紅葉が彩る新嘗祭
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◆第二章 五穀豊穣◆
司会者が新嘗祭の開始を宣言した後、すぐに何人もの黒子が舞台上へ上がった。
すごい速さで色々な台や道具を運んで決まった位置に置き、舞台袖へ引っ込んではまた何か持って来る。
観客の中には、その動きの見事さを面白がっている者もいるようだ。
そんな黒子達の見事な働きのお陰で、何もなかった舞台上は、あっという間に料理合戦会場へと変貌を遂げたのだった。
料理合戦の参加人数の関係で、舞台上だけでなくその前にも調理台等が設置されていた。
黒子と入れ替わりに、いつの間にか引っ込んでいた司会者が再び姿を表すと、料理合戦の流れを説明し始める。
司会者が審査員の紹介をすると、観客達は最前列にいた謎のグループが審査員達だったことに驚き、どよめいた。
ふぇすた座による舞芸披露が終わってから、観客の顔ぶれには多少の変化が見られたが、結果としてその数はあまり変わらなかった。
料理合戦の観客には、地球の料理を食べられるかも、という期待で集まってきた人々が多い。
司会者からの説明の間に、料理合戦に参加する料理人達が調理台のところまで行く。
その中には、もちろん小次郎やフェスタ生達もいた。
全員が所定の位置へ行き、開始の合図を待つ。
司会者が一通り見回し、きちんと全員が決まった位置にいることを確認してから、料理合戦の開始を告げた。
観客達からは、調理している姿は見えない部分も多い。
特に後方の観客は、遠くてよく見えていないだろう。
そのため、司会者が順に調理台を回って実況し、参加者達が何をしているのか伝えていく。
盛り上げるためか、華乱葦原らしい楽曲をBGMとして生演奏までしている。
食皇、御饌司といった料理特化とも言えるスタイルで、この料理合戦に臨んでいる弥久 風花はまず、茹でた大豆を潰し始めた。
潰した大豆は油で揚げておく。
みじんぎりした玉ねぎを炒め、何と先程の大豆を肉の代わりにここへ投入。
味付けをして、タコミートの出来上がりだ。
お米マスタリーで完璧に炊き上げたご飯の上にレタスやトマトを乗せ、さらにその上にタコミートを乗せてタコライスを作り上げた。
さらに、オープングリルでパンを焼く。
甘く煮た小豆を焼きあがったパンの上に乗せ、小倉トーストを作る。
「美味そうなもん作ってんな!」
小次郎が敵情視察、とばかりに風花のところへ来て小倉トーストを物珍しそうに見て言う。
「あら、小次郎。良かったら1枚あげるわ」
「じゃ、失礼して……」
風花が小倉トーストを1枚渡すと、すぐその場で味見する小次郎。
「っかあぁ! 地球にはまだまだおいらの知らねぇ美味ぇ料理があるんだな!」
小次郎は、どこか悔しそうに言いつつも顔は美味しい料理との出会いにニコニコし、食べながら自分の場所へと戻っていった。
風花は小次郎を見送り、料理を盛り付けて完成させた。
「どうぞ、召し上がれ!」
スターリーフライヤーを使い、完成した料理を審査員席へ出す。
料理は審査員達だけでなく、観客達にも手のひらに乗るくらいの小さな皿に取り分けられ、提供された。
風花の料理は、比較的どの世代、性別の人にも好まれたようだ。
「肉を使ってないはずなのに、肉が入ってるみたいだ!」
「甘くて美味しい!」
そんな声が聞かれた。
一方、羽鳥 唯は御饌司のスタイルで参加していた。
「『食の新来芸道』……はいかがでしょうか?」
唯は天下御免羅舞存句を歌い、舞ってスープを作り温めながら、玉ねぎと五穀米を別の鍋で炒め始める。
具には火焔マトンを使う。
「あなたとこの世界でずっとずっといられますように……
千年後も一万年後も、ずっとずっとあなたと一緒に……」
唯の歌を邪魔しないように、司会者は少し声を落として実況している。
