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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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◆アリスとダンス(2)

アレクス・エメロードシャーロット・フルールのターン≫

「事情は分かった! てなわけでアレクちゃん貴公子役やってみよ~☆」
 アリスが偽の婚約者候補役を募集していると知って、シャーロットはすぐさまアレクスに命じた。
「おいおい唐突だな。なんで俺なんだよ」
「え? なんか面白そーだし」
「てか自分でいけよ、俺のガラじゃねーし」
「だいじょぶだいじょぶ。フルールの妖精姫シャロちゃんが、アレクちゃんの踊りの腕は保証してあげるっ♪」

 キラッキラの眼をして頬を紅潮させている妖精姫を冷静に眺めて、アレクスは現実を顧みる。
(……あー、ま、どう頑張って男装しても……シャロは男にゃ見えねぇか……)
 シャーロットの無茶振りはいつものこと。アレクスは今回も結局シャーロットに付き合うことにした。

「へいへい、姫さんのお望みのままに」
「ボクもサポサポするしファイトなんだよっ♪ こう見えてサーカスの下積み時代長いかんね。裏方も一流ってのを見せてあげる」
 鼻息も荒く、シャーロットはやる気満々だ。
「やりすぎてアリスちゃんを惚れさせちゃったりして☆」
 ペロッと舌を出す妖精姫の何気ない冗談に、アレクスは胸が締め付けられる思いがした。
(俺が好きなのは……シャロなんだがな……あっちも意中の奴は別だし、似た者同士か)

 こんなやり取りがあって、仮面舞踏会当日――。

 アレクスは少年型のディーヴァなので身長が高くはない。
(念のため靴底を上げとくか……)
 10cm身長が高くなるだけで、見える世界が違ってくる。
(これならあるいはシャロも……)
 淡い期待が頭を掠めたが、両頬をぺちんと叩いて追い払い、いつも被っているサーカスの仮面を全面にした。

 アリスと誰かが踊っていた曲が終わって、アレクスにチャンスがやって来た。
 【英雄の品格】で堂々とした雰囲気を纏ってアリスにダンスを申し込む。
「お嬢さん、俺と一曲踊ってください」

 アレクスの申し出にアリスが優雅に応じると、シャーロットは早速アレクスのサポートを開始する。
 【誰ガ為ノ墓標】で古城のステージを作り出し、そこに【≪慰霊≫月葬】で月の幻影を浮かべれば、吸血鬼に相応しい趣のあるステージの完成だ。
 ぬかりなく【ライト・メモリー】を携えて、二人の様子をバッチリ記録する用意も万全。

 アレクスは【深夜零時までの魔法】を使って、自分はタキシード姿、アリスは薔薇をあしらったゴシックドレス姿に変える。
 この魔法の効き目は一分間しか続かない。
 空中に表れた大きな時計が非情に秒針を進めていく。

 シャーロットの演出で、古城のステージに【≪慰霊≫花葬】の色とりどりの薔薇の花が咲き乱れる。
 【魑魅魍魎のグリモワール】で魔物たちに演奏してもらいながら、アレクスは【パフォーミング】で厳かなダンスを踊った。

(こういう感じが大叔父って奴の好みだろ? シャロは賑やかのがいいって言いそうだがな)
 アレクスは伯爵の眼よりシャーロットの眼の方が気になって、窺い見てしまう。
 シャーロットの表情は読めなかったが、胸を押さえているのが見えた。


 残り時間は後わずか。
 月が次第に満ちてゆき、満月になるクライマックスでシャーロットは【≪慰霊≫星葬】の星をちりばめた黒い霧で会場を覆う。
 宇宙空間のような中、アレクスはアリスをお姫様抱っこして【鋼鉄樞翼】で空を舞った。
「この夜に煌めく宝石は吸血鬼たる貴女に相応しい……」
 腕の中にいるアリスに大好きなシャーロットの面影を重ねて、アレクスは気持ちを込めて台詞を口にする。
 
 
 シャーロットはアリスのためにと弟子のアレクスを送り出し、自ら楽しんで演出していたのだが、だんだん胸の所が苦しくなってきていた。
(あれ? なんだろ? アレクちゃんがアリスちゃんと楽しそうにしてるの見てると、なんだか……もやもやする? どうしたんだろ、ボク……)


 【≪慰霊≫星葬】の星々が弾けて光の欠片が降り注ぐ時、丁度一分の刻限が来て、タキシードも薔薇のドレスも魔法が解けて元に戻ってしまった。
 アレクスはゆっくりと舞い降りて、アリスを丁寧に腕から降ろした。


 アリスとのダンスが終わり、挨拶もそこそこにアレクスはシャーロットの元に駆け寄った。
 妖精姫は俯いて黙っていて、なぜかご機嫌斜めな様子。
(え? 俺、なんか失敗しちゃった?)
 うろたえるアレクスの手を握って、無言のままフロアに引っ張って行くシャーロット。
 そこで彼女はようやく顔を上げると、輝く笑顔で言った。
「アレクちゃんは、今度はボクと踊るんだよっ♪」


空莉・ヴィルトールのターン≫

「アリスちゃん、踊り続けて衣装が乱れてきちゃってるから衣装直ししなくちゃ。私、最高のあなたを皆に見てもらいたいんだ♪」
 そう言うと空莉はアリスを大広間の外へ連れ出し、【日雇い衣装さん】にアリスの衣装直しとスペシャルアレンジを依頼した。

 有能な【日雇い衣装さん】は目にも止まらぬ素早さで、アリスの衣装と化粧を直してくれた。
 【日雇い衣装さん】は同時に空莉の衣装の乱れにも目を光らせる。

 今日の空莉は男装だ。
 いつもは可愛くツインテールにしているピンクの長い髪を後ろで一本にまとめ、妖艶美男子をイメージした【三日月夜の夜会服】をバッチリ着こなしている。
 身長を補うために厚底靴を履いて、アリスと目線が同じ高さになるよう調節もしてきた。

 どうやら【日雇い衣装さん】の手直しも済んだようだ。
「さ、アリスちゃん、行こう」
「うん」

 二人は揃って会場の大広間に戻る。
「あなたが持っている魅力の全てを、今この瞬間に引き出してあげることが貴公子の使命だよ♪」
 空莉はアリスにウインクして笑った。

 ホールの中央に進み出た空莉は、【優美なる威光】で存在感を放ち、アリスの手を取って強く引き寄せた。
 互いの息がかかるほどくっついた状態で、空莉はアリスに囁く。
「今だけは、私のことを想い人に重ねて、あなたが想うままに情熱をぶつけて?」
「え? 想い人って……」
「いいからいいから。辺り一帯全て恋の世界へ誘うようなダンスを一緒に踊ろう♪」

 キレのあるステップを踏んで空莉とアリスは踊り続ける。
 時々二人の足がもつれそうになるけれど、空莉が【アフターフォロー】でカバーする。
「悪いところを隠すよりも良いところを見せていこ!」
 それこそが、魅力を最大に引き出すことだと空莉は心得ているのだ。

 次第に二人の周りの人々がうっとりと幸せそうな表情に変わってきた。
「……ねぇ、気が付いてた? 【甘美なるユーフォリア】で会場丸ごとラブラブワールドにご招待中なんだよ~♪」

 悪戯っぽくウインクする空莉の魅力もまた、最大限に引き出されていた。
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