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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】逃避行(第3話/全4話)

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◆ディムックの襲撃(1)

 ガタゴト、ガタゴト……。
 アリスとラルフが乗った荷馬車は村を抜け、山の中を走っていた。
 屋敷を逃げ出した二人は、ここまで無我夢中で荷馬車を走らせてきた。
 途中何度も、ラルフは手綱を握ったまま後ろを振り返ってみたが、アリスが屋敷にいないことに気付いていないのか、追手の姿は見えなかった。

「アリス、誰も追って来てないみたいだし、ここら辺で少し休憩していかないか。ずっと揺られっぱなしで疲れただろ?」
「うん……ありがと、ラルフ」
 荷台の干し草の中に伏せて隠れていたアリスが身体を起こす。
 ラルフは街道脇の小川のほとりに荷馬車を止めた。
 アリスの手を取って荷台から降ろしてやり、二人は小川の水を手ですくって飲んだ。
 緊張がほぐれて微笑みあったその時、木陰からゆらりと現れる人影が目に入った。
 その不気味な人はあちらこちらから現れ、生気のない表情をして、ふらふらと二人の方へ迫ってくる。

「あれは何!?」
「ディムックだ! アリス、ここは危険だ。行こう!」
 慌てて荷馬車に戻ろうとしたが、もうすでにディムックに取り囲まれている。
 背中を合わせディムックに対峙するアリスとラルフだが、戦うための武器は何も持っていないのだ。
 なんとかして荷馬車に戻るしか、この場を切り抜ける方法がない。
 二人は手を固くつないで、ディムックの隙を窺っていた。

 ***

 そこへ、のんびりとした声が響いた。
「おや、こんなところで会うとは奇遇だな、二人共」

 声の主は大きな岩の後ろから姿を現した堀田 小十郎だった。
 足元にはたくさんのネズミたちがちょろちょろ駆け回っている。
 アリスの屋敷を掃除した時に山へ逃がしたネズミたちだった。

「……些か大変そうだが、助けはいるかな?」
 呑気そうにアリスたちに問いかけているが、古武術の心得がある小十郎ともあろうものが、ディムックに囲まれた二人の状況を把握できないわけがない。
 小十郎は危険にさらされる者を見過ごすつもりはないので、返答を待つまでもなく【グリームオブホープ】の柄に手を掛けた。
 そうして油断なくディムックを見据えたまま、足元のネズミたちに優しく言った。
「そら、危ないから君達はあっちへ行っていなさい」
 小十郎にすっかり懐いているネズミたちは言い付けに従い、離れた岩の隙間に急いで避難していく。

「さて……まずはこの包囲をどうにかせんとな」
 と判断した小十郎は、手近な所にいるディムックたちに目にも止まらぬ速さで踏み込み、【抜刀薙ぎ払い】で包囲の突破口を開く。

「ぐわぁぁぁ……」
 【グリームオブホープ】が一閃した後には、ディムックたちが数体くずおれていた。
 小十郎はこの機を逃さず、アリスとラルフの元へ駆け寄った。
「私が来たから、もう安心だ」
「「はいっ」」
 小十郎は二人を庇うようにディムックに対峙して剣を構えた。
 近付いてくるディムックは斬って倒し、遠くのディムックは【白煉のジャッジメント】で光の十字架を降らせ打倒する。

 小十郎の無駄のない動きはさながら演武のようだった。
 それもそのはず【大殺陣回し】を使っているのだ。
 壮絶な美しさは、アリスとラルフの心に刻み込まれていく。

 ***

「颯爽登場! 蒼星美少年!」
 そこへ決め台詞と共に颯爽と登場したのは青井 星一郎だった。
 【熱情のクロスコード】で風格を纏い、【天子の羽ばたき】で光り輝く六枚の羽根を羽ばたかせている。

「怪物野郎! オレが相手だ!」
 星一郎はディムックの注意を引き付けるため【トゥモロウ・ライト】の光を自分に当てて挑発する。
 【フォーチュン・サークル】が星一郎の頭上で後光が差したように輝き、攻守の加護を与えている。

 アリスとラルフ、それに小十郎の三人を取り囲んでいたディムックたちは、頭をのそりと動かして星一郎の方に視線を向けた。
 ディムックたちが足を踏み出すより早く、星一郎は【≪聖具≫天狩る機関銃】をぶっ放した。
 連射される弾に当たり、星一郎の近くにいたディムックはバタバタと倒れていく。
 しかしすぐに弾が切れてしまい、リロードしなければならない。
 そんなことは想定済みの星一郎は、リロードの時間を稼ぐため、精神を集中させて剣を心に思い浮かべる。
 すると【クリエイション・ウェポン】で美しく輝く光の剣が出現した。

「スターブレード、蒼星一文字斬り!」
 光の剣が一閃を放つと、ディムック一体が声もなく倒れている。

 そうやって次々とディムックをなぎ倒し、星一郎はアリスたちに近づくと、【ドロップ・ドロップス】で飴の雨を降らせた。
「二人とも、その飴を口に!」
 アリスとラルフに傷の癒しと守りの加護を与え、次々と湧いて出るディムックの攻撃に備えるのだった。

 ***

 そこへ辿 左右左がやってきた。
 左右左も、危機に直面しているアリスとラルフを助けたいと思っているのだが、なにしろ座右の銘は「和を以て貴しとなす」だ。
 攻撃と和はなじまないから困る。
「和を以て貴しと為したいとこなんだけどな……まぁ受けた攻撃を返したりするのも『和』かもしれないだろ……仕方ない」
 と少々強引にポリシーを貫く左右左である。

「話の通じない相手には容赦しないからな」
 左右左は【燈幻のティンク】で妖精の幻を出現させた。
 火花の盾で自分の身を守りつつ、ディムックに近付いてゆく。

 襲い掛かってくるディムックの攻撃を【パームカウンター】で受け流し、掌底で反撃する。
 【燈幻のティンク】が守ってくれるので安心だ。

 更に左右左は「和」のために、受けた攻撃を返す【ミメシス・タリオ】も使っていく。
 【燈幻のティンク】の防御効果で左右左が受けるダメージが弱まっているため、ディムックへの報復も弱まっているが、それもまた「和」であろう。
 【パームカウンター】ではかわしきれなかった攻撃で時々負傷もしたが、左右左は【応急手当】を使いながらしのいでいく。

 こうして左右左は二つのバトルスキルを使い分け、ディムックを次々と倒していったのだった。
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