【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)
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◆路上ライブ(3)
ラルフもアリスも街の子どもたちも巻き込んだ、誰もが主役の無軌道な馬鹿騒ぎライブをする。
これがノルテ・イヴェールとケルル・ルー、そして町田 花儀の一致した意見だ。
ライブの準備をしているノルテの横で、花儀はさっきからぶつぶつ文句を言い続けている。
数日前のダンスパーティーに参加できなかったのが不満なようだ。
「教えてくれたらスグにでも飛んでいったのに……風邪とか関係ないし、踊ったら治るのだ」
花儀の文句はノルテの耳に入っていたが、聞こえないフリをして無視している。
「……おまけに今日は、わたしが主役張れないなんてアイドルとしてどうよ。コッチは慈善事業じゃないってーの」
ノルテに相手にされないのも腹が立つ様子で、音量を上げて今日のライブの構成について文句を言っている。
花儀の不満を完全にスルーして、ノルテは愛用のヴァイオリンを構えるとケルルと花儀に目配せをした。
(打ち合わせ通り、ケルルと花儀は、ラルフとアリスをよろしく……)
まだ不満げな花儀に構わずノルテは音を奏ではじめる。
ノルテの演奏に合わせて、ケルルも綺麗な声で歌いはじめた。
歌は、ネヴァーランドで昔から歌われてきて多くの人が知っている童謡。
ケルルとノルテはネヴァーランド人なので、ネヴァーランドの童謡をたくさん知っているのだ。
二人の透明感のある演奏に毒気を抜かれて、花儀は口をつぐんだ。
「……まぁ、アイドルにだってこんな時はある、ってねぇ」
花儀が大人しくなったのを見てノルテは唇の端だけ持ち上げて微笑した。
「みんなは好きなようにやってみるといい……そのために、どんな曲でも弾こうじゃないか」
誰に言うともなく呟かれたノルテの言葉は、音楽にかき消された。
(き、緊張するかも、かも)
ケルルは美しい声で歌いながらも、心の中では緊張していた。
(私の役目は、歌で街の皆さんの注目を集める事。人、集まってくれるといいなあ……)
同じネヴァーランド人のアリスやラルフもケルルと共に、耳に馴染んだ童謡を歌っている。
文句を引っ込めた花儀、次第に緊張がほぐれてくるケルル、楽しそうに歌うアリスとラルフを、ノルテは傍観者のような立ち位置で眺め、演奏を続けている。
傍観者のように眺めてはいても、場面の流れを機敏に捉え、その時々に合わせた演奏を巧みに繰り出していくノルテだった。
ケルルの伸びやかな歌声とよく知るメロディーに惹かれたのか、人々が、特に子供が多く集まってきた。
一番近くに寄ってきた子供の一人に、ケルルは優しく誘ってみた。
「ふふ、よければご一緒に、どうですか? 私、踊りがすご~く苦手だから、一緒に歌ったり踊ってもらえると心強いかもです」
ケルルは子供たちの手を引いてさりげなくアリスとラルフの傍に誘導し、みんなで輪になるように配置する。
歌が止まることなく続いているのは、ノルテが演奏を中断しないから。
(さりげなく、さりげなく……群衆を魅せる為の曲は難しい……)
ノルテは、ケルルやラルフやアリス、そして街の人々のことを信頼し、集中して弾き続ける。
今はほんの少しだけ、花儀のことも信頼し始めている。
一通り童謡をメドレーして歌い終わると、花儀が俄然やる気を出して、輪になった子供たちの前に立った。
「さぁさ皆様お立会い、今日はお姉さんがとっておきの魔法を教えちゃおう!」
子供向けの大道芸人のような口上を述べて、花儀はそこいらから拝借してきたバケツとモップを使って、STOMPの基礎を披露した。
ノリよく打ち鳴らすリズムに、子供たちもアリスたちも興味津々。
「ほうら、キミにも魔法の音が出せるのだ♪」
とモップを手近な子供に手渡せば、他の子供もやりたがる。
「ほら押さない押さない、皆にもこの音は出せるのだ♪」
足踏みや手拍子でリズムを組み合わせて遊ばせる。
こうして主役のいない参加型ライブは、見ていた人も参加した子供たちも皆が十分楽しんで終わった。
おひねりは、輪に入ってくれた子供たちも含めて、山分けにすることになった。
分配を待たずに花儀は、当然の報酬として一部をちょろまかしてこっそりポケットに入れた。
「これが現実なのだ」
などと悪い顔でうそぶいているが、それを見逃すノルテではない。
(花儀、往生際が悪い……)
速攻で花儀のポケットからそれを掏り、山分けの場に戻しておく。
そしてケルルと一緒に、山分けのおひねりを受け取るフリをして、自分たちの分をさりげなくアリスとラルフのポケットに入れてやる。
ケルルはアリスとラルフをチラリと見やって、思っていた。
