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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェスタde忘年会

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フェスタde忘年会

リアクション

★舞台発表(2)

 暗転していた舞台に照明が入る。
 そこに板付きで立っていたのは龍造寺 八玖斗
 八玖斗は派手な【木苺着物】に身を包み、艶やかな女形として見返りのポーズで立っていた。

 …………

 八玖斗は、尊敬しているキング・デイヴィソンと二人で、短いながらも胸キュンの恋愛ドラマを演じるのだ。
 テーマとか関係なく好き勝手するには忘年会は絶好の機会。
 二人は普段やらない異性装恋愛劇を、美しく感動的に演じることに挑戦してみたいと考えた。
 そこで八玖斗は女装して「和の姫」に扮し、キングは「洋の王子」らしさを出すために一旦仮想体で凛々しい女性に変身してから男装するという、いささかややこしい扮装をして、このストーリーを演じようというわけだ。

 …………

 長身のハ玖斗の女装は舞台映えする。
 【巫所作】で浮世離れした神秘さを表現して動き始めると、客席からため息が漏れる。
 ハ玖斗はすかさず【ファストアクト】で姫になりきり、観客を物語の中に一気に引き込んだ。
 悲し気に【一節切】を吹いて、姫には何か悩みがあることをそれとなく匂わせておく。

 そこへ、キングが扮する王子がやって来た。
 ハ玖斗姫は、その姿を見つけると瞳を輝かせ嬉しそうに駆け寄る。
 抱き合う二人は相思相愛の恋人同士そのもの。
 二人はそのまま踊って恋心を表現し、【ラヴ・フォー・ライブ!】で観客を魅了した。
 踊りが終わり、ハ玖斗姫はキング王子から離れると、辛そうに言った。

「もうこのような関係は終わりにしましょう……異なる国で生きてきた者同士、住む世界が違うのです」
「何を言う、いとしの姫よ、世界の違いなど些細なことだ」
「いいえ、私たちにとって大きな障害です」
「君への無上の愛さえこの心にあれば、どんな困難も私は乗り越えられるさ」
「あなたの愛は信じております。でも……私は……このままで居るのが怖いのです」
 ハ玖斗姫は、自分で自分の体を抱きしめてかぶりを振った。

「そうか……わかった、ならば姫」
 言いつつキング王子はハ玖斗姫に歩み寄り、声を張った。
「異なる世界に壁を感じるのなら、二人で新しい世界を創ろう! 壁のない世界で、王子でも姫でもなく本当の私達として生きていこう!」

 思い切った言葉に驚いて姫が振り返ると、王子が頼もしい微笑みを浮かべてすぐそばにいる。
 驚愕と感動で声も出せずにただ頷くと、王子は姫の手を取って引き、抱き寄せる。
 すっぽりと腕の中に納まった姫に、王子は甘い声で囁く。
「そしていつか、今日の壁を二人で乗り越えよう……約束だ」

 どちらからともなく唇を寄せ、キスシーンへ……。
 客席からは悲鳴に似た声と息を呑む音が漏れ、会場全体は期待で盛り上がっていった。
 もうあと2センチで唇が触れる距離まで近づいた時、【謎光乱舞】が発動し、二人の口元が眩しい光で覆われて、肝心の決定的瞬間が見えなくなってしまった!
 え~っ!? と客席から無言の叫びが聞こえる。

 【謎光乱舞】が隠ぺいしている間に、キング王子は八玖斗姫を抱いたまま向きを変え、客席から姫の顔が見えない角度にした。
 二人の唇の間には、ハ玖斗が仕込んだ【エディブルローズ】が隔たりを作り、冗談にでもキスしてしまわないように対策が取られていた。

『実際にはしないからねと言っておいたじゃないか』
『念のためだよ、念のため』
『しかし、そんなものいつの間に持ってたんだ?』
『ふふ、さっき自分の体を抱きしめた時、着物の中に手を入れて、取り出しておいたんだ。見事だろ?』
『こりゃ、参ったね』

