イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

紅葉が彩る新嘗祭

リアクション公開中!
紅葉が彩る新嘗祭

リアクション

――2――

 屋台を冷やかしに来ている多くの人々で賑わう樹京の通りを、華乱葦原らしくないプリーストの姿で歩くのは藍屋 あみかだった。
 あみかが初めて華乱葦原を訪れた時、プリーストスタイルだったのだ。
 想い出の姿で祭りに参加したのは、今では恋人となった竜胆 華恋とデートだからである。
 デートではあるが、実は2人きりではない。
「きゅ、きゅっ♪」
 そんな鳴き声を発したのは、あみかの連れでもふもふが癒されるファーブラだ。
 子犬サイズなので特に人通りが多くてはぐれそうな時は、あみかや華恋が抱いて移動する。
 基本的には、あみかと華恋の2人が手をつなぎ、ファーブラはちょこちょことついて来ていた。
 賑やかな祭りの中、2人で手を繋いでいると思い出すのはあみかの幼い頃の記憶だ。
 当時、華恋を姉のように慕っていたあみかが迷子になり、よく華恋が探し回ったものだ。
 その時、迷子になって心細さで泣いていたあみかの手を握り、華恋が安心させた。
 お互いにとって、今も大切な記憶となっている。
 歩いて行くうち、餅を焼いて出す屋台を見つけ、あみかは豆餅、華恋は白餅、ファーブラには草餅をそれぞれ購入して焼き立ての餅にハフハフ言いながら美味しくいただいた。
 歩きながら食べていると甘酒の屋台を見つけ、華恋が3つ買ってくる。
 ファーブラの分は少なめにしてもらった。
 もう冬が始まりつつあり、日中とは言え外にいると冷える。
 そんな中、熱い餅や甘酒は体を温めてくれた。
 すれ違った人々が料理合戦の話をしていたのを聞き、あみかはつい「いつか華恋さんにお味噌汁を作れるように…」と考えかけ、頬を赤くしてしまう。
 華恋は何を考えているかは知らないが、頬を赤らめているあみかに気付いて、心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫ですか? 寒い?」
 あみかが慌てて首を振り、大丈夫だと伝える。
 華恋は不思議そうにしていたが、念のためにとおでこをくっつけて熱を測り、何ともなさそうだと確認すると安心したようだった。
 しかし、あみかはますます頬を赤くしてしまい、結局華恋にどうしたのかと聞き出され、少しの間甘酸っぱい雰囲気が漂うことになった。
 あみかが落ち着いてからは、また2人で手を繋いで歩き、ファーブラと一緒に華乱葦原での穏やかなデートの時間を存分に楽しんだ。
 今日、また2人の素敵な想い出が1つ増えたのではないだろうか。

 今日の祭りで、屋台を全て回ろうと意気込む猛者は何人もいたが、白波 桃葉もその1人だった。
「屋台制覇を目指すわよ!」
 力を込めて拳を握りしめる桃葉の様子に、矢野 音羽は少し心配そうな表情を見せる。
「意気込むのはいいけど……桃葉、そんなに食べられるの?」
「あら、音羽達にも協力してもらうわよ? 私がそんなに食べられると思っていたの?」
 当然、とばかりに答える桃葉を見て、音羽は密かに溜息を吐く。
「日本のお祭りにないものも売ってるかもしれないからワクワクするわ! あ、でも、日本と違うって事はチョコバナナとか、焼きそばとかはないかしら……?」
 桃葉が首を傾げていると、華乱葦原出身で案内役を買って出ていた早乙女 綾乃が答える。
「日本のお祭りに似てはいますが、食べ物はやはり違いがありますね……。こちらだとお団子が多いでしょうか。
 あとは飴とか七味、甘酒とか……」
「なるほどね。とにかく、まずは行ってみましょうか!」
 こうして、3人揃って屋台を回ることになった。
 まず目に入ったのは、甘酒の屋台だった。
 迷ったあげく、1杯だけ買うことにする。
 3人で分けて飲んだので、1人分は少しずつになったが、体は温まった。
 次に目に入ったのは、七味の屋台だ。
 今すぐ食べられるわけでもないが、口上が珍しく買ってみることにする。
 七味というくらいなので7種類の香辛料を調合するわけだが、1種類ずつ計りながら効能などをスラスラと流れるように早口で言う屋台の売り子の職人芸に、3人共喜んでいたようだ。
 飴の屋台では、コロコロした小さめの可愛らしい飴から、口に入れると喋れなくなりそうな大きなものまでたくさんの種類が揃っていた。
 迷いに迷って、3人それぞれが1種類ずつ買ったが、その場で食べようとする桃葉を音羽が止めた。
「こういうのは、持ち帰って後で食べればいいんじゃない?
 今すぐ食べないとってモノだけ食べるようにすれば、たくさん食べられるでしょ?」
 これを聞いて、桃葉は指をぱちんと鳴らし、そのまま音羽を指差す。
「ナイスアイデアね! そうしましょう」
 持ち帰れる物は持ち帰れば良い、ということに気付いた桃葉は、さらに楽しそうに屋台を物色し始める。
 音羽は留守番中の仲間達に、と饅頭を箱に詰めてもらってお土産として購入した。
 それを見て、綾乃はお団子を同じようにして買うことにしたようだ。
 桃葉は、それならばと飴細工で仲間たちの好きそうな動物の形の飴を作ってもらい、これをお土産に決めた。
 目の前でハサミを使ってあっという間に動物の形になっていく様子を見て、3人共かなり楽しめた様子だ。
 この他、蕎麦や天ぷら、寿司といった軽食とは言えなさそうな屋台もあったが、桃葉は果敢に挑戦する。
 屋台もお祭り用にミニサイズを用意してくれていたので、これを1つ注文して3人で分けて食べた。
「本当は1人ずつ注文して欲しいとこだけど、今日は特別だよ」
 お祭りなので、似たようなことを考えている人が多いのだろう。
 屋台の売り子は苦笑しつつも、そう言って注文を受けてくれた。
「綾乃さん、きつかったら無理に桃葉に付き合わなくていいからね?」
「いえ、大丈夫ですよ。楽しいです」
 桃葉の勢いに、音羽が綾乃を心配して声をかけたが、綾乃は本当に楽しそうにしている。
 どこの屋台へ行っても、桃葉があまりに美味しそうに食べるので、快く受け入れてもらえたようだ。
「さて、舞芸の方も見に行きましょうか。こっちにばかり付き合わせても悪いもんね」
 一通り屋台を回りきれたかな、という頃になり、桃葉が急にそんなことを言い出した。
「あら、いいの?」
 音羽が確認すると、桃葉が大きく頷く。
 これを受けて、3人で旅芸人達の舞芸を見に行くことになった。
「桜の景色も素敵だったけど、今日の新嘗祭みたいな紅葉も、いい雰囲気ね」
 旅芸人達が舞芸披露する会場となっている公園で紅葉を見た音羽は、目を細めて少しの間だけ、華乱葦原の秋の景色に見入っていた。
ページの先頭に戻る