イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

リアクション公開中!
【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

リアクション

◆仮面舞踏会(3)

「え、カップルでダンスする人を募集中? それなら詩歌たちにお任せだよね!」
 近衛 詩歌はウキウキして傍らの行坂 貫を見上げた。

 そんな詩歌とは対照的に、貫は顎に手を当て思案顔だ。
「……俺と詩歌が付き合うきっかけの暗号解読に、アリス嬢の知恵を借りて、その縁で招かれたというのはどうだろう?」
「えっ? なんでそんな設定作るの?」
「使徒ナンバー持ってる吸血鬼に頼りにされてるのは、頭の固い伯爵にも高く評価して貰えるんじゃないか?」
「むぅ……怒られるのは嫌だからって嘘をつくのは分かるけど……」
「それに吸血鬼の俺とクレセントハートの詩歌が仲良くしてるところを伯爵に見せれば、アリス嬢が想いを遂げられた時に前例があると納得させ易そうだし」
「それって……逆にアリス達の今を否定してる事だよ!」
「そんなことはないと思うが?」

 貫の当惑を置き去りにして、詩歌はふくれっ面をしている。
「大叔父さんも大叔父さんだよね。落ちぶれたとか言ってるけど、そういう選択をしなければそもそも滅びてるかもしれないのに!」
 貫の計略に反対して怒っているのかと思ったら、実は大叔父様に腹を立てている詩歌である。

「詩歌知ってるよ。どうせ嘘がバレて大叔父さんと対決するパターンだって」
 何とも不吉な予言をかましているが、詩歌は対決の時まで大叔父さんへの思いは取っておいて、今はグッと抑えようと思うのだった。

 ………………
 …………

 仮面舞踏会が始まる少し前。
 屋敷にやってきた貫と詩歌は、アリスと共に大叔父様対策を打ち合わせしていた。

「これが俺と詩歌が付き合うきっかけとなった【渡しそびれた花と謎】だ。暗号が入っている。そしてこの【暗号の解説】に解き方と回答が載っている」
 貫は二つのものをアリスに手渡した。
「ありがとう、貫さん、詩歌さん。あなたたちはいいなあ、両想いで……」
 うらやましそうに言って、困ったような微笑みを浮かべて眼を伏せるアリスが気の毒で、二人は切なくなる。
 ともかく今日の仮面舞踏会で大叔父様の考え方に一石を投じて、アリスに加勢したい。
 貫と詩歌は目的を改めて思い出し、仮面舞踏会が始まるのを待った。

 ………………
 …………

 音楽が流れる中、盛装した貫は詩歌と共に、たった今到着したかのように振る舞って大広間に入った。
 貫は【英雄の品格】を使って堂々とした態度で、伯爵の横に立っているアリスに、しれっと挨拶する。
「アリス様、以前はお知恵を貸して頂き有難うございました」
「いえ、礼には及びませんわ。ほんの少しの閃きで結果は変わるものだと学びましたわ」
 アリスもなかなかの役者ぶりを発揮して貫に応答している。
 横に座っている伯爵が、怪訝な顔でアリスに質問した。
「知恵を貸したとは、何のことだね?」
 そこで貫は、打ち合わせ通りのことを丁寧に説明した。

 詩歌も【英雄の品格】を纏った上、【≪聖具≫預言者の光輪】を使って伯爵に明確に伝わるように言った。
「アリス様たちが今の生活を選択してくれて良かった。お蔭で貴方の側にいるから」
 にこりと笑む詩歌だが目は笑ってない。いつでも伯爵と対決できるよう、心の戦闘準備は出来ている。
 ……しかし伯爵には詩歌の嫌味が通じなかったようだ。
 取り立てて称賛も賛同も反論も得られず、そのまま貫と詩歌は伯爵とアリスの傍から離れた。


「大叔父さん、どう思ったかな?」
「さあな。けど俺たちは俺たちのできることをして、アリス嬢が貴族の務めを果たしているような印象を伯爵に与えられたんじゃないかな」
「だったらいいんだけど……」
 まだモヤモヤを引き摺っている詩歌の気分を変えるように、貫は明るく言った。
「折角の舞踏会だ。詩歌と踊るのはプロムナード以来だし、今日は思いっ切り楽しもう」


 貫は詩歌の手を取って向かい合い、急にぎこちなくなった詩歌の腰を抱き寄せた。
 流れるように曲に乗り、しっかりと詩歌をリードしている。
 詩歌は貫の腕の中で、彼のリードに付いていくのに必死だった。
(ほ、ほら【パフォーミング】の技術があるから……大丈夫、きっと大丈夫……)
 内心焦っている詩歌を貫は優しく包み込んで、さりげなくフォローしている。

 時には【狂信者のフラメンコ】で激しく、時には優雅なステップで、貫と詩歌は踊り続ける。
 二人だけの甘い時間はいつまでも終わらないのだった。

 ***

 弥久 風花は、今回は普通に仮面舞踏会を楽しみたいと思ってやってきている。
 だがしかし、残念ながらパートナーを連れてくることができなかった。

「いいわ! 相手はこれから決める!」

 【夜色ゴシック】で着飾って、いざ出陣!
 仮面舞踏会会場の大広間内を歩き回ってみる。
 ダンスのために履いてきた【赤い靴】は、パートナー探しでさまよい歩く風花の足取りを軽くすることにも役に立っている。

「さて、私のお相手は誰かしらー?」
 音楽が次々に変化し、大勢の人々が踊っているのに、風花と踊ってくれそうな人は中々見つからない……。
「そりゃそうよね、踊りに来るのならやっぱりパートナーを連れてくるべきよね……」

 ダンスで疲れるならまだしも、パートナー探しで疲れるなんて……。
 めげそうになった時、椅子にどっかりと座っている姿勢の良い老人が目に入った。

「そこのおじ様、私と踊って下さらないかしら?」
 周りの空気が凍り付いたようだったが、声を掛けられた本人は鷹揚に構えて応えた。

「いや、儂はまだ完全に回復しておらんのでな、踊れんのだよ」
「あらまあ、それはお気の毒です」
 無邪気に返す風花の前に、端正な吸血鬼の青年が進み出てきた。
 青年は老人に黙礼してから風花に言った。

「お嬢さん、では私がお相手しましょう」
 風花は驚いて青年を見た。
 普通の眼鏡のフレームを少し太くしただけのような、装飾の極めて少ないシンプルな仮面をつけている。
 こんな仮面では、誰なのかすぐに分かってしまうだろう。
 身元が分かることに頓着しないのだろうか。

 青年は伯爵に風花と踊る許可を求める。
「よろしいでしょうか? 伯爵」
「うむ。遠慮することはない」

 許しを得て青年はすぐに、風花の手を取って曲に乗った。
 伯爵、と呼ばれた人物を見て、風花はようやく彼がブラウブルート伯爵その人だと気が付いた。
「うわ、私、アリスの大叔父様にダンスを申し込んでしまったわー」
 風花は焦ってしまい、ダンスの足元が疎かになる。
 そんな風花を巧みに支えてリードしながら、青年は薄く笑った。
「キミ、面白いね」

 その落ち着き払った顔を見ながら風花は思った。
(この人は吸血鬼の貴公子なのかしら? でもこの顔、この固い感じ、どこかで見たような……そうだ! 仮面を眼鏡に変えたら、ウルレイの橘先輩にそっくりだわ!)

 橘先輩のそっくりさんと踊れるなんてラッキーと喜びながら、風花は【パフォーミング】や【ユメ浮遊】を使って、ダンスを楽しんだのだった。
ページの先頭に戻る