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紅葉が彩る新嘗祭

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紅葉が彩る新嘗祭

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◆第一章 祭りの始まり◆

 ふぇすた座による舞芸披露もあるので、祭りの開始は少し早めの時間に設定されている。
 屋台の準備も早いところは終わっており呼び込みを始めているが、手間取っているところもまだまだ多い。
 中にはふぇすた座の舞芸を見るため、屋台の準備を終えてから八尋殿へ向かった者もいるようだ。

 祭りはそのほとんどを国造が執り行うことになっているが、舞芸披露や料理合戦も行う関係から、進行の補佐としてこういったことに慣れている司会者が呼ばれていた。
 舞台上で司会者が国造と小声で何やら話しているようだ。
 司会進行には慣れていてもこういった神事としての祭りで厳かな雰囲気には慣れていないようで、かなり緊張しているのが遠目にも分かる。
 舞台脇にも、神職らしき衣装の人が何人も並んでいる。
 舞台の奥に作られた台の上、御簾の向こうには既に帝が座っているようで、集まった人々がどうにかその姿を見ることができないかと、目を細めてみたり片目を閉じてみたりしている。
 そうしているうちに、合図として鳴らされていた太鼓のドン、ドン、ドンというゆっくりと規則的な音が変化し、力強くリズミカルになっていく。
 気付けば、太鼓だけでなく華乱葦原の伝統的な楽器もいくつか加わり、1分程度の短い曲が演奏され、終わると同時にざわざわしていた人々も静かになった。
 国造が目配せで合図し、司会者が簡単な挨拶の後、流れを説明する。
 それによると、まずはふぇすた座の舞芸披露が行われ、国造による祝詞の後、料理合戦で使われる道具や食材のお祓い。
 それから料理合戦を行って審査と発表の後、今年の新穀を奉納して神々へ感謝し、最後にまた国造によって祝詞が唱えられる。
 最後にふぇすた座の舞芸で祭りの終わりを知らせたら、集まった人々が八尋殿から出る時に新米で作った小さなおにぎりが配られるということだった。

 司会者から、これから祭りを盛り上げるために舞芸を披露する、ふぇすた座の簡単な紹介が行われた。
「おいしいおかずはあるかなー? あるといいな俺の一番」
 深郷 由希菜は紹介を聞きながら、終わった後には今着ているライブ衣装の藍染小袖を桜色の踊り着物に着替え、握り飯に合うおかずを探して屋台を回ろう、とぼんやり考えていた。
 どんな屋台があるだろうか、と思いを馳せていると自分の名前が呼ばれ、ちょっと慌てて舞台に上がる。
 周囲には、直前まで握り飯と屋台のことを考えていたことは気付かれていないようだ。
「どうも! 俺はふぇすた座のアイドル巫、ふっくらとしたマシュマロという菓子の大きい版、アメリカンマシュマロ体型、まぁ要するに見た通りのでかさの深郷由希菜でーす!」
 由希菜が披露するのは「盛り上がれ祭りよ」である。
「祝えや踊れ 祝えや歌え 神々は皆の笑顔をご所望のようです」
 歌いながら大桜の舞を舞いつつ、オルトノームで呼び出した精霊に太鼓のバチを投げる。
 精霊はそれを見事キャッチし、床をゴンゴン叩いて太鼓っぽく音を立て始めた。
 サビにさしかかると、天津舞いで空中に浮いて舞う。
「祈りを」
 由希菜が歌って観客達に身振りで合いの手を求める。
「「「祈りを」」」
 観客たちがそれに応える。
「捧げて」
「「「捧げて」」」
 舞台上はかなり盛り上がっており、一旦引っ込んだ司会者も舞台袖で体を揺らしているようだ。
 全体的に明るく、可愛いものが好きな観客たちに特に気に入られ、終盤にさしかかると飛翔宝船が上手から現れた。
 由希菜はそれに乗り、観客達に向かって笑顔で手を振りながら下手へと去って行く。

