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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェスタde忘年会

リアクション公開中!
フェスタde忘年会

リアクション

★舞台発表(1)

 紋付き袴姿で舞台に登場したのは緑青 木賊
 手には【あくまきくるみ(もこぽけジャケット)】と畳んだ傘を持っている。

 木賊は【あくまきくるみ】を舞台奥に置いてから、観客に向かって一礼した。

「それでは、かくし芸を披露させていただくっす」
 客席に向けてバッと広げられた傘は【再塗装るみ傘】。
 ルミマルの顔の絵のバックに鮮やかな籠目模様が描かれ、和風アレンジされたルミパラソルだ。
 木賊は傘をくるりと回して差すように上に向けると、隠し持っていた【みかん】を傘の上に放り上げた。
【巧みな技術】でくるくると傘を回して【みかん】を落とさない。
 そう、木賊のかくし芸は、定番の傘回しなのだった。

 木賊がかくし芸に傘回しを選んだのは、尊敬する父の言葉を覚えていたからである。
「かくし芸は三種類ある。板割りや瓦割り、傘回し、そしてそれ以外!」

 この中から選ばねばならないと、木賊は考えた。
 板割りは日々鍛錬の中で行っているし、板や瓦の欠片が散らばって舞台の掃除に時間を取ってしまう。
 また「それ以外」のかくし芸は多すぎて選ぶのが難しい。
 という訳で消去法で傘回しに決まったのだった――。

 【みかん】は時々飛び跳ねながら、傘の上で踊っている。
「いつもより多く回しております!」
 お約束の台詞を言っているが、木賊が傘回しを人に見せるのは初めてのことだ。

 ある程度回したところで木賊は一旦、傘を置いた。
 そして、最初に置いておいた【あくまきくるみ】から【あくまき】(≪星獣≫トランペットイヌ)を大事に抱え上げて囁いた。

「あくまき、傘の上で歩いていただけるっすか?」
 茶色の豆柴に似た【あくまき】は、眠そうに薄眼を開けて「パァァァ~」とトランペットみたいな音を鳴らしてあくびをした後、木賊の鼻をペロッと舐めた。
 それは【あくまき】なりの了解の合図だった。

「よし、あくまき、頼むっす!」
 木賊の掛け声で【あくまき】は回る傘の上に飛び乗る。
 傘は光っていて【あくまき】のフットライトの役割も果たしている。
 傘の回転が次第に速くなると、初めは歩いていた【あくまき】も足を速め、飛び跳ねるように傘の上を走る。
 【あくまき】が飛びあがるタイミングに【≪星獣≫ふわふわサイクロン】で小さな竜巻を起こし、竜巻も傘の上で回した。
 最後に【≪星獣≫ドレッジウォーク】で滑り台のような通路ができると、【あくまき】が滑り降りて木賊の腕の中に納まり、これで木賊のかくし芸は終了した。

 ***

 根っからのプロデューサー迫水 晶は考えた。
「みんなに見せる芸……か……」

 常日頃から自らの芸を磨き続け、既に多くの活動をしているアイドルたちに楽しんでもらう芸となると、心して取り組まねばならない。
 眼の肥えたアイドルたちの鑑賞に堪えるのは……。
 頭に入っているインデックスをザっと検索して、晶は閃いた。

「そうだ、せっかくの舞台、彼のデビューも兼ねてこの一年の学びを活用した演出を目指そうか」
 彼とは――【サーバントゴーレム】のロクゴーくんだ。
「さあ、ロクゴーくん。君をプロデュースだ!」
 びしぃぃぃと指さす先にいたロクゴーくんは「ゴー」と唸って返事をした。

 ………………
 …………

 念入りに事前準備をしているうちに忘年会当日になった。

 ロクゴーくんと一緒に黒子の装束に身を包んだ晶が舞台袖から光の満ちた舞台へ出た。
 二人は一礼して、所定の位置につく。

 晶の合図でライトが幻想的な色彩と照度に変化した。
 それを合図に晶が【オークロッド】で床を叩いて、【アンプロンプチュ】で作った即興曲のリズムを取り始めた。
 リズムを取りつつ晶は、ロクゴーくんの表面とその近くを【アイスフィールド】の氷の粒でうっすらと覆う。

 短い即興曲の最後、晶が【オークロッド】で大きな音を鳴らして締めくくると、ロクゴーくんがぎこちなく体を動かしてキメのポーズを取った。
 ロクゴーくんの表面についていた氷がパリパリと割れ、粉雪のように舞う。
 晶はそこへすかさず【ライティング指示】でロクゴーくんの両側斜め下からスポットライトの光を当てた。
 下から差す光は、舞い落ちる氷の粒に反射して、キラキラした羽根のようだ。
 氷の粒が全部落ちてしまうタイミングで照明が元に戻り、幻想的な雰囲気から現実へと帰ってきた。

 派手なパフォーマンスではなかったが、晶の演出は十分に美しいものを表現していたのだった。

 ***

 舞台に立つ前に「ちょっと味見を」と言って飲んだ嘘シャンパンで、弥久 風花はお酒を飲んだ暗示にかかって酔っぱらってしまった。

 気のせいで酔っていても、タガが外れることもあるらしい。
 風花は酔うと、どうも愚痴上戸になるようだ。
 最近、大好きな先輩と会える機会が少ないことが不満なようで……。

「そりゃ、まあ、芸能界で色々やってたりするとさぁ」
 ひっく、としゃっくりまで出る。
「異世界に行ったりしてるとさぁ、都合良く会える機会なんて減るだろうけどぉ……」
 ぐちぐち呟いてぐすんと洟をすすりあげたところで、これから披露するエスケープマジックのことを思い出した。

「こうなったらピンチシーンにして、助けに来て貰おーう!」
 一人で拳を振り上げ、「おーっ」と叫ぶ。
 マジックの仕掛けからの脱出に失敗した振りをすればスタッフに救出されるから、その中に意中の先輩がいれば会える、というのが風花の計画だ。
 酔っぱらった頭で考えついた計画にはいろいろと無理がある――。

 風花はいそいそと舞台に出てゆき、マジックを始めた。
 まずは【トライアングルビキニ】姿で、くるりと一回転して種も仕掛けもないことを示す。
 そうしてから【黒キ拘束】のロングコートで全身を覆い、布で自ら猿ぐつわをする。
 素早く【吸血鬼を駄目にする棺】に入って蓋を閉め、外から鍵をかけてもらった。
 更に風花が入った【吸血鬼を駄目にする棺】を、【開カズノ護棺】に前後逆向きになるように入れてもらい再び外から厳重に鍵をかけてもらう。

 棺の横には丁寧に【燃ゆる墓標】がマイクスタンドを支柱にして立っている。
 風花は、棺の中で体を揺すって棺をガタゴト動かして、【燃ゆる墓標】に軽く当てて倒した。
 【燃ゆる墓標】の幻の炎が棺の下に迫る。

 頃合いを見計らって、【ナイトカミング】で会場を暗くすると、棺の周りの幻の炎は一層燃え上がって見えた。
 風花はここで、脱出失敗の迫真の演技を始める。
 棺を内側からガタガタ揺すって、うめき声をあげる。
「んー! んぅーー!!」
 ガタガタガタ、ガタガタガタ。

 一生懸命やればやるほど、脱出をドラマチックにするための演出と思われて、誰も手を出さない。
 ずいぶん経ってから異常に気が付いたスタッフが風花を救出したが、当然そこに意中の先輩はおらず、すっかり酔いが醒めた風花はがっかりしつつも納得していたのだった。
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