華乱葦原と地球、そして唯自身の故郷ディスカディアの平和を祈り、その気持ちを歌と料理にこめる唯の姿に見とれている観客は少なくないようだ。
別の鍋に作っていたスープを加え、水気がなくなってきたらチーズをたっぷり加える。
「これは牛の乳を加工して作った、チーズという食べ物です」
チーズについて司会者から質問され、そう説明する。
料理が出来上がると、盛り付けていく。
最後にバジルの代わりにオモイデ草を振りかけた。
「料理の一番大切な材料は愛情ですから!」
スターリーフライヤーを使い、チーズリゾットの完成だ。
唯の料理も、審査員と観客達に振る舞われる。
「牛の乳を使ってこんな美味いもんができるとはなぁ」
「食べたことない味だけど、美味しいね!」
若い男性には少し物足りなかったようだが、女性や子供達には概ね好評だった。
小次郎と以前も料理合戦で顔を合わせたことのある世良 延寿だが、今回はたまたま小次郎と場所が近かった。
顔見知りだということもあり、また小次郎としては以前自分を負かした相手だというのもあってか、延寿の料理に興味津々のようだ。
延寿の作る料理について質問したり、味見させる代わりに味見させてもらったりしている。
「うん、やっぱり小次郎くんが作った料理はとっても美味しいね!」
「あったりめぇだ! 前回は負けちまったが、今回は絶対勝つ!」
小次郎は延寿から褒められたのに、何故かより闘志を燃やして料理に打ち込む。
今回、延寿は華乱葦原で手に入る食材だけを使うことにこだわっていた。
延寿が使う材料は、米、小麦、小豆、大豆に砂糖、油だ。
とは言え、せっかくの機会なので米はただの米でなく太陽コメを使っている。
これをお米マスタリーで上手く米粉にし、小麦粉と配合して生地を作っていく。
形は星やハートといった可愛らしいものだ。
これを油で揚げた物に、きなこやあんこをトッピングして完成である。
延寿が作ったのは、米粉ドーナツだった。
華乱葦原で手に入る食材だけを使い、出来上がったのは華乱葦原には馴染みのないドーナツというわけだ。
「はい、どうぞ! ドーナツは揚げたてが一番美味しいから、熱いうちに召し上がれ♪」
審査員、観客に共通して、米粉ドーナツは子供と女性からの人気が特に高かったようだ。
「母ちゃん、オレもっと欲しい!」
「不思議な食感だけど、甘くて美味しいねぇ」
男性からも比較的好評だった。
小次郎以外の料理自慢達も、それぞれに腕をふるっていた。
寿司職人や和菓子職人といった各分野のエキスパートも混ざっている。
しかし、審査員の中に魚が苦手な人物がいたようで酷評され、寿司職人が悔し泣きしていた。
和菓子職人の作った見事な和菓子は、食べるのが勿体ないと言われ実際そのまま持ち帰った者もいたようで、複雑な表情になっていた。
そんな中、宇津塚 倖々葉は太陽コメをたくさん用意してきていた。
そこに小豆を加えたものを4つに分け、4つの鍋で普通のもの、麦、あわ、きびの入ったものと4種類の赤飯を炊いていく。
スープストックで時間短縮して全てタイミングもばっちりに炊き上がり、それぞれの赤飯をハート型のおにぎりにする。
お皿の上に、それらが四つ葉のクローバー型になるようきれいに並べていく。
最後に食神の言祝ぎでごましおをトッピングし、完成だ。
審査員たちに出す時には、スターリーフライヤーも忘れない。
倖々葉の料理が提供される頃には、審査員も観客達も豪華な料理をたくさん食べており、そろそろ素朴な味が欲しくなってきていた。
赤飯が可愛く盛り付けられたお皿を見て、喜んだ者も中にはいたようだ。
審査のためにたくさんの料理を食べる前提になっていたので、どの料理も小さく少なく守られていたのだが、最後の方には満腹になってしまっている者も少なくなかった。
