭壇の前で進行役のリンアレルと花婿衣装の【ジェントルブライト】を着たウィリアムが、歌音を待っていた。
純白の【ホワイトブライト】を身に纏った歌音が現れた時、ウィリアムは思わず息を呑んだ。
歌音は【ウェディングブーケ】を手にした美しい花嫁姿でヴァージンロードを静かに歩き、ウィリアムの元へ向かう。
目は歌音に釘付けになっているものの【ロイヤルエスコート】で王国騎士らしい振る舞いを保ったウィリアムは、動揺を態度に表すようなことはなかった。
しかしウィリアムは歌音のあまりにも美しく気高く品の良い姿に、驚くというよりも心の奥に僅かな震えを感じていたのだった。
王女リンアレルはカンタレーヴェのしきたりに正しく従い、式を進行していく。
長い儀式の手順の一つ一つがつつがなく終わり、最後の誓いのキスになった。
模擬結婚式で、さすがに本当に唇を重ねるわけにはいかないと、ウィリアムは顔の角度をずらし歌音と口づけを交わすフリをしようとした。
その時――。
歌音はウィリアムの頬を両手で挟んで固定し、本当に唇を奪ってしまった。
一瞬の出来事だった。
驚いて目を見開くウィリアムの前で、歌音は【クライマックスモード】を発動させ、光り輝く豪華な衣装にグレードアップさせる。
動揺を隠しきれないウィリアムに、歌音は【華のかんばせ】で魅力的な微笑みを浮かべて見せ、照れて真っ赤になった顔を誤魔化した。
「えへへ……ほんとにキス、しちゃった」
ウィリアムだけに聞こえるような小さな声で、歌音は囁く。
その表情や歌音の言葉、仕草、そして唇に残る温かさから、ウィリアムはようやく気が付いた。
ずっとずっと歌音に想いを寄せられていたことに――。
一旦気が付いてしまうと、これまで不可解だった歌音の言動全てに合点がいく。
「あ……」
何か言おうとウィリアムは口を開けたが、歌音はその唇を人差し指で押さえて言葉を止めた。
「今は何も言わないで」
そのまま何事も無かったように模擬結婚式は終了し、リンアレルは立ち去った。
後に残された二人には、たっぷり話し合う時間が与えられている――。
ウィリアム・ヘルツハフトは、虹村 歌音のたっての希望に応える形で模擬結婚式の花婿役を務めることになった。
しかしなぜ自分が歌音の花婿役をしなければならないのか全く分からない。
しかも、故郷のカンタレーヴェの王女リンアレルに進行役を頼むなど、畏れ多いことこの上ない。
歌音がセブンスフォールのしきたりに則った式にしたいと言うからという理由はあるにせよ、正直戸惑いしかないウィリアムだった。
歌音が模擬結婚式に選んだのは、マリンパラダイスのお城のホールだった。
【レインボーカーペット】で出現させた虹色のカーペットをヴァージンロードに見立てている。
ヴァージンロードの先、祭壇の前で進行役のリンアレルと花婿衣装の【ジェントルブライト】を着たウィリアムが、歌音を待っていた。
純白の【ホワイトブライト】を身に纏った歌音が現れた時、ウィリアムは思わず息を呑んだ。
歌音は【ウェディングブーケ】を手にした美しい花嫁姿でヴァージンロードを静かに歩き、ウィリアムの元へ向かう。
目は歌音に釘付けになっているものの【ロイヤルエスコート】で王国騎士らしい振る舞いを保ったウィリアムは、動揺を態度に表すようなことはなかった。
しかしウィリアムは歌音のあまりにも美しく気高く品の良い姿に、驚くというよりも心の奥に僅かな震えを感じていたのだった。
王女リンアレルはカンタレーヴェのしきたりに正しく従い、式を進行していく。
長い儀式の手順の一つ一つがつつがなく終わり、最後の誓いのキスになった。
模擬結婚式で、さすがに本当に唇を重ねるわけにはいかないと、ウィリアムは顔の角度をずらし歌音と口づけを交わすフリをしようとした。
その時――。
歌音はウィリアムの頬を両手で挟んで固定し、本当に唇を奪ってしまった。
一瞬の出来事だった。
驚いて目を見開くウィリアムの前で、歌音は【クライマックスモード】を発動させ、光り輝く豪華な衣装にグレードアップさせる。
動揺を隠しきれないウィリアムに、歌音は【華のかんばせ】で魅力的な微笑みを浮かべて見せ、照れて真っ赤になった顔を誤魔化した。
「えへへ……ほんとにキス、しちゃった」
ウィリアムだけに聞こえるような小さな声で、歌音は囁く。
その表情や歌音の言葉、仕草、そして唇に残る温かさから、ウィリアムはようやく気が付いた。
ずっとずっと歌音に想いを寄せられていたことに――。
一旦気が付いてしまうと、これまで不可解だった歌音の言動全てに合点がいく。
「あ……」
何か言おうとウィリアムは口を開けたが、歌音はその唇を人差し指で押さえて言葉を止めた。
「今は何も言わないで」
そのまま何事も無かったように模擬結婚式は終了し、リンアレルは立ち去った。
後に残された二人には、たっぷり話し合う時間が与えられている――。