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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェスタde忘年会

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フェスタde忘年会

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★忘年会を満喫(4)

 虹村 歌音ウィリアム・ヘルツハフトシャーロット・フルールアレクス・エメロード、そして梧 双葉は五人でワイワイおしゃべりをしながらテーブルを囲んでいる。

 双葉の皿には大好きなフライドチキンがたっぷり乗っている。
 どんなものか気になっていた嘘シャンパンも意外とおいしい。
 嘘シャンパンのシュワシュワの炭酸が、フライドチキンの油分をさっぱりと流してくれるので、いくらでも食べられる。

 甘いものに目がない歌音がプチスイーツをパクつきながら、感慨深げに言った。
「もうすぐ2029年かぁ……いろんな世界でアイドル活動を続けているうちに、あっという間に過ぎちゃったね。今年はリトルフルール大躍進の年だったよね!」
 シャーロットが相槌を打つ。
「色々あったよね。光のアイドルに合格したり、双葉ちゃんと大阪で鬼退治したり、夏はオキナワでガナシカリバーちゃんの王になってキョウヤちゃんと真剣勝負したり♪」
 シャーロットは、ふと、ウィリアムに目を向けるとにやにやして言った。
「ウィリーちゃんは格好良かったよ。剣の師匠とか呼ばれてるみたいな噂聞いたけど、どうなのかな?」
 ウィリアムは、シャーロットがただ自分をいじりたいだけだと知っているので、からかいには乗らず静かに嘘シャンパンを飲んでいる。

 ウィリアムがシャーロットに返事をする素振りを見せないので、歌音は話を元に戻した。
「シャロちゃんはオーサカの覇権も取ったし大活躍だったよね!」
「えへへ、ありがとなんだよ、かのんちゃん。でもね、あれはボクとかのんちゃんで勝ち取ったんだよ。ふふん、パイは世界を制するなんだよ☆」
「来年も一緒に、もっともーっと舞台を盛り上げていこうね!」
「うん!」
 シャーロットは楽しくなってきて、【ツリーオブライフ】を使って、りんごやパイナップル、桃やイチゴなど多種多様なフルーツを出し、みんなで食べようとテーブルに乗せた。
「いつでもどこでも食べ物出せちゃうこの力、便利だよね」

 二人のやり取りを聞いていた双葉がフライドチキンを食べる手を止め、指折って数えながら思い出を検索している。
「私は、今回のメンバーでの思い出は『タナトスとのライブ対決』に『幽霊船探索』、それと『樹海で嘘ちゃんとのライブ対決』かな」
「うんうん、双葉ちゃんも頑張ってくれたよね♪ 嘘ちゃんはリトルフルールの特別会員! 消えちゃったりしなくて良かったにゃ~」
 上機嫌で今年の思い出を話しているシャーロットの横から、アレクスが混ぜっ返す。
「幽霊船探索か……あん時は大変だったよな。そこのクソマスターが水中でパニック起こしやがってよ。カノンも幽霊でダブルパニック。ほんと手間のかかる姫さんばっかで困っちまうぜ」
 けけけと、アレクスは鼻で笑う。
「ま、いつも成功ばっかとはいかねぇよな」
 シャーロットの水嫌いを正面からからかえるのは、アレクスが心の底から主人を信頼しているからこそである。

「アレクちゃんひっど~い。気持ちよく、ボクとかのんちゃんの大活躍を語ってたのに、そこでなんで失敗談出すかな」
 シャーロットはぷんぷん怒って、頬を膨らます。
「むしろ褒めるべきでしょ、この夏で水に顔をつけられるようになったボクを!」
 自信たっぷりにアレクスに胸を張ってみせるシャーロットだが、進歩したのはほんのちょっぴりで、深い水に入ったら溺れるカナヅチなのは直っていないのであった。

 しかしシャーロットは主人の態勢を立て直して命令した。
「罰としてアレクちゃん、フルーツのカットと盛り付けよろしく♪ それとあと、料理もじゃんじゃん取って来て。スイーツ多めで!」
 先ほど出したフルーツの山を指さすシャーロットは、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「あん? 別にいいけどよ、んなスイーツばっか頼んで太っても知らねぇぞ? カノンみたいに一トンになっちまったりしてな」

 アレクスはケラケラ笑いながらこともなげにフルーツを【後光スライス】でカットし、【盛り付けテクニック】で皿に美しく盛り付けていく。
 ウィリアムもアレクスの忠告に加勢する。
「ああ、羽目を外すのはいいが、また食べ過ぎて体重が増えて慌てたりしないように」

 その時、スパンッ、スパーンとハリセンで叩く小気味よい音が鳴り響いた。
 アレクスとウィリアムが同時に頭を押さえる。
「いてぇ! 何しやがる暴力マスター、って、フタバだと!?」
 殴られたところをさすりつつアレクスが振り返った先には、双葉が、手に持った【妖精の契約書(ハリセン)】をもう一方の掌にトントンと軽く打ち付けながら立っていた。
「いっぱい食べても体重の話は禁句よ!」
「おおぅ……お前、そんなキャラだっけか?」
 めッとしている双葉に向かって、アレクスがぼやいた。
 ウィリアムは無言で、やれやれといった表情をしている。
「双葉ちゃん、ぐっじょぶなんだよ☆ へへ~ん、ボク普段めっちゃ動いてるから太んないもん☆ アレクちゃん、無駄口叩いてないで早く早く!」
「へいへい。お嬢様方の従者は尽くさせていただきますよ」