 【謎光乱舞】の光と、観客の落胆による抗議の声が収まるまで、二人は抱き合ってこんな会話をしていたのだった。

 …………
 ……

 美しくも迫力のある二人の恋愛劇が終わり、楽屋で着替えを済ませたハ玖斗とキングは、すっかりリラックスしていた。

「キングの旦那、やっぱり旦那は仮想体も凛々しいな。惚れ惚れしたよ。今日は悪乗りに付き合ってくれてあんがとな」
 少し照れ臭く感じながらも、ハ玖斗は感謝の気持ちを改めて伝える。
「まあ正直こういう系は少々恥ずかしかったが、君が誘ってくれたから仮想体も活用できたし、精一杯やれて楽しかった。君もなかなか魅力的な姫だったよ?」
 お疲れ様、とキングはハ玖斗を労い、まとめた荷物を肩に掛けた。
「さ、食事にしよう。女性の身体で動いたらどっとカロリーを使った気がする」
「食いに行くのはいいがさっきの感じは壊さないでくれよ」

 芝居が成功した高揚感は冷めやらないが、二人の関心はすでに忘年会の料理の方に向いていた。

 ***

 名は体を表すの言葉通り、空花 凛菜は美しい。
 美しいのみならず立ち居振る舞いにも気品があり、黙っていてもお嬢様っぽい雰囲気が自然に滲み出る。
 だが決して大人しいわけではなく、何事にも積極的に取り組むチャレンジ精神に溢れた少女なのだ。

 そんな凛菜がこの忘年会でチャレンジするのは“かくし芸”。
「もしも私が〇〇だったら」のお題を使って、「もしも私が校長先生だったら」という設定で、木馬太郎校長のモノマネをすることにした。

 凛菜はドキドキしながら出番を待っていた。
「自信はあまりありませんが、校長先生のモノマネ、頑張ってみます」
 胸に手を当てて、緊張を押さえようとする仕草も上品な凛菜である。

 凛菜の出番になった。
 校長先生の花びらを顔の周りに付けて、凛菜は舞台へと進み出る。

 校長先生のいつもの様子を思い起こすと、優しい口ぶりと眼差しが一番に思い浮かぶ。
 やはり校長先生はフェスタ生への愛に溢れているなあと改めて感じられ、モノマネの中に校長先生の生徒を思う気持ちを表現しようと心に決めて、舞台中央に立った。

 まずはニコニコと笑顔でいることが校長先生のデフォルトだ。

『さあさあ、楽しいハロウィンの始まりです!』
 先日のハロウィンナイトの校長先生の台詞を覚えていた凛菜は、当時の情景を思い浮かべて声色もできるだけ似せて言ってみた。
 
 モノマネが成功するかどうかは、声や姿がそっくりであることではなく、真似される対象の本質にどれだけ迫れるかに掛かっている。
 凛菜は知ってか知らずか、それを見事にやってのけたので、客席で聞いていたフェスタ生に大いにウケた。
 ウケたことに気を良くして凛菜は次の台詞も言う。
『今日は私が特別審査員をやっちゃいますよ!  ふふふふ、ふふふ……私に向かって皆さんにたくさんアピールしていただくのです』
 またもや大ウケ。

 凛菜が客席の笑いが収まるのを待っている間に、凛菜の後ろから本物の木校長が、そうっと近づいてきていた。
 客席に向かって『しーっ』と口元に人差し指を当てたジェスチャーをして、凛菜にバレないようにしている。
 一瞬にして観客と校長の間に協定が結ばれ、みんなで凛菜の次の台詞を待った。

『『私はいつも皆さんを見守っていますよ』』
 凛菜が皆の方に笑顔を振りまいて言った時、木校長が同時に同じセリフを重ねた。
 驚いて振り返り焦る凛菜を「まあまあ」と宥める木校長。

 モノマネする凛菜と校長で、校長が二人で会話をしているような短いやり取りをして、凛菜のかくし芸は大ウケで終わった。
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