【伯爵令嬢アリスの憂鬱】突然の手紙(第1話/全4話)
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◆大広間をきれいにする ネズミ退治(2)
こちらをジッと見つめているネズミの攻撃に備えて、辿左右左は【氷雪の武威】で手元に冷気と霰を纏う。
ネズミが飛びかかってきてもその動きを封じ、安らかに眠ってもらえるように。
ネズミたちとアイドルたちの間に緊張が張り詰めた。
「ちょっと、待ってください……!」
緊張を打ち破って、睡蓮寺小夜のきっぱりとした声が響く。
「わたしはネズミさんたちを穏便に移動させたい、です……」
え、どうやって? とアイドルたちが口々に問う。
「ネズミさんたちの心を、わたしと十くんのライブで惹きつけて、外へ出て行ってもらうのです……!」
十くんと呼ばれた堀田小十郎が前に進み出た。
「私も中々荒唐無稽な事を言っている自覚はあるがな。だがまあ、穏便に済むならその方がよいだろう?……上手くいくといいのだがな」
小夜はアリスの気持ちにも、アリスの大叔父様の気持ちにも寄り添いたいと思っている。
百年の眠りから目覚めた大叔父様の相手をするアリスは大変だろうと思ったし、大叔父様は大叔父様で、目覚めたら今まであったものが無くなっているのを見るのは悲しいだろうと思うのだ。
(だから……せめてお家だけは、綺麗に出来たらって……思います……)
小十郎と小夜は互いにアイコンタクトをして、ライブの位置取りをした。
「では……演奏演武を奏でるとしよう」
「ネズミさんに届くように、頑張ります……」
小十郎は小夜の歌や舞を彩るように、美しい白磁のヴァイオリン【ソード・ボウ】を奏で始めた。
ヴィオラ、チェロ、コントラバスの大規模な弦楽器隊の幻影が出現し、演奏に深みを与える。
弦楽器の伴奏に合わせて小夜が【奉歌高唱】で伸びやかに歌うと、その歌声は光の粒に変化して辺りに漂っていった。
【ソード・ボウ】の剣の形を模している弓を使って小十郎も演武を披露する。
【セイントコロネーション】で後光と光の翼を現わし、ネズミたちの視線を釘付けにする。
【甘美なるユーフォリア】の効果で攻撃的だったネズミの目力が和らぎ、うっとりとしてきた。
極めつけの【君臨のスター・グノーシス】で、ネズミたちは全く抵抗する意思が無くなったようだった。
そこへ小夜が【おさんぽ日和の舞】を見せつけると、ネズミたちは心を惹きつけられ、まるで魔法にかかったようにふらふらと出てきた。
「あ……君たちの新たな寝床など、可能な限り面倒をみるとも」
小十郎がやや困惑しながらも、従順な態度に変化したネズミたちに話しかけている。
すかさずケルル・ルーが
「ネズミさんたちのお相手は任せてください、慣れていますから♪」
と【ネヴァーランド知識】でネズミが住みやすい野山へのルートを身振り手振りで示し、モップ掛けで道筋を付けてネズミたちを屋敷の外へ誘導した。
こうしてライブで幸せになったネズミたちは大人しく出て行ってくれたが、まだ全部追い出せたわけではなかった。
警戒心を解かず、茨の枝から枝へ素早く移動しながらこちらを攻撃するタイミングを虎視眈々と狙っているスーパーネズミたちが残っている。
「今度は俺にやらせてくれ」
行坂 貫が進み出る。
貫は精神を集中させると、【血沸く共鳴】を使って、殺気立っているネズミたちの心拍数を上げ興奮状態を増幅させた。
十分に過敏な状態にしてから【≪慰霊≫鳥葬】でネズミを襲う大型の鳥類の幻を見せた。
本能が恐怖を感じ取り、ネズミたちはパニック状態になって目暗滅法走って逃げ回る。
しかし、鳥の幻影に怯えて大広間の中を走り回るばかりで一向に出て行こうとしないので、貫は最後の手段に出た。
そこら中の茨や壁や柱に手を触れ、【≪慰霊≫火葬】で大広間全体を幻の激しい炎で包み込んだ。
さすがのスーパーネズミたちも火を見れば、それから逃れるため我先に大広間から逃走する。
