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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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◆エピローグ

 スピネルが群衆の隙間をかいくぐり、這う這うの体で逃げた後、人々は次第に落ち着きを取り戻していった。
 詰め寄せていた人波が徐々に減っていく中、立派な身なりの紳士がラルフの肩を叩いた。

「君、あの酷い音を止めてくれて、どうもありがとう。あのまま続いていたら、みんな頭がおかしくなってしまうところだったよ」
 握手を求められ、ラルフはスピネルたちのことを思って少し躊躇したが、黙って手を握り返した。

「礼がしたいのだが……君はこの街に住んでいるのかね?」
「いいえ、僕たちは遠い村から来たばかりで、今日泊る所も決まってなくて……」

 そこでラルフはアリスと代わる代わる、これまでの出来事をかいつまんで説明した。
 幸運なことにこの紳士は街の有力者で、しかも昨今のクレセントハートと吸血鬼の状況に理解があった。
 二人の事情を知ると早速、今日の宿を手配し、仕事も紹介してくれた。
 後で家も探してくれるという。

 アリスとラルフは親切な彼に心から感謝した。
 しかし、ここに来るまでに文字通り体を張って助けてくれたアイドルたちの協力が無ければ、あの紳士にも会えなかったことだろう。
 そう思うとありがたく、恵まれた巡り合わせにただひたすら感謝しかない二人であった。

 ***

 これから暮らすピノキエの街を見ておこうと、アリスとラルフは連れ立って歩いていた。
 アリスは天導寺朱から渡された小箱を何気なく弄んでいたが、無意識に手が一連の動作をして箱を開けてしまった。
 どうやら鍵穴はフェイクで、この小箱はからくり箱だったようだ。
 なぜ箱の開け方がわかったのか、アリス自身にもわからず驚いている。

 小箱の中には布の小袋が入っていた。
 ラルフが興味津々で見守る中、アリスが布袋の口を開くと、薄桃色の石のペンダントと小さく折りたたまれた紙が出てきた。

『アリス 幸運』
 紙に書かれた文字はほとんど消えかかっていて、それ以外の文字は読み取れなかった。

「ラルフ、どういう意味だと思う?」
「その石はアリスのお守りとかってことじゃないかな?」
「そうなのかな?」
「だって、鍵穴がフェイクだなんてわからなかったのに、アリスは何の迷いもなくからくり箱を開けたんだよ? アリスが忘れているだけで、それはきっとアリスのものなんだよ」

 その時突然真上から鳴り響いてきた鐘の音に驚いて見ると、二人が立ち止まっていたのは立派な教会の前だった。

 直後に教会の大きな扉が開いて、中から腕を組んだ男女のカップルが出てきた。
 盛装で幸せそうな表情を浮かべているカップルと、二人を取り囲む人たちの様子から、結婚式を挙げたばかりだとすぐにわかった。

 アリスは目を輝かせて新婚のカップルを見つめている。
「アリス……」
 ラルフは、横に立っているアリスの方を見ずに手を握った。
「僕たち、結婚しないか」
「えっ!?……」
 アリスは突然のプロポーズに驚き、とっさのことに受け止められず、けれども飛び上がるほど嬉しくて、それと同時に聞き間違いかもしれない、などと無意味な葛藤を発動させ、その後の言葉が全く出てこない。

 アリスの沈黙を拒否か、よくても逡巡だと解釈したラルフはアリスの方に向き直り、両手を取って必死に言い募った。
「僕だって、吸血鬼は吸血鬼同士で結婚するものだって知ってる。僕は人間でしかもクレセントハートで、君を守る力も全然足りないけど、君を好きだっていう気持ちは世界中の誰にも絶対に負けない。だから、お願いします、僕と結婚してください!」

 アリスの目から涙が一粒零れていた。
 こうなることを、これまでどんなに待ち望んだことだろう。

 万感の思いで、ふと改めて至近距離のラルフを見ると、普段は穏やかでどちらかというとぼんやりしている風に見える彼が、もうこれ以上ないというほど深刻な顔をしている。
「ぷっ……」
 思わず噴き出したアリスに、ラルフはどう反応していいか分からず、困ったような泣きそうな顔になる。
「アリス……?」
 ラルフに済まないと思うものの、ひとたび零れた小さな笑いは堰を切ったように溢れ出し、アリスは笑うのを止められなくなってしまった。

 かなりの努力をして笑いを鎮め、笑い涙を指先でぬぐいながら呼吸を整えて、アリスはラルフの正面から向き合う。
「急に笑ったりしてごめん。あんまり嬉し過ぎて自分でもわけがわかんなくなっちゃった。……私もラルフ、あなたのことが、だーい好きだよ」
「じゃあ……」
「うん。私、ラルフと結婚する!」

 抱きしめ合う二人を祝福するように、教会の鐘が再び高らかに鳴り響いた。

 ***

 翌日。
 あのカップルのように結婚式を挙げたいと思ったアリスは、ラルフと共に教会にやってきた。
 そして二人は重い扉を押し開けた……。

 ――つづく――

担当マスター:浅田 亜芽

担当マスターより
 最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。お疲れさまでした。
 参加していただいた皆様に、心よりお礼申し上げます。
 今回は、逃避行の道中ということでリアクションの中で書かれた順に時間が進んでいっております。
 各章の冒頭に、その章のプロローグに当たる文章がありますので、ご自身の登場シーンを読む前に参加されているパートのプロローグだけでも先に読んでいただけると、楽しさも増すのではないかなと思います。
 もちろん全文を初めから順を追って読んでいただけると、私としては一番嬉しいです!

 ディムック、大コウモリ、路上ライブ、と順に成功していかなければそこで終了だったのですが、大勢の方に手分けして助けて頂いたおかげで、この物語は無事に次へ進むことができます。
 敵を倒すにしても、ライブを行うにしても、ただその行動をするだけではなくて、皆様の想いが溢れたアクションでしたので、しみじみありがたいなあと思って読ませていただきました。
 また、心情が伝わってくると感情移入しやすくてイメージが湧きやすいため、リアクション執筆の観点からもありがたいです。

 さて、今回も裏話をば。
 エピローグでラルフがアリスにプロポーズしちゃいましたね!
 プロポーズの台詞はラルフが言っているわけですが、これ書いてるの私じゃないですか。
 いやー、もう恥ずかしくて、恥ずかしくて。
 こんなん普通言わんわ! ってツッコミを入れながら、のたうち回りながら書きました。
 そして私の恥ずかしさがそのままアリスの言動に反映されるというね。
 私はアリスになりきって書いている訳ではないんですよ?
 けどこの持っていきようのない恥ずかしさMAXの状態をどうにかして解消しようとして、こうなりました。
 すいません、せっかく良い雰囲気のシーンだったのに。
 皆様もプロポーズして恥ずかしさに悶えたいでしょうか?
 もし需要があるようでしたら、ワタクシ喜んで書かせていただきます。(にっこり)

 という訳で、次回最終話はアリスとラルフが教会に行ったシーンから始まります。
 題名に「憂鬱」と入っているからには、そう易々と結婚式ができるはずがないのです。
 また皆様には困難解決のお手伝いをお願いしなければなりません。
 よろしければ、次回も是非! ご参加ください!

 最終話、どうしようかと頭を抱えている浅田亜芽でした。
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