【伯爵令嬢アリスの憂鬱】突然の手紙(第1話/全4話)
リアクション公開中!
リアクション
◆ゲストルームをきれいにする(1)
担当を割り当てられたゲストルームの中を覗いてみた天導寺 朱は分厚く積もった埃を見て、思わず「うわぁ」と声を上げた。
「毎日掃除しろとは言わないけども、一年に一回ぐらいは使わない部屋も掃除した方がいいと思うのぜ……」
いったい何年物の埃だ? などと呟きながら机の上の埃に人差し指で落書きをしてみたりしている。
そうしているうちに朱のスイッチが入った。
「よし、今日は掃除の鬼と化すのぜー」
埃が落ちるから掃除は上の方から始めるという鉄則を朱は知っている。
そこで、【サーバントゴーレム】に抱えてもらったり足場になってもらったりして、棚の上部や窓枠の上から拭いていった。
掃除の範囲をだんだん下に拡げて、机やいすの上も拭く。
上の方が済むと、几帳面な朱は家具の下もきちんと掃除することにした。
重い高級家具をこれまた【サーバントゴーレム】に動かしてもらいつつ、【働き者の箒さん】にも手伝ってもらって、床をきれいにしていく。
机を退かした時、壁との隙間からポトリと落ちたものがあった。
朱が拾い上げてみると、それは手のひらに乗るサイズの木の小箱だった。
振ると微かに音がして、何か入っていることがわかる。
蓋には鍵穴があいているが、鍵かかかっているらしく開かない。
朱は「アリスっちなら開けられるかなー?」と思い、後でアリスに見せようと小箱をポケットに仕舞った。
***
弥久 風花は今日の仕事帰りのことに思いを巡らせて楽しくなっている。
「帰りに茜さんの所で何かスィーツ食べよっと」
美味しいスイーツのことを思い出すだけで頬が緩む風花だ。
「報酬の前には、まず労働よね!」
風花は、自分が担当するゲストルームの扉を開けた。
窓が閉まっていて中は暗いが、空気が埃っぽいのは分かる。
すぐにでも窓を開けたいところだが、グッと我慢する。
「窓を開けるのは埃を集めて取り除いた後! でないと埃が舞って掃除しづらいからね」
風花はまず棚やクローゼットの上にはたきを掛け、埃を床に落とした。
床の埃を箒で掃いて集めてから【魔動掃除機】で吸い取っていく。
が、調子よく吸い取ってくれていた【魔動掃除機】が突然停止した。
「あら? 電池切れ……」
もう少しだったのに残念だが仕方がない。
「まあ、あらかた埃は吸ったし、残りは布巾を持って来て【ピカピカステージ】の要領でピカピカにするかな」
風花は窓を開けて風を通し、家具調度を拭いていく。
壁に掛った絵画の額縁を拭いた時、装飾がポロリと取れてしまった。
破損したかと焦ったが、それは装飾に見せかけて隠されていた鍵だということが分かった。
「さっき拭いた暖炉の獅子の彫刻の口、奥に鍵穴があって変だと思ったのよね。ちょっとやってみましょう!」
えいっ! と鍵を鍵穴に入れてみた。
ガチャ
開錠に反応して、ベッドが床ごと横に回転して棺桶と入れ替わった!
「そういえば吸血鬼のお屋敷だものね、棺が良いって人も居るかー」
驚きつつも納得する風花だ。
この中も掃除しなきゃ、シーツと枕はどこへ行ったのかしら、などと考えながら上の空で棺桶を開ける。
中には革ベルトがいっぱい付いていて、ごくり、と思わず唾を飲み込む。
「ちょ、ちょっと位なら入っても怒られないわよね?」
好奇心に負けた風花が棺桶の中に横たわったその瞬間。
カチッ
何かのスイッチが入った音がして、蓋が勝手に閉じてしまった!