だからこそ、持ち帰りもしやすいおにぎりという形で提供されたこと自体、ありがたいと思う者も多かったのだ。
「少しずつ味が違うね。同じ赤飯でも、ちょっとの工夫でこんな風に変わるんだー」
「こんなたくさんのおにぎりにするの、大変だったろうなぁ」
赤飯というシンプルな料理ゆえに、大きな感動はなさそうだったが、お祭りにふさわしいおめでたい雰囲気になり、皆が笑顔で幸せそうに食べていた。
倖々葉が目標にした「はぴはぴで感謝な料理」になっていたと言えるだろう。
そうこうするうちに、料理は全て完成して振る舞われ、審査員達が優勝者を決めるために数分の議論に入る。
その間、司会者が巧みな話術で場をつないだ。
料理人達の逸話紹介があり、小次郎とフェスタ生達の以前の話なども出て、それなりに盛り上がる。
審査員達から合図を受けると、司会者はうまくそれらの話をまとめ、審査結果の発表へと移った。
「さあ、今年の新嘗祭を盛り上げる料理合戦の優勝者を発表いたします!」
ここで10秒ほど、太鼓が鳴らされて発表を引っ張る。
「優勝は……弥久 風花さんのたこらいす!」
観客達から拍手が送られ、司会者が審査員にコメントを聞いていく。
肉を使っていないのに肉みたいだったこと、上手く穀物を活用していたことなどが評価されたようだ。
「それでは皆さん! まだまだ新嘗祭は続きますが、国造による奉納で一旦こちらでの催しは終了となります。
国造の奉納も、是非ご覧になってくださいね!」
司会者がそう言うと、舞台の上に国造が上がる。
いつの間にかまた黒子達によって片付けられ、料理合戦で作られた料理全てが並べられた台だけが舞台中央に残っていた。
その前までゆっくり歩いて行くと、御幣を左右に振り、よく響く声で祝詞を上げる。
観客達も、先程とは違い厳かな雰囲気の中で手を合わせていた。
祝詞が終わると国造はまた御幣を振り、深々と礼をして舞台から下りる。
こうして奉納も終わり、観客達はまだまだ祭りで賑わう街中へと繰り出していくのだった。
司会者が新嘗祭の開始を宣言した後、すぐに何人もの黒子が舞台上へ上がった。
すごい速さで色々な台や道具を運んで決まった位置に置き、舞台袖へ引っ込んではまた何か持って来る。
観客の中には、その動きの見事さを面白がっている者もいるようだ。
そんな黒子達の見事な働きのお陰で、何もなかった舞台上は、あっという間に料理合戦会場へと変貌を遂げたのだった。
料理合戦の参加人数の関係で、舞台上だけでなくその前にも調理台等が設置されていた。
黒子と入れ替わりに、いつの間にか引っ込んでいた司会者が再び姿を表すと、料理合戦の流れを説明し始める。
司会者が審査員の紹介をすると、観客達は最前列にいた謎のグループが審査員達だったことに驚き、どよめいた。
ふぇすた座による舞芸披露が終わってから、観客の顔ぶれには多少の変化が見られたが、結果としてその数はあまり変わらなかった。
料理合戦の観客には、地球の料理を食べられるかも、という期待で集まってきた人々が多い。
司会者からの説明の間に、料理合戦に参加する料理人達が調理台のところまで行く。
その中には、もちろん小次郎やフェスタ生達もいた。
全員が所定の位置へ行き、開始の合図を待つ。
司会者が一通り見回し、きちんと全員が決まった位置にいることを確認してから、料理合戦の開始を告げた。
観客達からは、調理している姿は見えない部分も多い。
特に後方の観客は、遠くてよく見えていないだろう。
そのため、司会者が順に調理台を回って実況し、参加者達が何をしているのか伝えていく。
盛り上げるためか、華乱葦原らしい楽曲をBGMとして生演奏までしている。
食皇、御饌司といった料理特化とも言えるスタイルで、この料理合戦に臨んでいる弥久 風花はまず、茹でた大豆を潰し始めた。
潰した大豆は油で揚げておく。
