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「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

フェスタde忘年会

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フェスタde忘年会

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★忘年会を満喫(6)

 ジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァ春瀬 那智は、並んでテーブルにつき、舞台発表を鑑賞しながら料理を楽しんでいた。

 …………

 この忘年会には、ジュヌヴィエーヴの方から那智を誘った。
 いつもジュヌヴィエーヴをいろいろな所に連れて行ってくれる那智に、少しでもお礼ができればいいと願ってのことだ。
(地球にお住まいの騎士様は、こういったパーティは出られ慣れているでしょうけれど……)
 たいして楽しんでもらえないかもしれないという不安はあったが、ジュヌヴィエーヴは勇気を出して那智を誘ったのだった。
 その勇気は、ジュヌヴィエーヴ自身も気が付いていない心の奥底に芽生えた気持ちから湧き出たもの。
 それは言葉にしなくても那智には伝わっていて、那智はジュヌヴィエーヴに誘われたことが素直に嬉しい。

「もう今年も終わりなんだなー……ジュネが誘ってくれるまで、すっかり忘れてたぜ。
 せっかく先生たちが計画してくれたんだし、たまには仕事のことは忘れて楽しまねーとな」
 笑顔で那智が言うので、ジュヌヴィエーヴは嬉しくて頬を染めた。
 那智が一緒に忘年会を楽しんでくれる。
 それを想像しただけで、ジュヌヴィエーヴは前の晩、眠れなかった。

 ……………

 当日。
 寝不足でもジュヌヴィエーヴは全然眠くない。
 今日はお礼も兼ねているのだから、いつも那智がするようにジュヌヴィエーヴが那智をエスコートするつもりで張り切っている。

 テーブルに並べられた大皿の料理を那智に取り分けてあげようとしていると、「はい」と那智がジュヌヴィエーヴの前に取り皿を置いた。
 色々な料理が少しずつ、彩りや配置にも気を配ってセンス良く盛り付けられている。
 ややスイーツが多めなのは、スイーツが大好きなジュヌヴィエーヴへの那智の心遣いだ。
 ジュヌヴィエーヴは那智の気持ちが嬉しいのに、自分がやろうとしていたことの先を越されたので思わず、膨れっ面になってしまう。

「ほら、この嘘シャンパンも……って、なに怒ってんだ?」
 グラスをジュヌヴィエーヴに差し出した那智が、怪訝な顔をしてジュヌヴィエーヴの顔を覗き込む。
「もう、騎士様はずるいですわ!」
「ずるいって、何が……? わけわかんねー」
 スイーツが少なかっただろうか、自分のよりも多めにしたが足りなかったか?……と那智は首を捻る。
 それにしても、と那智は思う。
 膨れっ面をしていてもジュヌヴィエーヴは可愛い。
 どんな表情をしていても、那智にはジュヌヴィエーヴがこの上なく愛らしく映ってしまう。
 
「そういえば、今年も色々あったよなー……そうそう、ネヴァーランドではジュネが――」
「あっ、騎士様! それは言ってはダメです!」
 恥ずかしい話になりそうで、ジュヌヴィエーヴは焦って那智を遮る。
「はは、わかったわかった、言わねーよ」
 楽しそうに笑う那智を見るのが、ジュヌヴィエーヴにはたまらなく嬉しい。
 胸に温かいものが広がるのを感じながら、甘いスイーツを口に運ぶ。
「……!」
 何気なく食べたプチケーキがとても美味しかったので、フォークで突き刺して那智の方へ差し出した。
「これ、とてもおいしいですわ♪ 騎士様もひと口――」

 突然目の前に差し出されたケーキに不意打ちを受け、那智はぽかんとしてしまった。
(えーっと、こういう場合は……)
 二人の間に沈黙が流れ、お互いストップモーションになっている。
「っ!」
 ジュヌヴィエーヴが我に返って慌てて手を引っ込めようとするより一瞬早く、那智の手がジュヌヴィエーヴの手を掴んでいた。
 真っ赤になって那智の方を見ている可憐な乙女を、那智はたまらなく愛おしく思う。
 しかし那智はジュヌヴィエーヴの気持ちを慮って、何気ないふうを装って彼女の手を引き寄せるとケーキを口に入れた。
「……お、ほんとだ。甘過ぎなくていいな、これ」
 本当は味なんてたいしてわからなかった。
「おいしかったからジュネの分、新しいのを取ってくるよ」
 努めて平静を保って言い残し、那智は席を立った。
 ますます顔を赤くして俯いているジュヌヴィエーヴと、どう話せばいいか分からなかったから、というのは建前の言い訳で。
 本当の理由は、自分の動揺を隠したかったから。
(……あっぶね、うっかり“素”が出るとこだったぜ)
 那智がこっそり振り返ってジュヌヴィエーヴを見ると、まだ俯いて固まっている。
 全身からいたたまれないオーラがにじみ出ているのもまた、愛おしいと思う那智だった。