 舞台の下手へ去った由希菜を上手側の舞台袖から緊張した面持ちで見ているのは、睡蓮寺 小夜だ。
 由希菜への拍手や歓声が収まったら、次は小夜と堀田 小十郎の出番である。
 八尋殿で舞芸を披露するということへの緊張からか、少し不安そうにも見える小夜が振り向くと、すぐ後ろには小十郎が立っていた。
「小夜、私達で幻想演武を示すとしよう」
 目が合うと小十郎が笑顔で力強く頷いて見せ、小夜も少しホッとしたように微笑んで頷き返す。
「今日は十くんと一緒だから……それだけで、わたしは頑張れます…!」
 再び前を向いた小夜は、そう呟いて舞台へと足を踏み出した。
 小夜が披露するのは「陰なわたし、陽なわたし」だ。
 3曲目として小夜が作ったこの曲には、辛いことも楽しいことも、今の自分を作り上げた大切な記憶だという前向きな想いが込められている。
「心が陰り、落ち込もうと」
 そんな曲に五穀豊穣への感謝、そして皆が祭りを楽しめるようにという気持ちをたくさん乗せて、祈祷:天津御柱を舞い、オンバシラへ祈りを捧げ、奉歌高唱による伸びやかな声で歌い上げていく。
「きっと、陽光(ひかり)は心(ここ)にある」
 小夜の歌に合わせ、一緒に舞台へ上がっていた小十郎が演武を披露している。
 小夜が持っている陽の天津弦杖の音色、小夜の歌声と舞いを引き立てるように大殺陣回しを行い、振った火焔白鳥から燐光が散る度、観客達が声を上げた。
「冬を越え、新たな豊穣に至るために……この演武を捧げよう」
 曲が最初のサビにさしかかると、小十郎が舞神召喚で神々を呼び込み、繊細かつ大きな動きでの演武を見せ、観客たちを魅了する。
 幸魂霊舞による光の軌跡もあって、祭りの始まりに相応しい豪華さだ。
「陰と陽、どちらも大事な、わたし自身」
 小夜の舞いも丁寧なやんごとなき足運びの効果もあり、目を引いているだけでなく気品を感じさせる。
 小十郎の演武は、舞台上でよく映え、皆の心を照らす光をイメージしているかのようだ。
 さらに、その光は幻想的な雰囲気を漂わせていた。
 小夜の衣装は巫女をイメージさせ、小十郎の衣装は侍や剣士をイメージさせる。
 柔と剛の対比のような2人のパフォーマンスは、陰陽の対比を感じさせる小夜の歌とよく合う。
 やがて小夜の歌と小十郎の演武が終わると、観客たちから大きな歓声と拍手が送られた。

 小夜と小十郎が舞台中央で2人並んで観客に向かって礼をし、退場するのと交代で明るい笑顔で舞台に上がったのは空花 凛菜だ。
 やんごとなき足運びでお嬢様っぽい雰囲気を漂わせ、舞台中央まで来ると気品を感じさせるお辞儀をして挨拶する。
「皆さん、こんにちは!
 本日は新嘗祭ですね。お祭りの開始を盛り上げられるよう励みたいと思います。
 よろしくお願いします」
 符で呼び出された朧芸者達が凛菜を引き立たせるように共に舞う。
 凛菜が舞うのは天綴の舞だ。
 その名の通り、天と地を縫うかのように軽やかに、小さく跳ぶ舞いで観客たちを魅了し始めた。
 天と地の恵みとも言える五穀豊穣を感謝する祭りの始まりに、相応しい舞いだと言えるだろう。
 凛菜は下町喜色で朗らかな笑顔をアピールし、朧芸者達と息の合った舞いを披露している。
 それは冒頭の挨拶通り、楽しい祭りの開始を盛り上げるような賑やかで明るい舞いだった。
 ふぇすた座の一員として、この新嘗祭の始まりを盛り上げるという大きな役割を見事に果たし、貢献していると言えよう。
 舞いが終わると符で呼び出された幻の舞芸者達は消え、凛菜は再び気品を感じさせるお辞儀をして舞台を去るのだった。

 去っていく凛菜に向けて観客達の拍手と歓声が送られ、それが収まったタイミングで魔性の美少女陰陽師をイメージした衣装の芹沢 葉月がノリノリで舞台に上がる。
 登場するやいなや、お囃子・少女Remixに合わせて影繰りの術笛を吹き、自らの影を踊らせる葉月。
 観客達はこの演出に歓声を上げ、先程よりさらに盛り上がっているようだ。
 これを見て、葉月は忍法彩雲隠れを使って舞台のあちこちに気まぐれに移動し、時には客席で観客に混じり、葉月に気付いた観客に悪戯っぽくウインクしてまた隠れ、と縦横無尽に駆け回るようなパフォーマンスを行った。
 お囃子・少女Remixという曲が持つ、少女の快活さ、可愛さ、そしてちょっぴりの妖しさを体現するかのようなパフォーマンスである。
 まさに周囲を振り回す魔性の美少女陰陽師のライブ、と言ったところだ。
 クライマックスに差しかかると、葉月は呼び出した≪式神≫大折鳥に乗り、観客達の頭上を低く飛び回る。
 そして笑顔で手を振り愛嬌を振りまいたかと思うと、舞台へ戻ってそこに降り立った。
「ありがとうございました! これから始まる新嘗祭、皆さん楽しんでいってくださいっ。
 どろん!」
 そう挨拶したかと思うと、変わり身【桜】で桜の花びらに変身し、消えて退場した。
 観客達は、少しの間このパフォーマンスに驚き声を失っていたが、すぐに大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 桜の花びらは風に乗って舞台上から少しずつ消えていく。
 桜の花びらがほとんど全て舞台上から消える頃、拍手や歓声も収まっていった。
 皆がそう思った時、新嘗祭の始まりを告げる花火が秋の終わりの空に向かって上がる。
 再び観客達が歓声を上げ、拍手を送る。
 花火はすぐに終わる程度のものだったが、祭りの始まりにはちょうど良いだろう。
 そして花火を背に、司会者が舞台上で新嘗祭の開始を宣言し、人々の拍手も歓声も、一層大きくなるのだった。
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