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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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◆アリスとダンス(3)

羽鳥 唯のターン≫

 男装して吸血鬼の貴公子になりきった唯は、堂々とブラウブルート伯爵の前に進み出た。
 【雄渾たる煽言】で高貴な雰囲気を醸し出すことに成功している。

「お初にお目にかかります、伯爵。私はバートリ家の嫡男、バートリ・ユイと申します。吸血鬼の家としては新興ですが、お嬢様との婚約が叶わなかったとしても、是非伯爵家とは良いご関係を築けますことを願っております」

 念入りに男装している割には137cmの身長を隠そうとしないのは、唯に考えがあったからである。
 唯は、一旦アリスの婚約者になった後で『実は男性として育てられていた女性だと発覚した』ことにして破談に持ち込めば、アリスを助けることになると考えたのだ。
 そのためには、女性らしい所を“敢えて”残しておいた方が、信憑性が高まる。
 現に今も伯爵に、いやに声が高いな、などと訝られている。

「声が男にしては高め……ですか? 恥ずかしながらまだ若輩なもので」
 唯は【ボイスアクト】で少し低めの声にして、男性の声らしく聞こえるように努めた。

 幸いなことに伯爵は唯の演技にうまく騙されてくれて、アリスとのダンスを許可した。

 唯はアリスよりもずいぶん身長が低いが、上手にリードし【モーションアクト】で地球の社交ダンスを踊る。
 異世界の珍しいものに強く惹かれる唯は、ネヴァーランドのアリスにとっても地球のダンスがもの珍しく映るだろうと考えている。
「異世界のダンスですが、どうでしょうか? アリス」
「とっても楽しいね」

 珍しいものの話をしながら、唯とアリスはダンスを楽しんだ。


靄願 椿のターン≫

 半妖の椿は逃げてきた。
 だから自分自身を振り返ってみて、大叔父に立ち向かおうとするアリスの姿は立派だと思う――。

「この世界の条理と合わせ、俺もよう勉強しとうございます」
 という訳で、アリスの婚約者候補役として仮面舞踏会に参加しようとやってきた椿だったが、
「踊りはからきしでございます、最初は皆様の作法の観察を」
 と澄ましている。

 とりあえずダンスの申し込み方だけは理解した。
 アリスと手を繋ぐと、椿は柔らかい眼差しでアリスに頼む。
「お手柔らかにね」

 椿はアリスにリードを任せ、ふわりふわりと揺れている。
「ゆうくり、ゆうくりお願いね。反対に俺をエスコートできるほどご立派であれば、あの方もご安心あそばされるのでは?」
 不思議な雰囲気の椿に、ブラウブルート伯爵の厳しい視線が飛んでくる。
 しかし椿は気にも留めず、【妖の色目】で誤魔化してみる。

(【伏魔殿の晩餐】で我らを主菜に……。俺にも美味しそうな血ぃが流れていそうに感じてもらえれば、高貴な者だと錯覚しないかしらね)

 椿の思惑が当たったのか外れたのかは分からない。
 しかし、ダンスが終わった後、【伏魔殿の晩餐】の代償として椿は非常に空腹だった。
「あちらの夕餉は食べていい?」

 ゆるりとやった視線の先には、美味しそうな料理の置かれたテーブルがあった。


青井 星一郎のターン≫

「よし、牙はズレていないな」
 吸血鬼の貴公子に扮した星一郎は、付け牙の具合を鏡で確認した。
 星をモチーフにしたデザインの宝石が散りばめられた【星翼の皇服】を着ると、どこからどう見ても高貴な吸血鬼にしか見えない。
 外見が素晴らしく美しい上に【目覚めのクロスコード】で精神的な強さや【冷然のクロスコード】で落ち着いた物腰を身に纏えば完璧だ。

 大広間で【ブラッディ・ショコラ・ワイン】のグラスを片手に、物怖じしない態度でブラウブルート伯爵に挨拶をする。
 伯爵に対してあまり恐れ入った態度をとらないことも、高位の貴族っぽさを醸し出すテクニックだ。