あっという間にネズミはいなくなり、貫は幻の炎を収めたのだった。
こちらをジッと見つめているネズミの攻撃に備えて、辿左右左は【氷雪の武威】で手元に冷気と霰を纏う。
ネズミが飛びかかってきてもその動きを封じ、安らかに眠ってもらえるように。
ネズミたちとアイドルたちの間に緊張が張り詰めた。
「ちょっと、待ってください……!」
緊張を打ち破って、睡蓮寺小夜のきっぱりとした声が響く。
「わたしはネズミさんたちを穏便に移動させたい、です……」
え、どうやって? とアイドルたちが口々に問う。
「ネズミさんたちの心を、わたしと十くんのライブで惹きつけて、外へ出て行ってもらうのです……!」
十くんと呼ばれた堀田小十郎が前に進み出た。
「私も中々荒唐無稽な事を言っている自覚はあるがな。だがまあ、穏便に済むならその方がよいだろう?……上手くいくといいのだがな」
小夜はアリスの気持ちにも、アリスの大叔父様の気持ちにも寄り添いたいと思っている。
百年の眠りから目覚めた大叔父様の相手をするアリスは大変だろうと思ったし、大叔父様は大叔父様で、目覚めたら今まであったものが無くなっているのを見るのは悲しいだろうと思うのだ。
(だから……せめてお家だけは、綺麗に出来たらって……思います……)
小十郎と小夜は互いにアイコンタクトをして、ライブの位置取りをした。
「では……演奏演武を奏でるとしよう」
「ネズミさんに届くように、頑張ります……」
小十郎は小夜の歌や舞を彩るように、美しい白磁のヴァイオリン【ソード・ボウ】を奏で始めた。
ヴィオラ、チェロ、コントラバスの大規模な弦楽器隊の幻影が出現し、演奏に深みを与える。
弦楽器の伴奏に合わせて小夜が【奉歌高唱】で伸びやかに歌うと、その歌声は光の粒に変化して辺りに漂っていった。
【ソード・ボウ】の剣の形を模している弓を使って小十郎も演武を披露する。
【セイントコロネーション】で後光と光の翼を現わし、ネズミたちの視線を釘付けにする。
【甘美なるユーフォリア】の効果で攻撃的だったネズミの目力が和らぎ、うっとりとしてきた。
極めつけの【君臨のスター・グノーシス】で、ネズミたちは全く抵抗する意思が無くなったようだった。
そこへ小夜が【おさんぽ日和の舞】を見せつけると、ネズミたちは心を惹きつけられ、まるで魔法にかかったようにふらふらと出てきた。
「あ……君たちの新たな寝床など、可能な限り面倒をみるとも」
小十郎がやや困惑しながらも、従順な態度に変化したネズミたちに話しかけている。
すかさずケルル・ルーが
「ネズミさんたちのお相手は任せてください、慣れていますから♪」
と【ネヴァーランド知識】でネズミが住みやすい野山へのルートを身振り手振りで示し、モップ掛けで道筋を付けてネズミたちを屋敷の外へ誘導した。
こうしてライブで幸せになったネズミたちは大人しく出て行ってくれたが、まだ全部追い出せたわけではなかった。
警戒心を解かず、茨の枝から枝へ素早く移動しながらこちらを攻撃するタイミングを虎視眈々と狙っているスーパーネズミたちが残っている。
「今度は俺にやらせてくれ」
行坂 貫が進み出る。
貫は精神を集中させると、【血沸く共鳴】を使って、殺気立っているネズミたちの心拍数を上げ興奮状態を増幅させた。
十分に過敏な状態にしてから【≪慰霊≫鳥葬】でネズミを襲う大型の鳥類の幻を見せた。
本能が恐怖を感じ取り、ネズミたちはパニック状態になって目暗滅法走って逃げ回る。
しかし、鳥の幻影に怯えて大広間の中を走り回るばかりで一向に出て行こうとしないので、貫は最後の手段に出た。
そこら中の茨や壁や柱に手を触れ、【≪慰霊≫火葬】で大広間全体を幻の激しい炎で包み込んだ。
さすがのスーパーネズミたちも火を見れば、それから逃れるため我先に大広間から逃走する。
あっという間にネズミはいなくなり、貫は幻の炎を収めたのだった。