みじんぎりした玉ねぎを炒め、何と先程の大豆を肉の代わりにここへ投入。
味付けをして、タコミートの出来上がりだ。
お米マスタリーで完璧に炊き上げたご飯の上にレタスやトマトを乗せ、さらにその上にタコミートを乗せてタコライスを作り上げた。
さらに、オープングリルでパンを焼く。
甘く煮た小豆を焼きあがったパンの上に乗せ、小倉トーストを作る。
「美味そうなもん作ってんな!」
小次郎が敵情視察、とばかりに風花のところへ来て小倉トーストを物珍しそうに見て言う。
「あら、小次郎。良かったら1枚あげるわ」
「じゃ、失礼して……」
風花が小倉トーストを1枚渡すと、すぐその場で味見する小次郎。
「っかあぁ! 地球にはまだまだおいらの知らねぇ美味ぇ料理があるんだな!」
小次郎は、どこか悔しそうに言いつつも顔は美味しい料理との出会いにニコニコし、食べながら自分の場所へと戻っていった。
風花は小次郎を見送り、料理を盛り付けて完成させた。
「どうぞ、召し上がれ!」
スターリーフライヤーを使い、完成した料理を審査員席へ出す。
料理は審査員達だけでなく、観客達にも手のひらに乗るくらいの小さな皿に取り分けられ、提供された。
風花の料理は、比較的どの世代、性別の人にも好まれたようだ。
「肉を使ってないはずなのに、肉が入ってるみたいだ!」
「甘くて美味しい!」
そんな声が聞かれた。
一方、羽鳥 唯は御饌司のスタイルで参加していた。
「『食の新来芸道』……はいかがでしょうか?」
唯は天下御免羅舞存句を歌い、舞ってスープを作り温めながら、玉ねぎと五穀米を別の鍋で炒め始める。
具には火焔マトンを使う。
「あなたとこの世界でずっとずっといられますように……
千年後も一万年後も、ずっとずっとあなたと一緒に……」
唯の歌を邪魔しないように、司会者は少し声を落として実況している。
華乱葦原と地球、そして唯自身の故郷ディスカディアの平和を祈り、その気持ちを歌と料理にこめる唯の姿に見とれている観客は少なくないようだ。
別の鍋に作っていたスープを加え、水気がなくなってきたらチーズをたっぷり加える。
「これは牛の乳を加工して作った、チーズという食べ物です」
チーズについて司会者から質問され、そう説明する。
料理が出来上がると、盛り付けていく。
最後にバジルの代わりにオモイデ草を振りかけた。
「料理の一番大切な材料は愛情ですから!」
スターリーフライヤーを使い、チーズリゾットの完成だ。
唯の料理も、審査員と観客達に振る舞われる。
「牛の乳を使ってこんな美味いもんができるとはなぁ」
「食べたことない味だけど、美味しいね!」
若い男性には少し物足りなかったようだが、女性や子供達には概ね好評だった。
小次郎と以前も料理合戦で顔を合わせたことのある世良 延寿だが、今回はたまたま小次郎と場所が近かった。
顔見知りだということもあり、また小次郎としては以前自分を負かした相手だというのもあってか、延寿の料理に興味津々のようだ。
延寿の作る料理について質問したり、味見させる代わりに味見させてもらったりしている。
「うん、やっぱり小次郎くんが作った料理はとっても美味しいね!」
「あったりめぇだ! 前回は負けちまったが、今回は絶対勝つ!」
小次郎は延寿から褒められたのに、何故かより闘志を燃やして料理に打ち込む。
今回、延寿は華乱葦原で手に入る食材だけを使うことにこだわっていた。
延寿が使う材料は、米、小麦、小豆、大豆に砂糖、油だ。
とは言え、せっかくの機会なので米はただの米でなく太陽コメを使っている。
これをお米マスタリーで上手く米粉にし、小麦粉と配合して生地を作っていく。
形は星やハートといった可愛らしいものだ。
これを油で揚げた物に、きなこやあんこをトッピングして完成である。
延寿が作ったのは、米粉ドーナツだった。
