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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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◆仮面舞踏会開始前(2)

 仮面舞踏会の開始時間が近づき、客の数が増えてきた。
 給仕係役のアイドルたちはいっそう忙しく立ち働いている。

 兎多園詩籠はカフェで働いた経験を活かしてテキパキと、動きに無駄がない。
 事前に詩籠は、伯爵の好きな酒や食材をアリスに尋ねたのだが「見当もつかない」ということで情報を得られなかった。
 そこで、とりあえず上等な酒を各種用意しておいた。
 うるさい伯爵には酒を飲ませて酔わせ、早く寝かしちゃえと考えたからだ。

 人間の料理には目もくれない古風な吸血鬼でも酒は飲むらしく、さっきから相当飲んでいる。
 詩籠が伯爵のテーブルに届けただけでも、赤ワイン六本。
 詩籠以外の給仕係役のアイドルたちも運んでいたので、それ以上は確実に飲んでいる。
 それなのに少しも酔った素振りを見せないし、眠そうでもない。
 吸血鬼はウワバミの親戚なのかもしれない……。

 ***

 アーヴェント・ゾネンウンターガングは集まった客たちの表情や一挙一動を【ホークアイ】で観察し、どの装飾に目を向け、どの食事が気に入っている様子か把握するようにしている。
 フロアを見渡して全体に気配りすることは、葦原かふぇで経験済みなので自然にできるアーヴェントだ。
 
 飲み物が足りなくならないように、料理が空いた皿が無いように目配りし、先回りして素早く動く。
 いかにも作業している感じがしないように「お口に合いましたか?」などと言って、さりげなく補充し、純粋に楽しんでもらう事だけに心を砕く。
 重要なのは最高よりも最適。
 まるで本物の執事のようである。

 そんなアーヴェントを、合歓季風華は思慕の眼差しで見つめていた。
 ふと、その視線に気づいたアーヴェントが、表情だけで「なに?」と問う。

「いえ……。その執事服、よくお似合いですよ、ヴェントさん」
「ふうかも似合っているぞ」
 仕事中のこと、二人共多くは語らないけれど、微笑みを交わす二人の間には確かに温かい情愛が流れていた。

 風華が客に呼ばれ、オーダーを伝えに厨房へ行く。
 メイド服の裾をひるがえし小走りで行く風華の後ろ姿を、瞬きもせずにアーヴェントは見送っていた。
 ハッと我に返って、ブルンと首を振る。
(今は、最高の舞踏会にすることに集中しなければ……)

 風華が大広間に戻ってくると、伯爵がワイングラスを持って退屈そうにしているのが目に入った。
 仮面舞踏会が間もなく始まろうという隙間の時間だ。
 この短い時間でできる余興は何かないかと素早く考えを巡らせた風華は、伯爵のテーブルに近寄ると、【ネムキエルの瞬咲桜灰】を舞わせ、手元には【≪慰霊≫花葬】で桜の花を出して見せた。
 一瞬だけ現れて消えてしまった桜の花に伯爵は驚いたようだったが、風華は微笑んで目礼だけして仕事に戻った。
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