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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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◆大コウモリの襲撃(3)

 そこへ槍沢 兵一郎がやってきた。

「また随分と派手にやってんな、オイ」
 呆れたように言ってしばらく眺めていたが、アイドルたちの奮闘ぶりを見て、兵一郎も加勢したくなってきた。
「ま、知った顔やられんのもアレだしなァ。手伝ってやるよ」

 まずは現状を確認する。
 地面に落とされた個体もあるが、まだまだ空中から大コウモリたちが襲ってきている。
 アリスとラルフを守りながら反撃するのも、なかなか大変そうだ。

 状況から判断した結果、兵一郎は防衛に特化して協力することにした。
 アリスとラルフに「安心して見てろ」と言って不器用にウインクしてみせる。
 不器用なのはウインクだけで、兵一郎の戦略は隙が無かった。

 【ハートオブナイト】で大コウモリの攻撃を阻害し、【シールドオブフェイス】で身を挺して守る。
 また、時には【フォースパリィング】で大コウモリの攻撃に自分の攻撃をぶつけたりして、威力を相殺した。
(こういう場面なら力が出なくてもこっちの方がやり易いな)
 
 兵一郎の“盾”のお陰でラルフに襲い掛かる大コウモリをしのげて、アリスは少しホッと息をつくことができたのだった。

 ***

 一足遅れてシャーロット・フルールアレクス・エメロードが到着した。
 何人ものアイドルたちが戦っているものの、大コウモリはしつこい攻撃を繰り返している。
 シャーロットは、現状を見て呟いた。
「間に合った……かな?」

 クレセントハートのラルフが死んだらもう生き返らないことを、百年の眠りから覚めたばかりの大叔父様は知らないのではないだろうか?
 けれどももし、そうと知っての襲撃命令だとしたら洒落にならない、とシャーロットとアレクスは心を痛めていた。

「うし、ラルフちゃんの守りはアレクちゃんに任せて、ボクは突撃~」
 シャーロットは【メタトロンの光翼】で飛んでいってしまった。

(へいへい。お転婆姫さんは存分に暴れてきてくださいってな)
 その場に残されたアレクスはシャーロットを見送り、軽くため息をついてからアリスに向かって言った。

「てなわけで、ラルフは一緒に守らせてもらうぜ、吸血姫さんよ」
「ありがとう」
「礼はフルールの公演参加1回な」
「!?」
 どんなことをするのかわからないが、素敵な響きの「フルールの公演」に参加するなんて楽しそう以外なく、そんなことがお礼になるのかアリスには全然わからないのであった。

 そんなアリスの当惑に気付く訳もなく、アレクスはさっそく大コウモリの襲撃に反撃している。
 片手剣【ウツシミノ鏡剣】と水晶の盾【クリスタルプライズ】を手に、勇ましく立ち向かう。
 【≪戦礼≫猛禽獣葬】でサーカスの猛獣や猛禽類の群れを従え、大コウモリを次々に食っていく。

 攻撃をシャーロットに任せ、防御を優先しているアレクスは、深追いするようなことはしない。
 が、急襲してきた大コウモリの一匹を切り裂き、その姿が鏡のような【ウツシミノ鏡剣】に映るように刀身を向けた。
「この剣の前に散るか、猛獣に食われるか、てめぇはどっちの死に様がお望みだ?」
 大コウモリが刀身に映った自分の死後の姿を見て怯んだところを【≪戦礼≫猛禽獣葬】が襲い掛かり、結局、希望の死に様を言う暇もなく、そいつはあっけなくやられてしまった。
 アレクスは、シャーロットや仲間以外には非情になれる男なのだった。


 その間、攻撃担当のシャーロットはハイテンションで攻撃しまくっていた。
 【クリエイション・ウェポン】で生成した光の剣で、近寄る大コウモリを片っ端から斬りつける。
 間隙を縫って【天変のアルター・アロー】を発射。
 巨大な光の矢が三本まとめて放たれ、大コウモリを追尾して撃ち落とす。
「なんだかんだゴッドチャイルドでバトった事無かったんだよね。新鮮~」
 シャーロットはご機嫌だ。

「これはどうかな?……【ムーン・スクラップ】!」
 美少女戦隊もののキャラクターが必殺技を叫ぶように、スキル名を叫んでみる。
 小さな燃える隕石がバラバラと降り注ぎ、一部の大コウモリに当たった。
「うーん爽快だねって、痛っ!」
 調子に乗って油断したところを狙われて、シャーロットは大コウモリの爪にやられてしまったのだ。
「【救済のインフェルノバースト】!」
 美少女戦士のキャラのまま激しい業火を放ち、シャーロットに怪我をさせた大コウモリを倒した。

「いちち……ちょっと油断しちゃった」
 血のにじむ頬を手で押さえながら、シャーロットは無意識にアレクスの方に歩み寄っていった。
「ふぅ……アレクちゃんもお疲れっ!」
「相変わらず滅茶苦茶な主人だぜって……」
 シャーロットの戦いぶりを見ていたアレクスは憎まれ口で応じたが、シャーロットが押さえている頬から血が流れているのを発見し、仰天した。
「おい、怪我してんじゃねぇか!」
「え? あ、だいじょぶだいじょぶ、かすり傷だから」
「見せろ!」
 アレクスが人間だったら、顔色を失っていたに違いない。
 強引にシャーロットの手を退かせ、手早く【応急手当】をし、【≪戦礼≫不葬】で傷を治していく。

「アレクちゃん大げさだよー」
 などと軽いノリだったシャーロットだったが、アレクスの真剣な様子にだんだん大人しくなる。
「……でも……ありがと」
 少し照れながらも、ぽろりと零れたのは本当の気持ち。
「サーカスは見た目が全てじゃねぇって言ったって、傷がねぇに越したことはねぇだろ……可愛いんだからよ」

 アレクスは怒ったような顔でシャーロットの傷だけを見て、ムキになって手当てをしている。
 黙って手当てをされながら、シャーロットは顔が火照ってくるのを感じていた。

(なんだろ、頬が熱い……? ちょっと最近ボク変かも)
 鼓動がやけにうるさい。
 手当てがいつまでも終わらなければいいのにと、心の奥底で願ってしまうシャーロットだった。
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