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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェスタde忘年会

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フェスタde忘年会

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★忘年会を満喫(2)

 兎多園 詩籠が今年、精力的に取り組んだのはカフェの仕事だった。
 そのときに身に着けたウェイターのテクニックを活かして忘年会の手伝いをすれば、みんなの役に立てる。
 そう考えた詩籠は、ウェイターとして忘年会に参加することにした。
 白黒のウェイター衣装を着て、頭に白ウサギの長い耳、お尻に丸い尻尾を付ければ、可愛いバニーボーイ姿のウェイターの出来上がりだ。

 料理や飲み物は、各自がそれぞれ好きなものを取って食べるスタイルなので、詩籠は専ら空いた皿やグラスを回収して片付ける仕事をしていた。

 テーブル間を巡回している間に詩籠は、一人で黙々と料理を食べている女の子がいるのに気が付いた。
 ドリス・ホワイトベルだった。

 ドリスはフェスタに入学して日が浅く、忘年会に一緒に来る友達がまだいなかった。
 友達が欲しいけれど豆腐メンタルで、人が大勢いる所では誰にも話しかけることができなくて、今日は大人しくご飯を食べて帰るつもりだ。
 とりあえず目標の「ご飯全種類を制覇する! 嘘シャンパンを飲みたい!」を達成するのが、ドリスなりの忘年会の楽しみ方だ。
 そのためには、一つ一つのメニューの量を多く食べてはならない。
 野菜や肉、魚、主食をバランス良く少しずつ皿に取って食べなければ、全種類食べる前にお腹が一杯になってしまう。

 ドリスが料理を取り分けた皿をテーブルに置いたとき、詩籠が気さくに話しかけた。
「やあやあ、今年は何か良い事あったかい? ちょっと僕の耳に聞かせておくれよ」
 長いうさみみをドリスの方へ傾けて指さしている。
「…………」
 話しかけてもらって嬉しかったが、ドリスは極度のコミュ障だ。
 突然のことにびっくりしてしまって、うまく返事ができない。
 黙り込んでしまったドリスに気まずい思いをさせないよう、詩籠はまず自分が今年よかったと思ったことを話し始めた。

「僕はカフェの手伝いを名目に可愛い姉妹と異世界を渡り歩いた事かな。彼女達から僕のラップが褒められたりして」
 ニッコリ微笑む詩籠に少しだけ安心して、ドリスは思い切って聞いてみる。
「そのお仕事、やってみてどうだったの?」
 詩籠はその場でくるりと回っておどけてみせる。
「御覧の通り、愛されバニーボーイの誕生さ。みんなには構ってもらいたくてね」
 白猫グッズを集めているドリスは、詩籠のうさみみと尻尾を見て、自分なら猫耳と猫尻尾をつけるなあと思っていた。
 詩籠はドリスの表情が和らいできたのを読み取り、自虐的に言ってみる。
「リア充みたいに恋愛する余裕なんて、僕には…………。あ、そうそう、バレンタインの特別番組でミニドラマに出たけど観てた?」
 ドリスは首を横に振った。
「そう、残念。見てほしかったな~。演技とはいえ綺麗な人が持ってたチョコを食べたのはドキドキしたっけ。役得役得♪
 あとは料理ライブに男の娘……おっと、もう行かなきゃ! じゃあごゆっくり!」

 なぜか慌てたように立ち去る詩籠を、ドリスは茫然と見送った。
(なんだか賑やかな人だったな。たくさん色々なお仕事をしてるみたいだったし、後で会えたらもう少しお話してみてもいいかもしれない……)

 ドリスは再び一人になったが、さっきまでとは打って変わって明るい気持ちになっているのを感じた。
 そして、皿に残っていた料理をおいしく食べ、全種類制覇に成功したのだった。

 ***

 宇津塚 夢佳が忘年会に来たのは、橘 樹に誘われたからだった。
「もてなします側のほうが得意なのですけれど……たまには自分が楽しみますのもよろしいのかもしれません」
 夢佳も樹も今年の思い出を語り合いながら食事して、忘年会を楽しみたいと思っている。