 一方、ジュヌヴィエーヴは恥ずかしくて死にそうだと思っていた。
(やっぱり騎士様はずるいですわ……!)
 嬉しいのに責めてしまう。恥ずかしいのに離れたくない。
 心というものは、なんとままならないものなのか……。

 今年の忘年会はこの二人にとって、忘れられない思い出になることは確定事項のようだ……。

 ***

 矢野 音羽麦倉 淳は、【日雇い衣装さん】の瓜塚有津樹(うりづか うづき)さんのアドバイスを受け、【フェスタフォーマル】を着て【風雅のクロスコード】を纏い、お揃いの【白雪の指輪】を嵌めている。ポケットに入っている【【芸格】名題前】までお揃いだ。

 今では恋人同士になった二人、今日は仲間の舞台発表を鑑賞しながら料理を味わおうと、楽しみにやってきた。

 まずは嘘シャンパンで乾杯。
 カコンとグラスの当たる澄んだ音が心地よい。
 アルコールは入ってないけれどお酒に似た嘘シャンパンの暗示と、大好きな人と一緒にいる幸福感で、二人は少し酔ったように顔が上気してしまう。

 目の前には、美味しそうな料理が並んでいる。
「何から食べようかしら……」
「どれもうまそうだけど、カニクリームコロッケ……大好物なんだ」
 恋人の前で食べ過ぎてダウンするのは避けたいから、淳は初めから【満食全席】を使って食べている。

 心底美味しそうにカニクリームコロッケを食べる淳を見ていると、音羽も同じものを食べたくなってきた。
 一つ皿に取って、ひと口大に切って口に運ぶ。
「……うん、美味しいわ☆」
 【デリシャススマイル】を使うまでもなく笑顔になってしまう。

 淳は、皿の上のカニクリームコロッケを見つめながら、少し恥ずかしそうに呟く。
「今度、音羽の手作り、食べたいな☆」
「そうね、じゃあ今度作るわね」
「えっ? 音羽、カニクリームコロッケ作れるの?」
「うん、まあ、頑張らないといけないかもしれないけど……」
「じゃあ楽しみにしてるよ」

 いろいろな料理を少しずつ皿に取って一緒に食べる。
 それだけのことなのに、この二人にとっては高級フレンチにも勝るとも劣らない、素晴らしい味になるのだった。


 舞台では、さすがフェスタのアイドルだけある迫力に満ちたパフォーマンスが披露されている。
(舞台発表スゴイわね。皆、一年で変わったわよね。私も少しは成長できたのかな?)
 音羽はこの一年の出来事を、順を追って考えてみる。
 
「今年は本当にいろいろあったね」
 音羽が隣に座っている淳に話しかけた。
 すると淳は舞台に目を向けたまま「今年も本当にいろいろあったけど」と言ってすぐに、音羽の方に向き直って正面から恋人の瞳を見つめた。
「一番の思い出は……音羽と出会えて、葦原のお祭り行ったりして、一緒に楽しく幸せを積み重ねられたことかな」
「そういえばお祭りにも一緒に行ったね。久々に浴衣で輪投げや金魚すくいして楽しかったわ。
あのとき淳さんに輪投げで取ってもらった髪飾り、大切にしてるし、他にも一緒に素敵な思い出が作れたと思う……」

 淳は人目をはばかりながら音羽の手を取ってそっと握った。
「改まって言うのもなんだけど、これからも……よろしく☆」
 音羽も淳の手を握り返し、笑顔で素直な気持ちを伝えた。
「……うん、これからもヨロシクね。私ね、淳さんと出会いこうして同じ時間を過ごせて嬉しいの。
 お祭りの時も楽しかったけど、今はもっと幸せ。だって……淳さんと気持ちがひとつになれたから。
 会ってお話して……ただそれだけの時間でも私にとっては宝物なの……」
「音羽……」
「一緒に居てくれてありがとう、ずっと大好きなあなたと幸せに過ごせるといいな」

 透き通った声で音羽が発した破壊力抜群な言葉に淳は感極まり、語るべき気の利いた台詞がすぐには見つからない。
「オレも……大好きな音羽とずっと幸せでありたいよ」
 これだけ言うのが精一杯だ。

 それを察したのか、聡い音羽は明るく話題を変えた。
「さて、プチスイーツが無くならないうちに食べましょう☆」
「そうだな、音羽が楽しみにしていたプチスイーツだ☆」
「あ、私はティラミスがいいなー」
「オレ、チーズタルトがいい!」

 二人でいると何を見ても楽しく、何を食べても美味しい。
 来年もこの恋人たちにとって、良い年になりますように。
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