中の革ベルトがまるで生き物のように風花の体中に巻き付いて締め付ける。
「きゃー!?」
仕掛けが再び作動してベッドは元に戻り、風花は棺桶の中に拘束されたまま謎の空間へ放り出されてしまった。
…………
……
「風花さん、風花さん!」
「うぅ……誰か助けてー」
「起きて! 風邪引くよ!」
アリスに揺り起こされて目覚めた風花が辺りを見回すと、そこは掃除していた部屋のベッドの上だった。
しかし風花の手には、先程の鍵がしっかり握りしめられていた――。
担当を割り当てられたゲストルームの中を覗いてみた天導寺 朱は分厚く積もった埃を見て、思わず「うわぁ」と声を上げた。
「毎日掃除しろとは言わないけども、一年に一回ぐらいは使わない部屋も掃除した方がいいと思うのぜ……」
いったい何年物の埃だ? などと呟きながら机の上の埃に人差し指で落書きをしてみたりしている。
そうしているうちに朱のスイッチが入った。
「よし、今日は掃除の鬼と化すのぜー」
埃が落ちるから掃除は上の方から始めるという鉄則を朱は知っている。
そこで、【サーバントゴーレム】に抱えてもらったり足場になってもらったりして、棚の上部や窓枠の上から拭いていった。
掃除の範囲をだんだん下に拡げて、机やいすの上も拭く。
上の方が済むと、几帳面な朱は家具の下もきちんと掃除することにした。
重い高級家具をこれまた【サーバントゴーレム】に動かしてもらいつつ、【働き者の箒さん】にも手伝ってもらって、床をきれいにしていく。
机を退かした時、壁との隙間からポトリと落ちたものがあった。
朱が拾い上げてみると、それは手のひらに乗るサイズの木の小箱だった。
振ると微かに音がして、何か入っていることがわかる。
蓋には鍵穴があいているが、鍵かかかっているらしく開かない。
朱は「アリスっちなら開けられるかなー?」と思い、後でアリスに見せようと小箱をポケットに仕舞った。
***
弥久 風花は今日の仕事帰りのことに思いを巡らせて楽しくなっている。
「帰りに茜さんの所で何かスィーツ食べよっと」
美味しいスイーツのことを思い出すだけで頬が緩む風花だ。
「報酬の前には、まず労働よね!」
風花は、自分が担当するゲストルームの扉を開けた。
窓が閉まっていて中は暗いが、空気が埃っぽいのは分かる。
すぐにでも窓を開けたいところだが、グッと我慢する。
「窓を開けるのは埃を集めて取り除いた後! でないと埃が舞って掃除しづらいからね」
風花はまず棚やクローゼットの上にはたきを掛け、埃を床に落とした。
床の埃を箒で掃いて集めてから【魔動掃除機】で吸い取っていく。
が、調子よく吸い取ってくれていた【魔動掃除機】が突然停止した。
「あら? 電池切れ……」
もう少しだったのに残念だが仕方がない。
「まあ、あらかた埃は吸ったし、残りは布巾を持って来て【ピカピカステージ】の要領でピカピカにするかな」
風花は窓を開けて風を通し、家具調度を拭いていく。
壁に掛った絵画の額縁を拭いた時、装飾がポロリと取れてしまった。
破損したかと焦ったが、それは装飾に見せかけて隠されていた鍵だということが分かった。
「さっき拭いた暖炉の獅子の彫刻の口、奥に鍵穴があって変だと思ったのよね。ちょっとやってみましょう!」
えいっ! と鍵を鍵穴に入れてみた。
ガチャ
開錠に反応して、ベッドが床ごと横に回転して棺桶と入れ替わった!
「そういえば吸血鬼のお屋敷だものね、棺が良いって人も居るかー」
驚きつつも納得する風花だ。
この中も掃除しなきゃ、シーツと枕はどこへ行ったのかしら、などと考えながら上の空で棺桶を開ける。
中には革ベルトがいっぱい付いていて、ごくり、と思わず唾を飲み込む。
「ちょ、ちょっと位なら入っても怒られないわよね?」
好奇心に負けた風花が棺桶の中に横たわったその瞬間。
カチッ
何かのスイッチが入った音がして、蓋が勝手に閉じてしまった!
中の革ベルトがまるで生き物のように風花の体中に巻き付いて締め付ける。
「きゃー!?」
仕掛けが再び作動してベッドは元に戻り、風花は棺桶の中に拘束されたまま謎の空間へ放り出されてしまった。
…………
……
「風花さん、風花さん!」
「うぅ……誰か助けてー」
「起きて! 風邪引くよ!」
アリスに揺り起こされて目覚めた風花が辺りを見回すと、そこは掃除していた部屋のベッドの上だった。
しかし風花の手には、先程の鍵がしっかり握りしめられていた――。