(アリスさんとラルフさん、今までの旅路お疲れ様。今日は私たちと楽しく騒いで、いい方向に疲れてもらえたかな? この後はいい気持ちで休んでもらえたらいいな……)
ラルフもアリスも街の子どもたちも巻き込んだ、誰もが主役の無軌道な馬鹿騒ぎライブをする。
これがノルテ・イヴェールとケルル・ルー、そして町田 花儀の一致した意見だ。
ライブの準備をしているノルテの横で、花儀はさっきからぶつぶつ文句を言い続けている。
数日前のダンスパーティーに参加できなかったのが不満なようだ。
「教えてくれたらスグにでも飛んでいったのに……風邪とか関係ないし、踊ったら治るのだ」
花儀の文句はノルテの耳に入っていたが、聞こえないフリをして無視している。
「……おまけに今日は、わたしが主役張れないなんてアイドルとしてどうよ。コッチは慈善事業じゃないってーの」
ノルテに相手にされないのも腹が立つ様子で、音量を上げて今日のライブの構成について文句を言っている。
花儀の不満を完全にスルーして、ノルテは愛用のヴァイオリンを構えるとケルルと花儀に目配せをした。
(打ち合わせ通り、ケルルと花儀は、ラルフとアリスをよろしく……)
まだ不満げな花儀に構わずノルテは音を奏ではじめる。
ノルテの演奏に合わせて、ケルルも綺麗な声で歌いはじめた。
歌は、ネヴァーランドで昔から歌われてきて多くの人が知っている童謡。
ケルルとノルテはネヴァーランド人なので、ネヴァーランドの童謡をたくさん知っているのだ。
二人の透明感のある演奏に毒気を抜かれて、花儀は口をつぐんだ。
「……まぁ、アイドルにだってこんな時はある、ってねぇ」
花儀が大人しくなったのを見てノルテは唇の端だけ持ち上げて微笑した。
「みんなは好きなようにやってみるといい……そのために、どんな曲でも弾こうじゃないか」
誰に言うともなく呟かれたノルテの言葉は、音楽にかき消された。
(き、緊張するかも、かも)
ケルルは美しい声で歌いながらも、心の中では緊張していた。
(私の役目は、歌で街の皆さんの注目を集める事。人、集まってくれるといいなあ……)
同じネヴァーランド人のアリスやラルフもケルルと共に、耳に馴染んだ童謡を歌っている。
文句を引っ込めた花儀、次第に緊張がほぐれてくるケルル、楽しそうに歌うアリスとラルフを、ノルテは傍観者のような立ち位置で眺め、演奏を続けている。
傍観者のように眺めてはいても、場面の流れを機敏に捉え、その時々に合わせた演奏を巧みに繰り出していくノルテだった。
ケルルの伸びやかな歌声とよく知るメロディーに惹かれたのか、人々が、特に子供が多く集まってきた。
一番近くに寄ってきた子供の一人に、ケルルは優しく誘ってみた。
「ふふ、よければご一緒に、どうですか? 私、踊りがすご~く苦手だから、一緒に歌ったり踊ってもらえると心強いかもです」
ケルルは子供たちの手を引いてさりげなくアリスとラルフの傍に誘導し、みんなで輪になるように配置する。
歌が止まることなく続いているのは、ノルテが演奏を中断しないから。
(さりげなく、さりげなく……群衆を魅せる為の曲は難しい……)
ノルテは、ケルルやラルフやアリス、そして街の人々のことを信頼し、集中して弾き続ける。
今はほんの少しだけ、花儀のことも信頼し始めている。
一通り童謡をメドレーして歌い終わると、花儀が俄然やる気を出して、輪になった子供たちの前に立った。
「さぁさ皆様お立会い、今日はお姉さんがとっておきの魔法を教えちゃおう!」
子供向けの大道芸人のような口上を述べて、花儀はそこいらから拝借してきたバケツとモップを使って、STOMPの基礎を披露した。
ノリよく打ち鳴らすリズムに、子供たちもアリスたちも興味津々。
「ほうら、キミにも魔法の音が出せるのだ♪」
とモップを手近な子供に手渡せば、他の子供もやりたがる。
「ほら押さない押さない、皆にもこの音は出せるのだ♪」
足踏みや手拍子でリズムを組み合わせて遊ばせる。
こうして主役のいない参加型ライブは、見ていた人も参加した子供たちも皆が十分楽しんで終わった。
おひねりは、輪に入ってくれた子供たちも含めて、山分けにすることになった。
分配を待たずに花儀は、当然の報酬として一部をちょろまかしてこっそりポケットに入れた。
「これが現実なのだ」
などと悪い顔でうそぶいているが、それを見逃すノルテではない。
(花儀、往生際が悪い……)
速攻で花儀のポケットからそれを掏り、山分けの場に戻しておく。
そしてケルルと一緒に、山分けのおひねりを受け取るフリをして、自分たちの分をさりげなくアリスとラルフのポケットに入れてやる。
ケルルはアリスとラルフをチラリと見やって、思っていた。
(アリスさんとラルフさん、今までの旅路お疲れ様。今日は私たちと楽しく騒いで、いい方向に疲れてもらえたかな? この後はいい気持ちで休んでもらえたらいいな……)