 アレクスはシャーロットの命令に従い、料理を取りにサイドテーブルへ向かった。
「やれやれ……いつも賑やかなこって」
 はぁー、とため息をついて歩いていく。
(でもなんだかんだ楽しんでる俺がいんだよな。シャロに拾われなかったら俺はあそこで終わっていた……)
 アレクスは、シャーロットに恩以上の感情を持っていることをもう自覚している。
(そりゃ好きさ、マスターの事はよ)
 けれども所詮、シャーロットとアレクスは主人と弟子……。
 それ以上の関係を望むのは過ぎたことだと、甘く苦しい気持ちを押さえつける。
(せめて……最後の最後まで使ってほしいもんだ……)
 アレクスはシャーロットのためにスイーツをたくさん持って行こうと、皿を手にした。


 そんなアレクスの後ろ姿を見送っていたウィリアムが、視線をそのままに言った。
「おいシャーロット、もう少しあいつのことを労ってやったらどうだ」
「んにゅ? アレクちゃんはボクの弟子だし、これくらい平気平気」
 自信満々に笑うシャーロットの方に向き直って、ウィリアムが今度は真剣な口調で告げた。
「あまり雑な扱いをしていると、愛想を尽かして離れていっても知らんぞ」
「どっか行っちゃったりなんてしないよー」
 お気楽に笑っていたシャーロットの笑顔が次第に引き攣り、こわばってくる。

 双葉はその表情を見て、感づいてしまった。
(シャロちゃん、もしかしてアレクちゃんのこと、意識してるのかな?)
 こういうことは温かく見守っているのが一番いいと考えて、何も言わないでいる双葉だ。

 歌音は元から、アレクスがシャーロットのことを好きなのはバレバレだと思っていた。
 最近はシャーロットの方もアレクスを見る目が変わってきたような気がしているので、今は二人の仲を温かく見守ろうと決めている。

「アレクちゃんは、どっか行っちゃったり……しない……よね……?」
 シャーロットが不安になって三人を見ると、ウィリアムだけでなく歌音も双葉も、訳知り顔でこちらを見ていることに気が付いた。
 みんなは何か知っているのだろうか? 不安になってアレクスの方を見る。
 サイドテーブルの所で、アレクスはスイーツを盛り付けた皿を何皿も一度に持とうとして四苦八苦していた。
(いなくなっちゃうのは……やだ)
 シャーロットは思わず彼に向かって駆けだした――。


 テーブルに残された三人は、シャーロットの微笑ましい様子に無言で生温かい笑みを交わして、今年の思い出語りを再開した。

 双葉にとっての今年の三大ニュースは、「リトルフルール入団」と「メジャーデビュー」、そして「彼氏が出来たこと」だ。
「ハコダテで、彼氏と一緒に星獣おさんぽライブが出来たのは嬉しかったな」
 双葉は思い出話を装って、話の流れを恋バナに持っていく。
 恋バナは歌音が好きそうな話題だし、何より双葉が、歌音とウィリアムの仲が気になっているのだ。
 “彼氏”というワードが出たところで前フリは完了。思い切って聞いてみた。

「歌音さんとウィルさんはどういう関係なの?」
へっ!?
 双葉に直球で聞かれて歌音は食べかけていたケーキを落としそうになり、素っ頓狂な声が出てしまった。
「どうした歌音。突然大声を上げたら周りに迷惑だぞ」
 冷静なウィリアムが歌音をたしなめる。

 歌音はケーキの欠片にむせそうになって、しどろもどろで答えた。
「べ、別に、わたしたちは彼氏彼女ってわけじゃないよ! ウィルさんはプロデューサー兼ボディーガード!
 ……そ、それはまぁ、そういう関係になれたらなって思わないこともないけど……

 口の中でごにょごにょ言うばかりの歌音の本当の気持ちは、双葉には聞こえたのに肝心のウィリアムには届かない。
「そ、それよりも、今はシャロちゃんとアレク君の恋模様の方が気になるかな!」
 口からこぼれた本心を隠したくて、歌音は話題を反らそうとするのだが、真面目なウィリアムが軌道修正してしまう。
「俺たちの関係は、歌音の言うようにアイドルとプロデューサー兼ボディーガードだろう」

 ちょっとはこちらの気持ちに気付いてくれたかもと淡い期待を寄せていた歌音は、想定通りのウィリアムの台詞に落胆した。
(やっぱりね。ウィルさんは、わたしのこと、あくまでもビジネスパートナーとしてしか見てないんだ)
 自分で言った言葉をそのままウィリアムに肯定されただけなのに、歌音の乙女心は傷ついてしまう。

 分かっていたこととはいえ油断すると涙が湧いてきそうだったので、何か別のことを考えようと視線を逸らすと、向こうの方で仲良く喧嘩しているシャーロットとアレクスが目に入った。
(アレク君、うまくいくといいね)

 意識を無理やり他へ向ける努力をしている歌音の耳に、ウィリアムの声が飛び込んできた。
「まぁ、長いこと活動を共にしているわけだし、それだけでは少々味気ないな」
(えっ!? ウィルさん、わたしたちの間に他にどういう関係があると思ってるの?)
 全身を耳にして、歌音はウィリアムの言葉を待つ。
「歌音を一番近くで見守ってきた、というのが近しい表現か。これからもアイドルとしてのお前の姿を近くで見届けたいものだ」
「……ははははは」
 歌音は虚ろな声で笑った。

 期待してなかったけど期待してた。
 けどまあ、ウィルさんならこんなもんか。
 ただの“アイドルとプロデューサー兼ボディーガード”より一歩前に進んだと思っておこうと、歌音は前向きに考えることにした。

 歌音の心理がなんとなくわかってしまった双葉は思った。
(みんな他人のことはよく分かるのに、自分のことになると全くわからないもんなんだなぁ。恋ってそういうものなのかもしれないね)
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