「快活で華のあるアリスさんを一目見て、俺は恋に落ちてしまったんです」
 ややはにかんだような照れた表情を演じながら、堂々と求婚の理由を口にする。
 どうやら星一郎は伯爵のお眼鏡にかなったようで、アリスと踊るように命じられた。

「俺と踊ってくれますか、アリス?」

 何人もの人と踊った後で疲労の色の見えるアリスを、星一郎は巧みにリードする。
 【バレエシャッセ】の優雅な動きで、ステップは完璧だ。

 アリスが自然な笑顔を浮かべてダンス自体を楽しめるには、どうすれば良いだろうと星一郎は考えた。
 会話をすれば、少しは気楽になるだろうか。

「本当はラルフ君も呼んで、美しく着飾った自分を見てほしかったんだろ」
「どうしてラルフの名前がここに出てくるんです?」

 好きな人の名をズバリと出され、ムキになって言い返すアリスの幼さが可愛くて、その心情に配慮して方便の嘘をつく。
「あー、仲の良い友達だと聞いたものだからね。今の騒動が落ち着いたら、ラルフ君や他の友達も呼んでの内輪だけのパーティとかどう?」

 アリスの眉間に寄っていた皺が取れ、星一郎の提案に希望を見出したようだ。
 その後はアリスの表情に笑顔が戻り、二人は楽しく会話しながら踊ったのだった。


深郷 由希菜のターン?≫

 仮面舞踏会が始まる前、由希菜はラルフを屋敷の奥の誰もいない廊下の陰に連れて行った。
 初対面の時は由希菜に戸惑っていたラルフも、【ゆるふわドレス】に身を包んだ彼女の善良そうな振る舞いと、親切なもの言いにすっかり打ち解けている。

「話というのはね、ラルフ君。君の大好きなアリスちゃんと仮面舞踏会で踊らせてあげるってことなんだ」
「えっ! そんなことできるんですか? 僕は貴族じゃないし招待もされてないのに……」
「俺に考えがあるんだ。ちょっと耳を貸して……」
 由希菜はラルフの耳元で今日の計画を囁いた――。

 ………………
 …………

 曲が流れて人々がダンスをしている大広間に、由希菜は周囲に【コウモリくん】を侍らせ、豪華な装飾を施した【ムーンライトマスク】をつけて艶やかに登場した。
 その貫禄のある姿は吸血鬼の貴婦人さながらだ。

「皆様ご機嫌麗しゅう」
 【雄渾たる煽言】で発せられた台詞は辺りの者を圧倒した。
 
 由希菜の後ろには、仮面をつけ一張羅を来たラルフが由希菜の陰に隠れるように付き従っている。
 仮面舞踏会は『身分や素性を暴かない』マナーがあるから大丈夫だと由希菜に言い聞かされ、ラルフは一大決心をして乗り込んできたのだった。

 ブラウブルート伯爵の前に進み出た由希菜は【優美なる威光】で挨拶をした後、早速切り出した。
「伯爵、この子は私のお気に入りでして、よければアリス様に一曲お相手していただいても?」
 自分の陰に隠れているラルフを、伯爵から見えるような見えないような絶妙の角度に置き、由希菜は白々しく嘘をつく。
「ああ、構わないだろう。アリス、一曲踊ってやりなさい」

 伯爵からはよく見えなくても、アリスからはバッチリ見えていたラルフ。
 アリスにはもうずっと前から、由希菜が大広間に入ってきた時から、彼がラルフだという事が分かっていた。
 眼を見開いて瞬きもせずに恋しいラルフを見つめていると、由希菜がラルフの背をアリスの方に優しく押し出しながら言った。
「さあ、アリス様。この子と是非踊ってくださいましな」

 おずおずと差し出すラルフの手に、アリスは自分の手をそっと重ねる。
 手を握り合って頬を染め、ぎこちなく踊る二人の胸の内を想い、由希菜は優しく微笑むのだった。
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