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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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【伯爵令嬢アリスの憂鬱】仮面舞踏会(第2話/全4話)

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◆アリスとダンス(4)

ノルテ・イヴェールのターン≫

「少しだけさよなら」
 ノルテは愛用のヴァイオリンを名残惜しそうにケースにしまい込んだ。

 どんな時でも音楽と共にあるノルテ。
 誰かの色恋沙汰に興味はないけれど、ノルテは、アリスとラルフが互いに想い合う気持ちを、ダンスを通して見てみたいと思った。

 そこで今回は、アリスの婚約者候補役として吸血鬼の貴公子に扮してやってきた。
 吸血鬼に相応しく豪奢な雪の結晶が刺繍された礼装を着て、少しでも身長を高く見せるためにかかとの高い靴を履いている。

 アリスとのダンス――。
 いつもヴァイオリンを持つ手はアリスの手を握り、ヴァイオリンの弓を持つ手はアリスの背に添えて、音楽に合わせてステップを踏む。
(俺は音楽を奏でる側なのに……音楽に合わせて踊るなんて、調子が狂う……)

 そうはいってもノルテはダンスに不慣れな様子も見せず、迷わずアリスをリードしている。
 踊りながら、ノルテはアリスに言ってみた。
「よければ、ラルフとの最近の思い出を聞かせて欲しい……」
(端から端まで惚気話なんだろうけど……)

 ノルテの頼みにアリスは顔を顰めた。
「え? どうして、そんなことが聞きたいの?」
「それは……あ、そうだ、さっき、キミとラルフが踊っている様子がいい感じだったから、仲いいなと思ったからだよ」
「あれラルフだってバレてた? あー、そうだよね~。あれ、やっぱまずかったわ~。急にラルフとダンスって振りが来るとか思わないじゃん。動揺したわ~」

(動揺って、やっぱり好きな人と密着したからかな?)
 ノルテがアリスの気持ちを想像していると、アリスの声が飛んできた。
「そんなことより、ダンスに集中してくれない?」
「わかったよ……じゃあ本気で……」

 ノルテはダンスに集中した。
 リズム感の良いノルテはダンスの勘も良い。
 アリスを支え、際立たせ、周りの人々に魅せる……。

(このダンスは誰のため? ラルフのため?)
 クルリとターンしながら目の端にラルフの姿を捉える。
 ラルフは恋する者の眼差しでアリスを追っている。
(やはり……)
 納得できたノルテは心の中で謝った。
(試すような真似をして失礼、アリス……最後まで手伝おう……)


ケルル・ルーのターン≫

 清らかな心を持つケルルも、今回はアリスの婚約者候補の貴公子役としてやって来た。
 起伏の少ない体つきが幸いして、体型は矯正しなくても衣装でカバーできる。
 長い金髪を一つにまとめ、スノーフレークの花の刺繍がついた礼装を着て、底上げした靴を履いて身長を高くすれば、少女の一歩手前の可憐な少年に早変わり。

「どう見ても貴族の男性ですね♪」
 最後にケルルは大事そうに仮面をつけた。
 これはノルテの仮面と左右対称のデザインになっている。
 お揃いの仮面をつけた鏡の中の自分を見て、ケルルはにっこりと笑った。

 ………………
 …………

(ノルテさんの後だからかな、緊張する……)
 アリスと組んでダンスをしながらケルルは思った。

 さっき、軽やかに舞うノルテとアリスを見て、ケルルはとても焦った。
 ダンスの経験も腕前も、ケルルはノルテに及ばない。
 これでは、折角アリスの婚約者候補役としてやってきたのに役に立てないんじゃないか……。
 それで焦った、というのももちろん嘘ではないが、本当の気持ちは、ケルルの自覚していない所で悲鳴を上げていたのだった。

 考え事をしながら踊っていたらアリスの足に躓いてしまった。
「ひゃっ、ごめんなさ」
 慌てて謝って足を引っ込めたらさらにずっこけた。
「大丈夫?」
 アリスが手を繋いだまま心配そうに尋ねる。
「あぅ……大丈夫です……」
 見つめてくるアリスに心配かけたくなくて、ケルルは笑った。
「えへへ……こういうの初めてで」
 もう大丈夫、と気を取り直してダンスを再開する。
「アリスさんお上手です♪ 私も頑張らないと!」
 本当はもういっぱいいっぱいなのに、健気に笑顔を見せるケルル。


 その様子を、ノルテは見ていた。
(あれはまさかケルル……?)
 ケルルが無理して引きつった笑顔になっていることは、他の人には分からなくてもノルテにはわかる。
(大丈夫かな……)
 素知らぬ振りをしながら、内心ハラハラして見守っていた。


 曲が終盤に近付き、気が緩んだのか油断したのか、アリスとケルルは二人で躓いた。
「あっ!」
 ケルルは倒れながらも咄嗟にアリスを守ろうと、アリスの下に回りこんだ。

 ドサッ!!

 大きな音がして、賓客たちが音のした方を見ると、そこには三人の少年少女が折り重なって倒れていた。

「お、重い……」
 一番下にいたノルテが呻くように呟く。
 ケルルがアリスを守ろうとしたように、ノルテもまた、ケルルを守ろうとして下敷きになったのだ。

「「ごめんなさい!!」」
 一番上にいたアリスと、アリスの下でノルテの上にいたケルルがパッと飛び退いて謝った。
 
 ケルルはノルテとアリスに平謝りに謝ったが、ノルテは大切なケルルを守れたことに満足していたのだった。


死 雲人のターン≫

 雲人は例によって、アリスをハーレムに加えたい。
 
「そのために偽婚約者になれればいいが競争相手が多い。なら、最低限は関係を得られる相談役になっておく」
 素晴らしい作戦を思いついたと、雲人は一人ほくそ笑む。

 ダンスの優劣は信用できないので、それ以外の方法でアリスとブラウブルート伯爵の信用を得るところから始める。
 その方法は次の三つの心理作戦だ。
 発言と振る舞い、ダンスに共感する。
 最初は小さい事から、次第に大きくする。
 断られても別の軽い案を出す。

 まずは貴族の振る舞いで伯爵に挨拶し、アリスの時と同じく女神の血をプレゼントする。
「お初にお目にかかります伯爵殿。私はアリスの相談役の雲人です。女神の血をアリスに届けてます」

 いきなり相談役を名乗る雲人にアリスは面食らったが、雲人は気付かずアリスをぐいぐい引っぱってフロアへ引き出す。
 有無を言わせずアリスと組んで、【英雄の品格】の堂々とした貴族の振る舞いのダンスでリードしつ、周囲に聞こえない様にアリスに小声で言う。

「いきなりだから気持ちは分かる」
「はぁ? いったいどんな気持ちが分かるっていうの?」
「惚れてる男を誘わないのはお前の中でその男が信用できない所があるからだ」
「何のこと言ってるのか、さっぱりわかんない」
「なら、新たな人に相談すればいい。まずは俺に相談しろ。相談役という事になってるから、伯爵に疑われない」
「だから、なんであなたに相談することになってる訳?」
「お前の惚れてる男と伯爵の、いい所と悪い所を俺に語るだけいい」

 雲人はアリスの気を引こうとしているのだが、一人でどんどん話を進める雲人にアリスは困惑の色を隠せない。
 最後まで話が見えないまま、曲が終わってしまった。
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