バレンタイン・ブライド!
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リアクション
◆素直になれない二人
リーザベル・シュトレーネと空染 陽方は告白やらデートやら、遊びで恋愛ごっこをやってきた。
そんな二人がマリパラでの模擬結婚式を見逃すはずがなかった。
「正直すっげー楽しみ。楽しんでいけるといいな、お互い」
模擬結婚式を面白がる神父の陽方の傍で、リーザベルは華奢な指を口元に当て
(まあ、子どものママゴトに付き合うつもりでいきましょう)
と澄まし顔でいる。
ヴァージンロードの端に立ち、陽方はウェディングドレス姿のリーザベルをまじまじと見た。
日頃、リーザベルは真っ赤なドレスばかり着ているので、純白のウェディングドレスは陽方の目にとても新鮮に映ったのだ。
陽方の視線を受け、馴染んだ赤いドレスを着ていないこともあり、リーザベルは落ち着かない気分になる。
「あの、いかがでしょうか……?」
思わず口を衝いて出た言葉に、見られて恥ずかしいみたいなニュアンスを含んでしまって内心慌てるリーザベルだ。
「おー……中々似合ってんじゃねーの?」
陽方も陽方で、適当に言っているフリを装いながらも(本当はすっげー綺麗だぜ、リーザベル)などと思っている。
リーザベルは褒められて嬉しくないわけがないのだが、そんな気持ちを悟られるわけにはいかない。
本気で気持ちを揺さぶられた方が負けなのだ。
そこで礼を言った勢いで陽方にしなだれかかった。
「お、おいなんだ……わざとか?」
誘惑するようなリーザベルの行動に陽方は少しうろたえているが、遊びの恋愛ごっこは徹底的に演じきらなければ遊びではない。
「エスコートして下さるのですよね、旦那様?」
上目遣いでもじもじしながら言ってみる。
「いや、エスコート? 俺が?」
「お姫様抱っこをお願いしますわ」
「お姫様抱っこって……。しゃーねーな、甘えたのはお前だぞ、文句言うなよ?」
陽方は言うが早いか軽々とリーザベルを抱き上げてしまった。
「きゃっ!!」
不覚にも可愛らしい声が出てしまいリーザベルは慌てて口を押えるが、陽方はそんなことには構わず、
「おい、お前ほんとに食ってんのか? 体重何キロだ?」
「女性に体重を聞くのはご法度ですわ」
「いや、冗談じゃなくて! 華奢な身体してんなーとか、心配するだろ」
「わたくしは誇り高き吸血鬼ですから、ご心配には及びませんわ」
「そうか、……ならいいけどよ」
二人の間に沈黙が降りる。
この状態が妙に気恥ずかしいことに、二人して急に気付いてしまったのだ。
そそくさと速足で陽方は祭壇の前まで歩いていき、リーザベルを腕から丁寧に降ろしてやった。
「誓いの言葉は神父の俺が進行しつつ花婿の俺も誓わねえとな」
「あら、一人二役ですのね」
「知ったこっちゃねえな。じゃあ、やるとするか」
陽方はリーザベルと真っ直ぐ向き合って、真剣な表情で誓いの言葉を述べた。
「俺はリーザベルを心から愛し、命をかけて幸せにすることを誓う……リーザベルは?」
「わたくしも陽方様を心から愛し、命をかけて幸せにすることを誓いますわ」
二人で見つめ合い、真面目に粛々と誓いの言葉を口にしていると、互いにおかしな気分になってくる。
(……これは本心?)
(本心ではないですわ)
素直になれない二人の本心は神ですら知り得ないであろう。
無言の拮抗を破ったのはリーザベルだった。
「わたくしの初めて(の結婚式)を奪ったのですから、責任はとってくれるのですよね?」
「おいおい、責任って、穏やかじゃないな」
思わせぶりなリーザベルの言いように、冗談だと知りつつ心がざわめく陽方だった。
リーザベル・シュトレーネと空染 陽方は告白やらデートやら、遊びで恋愛ごっこをやってきた。
そんな二人がマリパラでの模擬結婚式を見逃すはずがなかった。
「正直すっげー楽しみ。楽しんでいけるといいな、お互い」
模擬結婚式を面白がる神父の陽方の傍で、リーザベルは華奢な指を口元に当て
(まあ、子どものママゴトに付き合うつもりでいきましょう)
と澄まし顔でいる。
ヴァージンロードの端に立ち、陽方はウェディングドレス姿のリーザベルをまじまじと見た。
日頃、リーザベルは真っ赤なドレスばかり着ているので、純白のウェディングドレスは陽方の目にとても新鮮に映ったのだ。
陽方の視線を受け、馴染んだ赤いドレスを着ていないこともあり、リーザベルは落ち着かない気分になる。
「あの、いかがでしょうか……?」
思わず口を衝いて出た言葉に、見られて恥ずかしいみたいなニュアンスを含んでしまって内心慌てるリーザベルだ。
「おー……中々似合ってんじゃねーの?」
陽方も陽方で、適当に言っているフリを装いながらも(本当はすっげー綺麗だぜ、リーザベル)などと思っている。
リーザベルは褒められて嬉しくないわけがないのだが、そんな気持ちを悟られるわけにはいかない。
本気で気持ちを揺さぶられた方が負けなのだ。
そこで礼を言った勢いで陽方にしなだれかかった。
「お、おいなんだ……わざとか?」
誘惑するようなリーザベルの行動に陽方は少しうろたえているが、遊びの恋愛ごっこは徹底的に演じきらなければ遊びではない。
「エスコートして下さるのですよね、旦那様?」
上目遣いでもじもじしながら言ってみる。
「いや、エスコート? 俺が?」
「お姫様抱っこをお願いしますわ」
「お姫様抱っこって……。しゃーねーな、甘えたのはお前だぞ、文句言うなよ?」
陽方は言うが早いか軽々とリーザベルを抱き上げてしまった。
「きゃっ!!」
不覚にも可愛らしい声が出てしまいリーザベルは慌てて口を押えるが、陽方はそんなことには構わず、
「おい、お前ほんとに食ってんのか? 体重何キロだ?」
「女性に体重を聞くのはご法度ですわ」
「いや、冗談じゃなくて! 華奢な身体してんなーとか、心配するだろ」
「わたくしは誇り高き吸血鬼ですから、ご心配には及びませんわ」
「そうか、……ならいいけどよ」
二人の間に沈黙が降りる。
この状態が妙に気恥ずかしいことに、二人して急に気付いてしまったのだ。
そそくさと速足で陽方は祭壇の前まで歩いていき、リーザベルを腕から丁寧に降ろしてやった。
「誓いの言葉は神父の俺が進行しつつ花婿の俺も誓わねえとな」
「あら、一人二役ですのね」
「知ったこっちゃねえな。じゃあ、やるとするか」
陽方はリーザベルと真っ直ぐ向き合って、真剣な表情で誓いの言葉を述べた。
「俺はリーザベルを心から愛し、命をかけて幸せにすることを誓う……リーザベルは?」
「わたくしも陽方様を心から愛し、命をかけて幸せにすることを誓いますわ」
二人で見つめ合い、真面目に粛々と誓いの言葉を口にしていると、互いにおかしな気分になってくる。
(……これは本心?)
(本心ではないですわ)
素直になれない二人の本心は神ですら知り得ないであろう。
無言の拮抗を破ったのはリーザベルだった。
「わたくしの初めて(の結婚式)を奪ったのですから、責任はとってくれるのですよね?」
「おいおい、責任って、穏やかじゃないな」
思わせぶりなリーザベルの言いように、冗談だと知りつつ心がざわめく陽方だった。