 忘年会だから羽目を外してもよいはず。
 そう考えた樹は、かねてからやってみたかったシャンパンタワーに挑戦するつもりだ。
 二人は会場の一番後ろの隅のテーブルを陣取った。
 そんなに高いシャンパンタワーにはしないけれど、万一倒れたりした場合の被害が最小限になるようにするためだ。
 ……というのは表向きの理由で、本当は誰にも邪魔されず二人だけで楽しめるように、目立ちにくい後方隅のテーブルを選んだのだった。

 実はこのシャンパンタワー、夢佳がリクエストした、という形になっている。
 夢佳が樹のことを『大切に想っている』ことをどう表そうかと考えた結果、樹がやりたがっていたシャンパンタワーを実現するよう背中を押してあげるのが良いと思い付いたのだった。

 樹は張り切ってグラスを並べ、積んでいく。
 夢佳も樹を手伝いながら、グラスがタワーの形に高く積みあがっていくのを、目を細めて楽しんでいる。

 段数が少ないのでグラスの数も少なく、それほど時間がかからずにシャンパンタワーは完成した。
「じゃ、夢佳さん、嘘シャンパンを注ぐね!」
 椅子の上に立った樹が嘘シャンパンのビンを持って、トップのグラスに注ぐ。
 グラスから溢れた嘘シャンパンは、下の段へ、さらにその下の段へと流れていく。
 炭酸の泡が光を反射しながら流れ落ちていくさまは、豪華なシャンデリアにも似ている。
 何本もの嘘シャンパンを注ぎ続けて首尾よく最下段のグラスまで満たし、樹と夢佳のシャンパンタワーは成功した。

「うまくゆきましたね、樹さま」
「夢佳さんが手伝ってくれたおかげだよ」
 二人は見つめ合って微笑みを交わす。

「夢佳さん、せっかくだから飲もう飲もう」
 樹がタワーの上からグラスを二個、中身が零れないようにそおっと下ろす。
「わたくしは、嘘シャンパンの【みかんジュース】割りにいたしますよ」

 二人はグラスを掲げて、カコンと合わせる。

「夢佳さんの瞳に乾杯……予想以上に自分で言ってて恥ずかしいねこれ……!」
「な、なぜわたくしの瞳に乾杯、なのでしょうか……? ああ、『そういう』シチュエーションですものね」
 しきりに照れている樹を前にして、夢佳は嬉しくも恥ずかしく、意識的にとぼけてみせる。
 何気ないふりを装って夢佳は微笑んでいるが、心臓がうるさく鳴るのを悟られないよう懸命に努力しているのだった。


 二人は、樹が見繕って盛り付けた料理を仲良く分け合って食べながら、この一年の出来事を振り返ってみた。
 毎日顔を合わせているしほとんど一緒に生活しているが、いろいろなことを共に経験した一年だった。
 楽しい思い出を語り合ううち、樹は胸にとどめている夢佳への想いを、今こそ伝える機会なのではないかと思い始めた。
 周りに人がいる状態で話すことではないかもしれないが、みんなそれぞれに忘年会を楽しんでいて、樹と夢佳のことなど誰も気にしていない。
 樹は思い切って言ってみた。

「夢佳さん……飽きずに僕の傍にいてくれてありがとう」
「わたくしの方こそ、樹さまにはいつも感謝しているのでございますよ。ありがとうございます、樹さま」
 夢佳の言葉に勇気をもらって、樹は秘密も打ち明けた。
「あの……ね、夢佳さん……、例の指輪は、こっそり肌身離さず身に着けているよ……」
 一瞬、驚いた表情を見せた夢佳。
 すぐに元の柔和な表情に戻り、樹の耳元に口を近づけると「それはとても嬉しいことでございますよ」と囁いた。

 忘年会のお祭りムードを隠れ蓑に、樹と夢佳は二人だけの世界にいた――。
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