【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)
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◆ディムックの襲撃(2)
一足遅れてその場にやって来たのは、先日の仮面舞踏会でメイド役と使用人役をこなしたクロティア・ライハと佐伯 ヴァイスだった。
二人共【智者のサーベル】を手にしている。
ヴァイスはあまりバトルは得意ではないが、アリスとラルフを守るためにディムックに立ち向かった。
「ディムック! お嬢様の疲れを狙うなんて何ておこがましいやつ。許せるわけがない!」
憎々しげに言い放たれた台詞に怯むそぶりも見せず、ディムックはゆらりと体の向きを変えてヴァイスに迫ってきた。
「この薄汚れた廃人めが!!」
ヴァイスは【智者のサーベル】に【火炎の武威】を纏わせて、正面から襲い掛かってきたディムックを直接叩いた。
返す勢いで、横から来た別の一体の腹を突き刺し、火炎で炙る。
あっという間に二体のディムックが炎に包まれて燃え上がる。
次に襲ってきたディムックには、【氷雪の武威】を纏った【智者のサーベル】で一撃を食らわす。
瞬時に凍らせられたディムックが氷像のように固まった。
ヴァイスの炎と氷の攻撃を受けて、ディムックは次からから次へと倒されていったが、仲間が倒されるのを見ても、心がないディムックは怖気づいたりしないようだった。
クロティアはアリスに言った。
「時間稼ぎはするからここは私に任せて先に行きなさい? まあ、別に倒してしまっても構いませんよね?」
クロティアが人生で一度は言ってみたかった台詞だ。
「自分だけ先に行くなんて、そんなことできないよ! 私も一緒に戦う!」
アリスが叫ぶと、クロティアは腰に手を当て、「はぁー」とため息をついた。
「ただでさえ移動で疲れてる護衛対象を戦わせるとかメイドとして失格だし、色々迷惑だからやめてくださいお嬢様」
無表情かつ早口で言われ、アリスは文字通りポカーンと口を開けた。
有能なメイドに叱られるお嬢様の図そのものだ。
そんなアリスの表情を放置して、クロティアは【疾風の武威】を纏わせた【智者のサーベル】を振って逃げ道を切り開く。
「さ、はやく!」
クロティアは、まだぐずぐず言っているアリスの手を引く。
アリスは咄嗟に反対の手でラルフの腕を掴んだ。
ディムックを斬り倒しながら、小十郎がアリスたちに声を掛ける。
「そら、急ぎの旅なのだろう?……道が拓けたなら先に進むといい」
「うう……すみません! ありがとう!」
小十郎に背中を押され、アリスは逃げる決心をした。
クロティアとアリス、そしてラルフは一塊になってディムックの包囲を切り開いて進む。
進路を阻むディムックに、クロティアは【翠の魔弾】と【音ゲーコンボ】で攻撃。
いつの間にか【異世界用ゲーム機】から勇ましい音楽が流れて来ている。
クロティアの好きな戦闘BGMだ。
本当はアリスたちだけを逃がし、自分は時間稼ぎの戦闘をするシナリオがよかったのだが、このさい次善の策でもいい。
クロティアはお姫様を連れて逃げる有能なメイド役を楽しんでこなしていた。
***
丁度その頃、星一郎が残ったディムックを倒す最後の仕上げをするところだった。
「これで終わりだ! 来い、闇と光よ!」
星一郎が発動させた【ザ・ファーストデイ】により、周囲が暗闇に包まれる。
一瞬後、眩しい光線があちこちから放射されディムックに突き刺さり、残っていた全てのディムックが倒された。
額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐいつつ、星一郎はホッと息をついた。
「ゴッド・チャイルドらしい振る舞いは、少しはできたかな」
***
アリスたちの後ろ姿を見送った小十郎は胸に手を当て、彼女たちの幸運を祈っていた。
(事情は知らぬがこれでも神父見習い……君達の旅路に幸多からん事を祈ろう)
辺りが静かになって一人になり、小十郎はネズミたちのことを思い出した。
(さて……ネズミたちは大丈夫かな?)