華乱葦原で手に入る食材だけを使い、出来上がったのは華乱葦原には馴染みのないドーナツというわけだ。
「はい、どうぞ! ドーナツは揚げたてが一番美味しいから、熱いうちに召し上がれ♪」
審査員、観客に共通して、米粉ドーナツは子供と女性からの人気が特に高かったようだ。
「母ちゃん、オレもっと欲しい!」
「不思議な食感だけど、甘くて美味しいねぇ」
男性からも比較的好評だった。
小次郎以外の料理自慢達も、それぞれに腕をふるっていた。
寿司職人や和菓子職人といった各分野のエキスパートも混ざっている。
しかし、審査員の中に魚が苦手な人物がいたようで酷評され、寿司職人が悔し泣きしていた。
和菓子職人の作った見事な和菓子は、食べるのが勿体ないと言われ実際そのまま持ち帰った者もいたようで、複雑な表情になっていた。
そんな中、宇津塚 倖々葉は太陽コメをたくさん用意してきていた。
そこに小豆を加えたものを4つに分け、4つの鍋で普通のもの、麦、あわ、きびの入ったものと4種類の赤飯を炊いていく。
スープストックで時間短縮して全てタイミングもばっちりに炊き上がり、それぞれの赤飯をハート型のおにぎりにする。
お皿の上に、それらが四つ葉のクローバー型になるようきれいに並べていく。
最後に食神の言祝ぎでごましおをトッピングし、完成だ。
審査員たちに出す時には、スターリーフライヤーも忘れない。
倖々葉の料理が提供される頃には、審査員も観客達も豪華な料理をたくさん食べており、そろそろ素朴な味が欲しくなってきていた。
赤飯が可愛く盛り付けられたお皿を見て、喜んだ者も中にはいたようだ。
審査のためにたくさんの料理を食べる前提になっていたので、どの料理も小さく少なく守られていたのだが、最後の方には満腹になってしまっている者も少なくなかった。
だからこそ、持ち帰りもしやすいおにぎりという形で提供されたこと自体、ありがたいと思う者も多かったのだ。
「少しずつ味が違うね。同じ赤飯でも、ちょっとの工夫でこんな風に変わるんだー」
「こんなたくさんのおにぎりにするの、大変だったろうなぁ」
赤飯というシンプルな料理ゆえに、大きな感動はなさそうだったが、お祭りにふさわしいおめでたい雰囲気になり、皆が笑顔で幸せそうに食べていた。
倖々葉が目標にした「はぴはぴで感謝な料理」になっていたと言えるだろう。
そうこうするうちに、料理は全て完成して振る舞われ、審査員達が優勝者を決めるために数分の議論に入る。
その間、司会者が巧みな話術で場をつないだ。
料理人達の逸話紹介があり、小次郎とフェスタ生達の以前の話なども出て、それなりに盛り上がる。
審査員達から合図を受けると、司会者はうまくそれらの話をまとめ、審査結果の発表へと移った。
「さあ、今年の新嘗祭を盛り上げる料理合戦の優勝者を発表いたします!」
ここで10秒ほど、太鼓が鳴らされて発表を引っ張る。
「優勝は……弥久 風花さんのたこらいす!」
観客達から拍手が送られ、司会者が審査員にコメントを聞いていく。
肉を使っていないのに肉みたいだったこと、上手く穀物を活用していたことなどが評価されたようだ。
「それでは皆さん! まだまだ新嘗祭は続きますが、国造による奉納で一旦こちらでの催しは終了となります。
国造の奉納も、是非ご覧になってくださいね!」
司会者がそう言うと、舞台の上に国造が上がる。
いつの間にかまた黒子達によって片付けられ、料理合戦で作られた料理全てが並べられた台だけが舞台中央に残っていた。
その前までゆっくり歩いて行くと、御幣を左右に振り、よく響く声で祝詞を上げる。
観客達も、先程とは違い厳かな雰囲気の中で手を合わせていた。
祝詞が終わると国造はまた御幣を振り、深々と礼をして舞台から下りる。
こうして奉納も終わり、観客達はまだまだ祭りで賑わう街中へと繰り出していくのだった。