異世界ファッションショー!
リアクション公開中!

リアクション
セブンスフォール
会場であるイクスピナ大ステージは、黒いテントのようなものに覆われていた。
丸い天井がプラネタリウムを彷彿させる。
ランウェイは側面についたスポットライトで照らされていた。
観客たちは用意されたパイプ椅子に座り、開始を待つ。
その様子を淳は舞台袖から覗く。
「空、準備はいい?」
「問題ない」
空の返事を聞いた淳は、達樹に視線を向ける。
達樹は淳と目を合わせながら、頷きで合図を送る。
彼の隣には弥久 風花がスタンバイしていた。
達樹の方も準備万端だと知った淳は【ディスコフライヤー】を飛ばす。
ディスコフライヤーが定位置についたところで、ステージにあるスクリーンが「異世界冬コレクション」の文字を映す。
数秒ほどしたあと、「セブンスフォール」に切り替わる。
その瞬間、空は真っ暗だった会場を雪積もる平原に山脈、雲1つない青空に変え、淳がそれに合わせたBGMを流す。
雄大なセブンスフォールをイメージした音楽が流れ始め、風花はステージへと一歩踏み出す。
彼女の衣装は【セクシーデンジャラス】をベースに、頭には【クラウス作・エルシュオン用の猫耳(金)】
腰の後ろに【フェニックスフェザー】、その前には【デミ・ドラグリオン】を2本装備していた。
風花は長剣2本を優雅に揺らして、【ロイヤルエスコート】で堂々と歩く。
歩いている最中、ライトに当たったフェニックスフェザーがきらりと光る。
ランウェイ先端に立った風花は深呼吸し、2本のデミ・ドラグリオンを鮮やかに鞘から抜くと
【スぺクタル・バトルショウ】で迫真の殺陣を披露する。
巨大ドラゴンとの戦闘という設定の剣さばきは、観客たちを釘付けにする。
風花はランウェイから落ちないよう、注意しながら後ろに下がったり、前に出たりする。
一筋の汗が頬を伝い、それを爽やかに拭いながら最後に【グッドスマイル】を決める。
デミ・ドラグリオンを静かに収めた後、風花はポニーテールを揺らしながら観客たちに背を向けたのだった。
◆ ◆ ◆
観客席から風花の姿が見えなくなったと同時に、背景が古城に変わる。
空が世界観を整い終えると、灰色の景色に氷の結晶が静かに降り始めた。
静寂な空間の中、甲冑を鳴らしながら水鏡 彰が登場する。
金縁の白いサーコートをまとった彼の顔は、ヘルムのバイザーで隠れている。
騎士である彼の後ろには、緊張した面持ちのルティア・オルコットが夜空を思わせる深い青のドレスに身を包み
その上からドレスと同じ色のケープを羽織って立っていた。
彰は力強く一歩ずつ地面を感じるような歩き方で、ルティアは彼についていく形で一国のプリンセスのように
足音を立てず優雅に歩く。
ランウェイ先端で2人並ぶと、ルティアがドレスの裾をつまんで観客に一礼する。
一礼後、ルティアが彰の方に体を向けると、彰は片膝をついた。
ルティアが彼のヘルムのバイザーをそっと上げると、水色の瞳が優しく微笑み、彼女の手を取る。
両手でルティアの手を包むと、彰は彼女への愛を歌う。
この声が君に届くのなら この歌が君に届くのなら
我が刃と命は 君を守る為にある
愛おしき人よ 守るべき人よ
我が全ては 君と共にあるために……
彰は歌い終えると、ルティアの手の甲にキスを落とす。
キスを落とした後、彰はすっと立ち、彼女の背中と膝裏に腕を通して彼女を抱える。
ルティアが彰の首の後ろに手を回したタイミングで、彰は【レインボーマイスター】で周囲を少し明るく照らして折り返す。
寂しかった世界は、優しくもロマンチックなものへと生まれ変わり、観客たちをほっこりさせる。
戻る最中、2人は観客たちに聞こえないよう、言葉を交わす。
「緊張したな」
「うん……でも彰がいてくれたから……」
ほんのり赤く頬を染める彼女に、彰は自分のおでこを彼女のおでこにくっつける。
ルティアは予想しなかった行動に、強く頬を染めながらそれに応えた。