避難していた岩陰を除くと、ネズミたちは固まって昼寝をしていた。
平和な光景に思わず頬が緩む。
(怖い思いをさせた詫びに【崩落のショヴェル】のカステラでも振る舞うとしよう)
***
アリスとラルフはクロティアに守られて、無事、荷馬車の所まで戻ってくることができた。
ここでぐずぐずしていては再びディムックが現れないとも限らない。
二人はクロティアに感謝し、互いの無事を祈りつつ、急いでその場から発ったのだった。
一足遅れてその場にやって来たのは、先日の仮面舞踏会でメイド役と使用人役をこなしたクロティア・ライハと佐伯 ヴァイスだった。
二人共【智者のサーベル】を手にしている。
ヴァイスはあまりバトルは得意ではないが、アリスとラルフを守るためにディムックに立ち向かった。
「ディムック! お嬢様の疲れを狙うなんて何ておこがましいやつ。許せるわけがない!」
憎々しげに言い放たれた台詞に怯むそぶりも見せず、ディムックはゆらりと体の向きを変えてヴァイスに迫ってきた。
「この薄汚れた廃人めが!!」
ヴァイスは【智者のサーベル】に【火炎の武威】を纏わせて、正面から襲い掛かってきたディムックを直接叩いた。
返す勢いで、横から来た別の一体の腹を突き刺し、火炎で炙る。
あっという間に二体のディムックが炎に包まれて燃え上がる。
次に襲ってきたディムックには、【氷雪の武威】を纏った【智者のサーベル】で一撃を食らわす。
瞬時に凍らせられたディムックが氷像のように固まった。
ヴァイスの炎と氷の攻撃を受けて、ディムックは次からから次へと倒されていったが、仲間が倒されるのを見ても、心がないディムックは怖気づいたりしないようだった。
クロティアはアリスに言った。
「時間稼ぎはするからここは私に任せて先に行きなさい? まあ、別に倒してしまっても構いませんよね?」
クロティアが人生で一度は言ってみたかった台詞だ。
「自分だけ先に行くなんて、そんなことできないよ! 私も一緒に戦う!」
アリスが叫ぶと、クロティアは腰に手を当て、「はぁー」とため息をついた。
「ただでさえ移動で疲れてる護衛対象を戦わせるとかメイドとして失格だし、色々迷惑だからやめてくださいお嬢様」
無表情かつ早口で言われ、アリスは文字通りポカーンと口を開けた。
有能なメイドに叱られるお嬢様の図そのものだ。
そんなアリスの表情を放置して、クロティアは【疾風の武威】を纏わせた【智者のサーベル】を振って逃げ道を切り開く。
「さ、はやく!」
クロティアは、まだぐずぐず言っているアリスの手を引く。
アリスは咄嗟に反対の手でラルフの腕を掴んだ。
ディムックを斬り倒しながら、小十郎がアリスたちに声を掛ける。
「そら、急ぎの旅なのだろう?……道が拓けたなら先に進むといい」
「うう……すみません! ありがとう!」
小十郎に背中を押され、アリスは逃げる決心をした。
クロティアとアリス、そしてラルフは一塊になってディムックの包囲を切り開いて進む。
進路を阻むディムックに、クロティアは【翠の魔弾】と【音ゲーコンボ】で攻撃。
いつの間にか【異世界用ゲーム機】から勇ましい音楽が流れて来ている。
クロティアの好きな戦闘BGMだ。
本当はアリスたちだけを逃がし、自分は時間稼ぎの戦闘をするシナリオがよかったのだが、このさい次善の策でもいい。
クロティアはお姫様を連れて逃げる有能なメイド役を楽しんでこなしていた。
***
丁度その頃、星一郎が残ったディムックを倒す最後の仕上げをするところだった。
「これで終わりだ! 来い、闇と光よ!」
星一郎が発動させた【ザ・ファーストデイ】により、周囲が暗闇に包まれる。
一瞬後、眩しい光線があちこちから放射されディムックに突き刺さり、残っていた全てのディムックが倒された。
額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐいつつ、星一郎はホッと息をついた。
「ゴッド・チャイルドらしい振る舞いは、少しはできたかな」
***
アリスたちの後ろ姿を見送った小十郎は胸に手を当て、彼女たちの幸運を祈っていた。
(事情は知らぬがこれでも神父見習い……君達の旅路に幸多からん事を祈ろう)
辺りが静かになって一人になり、小十郎はネズミたちのことを思い出した。
(さて……ネズミたちは大丈夫かな?)
避難していた岩陰を除くと、ネズミたちは固まって昼寝をしていた。
平和な光景に思わず頬が緩む。
(怖い思いをさせた詫びに【崩落のショヴェル】のカステラでも振る舞うとしよう)
***
アリスとラルフはクロティアに守られて、無事、荷馬車の所まで戻ってくることができた。
ここでぐずぐずしていては再びディムックが現れないとも限らない。
二人はクロティアに感謝し、互いの無事を祈りつつ、急いでその場から発ったのだった。